【完全版】中国の妖怪一覧|四神から九尾の狐、キョンシーまで徹底解説

神話・歴史・伝承

中国には数千年の歴史の中で語り継がれてきた、神秘的で魅力あふれる妖怪たちが存在します。

ゲームやアニメで「九尾の狐」「キョンシー」「麒麟」といった名前を聞いたことはありませんか?

実はこれらすべて、中国の神話や伝説に登場する妖怪や霊獣なんです。

日本の妖怪文化にも大きな影響を与えてきた中国の妖怪たち。「妖怪」という言葉自体も、もともとは中国語の「妖怪(ヤオグァイ)」から来ています。

「名前は聞いたことあるけど、どんな存在なの?」「日本の妖怪との違いは?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、中国神話に登場する妖怪・霊獣・神獣を体系的に分類し、それぞれの特徴やエピソードをわかりやすく解説していきます。

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  1. 中国の妖怪とは?
    1. 妖怪(ヤオグァイ)の基本
    2. 中国妖怪の主な出典
  2. 四神(四霊獣)──東西南北を守護する最強の神獣
    1. 青龍(せいりゅう)──東方の守護神
    2. 朱雀(すざく)──南方の守護神
    3. 白虎(びゃっこ)──西方の守護神
    4. 玄武(げんぶ)──北方の守護神
    5. 黄龍(こうりゅう)──中央の守護神
  3. 瑞獣(ずいじゅう)──幸運をもたらす神聖な獣たち
    1. 龍(りゅう)──中国を代表する神獣
    2. 鳳凰(ほうおう)──鳥の王
    3. 麒麟(きりん)──仁徳の象徴
    4. 白澤(はくたく)──万物を知る神獣
  4. 九尾の狐──中国を代表する妖怪
    1. 九尾の狐の二面性
    2. 最古の記録──『山海経』
    3. 殷を滅ぼした妲己(だっき)
    4. 日本への伝来──玉藻前(たまものまえ)
    5. 狐の修行と九尾
  5. キョンシー(殭屍)──中国の死体妖怪
    1. キョンシーとは何か
    2. キョンシーの起源
    3. キョンシーの等級
    4. キョンシーの弱点と退治法
  6. 『山海経』に登場する奇獣たち
    1. 饕餮(とうてつ)──貪欲の象徴
    2. 夔(き)──一本足の雷獣
    3. 獬豸(かいち)──正義の神獣
    4. 窮奇(きゅうき)──悪を好む妖獣
    5. 渾沌(こんとん)──顔のない怪物
  7. 『西遊記』『封神演義』の妖怪たち
    1. 白骨夫人(はっこつふじん)──西遊記の妖怪
    2. 牛魔王(ぎゅうまおう)──孫悟空のライバル
    3. 哪吒(なた)──封神演義の英雄
  8. 龍生九子──龍の9人の息子たち
  9. 現代文化への影響
    1. ゲーム・アニメでの登場
    2. 日本の妖怪への影響
  10. 中国の妖怪 完全一覧
    1. 四神・五神
    2. 瑞獣・霊獣
    3. 狐の妖怪
    4. 死体・幽霊系
    5. 『山海経』の怪獣
    6. 龍生九子
    7. 西遊記・封神演義の妖怪
    8. その他の妖怪・精霊
  11. まとめ

中国の妖怪とは?

妖怪(ヤオグァイ)の基本

中国語で妖怪は「妖怪(yāoguài、ヤオグァイ)」または「妖精(yāojīng、ヤオジン)」と呼ばれます。

日本語の「妖怪」という言葉は、実はこの中国語がルーツ。同じ漢字を使いながらも、日中で少し意味合いが異なっているのが面白いところです。

中国の妖怪の特徴

  • 動物や植物が長い年月を経て霊力を得た存在
  • 変身能力を持つものが多い
  • 善悪の二面性を持つ(神獣にも妖怪にもなりうる)
  • 道教の思想と深く結びついている

中国では、生き物が50年生きると人に化けることができるようになり、100年で美女や巫女にも化けられるようになると言われています。そして1000年を経れば天に通じる「天狐」となり、体毛は金色に輝き、尾は9本になるとされているんです。

中国妖怪の主な出典

中国の妖怪たちは、主に以下の古典文献に登場します。

『山海経(せんがいきょう)』

紀元前4世紀~3世紀頃に成立した中国最古の地理書。400種以上の怪獣や神々が記録されており、現代のファンタジー作品にも多大な影響を与えています。

『封神演義(ほうしんえんぎ)』

明代に成立した神怪小説。殷周革命を舞台に、仙人や妖怪たちが繰り広げる壮大な物語。九尾の狐が妲己に化けて暗躍する話が特に有名です。

『西遊記(さいゆうき)』

孫悟空の冒険を描いた四大奇書の一つ。数多くの妖怪が登場し、白骨夫人などは特に印象的な存在として知られています。

『聊斎志異(りょうさいしい)』

清代の蒲松齢が書いた怪奇小説集。狐の精や幽霊など、怪異にまつわる短編が約500編も収録されています。

四神(四霊獣)──東西南北を守護する最強の神獣

中国神話で最も有名な霊獣といえば、天の四方を守護する「四神」でしょう。

方角、季節、色、五行(自然界を構成する5つの要素)と結びついた、神聖な存在です。

青龍(せいりゅう)──東方の守護神

項目内容
方角
季節
青(緑)
五行

特徴

青龍は東の方角を守護する龍神です。

青(緑)色の巨大な龍として描かれ、角を持ち、四足で雲を纏った姿をしています。蛇のような体に鹿の角、鷹の爪、魚の鱗を持つとされ、雷雲や嵐を呼ぶ力があると伝えられてきました。

春の訪れと再生を象徴し、東の空から昇る太陽のように希望をもたらす存在として信仰されています。

朱雀(すざく)──南方の守護神

項目内容
方角
季節
朱(赤)
五行

特徴

朱雀は南の方角を守護する霊鳥です。

朱(赤)色の美しい羽を持ち、鳳凰とよく混同されますが、厳密には別の存在とされています。五色の長い尾羽を持ち、炎のように燃える姿で描かれることが多いのが特徴。

夏の太陽と生命力の象徴であり、災いを払い、幸運をもたらす鳥として崇められてきました。

白虎(びゃっこ)──西方の守護神

項目内容
方角西
季節
五行

特徴

白虎は西の方角を守護する霊獣です。

純白の毛並みを持つ巨大な虎として描かれます。黒い縞模様と鋭い牙を持ち、威厳に満ちた姿をしているのが特徴。

秋と収穫の季節を司り、武勇の象徴としても知られています。また、魔除けの力があるとされ、墓や建物の西側に白虎の像を置く風習がありました。

玄武(げんぶ)──北方の守護神

項目内容
方角
季節
五行

特徴

玄武は北の方角を守護する霊獣です。

大きな黒い亀の甲羅に蛇が巻き付いた独特の姿をしています。亀と蛇という2つの動物が一体化した存在で、他の四神とは一線を画す外見が印象的。

冬と長寿の象徴とされ、水を司る力を持っています。不老不死の力があるとも伝えられ、道教では特に重要視されてきました。

黄龍(こうりゅう)──中央の守護神

四神に加えて「黄龍」を含めて「五神」とする考え方もあります。

特徴

黄龍は中央を守護する最高位の龍神です。

黄金色に輝く龍として描かれ、帝王の象徴とされています。中国では黄色が最も高貴な色とされ、皇帝だけが黄色の衣服を着ることを許されていました。

五行では「土」に対応し、すべての方角を統合する中心的な存在として崇められています。

瑞獣(ずいじゅう)──幸運をもたらす神聖な獣たち

瑞獣とは、良いことの前触れとして現れる神聖な動物のこと。徳のある王が現れたときや、平和な時代に姿を見せると言われています。

龍(りゅう)──中国を代表する神獣

基本情報

中国文化における最も重要な神獣であり、皇帝のシンボルとして長い歴史を持っています。

外見と特徴

  • 蛇のような長い体
  • 鹿の角、鷹の爪、魚の鱗
  • 口ひげを蓄え、顎の下に宝珠を持つ
  • 雲を纏い、空を飛ぶ

能力

龍は水や雨を支配し、その鳴き声で雷雲や嵐を呼ぶことができます。竜巻となって天空に昇り飛翔する力も持っているとされています。

文化的意味

『史記』における劉邦出生伝説をはじめ、中国では皇帝のシンボルとして扱われてきました。「龍顔」は皇帝の顔を、「龍袍」は皇帝の衣服を指す言葉として使われています。

興味深いことに、龍には善悪があり、「法行龍」(善良な龍)と「非法行龍」(悪い龍)が存在するとも伝えられているんです。

鳳凰(ほうおう)──鳥の王

基本情報

鳳凰は鳥類の長として君臨する霊鳥。龍と並んで中国を代表する瑞獣です。

外見と特徴

中国最古の類語辞典によれば、以下のような姿をしているとされます。

  • 頭は鶏
  • 頷(あご)は燕
  • 首は蛇
  • 背中は亀
  • 尾は魚
  • 五色(黒・白・赤・青・黄)の羽
  • 高さは約180cm

文化的意味

鳳凰は「鳳」が雄、「凰」が雌を表し、龍と対になって描かれることが多い存在。龍が皇帝を象徴するのに対し、鳳凰は皇后を象徴しています。

徳の高い王者の前に現れ、世を平安な治世に導くと信じられてきました。また、60年から120年に一度だけ実を結ぶ竹の実のみを食べ、梧桐の木にしか止まらないとも伝えられています。

麒麟(きりん)──仁徳の象徴

基本情報

麒麟は「麒」が雄、「麟」が雌を表す、獣類の長とされる神獣。泰平の世に現れると言われています。

外見と特徴

  • 鹿に似た体で背丈は約5m
  • 顔は龍に似ている
  • 牛の尾と馬の蹄を持つ
  • 体は鱗で覆われている
  • 五色に彩られた背毛、黄色い毛

性格と能力

性格は穏やかで優しく、殺生を嫌います。寿命は1000年と言われ、炎を吐いて不道徳者を罰する力も持っています。

日本への影響

日本では、キリンビールのロゴとして親しまれている存在。明治時代に動物の「ジラフ(キリン)」の訳語として「麒麟」が採用されたため、同じ名前で呼ばれるようになりました。

白澤(はくたく)──万物を知る神獣

基本情報

白澤は人語を話し、万物の知識を持つ霊獣。災いを払う力があるとされています。

外見と特徴

白い毛を持つ獣の姿で、人面や複数の目を持つとも伝えられます。

有名なエピソード

中国の伝説的な皇帝・黄帝が東方を巡狩した際、海辺で白澤に出会いました。白澤は黄帝にこの世のすべての妖怪11,520種について詳しく教え、黄帝はそれを『白澤図』としてまとめさせたと伝えられています。

この『白澤図』を身につけていれば、妖怪の災いを避けられると信じられ、日本でも魔除けとして白澤の絵が用いられてきました。

九尾の狐──中国を代表する妖怪

九尾の狐は、中国の妖怪の中でも最も有名な存在の一つ。9本の尾を持つ狐の霊獣または妖怪です。

九尾の狐の二面性

九尾の狐は、瑞獣(良いことの前触れ)としての側面と、悪しき妖怪としての側面、両方を持っています。

瑞獣としての九尾の狐

  • 中国の各王朝の史書では、泰平の世や明君のいる時代を示す瑞獣
  • 漢の時代には王室の守り神とされた
  • 『周書』などでは天界より遣わされた神獣とも

妖怪としての九尾の狐

  • 美女に化けて人々を惑わす悪しき存在
  • 国を傾ける妖婦の正体
  • 人を食らう恐ろしい怪物

最古の記録──『山海経』

九尾の狐についての最も古い記録は、紀元前に編まれた地理書『山海経』にあります。

「青丘山には獣がいる。外形は狐のようで、尾は九本。鳴き声は嬰児のようで、よく人を食う。この獣を食べた者は邪気を退ける」

興味深いことに、この時点では「人を食べる」という記述がありながらも、邪気を払う力を持つ瑞獣として扱われています。

殷を滅ぼした妲己(だっき)

九尾の狐が妖怪として最も有名になったのは、『封神演義』などの物語での描写です。

妲己のエピソード

紀元前11世紀頃、殷王朝の末期のこと。九尾の狐は絶世の美女「妲己」に化けて、紂王の寵愛を受けました。

紂王は妲己の気を引くために欲望の限りを尽くし、残虐な見せしめを行うようになります。「酒池肉林」という言葉は、この時代に由来しているんです。

最終的に武王の反乱で殷王朝は滅亡。妲己は処刑されましたが、その正体が九尾の狐であることが明かされました。

日本への伝来──玉藻前(たまものまえ)

日本でも九尾の狐は有名な妖怪として知られています。

玉藻前の物語

平安時代末期、鳥羽上皇に仕えた美女「玉藻前」は、その美貌と博識から上皇の寵愛を受けました。

しかし、玉藻前を召してから上皇は次第に顔色が悪くなっていきます。陰陽師の安倍泰成がその正体を見破ると、玉藻前は九尾の狐の姿に戻って逃げ出しました。

那須野(現在の栃木県)で追い詰められた九尾の狐は、最後に巨大な石に化身。毒を放ち続けるその石は「殺生石」と呼ばれ、現在も観光名所となっています。

狐の修行と九尾

中国の伝承では、狐は以下のように修行を積んで力を得ていくとされています。

  • 50年: 女性に化けることができるようになる
  • 100年: 美女や巫女、男性にも化けられるようになる
  • 1000年: 天に通じる「天狐」となり、体毛は金色に輝き、尾は9本になる

清の光緒年間に書かれた『狐狸縁全伝』では、千年修行すると尾が一本増え、一万年修行をすると黒かった毛が白くなるとも記されています。

キョンシー(殭屍)──中国の死体妖怪

1980年代に日本でも大ブームを巻き起こした「キョンシー」。額にお札を貼られ、両腕を前に伸ばしてピョンピョン跳ねる姿が印象的ですよね。

キョンシーとは何か

名前の由来

キョンシーは中国語で「僵屍(ジャンシー)」と書きます。

  • 「僵」= 硬直した
  • 「屍」= 死体

つまり、硬直した死体が動き回る妖怪という意味。日本での「キョンシー」という呼び方は、広東語読みから来ています。

基本的な特徴

中国では、人が死んで埋葬する前に室内に安置しておくと、夜になって突然動き出すことがあると言われてきました。

  • 長い年月を経ても腐乱しない
  • 死後硬直したまま動き回る
  • 人間の生き血を吸う
  • 昼は棺桶で眠り、夜に活動する

キョンシーの起源

キョンシーの起源については、主に2つの説があります。

趕屍(ガンシー)説

湖南省では、出稼ぎ先で死んだ労働者の遺体を故郷に運ぶため、道士が呪術を用いて死体を動かして移動させたという伝承があります。

死後間もない死体は死後硬直で体が硬いため、歩くことができず飛び跳ねるしかありません。遺体を縄で縛り、額に黄色いお札を貼り付けて、夜に鈴を鳴らしながら一列に移動させたと言われています。

魃(ばつ)説

もう一つは、神話に登場する「魃」という女神に由来するという説。

黄帝の娘である魃は、日照りの神を擬人化した存在でした。戦いで力を使いすぎて天界に帰れなくなり、周囲を干魃にしてしまうため幽閉されました。

やがて魃の姿は美しい女性から醜く変化し、キョンシーの始祖になったとされています。

キョンシーの等級

キョンシーには等級があり、長く存在するほど強くなっていきます。

等級特徴
低級自我がなく、鈴の音に従って飛び跳ねるだけ
中級人間を襲って血を吸うようになる
高級空を飛び、神通力を振るう「飛僵」となる
最高位妖術を使い、霊獣「吼」にまで変化することも

キョンシーの弱点と退治法

キョンシーを退治するには、様々な方法があります。

弱点

  • 日光にあたると火傷のような症状が出て溶けたり燃えたりする
  • 鏡に自分の姿を映されることを嫌う
  • 人間の吐く息を嗅覚で察知するため、息を止めれば見つからない
  • 鶏が鳴くと活動が弱まる

退治法

  • : 額にお札を貼ると動きを封じることができる
  • 桃剣: 桃の木で作った剣でダメージを与える
  • 銭剣: 清めた銭で作った剣で攻撃する
  • 火葬: 噛まれて死んだ者の死体を火葬すればキョンシー化を防げる
  • 道術: 道士の術で退治する

ちなみに、中国の建物の門の下にある15cmほどの段差は、ピョンピョン飛び跳ねるキョンシーの侵入を防ぐためのものだとも言われています。

『山海経』に登場する奇獣たち

『山海経』は紀元前4世紀~3世紀頃に成立した中国最古の地理書。400種以上の怪獣や神々が記録されており、現代のゲームやアニメにも影響を与え続けています。

饕餮(とうてつ)──貪欲の象徴

外見と特徴

饕餮は非常に貪欲で、目に映るものすべてを食らい、ついには自らの身体さえも食べてしまうほど。そのため、身体のない大きな頭と大きな口だけの姿で描かれることが一般的です。

文化的意味

青銅器の装飾モチーフとして頻繁に使われ、貪欲への戒めを象徴しています。現代中国語でも「饕餮」は「大食漢」を意味する言葉として使われています。

夔(き)──一本足の雷獣

外見と特徴

夔は一本足の雄牛のような獣。もともとは龍神の一種として描かれていましたが、後に灰色の身体をした牛のような姿を持つ霊獣として描かれるようになりました。

能力

嵐が近づくと身体が陽の光のように輝き、その吠え声は雷のようだったと言います。

有名なエピソード

中国の皇帝がその毛皮を使って太鼓を作り鳴らしたところ、太鼓から発せられた音が500里(約2000km)離れたところにまで届いたという言い伝えがあります。

獬豸(かいち)──正義の神獣

外見と特徴

麒麟に似た姿をしていますが、一本の角を持つ羊のような獣としても描かれます。水辺に住むのを好むとされています。

能力

高度な知能を持ち、善悪を判断できます。不道徳者を見つけると、咬みついたり角で突き倒したりして一掃するとされています。

現代への影響

日本の神社の入り口に祀られている狛犬の起源とも言われています。

窮奇(きゅうき)──悪を好む妖獣

外見と特徴

牛のような姿で、針のような毛を持ち、翼を生やしているとも言われます。また、虎に翼を持った姿で描かれることもあります。

性質

非常に邪悪な存在で、正直者を嫌い、悪人の味方をします。人が争っているのを見ると、正しい方を攻撃し、間違っている方を応援するという厄介な性質を持っています。

渾沌(こんとん)──顔のない怪物

外見と特徴

顔がなく、目も口も耳も鼻もない塊のような存在。黄色い袋のような姿をしているとも言われます。

有名なエピソード

『荘子』には、渾沌に顔を与えようとした話があります。南海の帝・儵(しゅく)と北海の帝・忽(こつ)が、中央の帝・渾沌の親切に報いようと、毎日一つずつ穴を開けていきました。7日目に七つの穴(目・耳・鼻・口)が完成したとき、渾沌は死んでしまったのです。

この話は、自然をありのままにしておくことの大切さを説いた寓話として知られています。

『西遊記』『封神演義』の妖怪たち

中国の古典小説には、魅力的な妖怪が数多く登場します。

白骨夫人(はっこつふじん)──西遊記の妖怪

基本情報

『西遊記』に登場する妖怪で、白骨精とも呼ばれます。強力なキョンシーの一種とも言われています。

エピソード

白骨嶺という山に住む妖怪で、三蔵法師を食べて不老不死になろうと企みました。少女、老婆、老人と3度も姿を変えて三蔵一行に近づきますが、孫悟空の金箍棒に打たれて骸骨の姿を現します。

牛魔王(ぎゅうまおう)──孫悟空のライバル

基本情報

『西遊記』に登場する大妖怪で、かつて孫悟空と義兄弟の契りを結んだ存在。

外見と特徴

普段は人間の姿をしていますが、本来の姿は巨大な白い牛。炎を操る芭蕉扇を持つ羅刹女(鉄扇公主)の夫でもあります。

哪吒(なた)──封神演義の英雄

基本情報

『封神演義』に登場する少年神。殷周革命で活躍した英雄です。

特徴

風火輪という車輪に乗り、火尖槍や乾坤圏などの宝貝を武器とします。龍王の息子・敖丙を殺したことで龍王の怒りを買い、自ら命を絶ちますが、蓮の花から復活するという壮絶なエピソードを持っています。

龍生九子──龍の9人の息子たち

龍には9人の息子がいるとされ、それぞれが異なる性質と姿を持っています。中国の建築装飾などでよく見られる存在です。

名前読み特徴見られる場所
贔屓ひいき亀に似た姿、重いものを背負うのが好き石碑の台座
螭吻ちふん龍に似た姿、遠くを見るのが好き屋根の棟の両端
蒲牢ほろう大声を出すのが好き鐘のつまみ
狴犴へいかん虎に似た姿、訴訟を好む監獄の門
饕餮とうてつ食べるのが好き食器の蓋
蚣蝮こうふく水を好む橋の欄干
睚眦がいさい殺すのを好む刀剣の鍔
狻猊さんげい獅子に似た姿、煙を好む香炉の蓋
椒図しょうず貝に似た姿、閉じることを好む門の取っ手

「贔屓にする」という日本語の表現は、この龍生九子の一柱から来ているんです。

現代文化への影響

中国の妖怪たちは、現代のエンターテイメント作品にも大きな影響を与え続けています。

ゲーム・アニメでの登場

『NARUTO -ナルト-』

主人公ナルトは九尾の狐「九喇嘛」を体内に宿し、その力を使って戦います。

『Black Myth: Wukong』

2024年に発売され大ヒットした中国発のゲーム。『西遊記』を題材に、様々な妖怪が登場します。

『ポケモン』シリーズ

キュウコンは九尾の狐をモデルにしたポケモンとして人気を集めています。

『妖怪ウォッチ』

「キュウビ」として九尾の狐が登場し、子どもたちにも親しまれています。

『ヴァンパイア』シリーズ

キョンシーの「レイレイ」が人気キャラクターとして活躍しています。

『東方Project』

キョンシーの「宮古芳香」が登場し、独自の解釈で描かれています。

日本の妖怪への影響

中国の妖怪は、日本の妖怪文化にも大きな影響を与えました。

  • 九尾の狐 → 玉藻前、稲荷信仰
  • → 龍神信仰、竜宮伝説
  • 麒麟 → キリンビールのロゴ
  • 鳳凰 → 手塚治虫『火の鳥』のモチーフ

日本語の「妖怪」という言葉自体も、中国語の「妖怪(ヤオグァイ)」から来ています。

中国の妖怪 完全一覧

ここでは、中国の妖怪・霊獣・神獣を網羅的にリストアップしました。

神や霊獣なども妖怪として含めて、網羅的にまとめました。

それ妖怪じゃなくね?と思う方もいるかもしれませんが、名前だけでも知ってもらいたいので加えました。

四神・五神

名前読み特徴
青龍せいりゅう東方守護神、青い龍
朱雀すざく南方守護神、赤い霊鳥
白虎びゃっこ西方守護神、白い虎
玄武げんぶ北方守護神、亀と蛇の合体
黄龍こうりゅう中央守護神、黄金の龍

瑞獣・霊獣

名前読み特徴
りゅう皇帝のシンボル、水と雨を司る
鳳凰ほうおう鳥の王、五色の羽を持つ
麒麟きりん仁徳の象徴、泰平の世に現れる
白澤はくたく万物を知る神獣、魔除けの力
獬豸かいち正義の神獣、善悪を見分ける
応龍おうりゅう翼を持つ龍、黄帝に仕えた
燭陰しょくいん目を開けば昼、閉じれば夜になる
騏驎きりん一日に千里を走る馬
霊亀れいき長寿の象徴、背中に蓬莱山を載せる

狐の妖怪

名前読み特徴
九尾の狐きゅうびのきつね9本の尾を持つ霊獣または妖怪
天狐てんこ千年を経た最高位の狐
狐狸精こりせい人を惑わす狐の精
妲己だっき九尾の狐が化けた美女、殷を滅ぼした

死体・幽霊系

名前読み特徴
殭屍キョンシー硬直した死体の妖怪
飛僵ひきょう空を飛べるようになったキョンシー
ばつ干魃をもたらす女神、キョンシーの始祖とも
厲鬼れいき恨みを持って死んだ者の霊
餓鬼がき常に飢えに苦しむ亡者

『山海経』の怪獣

名前読み特徴
饕餮とうてつ貪欲の象徴、大きな口だけの姿
窮奇きゅうき悪人の味方をする妖獣
渾沌こんとん顔のない袋のような存在
檮杌とうこつ人面虎身の獣、悪人の象徴
一本足の雷獣
相柳そうりゅう九つの頭を持つ蛇、共工の臣下
巴蛇はだ象も飲み込む大蛇
比翼鳥ひよくちょう二羽で一対、夫婦の象徴
精衛せいえい海を埋め立てようとする小鳥
刑天けいてん首を失っても戦い続ける巨人

龍生九子

名前読み特徴
贔屓ひいき亀に似た姿、重いものを背負う
螭吻ちふん遠くを見るのが好き
蒲牢ほろう大声を出すのが好き
狴犴へいかん訴訟を好む
饕餮とうてつ食べるのが好き
蚣蝮こうふく水を好む
睚眦がいさい殺すのを好む
狻猊さんげい煙を好む
椒図しょうず閉じることを好む

西遊記・封神演義の妖怪

名前読み特徴
孫悟空そんごくう花果山の石猿、斉天大聖
白骨夫人はっこつふじん三度姿を変えた骸骨の妖怪
牛魔王ぎゅうまおう孫悟空の義兄弟、巨大な白い牛
紅孩児こうがいじ牛魔王の息子、三昧真火を操る
鉄扇公主てっせんこうしゅ羅刹女、芭蕉扇を持つ
蜘蛛精ちしゅせい盤絲洞に住む7人の蜘蛛の精

その他の妖怪・精霊

名前読み特徴
人面鳥じんめんちょう人の顔を持つ鳥
蛟龍こうりゅう角のない龍、水害をもたらす
蟠龍ばんりゅうとぐろを巻いた龍
角のない小さな龍
魑魅魍魎ちみもうりょう山川の精霊、妖怪の総称
旱魃かんばつ日照りをもたらす妖怪
女媧じょか人類を創造した女神
伏羲ふっき八卦を作った古代の帝王
西王母せいおうぼ崑崙山に住む女仙、不老不死の桃を持つ
嫦娥じょうが月に住む女神

まとめ

中国の妖怪たちは、単なる古い物語の登場人物ではありません。

数千年の歴史の中で語り継がれ、人々の世界観や価値観を形作ってきた存在です。

中国妖怪の特徴

  • 善悪の二面性: 瑞獣にも妖怪にもなりうる流動的な存在
  • 変身能力: 長い年月を経て霊力を得る「修行」の概念
  • 道教との結びつき: 陰陽五行思想に基づく体系的な分類
  • 文化的象徴: 皇帝の権威から庶民の信仰まで幅広く浸透

九尾の狐が美女に化けて国を傾ける物語、キョンシーが夜な夜な人を襲う恐怖、龍が雨をもたらし大地を潤す神話。これらは現代のゲームやアニメにも受け継がれ、世界中の人々を魅了し続けています。

興味を持った妖怪がいたら、ぜひ『山海経』や『封神演義』などの原典にも触れてみてください。そこには、想像を超える壮大な神話世界が広がっていますよ。

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