ゲームやアニメで「ボレアス」「ゼピュロス」といった名前を聞いたことはありませんか?
これらはすべて、ギリシャ神話に登場する風の神々の名前なんです。
風は目に見えないけれど、確かにそこにある不思議な存在。
古代の人々は、この神秘的な力を「神」として崇めてきました。
穏やかなそよ風から作物を育て、激しい暴風で船を沈める。
そんな二面性を持つ風は、世界中で畏敬の対象となってきたのです。
「風の神ってどんな姿をしているの?」「国によって違いはあるの?」と思う方も多いでしょう。
この記事では、世界各地の神話に登場する風神たちを、神話体系ごとにわかりやすく解説していきます。
風神とは?

風を神格化した存在
風神(ふうじん)とは、風を司る神のことです。
古代の人々にとって、風は農業・航海・日常生活に深く関わる重要な自然現象でした。
しかし、人間の力ではどうすることもできない存在でもあります。
そのため、世界中の神話で風は神として人格を与えられ、崇拝されてきました。
風神に共通する特徴
世界各地の風神には、いくつかの共通点があります。
- 方角との結びつき:東西南北それぞれの風に神が割り当てられることが多い
- 季節との関連:春の穏やかな風、冬の冷たい風など、季節ごとに異なる神が担当
- 翼を持つ姿:風の素早さを表現するため、翼を持った姿で描かれることが多い
- 両面性:恵みの風と災いの風、両方の側面を持つ
それでは、各地域の風神を詳しく見ていきましょう。
ギリシャ神話の風神──アネモイ

ギリシャ神話には、アネモイ(Anemoi)と呼ばれる風の神々が登場します。
「アネモイ」はギリシャ語で「風」を意味し、複数の神々の総称として使われています。
アネモイの誕生
アネモイは、星空の神アストライオスと曙の女神エオスの間に生まれた神々です。
彼らはアイオロスという神の支配下にあり、アイオロスは風を革袋に閉じ込めて管理していると言われています。
ホメロスの『オデュッセイア』では、オデュッセウスがアイオロスから風袋を授かるエピソードが有名ですね。
四方位の主要な風神
ギリシャ神話では、東西南北の4つの方角にそれぞれ風神が配置されています。
ボレアス──北風の神
ボレアス(Boreas)は、北風を司る神。
「凍てつく風」「貪り食う者」という意味を持つ名前の通り、厳しい冬の寒さをもたらす存在です。
特徴と外見
- もじゃもじゃの髪と髭を持つ老人の姿
- 大きな翼と波打つマント
- 法螺貝を手にしている
有名なエピソード
ボレアスは、アテナイ王エレクテウスの娘オレイテュイアをさらって妻にしたことで知られています。
二人の間には、北風の精カライスとゼテスという双子の息子が生まれました。
アテナイ人はボレアスを信仰しており、紀元前492年にはペルシャ艦隊を嵐で壊滅させたのはボレアスのおかげだと信じ、イリソス川のほとりに神殿を建てています。
ゼピュロス──西風の神
ゼピュロス(Zephyrus)は、西風を司る神。
4柱の風神の中で最も穏やかな神とされ、「春風を運ぶ者」として親しまれていました。
特徴と外見
- 髭のない若々しい青年の姿
- マントから花を撒き散らしている
- 優美で穏やかな表情
有名なエピソード
ゼピュロスは、花の女神クロリスをさらって妻にし、果実の神カルポスをもうけました。
また、エロス(キューピッド)の命令でプシュケを運んだ話や、アポロンの恋人ヒュアキントスを嫉妬から殺してしまったという悲恋の物語も伝わっています。
ノトス──南風の神
ノトス(Notus)は、南風を司る神。
夏の終わりから秋にかけての嵐をもたらし、作物を枯らす風として恐れられていました。
特徴と外見
- 壺から水を注ぐ姿で描かれる
- 湿った重い風を象徴
ローマ神話のアウステルは、シロッコ(熱風)を体現しており、曇り空や霧、湿気をもたらす風として知られています。
エウロス──東風の神
エウロス(Eurus)は、東風(または南東の風)を司る神。
4柱の主要な風神の中で、唯一ギリシャの季節と結びついていない神です。
ヘシオドスの『神統記』にも言及がなく、オルペウス讃歌にも登場しないという、やや影の薄い存在でもあります。
8つの風神──アテネの風の塔
紀元前1世紀に建てられた「風の塔」(ホロロギオン)には、8柱の風神が彫刻されています。
| 神名 | 方角 | 特徴 |
|---|---|---|
| ボレアス | 北 | 法螺貝を持つ髭の老人 |
| カイキアス | 北東 | 雹の入った盾を持つ |
| アペリオテス | 東 | 果物や穀物を抱える |
| エウロス | 南東 | 重いマントを着た髭の男 |
| ノトス | 南 | 壺から水を注ぐ |
| リプス | 南西 | 船の船尾を持つ |
| ゼピュロス | 西 | 花を撒く若者 |
| スキロン | 北西 | 大釜を傾ける |
これらの風神は、風向きによって変わる天候を古代ギリシャ人が注意深く観察していた証拠といえるでしょう。
日本神話の風神
日本にも古くから風の神への信仰があり、『古事記』や『日本書紀』に複数の風神が登場します。
志那都比古神(シナツヒコノカミ)
シナツヒコは、日本神話における代表的な風の神です。
イザナギとイザナミの「神生み」で誕生した神々の一柱で、息から生まれた神とされています。
「シナ」は「息が長い」を意味し、風を息に例えた名前なのです。
ご利益
- 五穀豊穣
- 航海安全
- 風害除け
主な神社
- 龍田大社(奈良県)
- 伊勢神宮の風日祈宮(三重県)
- 伊勢神宮外宮の風宮(三重県)
級長津姫命(シナツヒメノミコト)
シナツヒメは、シナツヒコと対になる女性の風神です。
やわらかい風や春風と結びつけられることが多く、穏やかで恵みをもたらす風を象徴しています。
風神と雷神
俵屋宗達の「風神雷神図屏風」で有名な風神は、仏教の影響を受けた姿で描かれています。
特徴
- 緑色の肌
- 風袋(ふうたい)を背負った姿
- 鬼のような顔つき
この図像は、インドの風神ヴァーユがシルクロードを経て日本に伝わり、独自に発展したものと考えられています。
京都・三十三間堂の風神像は鎌倉時代の作品で、宗達の絵のモデルになったとも言われています。
風の又三郎
東北地方には、風の又三郎(かぜのまたさぶろう)という風の神への信仰がありました。
季節の変わり目に吹く強風を擬人化した存在で、各地の神社で祀られてきました。
宮沢賢治の短編小説『風の又三郎』は、この民間信仰をモチーフにした作品です。
風神信仰と元寇
伊勢神宮の風日祈宮と風宮は、元々は末社でしたが、元寇の際に特別な昇格を受けました。
文永・弘安の役(1274年、1281年)で元軍を撃退した「神風」は、風の神のご神威によるものと信じられたためです。
正応6年(1293年)、両社は別宮に昇格し、現在も厚い信仰を集めています。
北欧神話の風神

北欧神話には、海と風を司る神々が登場します。
航海が生活の基盤だったヴァイキングにとって、風は特に重要な存在でした。
ニョルズ(Njörðr)
ニョルズは、北欧神話の海と航海、風の神です。
ヴァン神族の長で、フレイとフレイヤの父でもあります。
特徴
- 海辺のノーアトゥーン(「船の囲い地」の意)に住む
- 風を鎮め、海や火を穏やかにする力を持つ
- 船乗りや漁師の守護神
- 「ニョルズほど裕福」という言い回しがあるほど、富の神としても知られる
スカディとの結婚
ニョルズは女巨人スカディと結婚しますが、二人は相性が悪かったと言われています。
ニョルズは海辺を愛し、スカディは山を愛したため、交互に住み分けをしても上手くいかず、結局別れてしまいました。
カーリ(Kári)
カーリは、北欧神話の北風の神です。
霜の巨人フォルニョートの息子で、兄弟には海の神エーギルと火の神ロギがいます。
家系
カーリの子孫は、冬に関わる存在が多いのが特徴です。
- フロスティ(霜)
- ヨクル(氷柱)
- スネル(雪)
- ソッリ(凍った雪)
- フォン(降雪)
- ドリファ(吹雪)
- ミョル(粉雪)
カーリは、吹雪や嵐をもたらす存在として恐れられていました。
フレースヴェルグ(Hræsvelgr)
「死体を飲み込む者」という恐ろしい名前を持つ巨人です。
天の北端に鷲の姿で座っており、その翼を羽ばたかせることで風が生まれると言われています。
ニョルズは風を導く神ですが、風を起こす根源はこのフレースヴェルグなのです。
インド神話の風神
インド神話には、最も古い時代から風の神への信仰があり、聖典『リグ・ヴェーダ』に詳しく記されています。
ヴァーユ(Vāyu)
ヴァーユは、インド神話における代表的な風の神です。
名前はサンスクリット語で「風」をそのまま意味しています。
別名
- アニラ(風)
- マルト(風)
- ガンダヴァハ(香りを運ぶ者)
- パヴァナ
- プラーナ
誕生
『リグ・ヴェーダ』によると、ヴァーユは原人プルシャの生気(プラーナ)から生まれたとされています。
これは、風が「生命の息吹」と深く結びついていることを示しています。
外見と性格
- 色白で端正な青年の姿
- 2頭の赤毛の馬が引く戦車に乗る
- インドラが同乗するときは、千頭立ての黄金の馬車に乗る
- 性格は明るく開放的だが、気性が荒い面もある
有名なエピソード
ヴァーユは、神鳥ガルーダが守るメール山(須弥山)を吹き飛ばしたことがあります。
山頂が海に落ちてランカー島になり、それが現在のスリランカだと言われています。
子孫
- ハヌマーン:『ラーマーヤナ』に登場する猿の将軍
- ビーマ:『マハーバーラタ』の英雄
どちらも怪力の持ち主として描かれており、父ヴァーユの力を受け継いでいるとされています。
ヴァータ(Vāta)
ヴァータもまた風の神ですが、ヴァーユほど擬人化が進んでいません。
より抽象的な「風の力そのもの」を表す存在と考えられています。
ヴァーユとヴァータは後に仏教に取り入れられ、風天(ふうてん)となりました。
仏教における風天
風天は、仏教の十二天の一尊です。
インドのヴァーユとヴァータを起源とし、北西の方角を守護する神として信仰されています。
日本の寺院でも、千手観音の眷属として祀られることがあります。
中国神話の風神
中国神話にも、いくつかの風神が登場します。
飛廉(ひれん)
飛廉(フェイリェン)は、中国神話における風の神です。
「風伯(ふうはく)」「風師(ふうし)」とも呼ばれます。
外見
飛廉の姿には複数の伝承があります。
- 鹿の体に雀の頭を持ち、角と蛇の尾を持つ
- 鳥の体に鹿の頭を持つ
- 素早く走る人物
秦・漢時代以降は、敏速善走の人物として描かれることが多くなりました。
信仰
- 箕星(いて座)を風害除けに祀った
- 農業や航海の安全を祈願
風伯(ふうはく)
風伯は、風を司る神の一般的な呼び名です。
道教では、方角ごとに異なる風神が配されることもあります。
メソアメリカの風神
アステカやマヤなど、中央アメリカの文明にも独自の風神信仰がありました。
エエカトル(Ehecatl)
エエカトルは、アステカ神話の風の神です。
名前はナワトル語で「風」を意味します。
ケツァルコアトルとの関係
エエカトルは、羽毛の蛇神ケツァルコアトルの風の側面として考えられています。
そのため「エエカトル=ケツァルコアトル」と呼ばれることも多いです。
外見
- 円錐形の帽子
- アヒルのくちばしのような仮面
- 体は黒く塗られ、仮面は赤
- 胸には法螺貝の装飾(エエカコスカトル、「風の宝石」)
神話での役割
エエカトルは、アステカの創世神話で重要な役割を果たしています。
- 第二の太陽:4つの世界のうち、2番目の世界(4・風)を支配
- 人類の創造:冥界から骨を持ち帰り、人間を創造
- 太陽と月を動かす:第五の太陽が創造された後、動かなかった太陽と月を吹いて軌道に乗せた
- 雨をもたらす:雨の神トラロックと協力し、雲を畑に運ぶ
神殿の特徴
エエカトルの神殿は、円筒形に建てられることが多かったです。
これは、風があらゆる方向から吹くことを象徴し、空気抵抗を減らすためとも言われています。
フラカン(Huracán)
フラカンは、マヤ神話の風と嵐の神です。
英語の「ハリケーン(hurricane)」の語源になったとも言われています。
マヤの創世神話『ポポル・ヴフ』では、創造神の一柱として世界の創造に関わりました。
ククルカン / グクマッツ
ククルカン(ユカテク・マヤ)やグクマッツ(キチェ・マヤ)は、ケツァルコアトルに相当する羽毛の蛇神です。
風と雨を司り、世界と人類を創造した神として崇拝されていました。
エジプト神話の風神
古代エジプトにも、風に関わる神々が存在しました。
シュウ(Shu)
シュウは、エジプト神話の大気と風の神です。
太陽神アトゥムから生まれ、天空の女神ヌトと大地の神ゲブの父でもあります。
シュウの最も重要な役割は、天と地を分けること。
ヌト(天)を持ち上げてゲブ(地)から引き離し、空間を作り出しました。
四方の風の神
エジプト神話では、東西南北それぞれに風の神が配されていました。
| 神名 | 方角 | 外見 |
|---|---|---|
| ケブイ | 北 | 4つの羊の頭を持つ男 |
| シェフベウイ | 南 | ライオンの頭を持つ翼の男 |
| フチャイ | 西 | 蛇の頭を持つ翼の男 |
| ヘンキセスイ | 東 | 羊の頭を持つ翼の男 |
セト
セトは本来、砂漠と混沌の神ですが、砂嵐や暴風とも結びついています。
破壊的な砂漠の風「カムシン」を象徴する存在として恐れられていました。
スラヴ神話の風神
スラヴ地域にも独自の風神信仰がありました。
ストリボーグ(Stribog)
ストリボーグは、スラヴ神話の風・空・大気の神です。
「8つの方角の風の祖父」とも呼ばれ、すべての風を統べる存在とされていました。
古ロシアの叙事詩『イーゴリ遠征物語』では、風が「ストリボーグの孫たち」と呼ばれています。
ドゴダ(Dogoda)
ドゴダは、西風の女神です。
愛と優しさの女神でもあり、穏やかな風を象徴しています。
モリャーナ(Moryana)
モリャーナは、海から陸に吹く冷たく厳しい風の擬人化です。
水の精霊としての側面も持っています。
その他の地域の風神

ポリネシアの風神
アラ・ティオティオ(竜巻の神)など、太平洋の島々にも風神信仰がありました。
航海民族にとって、風は生死を分ける重要な存在だったのです。
ケルト神話
ボラムは、ケルト神話の風の神です。
また、アイルランドの妖精「シー(Sídhe)」は、古アイルランド語で「風」や「突風」を意味する言葉でもあります。
ネイティブ・アメリカン
タテ(ラコタ族)、ワジヤ(北風の巨人)、イタカ(風に乗りて歩むもの)など、北アメリカの先住民にも多くの風神信仰がありました。
風神たちの比較と共通点

共通する特徴
世界各地の風神を比較すると、いくつかの共通点が浮かび上がります。
1. 方角との関連
ほとんどの文化で、風神は東西南北の方角と結びついています。
これは、風向きによって天候や季節が変わることを古代人が認識していた証拠です。
2. 翼を持つ姿
ギリシャのアネモイ、エジプトの風神など、多くの風神は翼を持つ姿で描かれています。
風の素早さと空を駆ける力を象徴しているのでしょう。
3. 両面性
恵みの風と災いの風。
どの文化でも、風は恩恵と脅威の両方をもたらす存在として認識されていました。
4. 航海・農業との結びつき
船乗りの安全、作物の成長、雨をもたらす雲の移動。
風神は常に、人間の生活に密接に関わる存在として信仰されてきました。
文化間の影響
日本の風神像は、インドのヴァーユ → ガンダーラ → 中央アジア → 中国 → 日本というルートで伝わったと考えられています。
俵屋宗達が描いた風神雷神の構図は、インドのインドラとヴァーユに由来するという説もあるのです。
世界の風神 名前一覧【50柱以上】
ここでは、世界各地の神話に登場する風神を地域別にリストアップしました。
調べものの際にお役立てください。
ギリシャ神話の風神
| 神名 | 読み方 | 司る分野・役割 |
|---|---|---|
| アイオロス | Aeolus | 風の管理者、風袋の守護者 |
| ボレアス | Boreas | 北風、冬の冷たい風 |
| ゼピュロス | Zephyrus | 西風、春の穏やかな風 |
| ノトス | Notus | 南風、夏の終わりの嵐 |
| エウロス | Eurus | 東風(南東風)、秋の風 |
| カイキアス | Caicias | 北東風、雹をもたらす |
| アペリオテス | Apeliotes | 東風、実りをもたらす |
| リプス | Lips | 南西風、航海に関わる |
| スキロン | Sciron | 北西風、冬の到来を告げる |
| アウラ | Aura | そよ風の女神 |
| アウライ | Aurae | そよ風のニンフたち |
ローマ神話の風神
| 神名 | 読み方 | 司る分野・役割 |
|---|---|---|
| アクィロー | Aquilo | 北風(ボレアスに対応) |
| ファウォニウス | Favonius | 西風(ゼピュロスに対応) |
| アウステル | Auster | 南風(ノトスに対応) |
| ウルトゥルヌス | Vulturnus | 東風(エウロスに対応) |
| カエクス | Caecus | 北東風 |
| アフリクス | Africus | 南西風 |
| キルキウス | Circius | 北西風 |
日本神話の風神
| 神名 | 読み方 | 司る分野・役割 |
|---|---|---|
| 志那都比古神 | シナツヒコノカミ | 風を司る男神、息から誕生 |
| 志那都比売命 | シナツヒメノミコト | 風を司る女神、穏やかな風 |
| 級長津彦命 | シナツヒコノミコト | 志那都比古の別名 |
| 級長戸辺命 | シナトベノミコト | 風の女神 |
| 天日腹大科度美神 | アメノヒバラオオシナドミノカミ | 風の神 |
| 風神 | フウジン | 風袋を持つ姿で描かれる |
| 風天 | フウテン | 仏教の十二天の一尊 |
| 風の又三郎 | カゼノマタサブロウ | 東北地方の風の精霊 |
| 風三郎 | カゼノサブロウ | 新潟県などで信仰される風神 |
| 龍田風神 | タツタノカゼノカミ | 龍田大社の風神 |
| 伊勢津彦 | イセツヒコ | 風の神とされることがある |
北欧神話の風神
| 神名 | 読み方 | 司る分野・役割 |
|---|---|---|
| ニョルズ | Njörðr | 海と風、航海の守護、富をもたらす |
| カーリ | Kári | 北風、吹雪と嵐 |
| フレースヴェルグ | Hræsvelgr | 風を起こす巨大な鷲 |
| オーディン | Odin | 息・大気の神としての側面もある |
| フロスティ | Frosti | カーリの息子、霜を司る |
| ヨクル | Jökull | カーリの息子、氷柱を司る |
インド神話の風神
| 神名 | 読み方 | 司る分野・役割 |
|---|---|---|
| ヴァーユ | Vāyu | 風の主神、生命の息吹 |
| ヴァータ | Vāta | 風の神(より抽象的) |
| マルト | Marut | 嵐の神々(複数) |
| パヴァナ | Pavana | ヴァーユの別名 |
| プラーナ | Prāṇa | 生気・気息の神格化 |
| ルドラ | Rudra | 暴風の神(シヴァの前身) |
中国神話の風神
| 神名 | 読み方 | 司る分野・役割 |
|---|---|---|
| 飛廉 | フェイリェン | 風伯、風の神 |
| 風伯 | フォンボー | 風を司る神の総称 |
| 風師 | フォンシー | 風の神(道教) |
| 箕伯 | ジーボー | 箕星(いて座)と関連する風神 |
エジプト神話の風神
| 神名 | 読み方 | 司る分野・役割 |
|---|---|---|
| シュウ | Shu | 大気と風、天と地を分ける |
| アメン | Amun | 創造と風の神(隠れた風) |
| ケブイ | Qebui | 北風の神 |
| シェフベウイ | Shehbui | 南風の神 |
| フチャイ | Hutchai | 西風の神 |
| ヘンキセスイ | Henkhisesui | 東風の神 |
| セト | Set | 砂嵐・暴風の側面を持つ |
メソアメリカの風神
| 神名 | 読み方 | 司る分野・役割 |
|---|---|---|
| エエカトル | Ehecatl | アステカの風神 |
| ケツァルコアトル | Quetzalcoatl | 羽毛の蛇神、風の側面を持つ |
| フラカン | Huracán | マヤの風と嵐の神 |
| ククルカン | Kukulkán | ユカテク・マヤの羽毛の蛇神 |
| グクマッツ | Q’uq’umatz | キチェ・マヤの風と雨の神 |
| テスカトリポカ | Tezcatlipoca | 夜風とハリケーンの神 |
| ミクトランパエカトル | Mictlanpachecatl | 北風の神 |
| トラロカヨトル | Tlalocayotl | 東風の神 |
| ヴィツトランパエカトル | Vitztlampaehecatl | 南風の神 |
| シワテカヨトル | Cihuatecayotl | 西風の神 |
| エエカトトントリ | Ehecatotontli | そよ風の小神たち |
スラヴ神話の風神
| 神名 | 読み方 | 司る分野・役割 |
|---|---|---|
| ストリボーグ | Stribog | 風・空・大気の神、風の祖父 |
| ドゴダ | Dogoda | 西風の女神、愛と優しさ |
| ポグダ | Pogoda | 晴天と穏やかな風の女神 |
| モリャーナ | Moryana | 海から吹く冷たい風 |
| ヴェイオパティス | Vejopatis | リトアニアの風神 |
| シュルディ | Shurdhi | アルバニアの嵐の神 |
| ヴェルブティ | Verbti | アルバニアの北風の神 |
その他の地域の風神
| 神名 | 読み方 | 神話体系 | 司る分野・役割 |
|---|---|---|---|
| タテ | Tate | ラコタ族 | 風の神・精霊 |
| ワジヤ | Waziya | ラコタ族 | 北風の巨人 |
| イタカ | Ithaqua | ネイティブアメリカン | 風に乗りて歩むもの |
| ニルツィ | Niltsi | ナバホ族 | 風の精霊 |
| グアバンセクス | Guabancex | タイノ族 | 風とハリケーンの女神 |
| アラ・ティオティオ | Ara Tiotio | ポリネシア | 竜巻の神 |
| ボラム | Borrum | ケルト | 風の神 |
| ワーユ | Vayu | ゾロアスター教 | 風の神(ダエーワとされる) |
| エンリル | Enlil | メソポタミア | 風と大気の主神 |
| ニンリル | Ninlil | メソポタミア | エンリルの妻、風の女神 |
| パズズ | Pazuzu | メソポタミア | 南西風の悪魔 |
| アダド | Adad | メソポタミア | 嵐と風の神 |
まとめ
世界各地の風神たちは、単なる昔話の登場人物ではありません。
古代の人々が自然をどう理解し、どのように共存しようとしていたかを教えてくれる存在です。
主要な風神一覧
| 神話体系 | 代表的な風神 | 特徴 |
|---|---|---|
| ギリシャ | アネモイ(ボレアス、ゼピュロス等) | 四方位の風を司る神々 |
| 日本 | シナツヒコ、風神 | 息から生まれた神、風袋を持つ姿 |
| 北欧 | ニョルズ、カーリ | 海と航海、冬の嵐と結びつく |
| インド | ヴァーユ | 生命の息吹、ハヌマーンの父 |
| 中国 | 飛廉、風伯 | 農業と風害除け |
| アステカ | エエカトル | 創世神話で重要な役割 |
| エジプト | シュウ | 天と地を分けた大気の神 |
目に見えない風という存在に人格を与え、崇めてきた人類の想像力。
そこには、自然への畏敬と、共に生きていこうとする知恵が詰まっています。
興味を持った神様がいたら、ぜひその神話をもっと深く調べてみてください。
きっと新たな発見があるはずです。












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