クトゥルフ神話には、数多くの恐ろしい邪神が登場します。
その中でも「名状しがたきもの」と呼ばれるハスターは、ある邪神と宿命的な対立関係にあることをご存知でしょうか?
実は、ハスターと最も仲が悪いのは、神話の代名詞ともいえるクトゥルフなんです。
この記事では、ハスターとクトゥルフがなぜ対立しているのか、その理由や背景をわかりやすく解説していきます。
概要

クトゥルフ神話において、ハスターとクトゥルフは対立関係にあります。
この二柱の邪神は、同じ父親を持つ異母兄弟でありながら、互いに敵対しているという設定なんですね。
ハスターは「風(大気)」を司る旧支配者(グレート・オールド・ワン)であり、クトゥルフは「水」を司る旧支配者です。まるで自然界の元素が反発し合うように、この二柱は神話の中で対立を続けています。
この設定を生み出したのは、クトゥルフ神話の発展に大きく貢献した作家オーガスト・ダーレスでした。
ハスターとクトゥルフの血縁関係
対立の背景を理解するために、まず二柱の血縁関係を見てみましょう。
ハスターとクトゥルフの家系
- 父親:ヨグ=ソトース(時空を超越する外なる神)
- 関係:異母兄弟(半兄弟)
- ハスターの属性:風(大気)の四大霊
- クトゥルフの属性:水の四大霊
リン・カーターが1976年に発表した『陳列室の恐怖』では、ハスター、クトゥルフ、ヴルトゥームの三神がヨグ=ソトースの異母息子たちであるという設定が示されています。
同じ父を持ちながらも、司る元素が正反対であることが、二柱の対立に関係しているのかもしれません。
なぜハスターとクトゥルフは対立しているのか
二柱が対立している具体的な理由は、神話の中でも明確には語られていません。
ただし、いくつかの手がかりは存在します。
対立の要因として考えられること
- 元素の相反:風と水という異なる元素を司ることによる本質的な対立
- 勢力圏の違い:ハスターは宇宙の彼方(ヒアデス星団)、クトゥルフは地球の海底(ルルイエ)に潜む
- 眷属の衝突:ミ=ゴ(クトゥルフ側に近い存在)とハスターの信奉者たちは敵対している
H.P.ラヴクラフトの『闘に囁くもの』では、ハスターを崇拝する秘密のカルトが、ミ=ゴを追跡し攻撃していることが語られています。
対立を描いた作品

ハスターとクトゥルフの対立が本格的に描かれたのは、ダーレスの作品においてです。
『ハスターの帰還』(1939年)
この作品でハスターとクトゥルフの対立が初めて明確に設定されました。物語の終盤では、ハスターとクトゥルフが直接対峙する場面まで描かれています。
『永劫の探究』(1944-1952年)
ダーレスの連作短編シリーズです。この作品群では、ハスターがクトゥルフに対して強い憎悪を抱いていることが明確に述べられています。
興味深いのは、この憎悪があまりにも深いため、ハスターが人類に手を貸すこともあるという点。敵の敵は味方、ということでしょうか。
ハスターに仕える眷属「バイアクヘー」
ハスターとクトゥルフの対立を語る上で欠かせないのが、ハスターに仕える有翼生物バイアクヘーです。
バイアクヘーは『永劫の探究』シリーズで初めて登場しました。ハスターを讃える呪文を唱えることで召喚でき、星間宇宙を飛行する能力を持っています。
クトゥルフには「深きものども」という眷属がいますが、ハスターにはバイアクヘーがいるんですね。それぞれの邪神が独自の眷属を従えている点も、対立構図を際立たせています。
研究者の見解

実は、ハスターというキャラクターの設定には矛盾も指摘されているんです。
研究者のロバート・M・プライスは、ハスターについて興味深い見解を述べています。
彼によると、ハスターは「風の精でありながら水棲生物の特徴を持つ」という矛盾した存在だと指摘。さらに、人類を援助することもあることから、クトゥルフのライバルというよりも「旧神」(善なる神々)のカテゴリーに入れた方がよかったのではないかとまで言っています。
このように、ハスターの設定は複雑で、研究者の間でも議論が続いているんですね。
まとめ
ハスターと最も仲が悪いのは、異母兄弟であるクトゥルフです。
重要なポイント
- ハスターとクトゥルフはヨグ=ソトースを父に持つ異母兄弟
- ハスターは「風」、クトゥルフは「水」を司り、元素的に対立している
- この設定はオーガスト・ダーレスの作品で確立された
- 『ハスターの帰還』では二柱が直接対峙する場面もある
- ハスターはクトゥルフへの憎悪から人類に協力することもある
- 眷属も異なり、ハスターにはバイアクヘー、クトゥルフには深きものどもが仕える
同じ父から生まれながらも宿敵となった二柱の邪神。宇宙の彼方と海の底から、今も互いを睨み合っているのかもしれませんね。

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