映画やゲーム、アニメで「ラクシュミー」「サラスヴァティー」「ドゥルガー」という名前を聞いたことはありませんか?
これらはすべて、インド神話(ヒンドゥー教)に登場する力強く美しい女神たちの名前です。
インド神話の女神たちには、とても興味深い特徴があります。
それは、女性の神聖なエネルギー「シャクティ」が宇宙の根源的な力とされていること。
男神たちでさえ、この女性エネルギーなしには力を発揮できないと考えられているんです。
「名前は知っているけど、どんな女神なの?」「日本の神様との関係は?」と思う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、インド神話に登場する女神たちを、役割や神話エピソードとともに詳しくご紹介します。
インド神話の女神って何?

ヒンドゥー教における女神信仰
ヒンドゥー教では、宇宙のエネルギーを「シャクティ」と呼びます。
サンスクリット語で「力」や「エネルギー」を意味するこの言葉は、女性的な神聖エネルギーを表しています。
インド神話の考え方では、すべての男神は対応する女神(配偶神)を持ち、その女神なしでは本来の力を発揮できないとされています。
たとえば、破壊神シヴァも妻パールヴァティーのシャクティなしでは「シャヴァ(死体)」になってしまうといわれるほど。
女神たちが司る主な分野は以下の通りです。
- 富と繁栄(ラクシュミー)
- 知恵と芸術(サラスヴァティー)
- 愛と献身(パールヴァティー)
- 戦いと勝利(ドゥルガー、カーリー)
- 時間と破壊(カーリー)
- 大地と豊穣(シーター、ブーミ)
日本との深いつながり
実は、インド神話の女神たちは日本でも馴染み深い存在です。
仏教とともに伝来し、日本の神々として親しまれている女神も多くいます。
| インド神話の女神 | 日本での名前 |
|---|---|
| サラスヴァティー | 弁財天(弁天様) |
| ラクシュミー | 吉祥天 |
| マハーカーリー | 大黒天女 |
七福神の一柱である弁財天は、まさにサラスヴァティーがルーツなんです。
トリデーヴィ──三大女神
ヒンドゥー教における最も重要な三柱の女神を「トリデーヴィ」と呼びます。
三大男神「トリムールティ」(ブラフマー・ヴィシュヌ・シヴァ)の配偶神として、それぞれ創造・維持・破壊を司ります。
サラスヴァティー(Saraswati)──知恵と芸術の女神
基本情報
- 別名: ヴァーニー、ヴァーチ、シャラダー
- 司る分野: 知恵、学問、芸術、音楽、言葉
- 配偶神: ブラフマー(創造神)
- 日本名: 弁財天
どんな女神?
サラスヴァティーは、学問と芸術を司る女神です。
サンスクリット語で「水(湖)を持つもの」を意味し、もともとは聖なる川の化身でした。
流れる川のイメージが転じて、流れるもの全て──言葉、音楽、知識──の女神となったのです。
外見の特徴
白い肌に白い衣をまとい、4本の腕を持っています。
手にはヴィーナ(琵琶に似た弦楽器)、数珠、ヴェーダ聖典、蓮の花を持ち、白鳥または孔雀に乗った姿で描かれます。
白は純粋さと知識の象徴なんです。
有名なエピソード
ブラフマーが自分の体からサラスヴァティーを生み出したとき、その美しさに見とれてしまいました。
どこにいても彼女を見ていたいと思ったブラフマーは、前後左右に4つの顔を作り出したといわれています。
現代への影響
インドでは毎年春に「ヴァサント・パンチャミー」という祭りでサラスヴァティーを祝います。
学生や音楽家、芸術家たちは特にこの女神を敬い、試験前や新しい学びの始まりに祈りを捧げます。
ラクシュミー(Lakshmi)──富と幸運の女神
基本情報
- 別名: シュリー、マハーラクシュミー
- 司る分野: 富、繁栄、幸運、美、豊穣
- 配偶神: ヴィシュヌ(維持神)
- 日本名: 吉祥天
どんな女神?
ラクシュミーは、富と幸運を司る最も人気のある女神の一柱です。
「乳海攪拌(にゅうかいかくはん)」という有名な神話で、神々と阿修羅が不死の薬を求めて海をかき回した際に誕生しました。
蓮の花から生まれた彼女のあまりの美しさに、神々も阿修羅も皆が彼女を妻にしたがったといわれています。
外見の特徴
4本の腕を持ち、蓮の花を両手に持っています。
手から金貨があふれ出る姿で描かれることが多く、蓮の花の上に座っている様子が象徴的です。
両脇には象が水をかけている「ガジャ・ラクシュミー」という構図も有名。
興味深い神話
ラクシュミーには「アラクシュミー」という不幸を司る姉がいるとされています。
ヴィシュヌの妻になる際、「姉にも配偶者をつけてください」と条件を出し、ある聖仙とアラクシュミーを結婚させてから、ようやくヴィシュヌと結ばれたという話が残っています。
現代への影響
毎年10月末〜11月初めのディーワーリー(光の祭り)は、ラクシュミーを祝う最大のお祭りです。
家々には彼女を招き入れるための灯明が灯され、富と幸運を祈願します。
インドで最も盛大に祝われる祝祭の一つなんです。
パールヴァティー(Parvati)──愛と献身の女神
基本情報
- 別名: ウマー、ガウリー、ギリジャー、アンビカー
- 司る分野: 愛、献身、母性、調和、結婚
- 配偶神: シヴァ(破壊神)
- 子供: ガネーシャ、カールティケーヤ
どんな女神?
パールヴァティーは、シヴァの妻であり、ヒンドゥー教における理想的な妻と母の象徴です。
名前は「山の娘」を意味し、ヒマラヤの王の娘として生まれました。
彼女はシヴァの最初の妻サティーの生まれ変わりとされています。
サティーは父親がシヴァを侮辱したことに怒り、自ら炎の中に身を投じました。
その後、パールヴァティーとして転生し、厳しい苦行を経て再びシヴァの妻となったのです。
外見の特徴
通常は2本の腕を持つ穏やかな姿で描かれます。
シヴァとともに描かれることが多く、時にはシヴァの左半身と一体化した「アルダナーリーシュヴァラ」という姿で表現されることも。
これは男性原理と女性原理の融合を象徴しています。
変身する女神
パールヴァティーの最も興味深い特徴は、状況に応じてさまざまな姿に変身することです。
穏やかな姿のままでいることもあれば、怒りによって恐ろしい戦いの女神ドゥルガーやカーリーに変化することもあります。
戦いの女神たち
ドゥルガー(Durga)──無敵の戦士女神
基本情報
- 別名: マヒシャースラマルディニー(水牛の魔王を倒す者)、アンビカー
- 司る分野: 戦い、勝利、悪の破壊、正義
- 乗り物: ライオンまたは虎
どんな女神?
ドゥルガーは、悪と戦う最強の戦士女神です。
「近づきがたい者」という意味の名前が示すように、どんな敵も彼女を倒すことはできません。
誕生の神話
かつて、マヒシャという水牛の姿をした魔王が神々を苦しめていました。
「男には殺されない」という恩恵を得ていたマヒシャに、どの男神も勝てなかったのです。
困り果てた神々は、それぞれの力を結集しました。
すると、すべての神々のエネルギーが融合し、10本(または18本)の腕を持つ美しく強大な女神ドゥルガーが誕生。
各神から授けられた武器を手に、ドゥルガーは9日間の激闘の末、マヒシャを討ち果たしたのです。
外見の特徴
8〜18本の腕を持ち、各手にはさまざまな武器を持っています。
トリシューラ(三叉戟)、チャクラ(円盤)、弓矢、剣、槍など──これらは各神から授けられたもの。
ライオンに乗り、凛々しい戦士の姿で描かれます。
現代への影響
ドゥルガーを祝うナヴァラートリ(9夜祭)とドゥルガー・プージャーは、特に東インド・ベンガル地方で盛大に祝われます。
9日間にわたって彼女の9つの姿「ナヴァドゥルガー」が崇拝され、10日目は勝利を祝う「ヴィジャヤダシャミー」として祝われるんです。
カーリー(Kali)──時間と破壊の女神
基本情報
- 別名: マハーカーリー、シャーマー、ダクシナ・カーリー
- 司る分野: 時間、死、破壊、解放、エゴの消滅
- 乗り物: なし(シヴァの上に立つ)
どんな女神?
カーリーは、インド神話の中で最も恐ろしく、同時に最も崇拝される女神の一柱です。
名前はサンスクリット語の「カーラ(時間)」に由来し、時間がすべてを飲み込む力を象徴しています。
一見すると恐ろしい姿ですが、信者たちは彼女を「最も慈悲深い母」として崇めています。
彼女が破壊するのは悪やエゴであり、信者を苦しみから解放してくれる存在なのです。
外見の特徴
真っ黒な肌に、髑髏のネックレス、切り落とされた手で作った腰巻き、血のしたたる剣と魔神の生首を持つ姿で描かれます。
赤い舌を突き出し、三つの目を持ち、乱れた黒髪が特徴的。
シヴァの上に立つ姿が有名で、これは彼女がすべてを超越した存在であることを示しています。
有名なエピソード
ある戦いで、ラクタビージャという魔神と戦っていた神々は困り果てていました。
この魔神は、血が地面に落ちるたびにそこから分身が生まれるという恩恵を持っていたのです。
そこで女神ドゥルガーの額から黒い怒りとしてカーリーが出現。
カーリーは長い舌を伸ばして血が地面に落ちる前にすべて飲み干し、ラクタビージャを倒しました。
しかし、戦いの興奮で暴走し始めたカーリーを止めるため、シヴァが彼女の足元に横たわりました。
夫を踏んでいることに気づいたカーリーは我に返り、舌を出して恥じらいを示したといわれています。
ダシャ・マハーヴィディヤー──十大叡智の女神たち

マハーヴィディヤーとは?
「マハーヴィディヤー」とはサンスクリット語で「偉大な叡智」を意味します。
これはタントラの伝統における10柱の女神たちのグループで、すべてマハーデーヴィー(大女神)の異なる側面とされています。
10柱の女神は以下の通りです。
| 順位 | 女神名 | 意味・役割 |
|---|---|---|
| 1 | カーリー | 時間、破壊、エゴの消滅 |
| 2 | ターラー | 導き、救済、慈悲 |
| 3 | トリプラ・スンダリー | 三界の美、至福、完成 |
| 4 | ブヴァネーシュヴァリー | 宇宙の女王、空間の支配 |
| 5 | バイラヴィー | 恐怖、厳格さ、変容の火 |
| 6 | チンナマスター | 自己犠牲、自我の断絶 |
| 7 | ドゥーマーヴァティー | 未亡人、逆境、暗闘 |
| 8 | バガラームキー | 麻痺、敵の沈黙 |
| 9 | マータンギー | 言葉の力、芸術、汚れの浄化 |
| 10 | カマラー | 蓮の女神、豊穣、ラクシュミーの側面 |
誕生の神話
マハーヴィディヤーの誕生には、サティーとシヴァの物語が関わっています。
サティーの父ダクシャは、シヴァを嫌っていました。
あるとき、ダクシャが盛大なヤグナ(火の儀式)を開催しましたが、シヴァとサティーだけは招待されませんでした。
「娘として父の祭りに行きたい」と願うサティーを、シヴァは止めようとしました。
すると、怒りに満ちたサティーは恐ろしい姿に変化し、10の方向すべてに自分の化身を現しました。
これが10柱のマハーヴィディヤーの起源とされています。
主要なマハーヴィディヤーの詳細
ターラー(Tara)──救済の星
仏教の観音菩薩の原型ともいわれる女神です。
「星」を意味する名前の通り、闘の中で迷う者を導く光として崇められています。
チベット仏教でも重要な存在で、慈悲の象徴として広く信仰されています。
外見はカーリーに似ていますが、青い肌を持ち、より慈悲深い側面が強調されます。
トリプラ・スンダリー(Tripura Sundari)──三界一の美女
「三つの世界で最も美しい者」という名前を持つ女神です。
16歳の永遠の若さを象徴し、「ショーダシー(16歳の者)」とも呼ばれます。
彼女は単なる外見の美しさではなく、精神的な至福と悟りの美しさを象徴しています。
シュリー・ヴィディヤーという密教的伝統では、最高女神として崇められています。
チンナマスター(Chinnamasta)──自らの首を切る女神
最も衝撃的な姿を持つ女神です。
自分で自分の首を切り落とし、そこから噴き出す血で二人の従者を養っている姿で描かれます。
足元には性交する男女がいることも。
この恐ろしい姿は、自我の完全な放棄と、生命エネルギーの循環を象徴しているとされています。
ナヴァドゥルガー──ドゥルガーの九つの姿
ナヴァラートリ(9夜祭)で崇拝される、ドゥルガー女神の9つの姿を紹介します。
9日間の女神
| 日 | 女神名 | 意味 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 1日目 | シャイラプトリー | 山の娘 | 牡牛に乗り、三叉戟と蓮を持つ |
| 2日目 | ブラフマチャーリニー | 苦行者 | 数珠と水差しを持つ禁欲の姿 |
| 3日目 | チャンドラガンター | 月の鐘 | 額に半月形の鐘を持つ戦士 |
| 4日目 | クシュマンダー | 宇宙卵の創造者 | 8〜10本の腕、ライオンに乗る |
| 5日目 | スカンダマーター | スカンダの母 | 幼いスカンダを抱く母の姿 |
| 6日目 | カーティヤーヤニー | カーティヤ聖者の娘 | 4本の腕を持つ戦士女神 |
| 7日目 | カーラーラートリ | 闘夜 | 黒い肌、炎を吐く恐ろしい姿 |
| 8日目 | マハーガウリー | 極めて白い者 | 白い肌、穏やかで美しい姿 |
| 9日目 | シッディダートリー | 成就を与える者 | 蓮に座り、超自然的な力を授ける |
これら9つの姿は、パールヴァティーの人生の段階を表しているとも、マヒシャとの戦いの9日間を表しているともいわれています。
叙事詩に登場する女神たち

シーター(Sita)──大地の娘
基本情報
- 別名: ジャーナキー、マイティリー
- 司る分野: 純潔、献身、忍耐、大地
- 配偶神: ラーマ(ヴィシュヌの化身)
- 登場作品: ラーマーヤナ
どんな女神?
シーターは、インド二大叙事詩の一つ『ラーマーヤナ』のヒロインです。
「畝」を意味する名前が示すように、大地の女神ブーミの娘として畑の畝から発見されました。
ミティラー国の王ジャナカに養女として育てられ、シヴァの弓を引いたラーマと結婚します。
波乱に満ちた物語
ラーマが王位継承争いで14年間の追放となったとき、シーターは豪華な宮殿生活を捨てて夫に付き従いました。
森での生活中、魔王ラーヴァナに誘拐され、長い間ランカー島に囚われます。
ラーマと猿の軍勢に救出された後、純潔を証明するために火の試練を受けることになりました。
炎の中に入ったシーターは無傷で出てきて、純潔を証明したのです。
しかし、民の噂を気にしたラーマによって森に追放され、そこで双子の息子を産み育てました。
最終的に、シーターは母なる大地に受け入れられ、地中に消えていきました。
現代への影響
シーターは、ヒンドゥー教における理想的な妻の象徴として今も深く崇拝されています。
ディーワーリーではラーマとともに祀られ、彼女の物語は数え切れないほどの芸術作品に影響を与えてきました。
ラーダー(Radha)──究極の愛の象徴
基本情報
- 別名: ラーダーラーニー
- 司る分野: 純粋な愛、献身、神への帰依
- 関係者: クリシュナ(ヴィシュヌの化身)
どんな女神?
ラーダーは、クリシュナの幼なじみであり、永遠の恋人です。
牛飼いの娘として生まれた彼女は、クリシュナへの純粋な愛によって神格化されました。
興味深いことに、ラーダーはクリシュナの正式な妻ではありません。
しかし、その純粋で無条件の愛こそが、神への究極の献身(バクティ)の象徴とされているのです。
象徴的な意味
ラーダーとクリシュナの関係は、人間の魂(ラーダー)と神(クリシュナ)の関係を象徴しています。
魂が神を求める情熱的な愛、それがラーダーの本質なのです。
現代のインドでは、「ラーダー・クリシュナ」と一体の名前で呼ばれることが多く、二人は常にセットで描かれます。
河川の女神たち
ガンガー(Ganga)──聖なるガンジス川の女神
基本情報
- 別名: ガンガー・マイヤー(ガンガーの母)
- 司る分野: 浄化、救済、聖なる水
- 関連する神: シヴァ(彼女を髪で受け止めた)
どんな女神?
ガンガーは、インドで最も神聖とされるガンジス川の女神です。
もともとは天界を流れる川でしたが、人間の祈りによって地上に降りてきました。
降下の神話
かつて、聖仙バギーラタは先祖の魂を救うため、天界の川を地上に降ろす苦行を行いました。
しかし、天から直接落ちてくるガンガーの勢いは凄まじく、地球を破壊してしまう恐れがありました。
そこでシヴァが、自らの髪でガンガーを受け止め、穏やかに地上に流れるようにしたのです。
このため、シヴァの頭には常にガンガーがいる姿で描かれます。
現代への影響
ガンジス川での沐浴は、すべての罪を洗い流すとされています。
ヴァラナシをはじめとする聖地には、毎年何百万人もの巡礼者が訪れます。
死者の遺灰をガンガーに流すことで、魂の解脱を助けると信じられています。
ヤムナー(Yamuna)──クリシュナと縁深い聖川
ガンガーと並ぶ聖なる川ヤムナー川の女神です。
太陽神スーリヤの娘であり、死の神ヤマの姉妹とされています。
クリシュナの幼少期の舞台であるヴリンダーヴァンを流れる川として、特にクリシュナ信仰と深く結びついています。
ヴェーダ時代の女神たち
ウシャス(Ushas)──夜明けの女神
基本情報
- 司る分野: 夜明け、光、新しい始まり
- 父: ディヤウス(天空神)
- 対応する神: ギリシャのエオス、ローマのアウロラ
どんな女神?
ウシャスは、リグ・ヴェーダで最も重要な女神として登場します。
毎朝、黄金の馬車に乗って空を駆け、闇を追い払い世界に光をもたらす存在として讃えられました。
彼女は「すべての命の命」「すべての息の息」と呼ばれ、毎日の始まりに世界を甦らせる存在とされています。
興味深いことに、英語の「Easter(イースター)」という言葉は、ウシャスと同じ語源を持つゲルマン語の女神に由来するともいわれています。
プリティヴィー(Prithvi)──大地の母
大地そのものを神格化した女神です。
天空神ディヤウスの配偶神として、すべての生命を育む母なる存在として崇められています。
現代でも「プリティヴィー・マータ(大地の母)」として親しまれています。
女神たちの関係性と系譜
トリムールティとトリデーヴィ
インド神話の神々は、複雑な家族関係で結ばれています。
【創造】ブラフマー ══ サラスヴァティー
│
【維持】ヴィシュヌ ══ ラクシュミー
│
【破壊】シヴァ ══ パールヴァティー
├── ガネーシャ(象頭神)
└── カールティケーヤ(軍神)
パールヴァティーの多様な化身
パールヴァティーは状況に応じてさまざまな姿に変化します。
穏やかな姿
- ウマー(光り輝く者)
- ガウリー(白く美しい者)
- アンナプルナー(食物を与える者)
恐ろしい姿
- ドゥルガー(近づきがたい者)
- カーリー(黒い者)
- チャームンダー(悪魔を倒す者)
インド神話の女神が現代文化に与えた影響
ゲーム・アニメ・漫画での登場
インド神話の女神たちは、現代のエンターテイメントでも大人気です。
- ペルソナシリーズ: カーリー、ラクシュミー、サラスヴァティーなどがペルソナとして登場
- Fate/Grand Order: 様々なインド神話の女神がサーヴァントとして参戦
- 女神転生シリーズ: ドゥルガー、カーリー、パールヴァティーなど多数登場
- パズドラ: インド神話の女神シリーズとして人気キャラクターに
日本での信仰
前述の通り、サラスヴァティーは弁財天として、ラクシュミーは吉祥天として日本に伝わりました。
七福神の中で唯一の女神である弁財天は、特に音楽家や芸術家から篤い信仰を集めています。
日本三大弁財天として知られる江島神社、竹生島神社、厳島神社には、今も多くの参拝者が訪れます。
インド神話の女神 完全一覧
最後に、インド神話に登場する主要な女神を網羅的にリストアップしました。
トリデーヴィ(三大女神)
| 女神名 | 読み方 | 司る分野 |
|---|---|---|
| サラスヴァティー | Saraswati | 知恵、学問、芸術、音楽 |
| ラクシュミー | Lakshmi | 富、繁栄、幸運、美 |
| パールヴァティー | Parvati | 愛、献身、母性、調和 |
戦いの女神
| 女神名 | 読み方 | 司る分野 |
|---|---|---|
| ドゥルガー | Durga | 戦い、勝利、悪の破壊 |
| カーリー | Kali | 時間、死、破壊、解放 |
| チャームンダー | Chamunda | 悪魔退治 |
| カウシキー | Kaushiki | 戦闘 |
マハーヴィディヤー(十大叡智)
| 女神名 | 読み方 | 司る分野 |
|---|---|---|
| カーリー | Kali | 時間、破壊 |
| ターラー | Tara | 救済、導き |
| トリプラ・スンダリー | Tripura Sundari | 美、至福 |
| ブヴァネーシュヴァリー | Bhuvaneshvari | 宇宙の支配 |
| バイラヴィー | Bhairavi | 恐怖、変容 |
| チンナマスター | Chinnamasta | 自己犠牲 |
| ドゥーマーヴァティー | Dhumavati | 逆境 |
| バガラームキー | Bagalamukhi | 敵の沈黙 |
| マータンギー | Matangi | 言葉の力 |
| カマラー | Kamala | 蓮、豊穣 |
ナヴァドゥルガー(九つのドゥルガー)
| 女神名 | 読み方 | 司る分野 |
|---|---|---|
| シャイラプトリー | Shailaputri | 山の娘 |
| ブラフマチャーリニー | Brahmacharini | 苦行 |
| チャンドラガンター | Chandraghanta | 勇気 |
| クシュマンダー | Kushmanda | 宇宙創造 |
| スカンダマーター | Skandamata | 母性 |
| カーティヤーヤニー | Katyayani | 戦い |
| カーラーラートリ | Kalaratri | 闘夜 |
| マハーガウリー | Mahagauri | 純潔 |
| シッディダートリー | Siddhidatri | 成就 |
叙事詩の女神
| 女神名 | 読み方 | 司る分野 |
|---|---|---|
| シーター | Sita | 純潔、大地、献身 |
| ドラウパディー | Draupadi | 名誉、正義 |
| ラーダー | Radha | 純粋な愛 |
| ルクミニー | Rukmini | 献身 |
| サティヤバーマー | Satyabhama | 勇気 |
河川の女神
| 女神名 | 読み方 | 司る分野 |
|---|---|---|
| ガンガー | Ganga | 浄化、救済 |
| ヤムナー | Yamuna | 聖なる水 |
| サラスヴァティー川 | Saraswati | 知恵の源流 |
| ナルマダー | Narmada | 祝福 |
ヴェーダ時代の女神
| 女神名 | 読み方 | 司る分野 |
|---|---|---|
| ウシャス | Ushas | 夜明け、光 |
| ラートリー | Ratri | 夜 |
| プリティヴィー | Prithvi | 大地 |
| アディティ | Aditi | 無限、母性 |
まとめ
インド神話の女神たちは、単なる古代の物語の登場人物ではありません。
女神たちが象徴するもの
- ラクシュミーの富と繁栄をもたらす慈愛
- サラスヴァティーの流れるような知恵と芸術
- パールヴァティーの穏やかさと激しさを併せ持つ母性
- ドゥルガーの悪に立ち向かう勇気と力
- カーリーの時間を超越した破壊と再生の力
これらの女神たちは、インドの人々の日常生活に今も深く根付いています。
ディーワーリーでラクシュミーを迎え入れ、ナヴァラートリでドゥルガーを9日間祝い、ガンジス川でガンガーに祈りを捧げる──そんな信仰は現代インドでも生き続けています。
そして、弁財天や吉祥天として、インド神話の女神たちは日本の文化にも溶け込んでいます。
興味を持った女神がいたら、ぜひその物語をさらに深く調べてみてください。
神話の世界に思いを馳せると、新たな発見があるかもしれません。




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