Thunderbirdでメールに返信する際、こんな問題に遭遇していませんか?
- 返信しても元のメッセージが引用されない
- 引用が途中で消えてしまう
- 選択した部分だけが引用されてしまう
- 引用符が「>」ではなく変な縦線になる
- 返信の位置が引用の下になってしまう
これらの問題は、Thunderbirdの設定や仕様によるものです。しかし、適切に設定すれば簡単に解決できます。
この記事では、返信時の引用に関するあらゆる問題とその解決方法を、詳しく解説していきます。
問題のパターンと原因

まず、どのような問題が発生するのか、パターン別に整理しましょう。
パターン1:返信時に元のメッセージが全く引用されない
症状:
- 返信ボタンを押しても、空白の作成画面が開く
- 元のメッセージが一切表示されない
原因:
- 「元のメッセージを自動的に引用する」設定がオフになっている
パターン2:引用が途中で消える
症状:
- 返信すると、元のメッセージの途中から先が表示されない
- 特に「–」(ハイフン2つ+スペース)がある箇所から消える
原因:
- Thunderbirdが署名を自動削除する仕様
- RFC2646の規格に従っている
パターン3:選択したテキストだけが引用される
症状:
- メール本文の一部を選択してから返信すると、その部分だけが引用される
- 全文を引用したいのにできない
原因:
- 「選択したテキストのみ引用」機能が有効になっている
パターン4:返信の位置が引用の下になる
症状:
- カーソルが引用文の下に配置される
- 引用の上に返信を書きたいのに不便
原因:
- 返信位置の設定が「引用部の下」になっている
- 昔のメール文化の名残
パターン5:引用符が「>」ではなく縦線になる
症状:
- 引用部分が「>」ではなく、カラフルな縦線で表示される
- インライン返信(相手の文章の間に返信を挿入)がしにくい
原因:
- HTML形式でメッセージを作成する設定になっている
【解決法1】返信時に引用を有効にする設定
最も基本的な設定です。この設定がオフになっていると、返信時に元のメッセージが引用されません。
設定手順(Windows・Mac共通)
手順:
- Thunderbirdを起動します
- 画面右上の「≡」(ハンバーガーメニュー)をクリック
- 「アカウント設定」を選択
- またはメニューバーから「ツール」→「アカウント設定」
- 左側のメニューから、設定したいアカウントを選択
- 「編集とアドレス入力」をクリック
- 「返信時には元のメッセージを自動的に引用する」にチェックを入れます
- 「OK」をクリック
- これで返信時に元のメッセージが引用されるようになります
確認方法
テスト手順:
- 受信トレイからメールを選択
- 「返信」ボタンをクリック
- 作成画面に元のメッセージが引用符付きで表示されていることを確認
正常な例:
> こんにちは。
> お世話になっております。
> 先日の件について、ご連絡いたします。
【解決法2】引用が途中で消える問題を解決する
これはThunderbirdの「署名を自動削除する」仕様が原因です。
問題の詳細
Thunderbirdの動作:
- 返信時に相手の署名を自動的に削除する
- 「– 」(ハイフン2つ+半角スペース)を署名の区切り文字として認識
- この文字列以降がすべて削除される
具体例:
受信したメール:
お世話になっております。
明日の会議について確認します。
--
山田太郎
営業部
返信すると:
> お世話になっております。
> 明日の会議について確認します。
(ここから下の署名部分が消える)
解決方法:署名削除機能を無効化する
手順:
- 画面右上の「≡」→「設定」を開きます
- 一番下までスクロール
- 「設定エディタ…」ボタンをクリック
- 「細心の注意を払って使用する」をクリック
- 検索欄に「mail.strip_sig_on_reply」と入力
- この項目を探します(デフォルトは true)
- 項目を右クリック→「切り替え」を選択
- 値が「false」になったことを確認
- Thunderbirdを再起動
- これで署名以降も含めて全文が引用されるようになります
副作用について
注意点:
- この設定を変更すると、相手の署名も引用されるようになります
- 何度もやり取りすると、署名が何重にも引用される可能性があります
対処法:
- 必要に応じて手動で署名部分を削除
- または、署名を「–」以外の区切り文字に変更
【解決法3】全文引用するための設定
メール本文の一部を選択してから返信すると、その部分だけが引用される機能があります。これを無効化する方法です。
選択部分のみ引用する機能とは
動作:
- メール本文の一部をドラッグして選択
- その状態で「返信」をクリック
- 選択した部分だけが引用される
便利な場面:
- 長いメールの特定の部分にだけ返信したい時
- 質問が複数ある場合、1つずつ引用して返信したい時
不便な場面:
- 常に全文引用したいのに、誤って選択してしまう
- 全文引用したつもりが一部しか引用されていない
無効化する方法
手順:
- 画面右上の「≡」→「設定」を開きます
- 一番下までスクロール
- 「設定エディタ…」ボタンをクリック
- 「細心の注意を払って使用する」をクリック
- 検索欄に「mailnews.reply_quoting_selection」と入力
- この項目を探します(デフォルトは true)
- 項目を右クリック→「切り替え」を選択
- 値が「false」になったことを確認
- これで、テキストを選択していても全文が引用されるようになります
部分引用したい場合の代替方法
無効化した後でも、部分引用は可能です。
方法:
- 引用したい部分を選択してコピー(Ctrl+C)
- 返信ボタンをクリック
- 作成画面で、引用したい位置に貼り付け
- 貼り付けた部分の行頭に手動で「>」を追加
【解決法4】返信を引用の上に配置する
Thunderbirdのデフォルトでは、返信のカーソルが引用の下に配置されます。これを引用の上に変更する方法です。
設定手順
手順:
- 画面右上の「≡」→「アカウント設定」を開きます
- 左側のメニューから、設定したいアカウントを選択
- 「編集とアドレス入力」をクリック
- 「キャレット(カーソル)の初期状態」の項目を探します
- ドロップダウンメニューから「引用部の上」を選択
- 「OK」をクリック
- これで返信時のカーソルが引用の上に表示されるようになります
署名の位置も調整する
返信を引用の上に書く場合、署名の位置も調整したほうが自然です。
推奨設定:
- 「署名を配置する位置」を「返信の下(引用の上)」に設定
結果:
(返信内容)
---
山田太郎
営業部
> (引用部分)
> お世話になっております。
about:configで確認する方法
設定画面で変更してもうまくいかない場合、直接確認できます。
手順:
- 「設定エディタ」(about:config)を開く
- 検索欄に「reply_on_top」と入力
- 「mail.identity.id1.reply_on_top」などの項目を探す
- id1, id2, id3…は各アカウントの番号
- 値が「1」になっていることを確認
- 1 = 引用の上
- 0 = 引用の下
- 値が0の場合、右クリック→「変更」で1に変更
- すべてのアカウント(id1, id2, id3…)を確認
- Thunderbirdを再起動
【解決法5】引用符を「>」に変更する

HTML形式でメールを作成している場合、引用符がカラフルな縦線で表示されます。これをシンプルな「>」に変更する方法です。
HTML形式とテキスト形式の違い
HTML形式:
- 引用符:カラフルな縦線
- 見た目:リッチでカラフル
- インライン返信:やりにくい
テキスト形式:
- 引用符:「>」
- 見た目:シンプル
- インライン返信:やりやすい
テキスト形式に変更する方法
手順:
- 画面右上の「≡」→「アカウント設定」を開きます
- 左側のメニューから、設定したいアカウントを選択
- 「編集とアドレス入力」をクリック
- 「HTML形式でメッセージを編集する」のチェックを外します
- 「OK」をクリック
- これで引用符が「>」で表示されるようになります
テキスト形式のメリット・デメリット
メリット:
- 引用符が「>」で分かりやすい
- インライン返信(相手の文章の間に返信)が簡単
- メールサイズが小さい
- どの環境でも同じように表示される
デメリット:
- 文字色、太字、下線などの装飾ができない
- 画像を本文に埋め込めない(添付は可能)
特定のメールだけHTML形式で送る方法
基本はテキスト形式にして、必要に応じてHTML形式にできます。
手順:
- メール作成画面を開く
- メニューバーから「オプション」→「配信形式」を選択
- 「リッチテキスト(HTML)のみ」を選択
- そのメールだけHTML形式で作成されます
【解決法6】複数の問題を一度に解決する推奨設定
効率的なメール管理のための、推奨設定をまとめました。
基本設定(全員におすすめ)
アカウント設定:編集とアドレス入力
- ✅ 返信時には元のメッセージを自動的に引用する
- ✅ キャレットの初期状態:引用部の上
- ✅ 署名を配置する位置:返信の下(引用の上)
- テキスト形式派:□ HTML形式でメッセージを編集する(チェック外す)
HTML形式派:✅ HTML形式でメッセージを編集する
高度な設定(about:config)
署名削除を無効化(ビジネス向け):
- mail.strip_sig_on_reply = false
選択部分のみ引用を無効化:
- mailnews.reply_quoting_selection = false
返信位置を確実に上にする:
- mail.identity.id1.reply_on_top = 1
- mail.identity.id2.reply_on_top = 1
- (すべてのidについて)
設定の組み合わせ例
パターンA:ビジネスメール向け(全文引用)
✅ 元のメッセージを自動的に引用する
✅ 引用部の上に返信
✅ 署名は返信の下
☑ mail.strip_sig_on_reply = false(署名も引用)
□ HTML形式で編集(テキスト形式)
パターンB:プライベート向け(部分引用OK)
✅ 元のメッセージを自動的に引用する
✅ 引用部の上に返信
✅ HTML形式で編集(見た目重視)
☑ mail.strip_sig_on_reply = true(署名削除)
☑ mailnews.reply_quoting_selection = true(選択引用可能)
トラブルシューティング
設定を変更してもうまくいかない場合の対処法です。
Q1. 設定を変更しても引用されません
確認ポイント:
- 正しいアカウントを設定していますか?
- 複数アカウントがある場合、各アカウントごとに設定が必要
- Thunderbirdを再起動しましたか?
- 設定変更後は再起動が必要な場合があります
- アドオンが干渉していませんか?
- トラブルシューティングモードで起動してテスト
- Shiftキーを押しながら起動
- about:configの設定を確認
- mail.identity.idN.reply_on_top が正しく設定されているか
Q2. 引用は表示されるが、途中で消えます
原因:
- 相手のメールに「– 」(ハイフン2つ+スペース)が含まれている
対処法:
- mail.strip_sig_on_reply を false に設定(前述)
代替方法:
- 返信前に、メール全体を選択してから返信
- すると全文が引用されます(mailnews.reply_quoting_selection = trueの場合)
Q3. 特定のメールだけ引用されません
考えられる原因:
- HTML形式の複雑なメール
- 一部のHTML形式メールは引用が正しく動作しない場合があります
- 文字エンコーディングの問題
- 特殊な文字コードのメール
対処法:
- 「メッセージのソースを表示」(Ctrl+U)で内容を確認
- 必要に応じて手動でコピー&ペースト
Q4. アカウントごとに設定が異なります
原因:
- 各アカウントで個別に設定が必要です
対処法:
- すべてのアカウントで同じ設定をする
- または、about:configで一括確認
- reply_on_top で検索
- すべてのid1, id2, id3…を同じ値にする
Q5. 返信は引用の上だが、転送は引用の下になります
説明:
- これは正常な動作です
- 「転送」の場合、通常は元のメッセージの下に追記します
変更したい場合:
- about:configで「mail.forward_message_mode」を変更
- 0 = 添付として転送
- 1 = 引用して転送(返信と同じ)
- 2 = インラインで転送(デフォルト)
Q6. HTMLメールの引用が崩れます
原因:
- 複雑なHTML構造のメール
- テーブルやCSSが多用されている
対処法:
- プレーンテキストで返信
- 作成画面で「オプション」→「配信形式」→「プレーンテキストのみ」
- 手動で整形
- 必要な部分だけをコピー&ペースト
- 「元のメッセージを転送」として送る
- 引用ではなく転送形式で送信
便利な機能と小技
引用機能をより便利に使うための小技を紹介します。
小技1:部分引用(インライン返信)
相手の質問に1つずつ答える場合に便利です。
方法:
- 全文引用で返信を開始
- 相手の質問の下に、自分の回答を挿入
例:
> 明日の会議は何時からですか?
10時からです。
> 場所はどこですか?
会議室Aです。
> 資料は必要ですか?
不要です。各自PCをお持ちください。
小技2:長い引用を折りたたむ
長いメールの場合、不要な部分を削除または省略します。
例:
> お世話になっております。
> 先日の件について、以下のとおり回答いたします。
>
>【中略】
>
> 以上、よろしくお願いいたします。
承知いたしました。
小技3:複数のメールをまとめて引用
方法:
- 1通目のメールに返信(全文引用)
- 2通目のメールを開く
- 本文をコピー(Ctrl+C)
- 返信画面に戻る
- 貼り付け(Ctrl+V)
- 貼り付けた部分の各行頭に「>」を追加(手動または一括置換)
小技4:引用符の段階を増やす
やり取りが続くと、引用符が増えていきます。
例:
>> 最初のメール
> 1回目の返信
2回目の返信
これは自動的に行われますが、理解しておくと便利です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 引用符を「|」や「:」に変更できますか?
A. デフォルトでは「>」のみです。
アドオンを使用すれば可能ですが、標準機能では変更できません。
理由:
- メールの慣習として「>」が標準
- 多くのメールクライアントが「>」を認識
Q2. 引用の色を変更できますか?
A. テキスト形式では変更できません。HTML形式では可能です。
HTML形式の場合:
- 作成画面で引用部分を選択
- フォントの色を変更
注意:
- 相手の環境で正しく表示されるとは限りません
Q3. 署名を引用しないのは失礼ですか?
A. 一般的には問題ありません。
理由:
- 署名は連絡先情報であり、やり取りの内容ではない
- 何度もやり取りすると署名が何重にも表示されて見にくくなる
ただし:
- ビジネスメールでは全文引用が好まれる傾向
- 会社のルールに従ってください
Q4. 引用符「>」の後のスペースは必要ですか?
A. 推奨されますが、必須ではありません。
推奨される書き方:
> 引用文(スペースあり)
スペースなしでも動作します:
>引用文(スペースなし)
理由:
- 読みやすさのため
- RFC2646で推奨されている
Q5. HTMLメールの引用符は「>」にできませんか?
A. HTML形式では通常、縦線で表示されます。
対処法:
- テキスト形式に変更する(前述)
- または、HTML形式のまま使う
Q6. 返信と転送で引用の仕方が違うのはなぜですか?
A. 用途が異なるためです。
返信:
- 相手とのやり取りを継続
- インライン返信が必要な場合がある
- 引用符「>」を使用
転送:
- 第三者に情報を伝える
- 元のメッセージをそのまま見せる
- 「——– 元のメッセージ ——–」形式
Q7. 相手のメールが引用されずに届きます
A. 相手が引用を無効にしている可能性があります。
確認方法:
- 相手に設定を確認してもらう
- または、相手のメールクライアントの仕様
対処法:
- こちらからのメールで履歴を残す
Q8. 引用が崩れて読みにくいです
A. いくつかの原因が考えられます。
原因1:長い行が強制改行される
- mail.wrap_long_linesの設定を確認
- 72文字で自動改行されるのがデフォルト
原因2:HTML形式の崩れ
- テキスト形式に変更する
原因3:文字エンコーディング
- UTF-8で統一されているか確認
まとめ
Thunderbirdの返信時の引用問題について解説してきました。重要なポイントをおさらいしましょう。
主な問題と解決方法
問題1:引用されない
→ アカウント設定で「元のメッセージを自動的に引用する」をオンに
問題2:引用が途中で消える
→ about:configで mail.strip_sig_on_reply を false に設定
問題3:選択部分だけ引用される
→ about:configで mailnews.reply_quoting_selection を false に設定
問題4:返信が引用の下になる
→ アカウント設定で「引用部の上」に変更
問題5:引用符が縦線になる
→ 「HTML形式でメッセージを編集する」をオフに
推奨設定
ビジネスメール向け:
✅ 元のメッセージを自動的に引用する
✅ 引用部の上に返信
□ HTML形式で編集(テキスト形式)
☑ mail.strip_sig_on_reply = false
☑ mailnews.reply_quoting_selection = false
プライベート向け:
✅ 元のメッセージを自動的に引用する
✅ 引用部の上に返信
✅ HTML形式で編集
☑ mail.strip_sig_on_reply = true
☑ mailnews.reply_quoting_selection = true(好みで)
重要な設定場所
基本設定:
- アカウント設定 → 編集とアドレス入力
高度な設定:
- 設定 → 設定エディタ(about:config)
トラブル時のチェックリスト
- ☑ 正しいアカウントを設定しているか
- ☑ Thunderbirdを再起動したか
- ☑ アドオンが干渉していないか
- ☑ about:configの値が正しいか
- ☑ 全てのアカウントで設定したか
最後に
Thunderbirdの引用機能は、適切に設定すれば非常に便利なツールです。
ポイント:
- 自分の使い方に合わせて設定をカスタマイズ
- ビジネスとプライベートでアカウントごとに設定を変える
- 相手の環境も考慮する
この記事を参考に、快適なメール環境を作り上げてください。引用機能をマスターすれば、メールのやり取りがずっと効率的になります!

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