Power Automate Desktop (PAD)でフローを実行したら、突然こんなエラーが表示された…
「Chromeを制御することができませんでした(ブラウザーとの通信が失敗しました。拡張機能の再読み込みを行ってください)。」
業務自動化が止まってしまうと困りますよね。このエラーは、PADとChromeの通信に問題が発生したときに表示されます。
この記事では、このエラーの原因と、確実に解決するための手順を、実際の対処実績をもとに詳しく解説していきます。
このエラーが出る状況

まず、どんな時にこのエラーが発生するのか確認しておきましょう。
典型的な発生パターン
このエラーは、主に以下のような状況で発生します:
1. ブラウザ起動時
- 「新しいChromeを起動する」アクションを実行したとき
- 「新しいMicrosoft Edgeを起動する」アクションを実行したとき
2. クラウドフローとの連携時
- Power Automate(Web版)のクラウドフローから、デスクトップフローを呼び出したとき
- 定期実行しているフローが突然動かなくなった
3. アップデート直後
- Power Automate Desktopをアップデートした後
- Windowsアップデートを実行した後
- Chromeブラウザが自動更新された後
エラーメッセージの正確な表記
このエラーには、いくつかのバリエーションがあります:
- 「Chromeを制御することができませんでした(ブラウザーとの通信が失敗しました。拡張機能の再読み込みを行ってください)。」
- 「Failed to assume control of Chrome (Communication with the browser failed. Try reloading extension).」
- 「EdgeまたはChromeの制御を想定できませんでした(ブラウザーとの通信に失敗しました。拡張機能を再読み込みしてみてください)。」
どれも同じ根本原因によるエラーです。
エラーが発生する7つの主な原因
それでは、このエラーが起こる具体的な原因を見ていきましょう。
原因1:拡張機能がインストールされていない、または有効化されていない
最も基本的な原因です。
PADがChromeを制御するには、Chrome側に専用の拡張機能「Microsoft Power Automate」がインストールされ、有効化されている必要があります。
この拡張機能がないと、PADとChromeが通信できません。
原因2:PADと拡張機能のバージョン不一致
PADをアップデートすると、拡張機能も対応するバージョンに更新する必要があります。
バージョンの対応関係:
- PAD 2.27以降 → 「Microsoft Power Automate」拡張機能
- PAD 2.26以前 → 「Microsoft Power Automate (Legacy)」拡張機能
古い拡張機能が残っていると、新しいPADと通信できません。
原因3:Chromeのバージョン113.x以降への更新
2023年頃、ChromeがバージョンIl3.xに更新されたとき、PADとの通信方法が変わり、多くのユーザーがこのエラーに遭遇しました。
Chromeの自動更新により、知らない間にバージョンが上がって動かなくなることがあります。
原因4:PADのアップデート後の不具合
PADの新バージョン(特にBuild 2406-update3など)リリース直後に、このエラーが頻発することがあります。
新機能追加や仕様変更により、一時的に拡張機能との互換性に問題が生じることがあるのです。
原因5:Windowsアップデートの影響
Windows UpdateによってシステムのDLLファイルやレジストリ設定が変更され、PADの動作に影響することがあります。
特に2022年12月のアップデート(KB5021234など)後に、このエラーが多発しました。
原因6:ストア版とダウンロード版の違い
PADには2つのインストール方法があります:
- Microsoft Storeからインストール(ストア版)
- 公式サイトからMSIファイルをダウンロードしてインストール(ダウンロード版)
ストア版を使っていると、このエラーが発生しやすいという報告が多数あります。
原因7:ブラウザの起動タイムアウト
ブラウザの起動に時間がかかり、デフォルトのタイムアウト(30秒)を超えてしまうと、このエラーが発生します。
特に重いWebページを開く場合や、PCのスペックが低い場合に起こりやすいです。
解決方法を段階別に解説
ここからは、実際にエラーを解決する方法を、成功率の高い順に紹介していきます。
【最優先】解決策1:拡張機能を再インストールする
最も効果的で、約7割のケースで解決します。
この方法は、PADのアップデート後や、ブラウザ更新後に特に有効です。
手順1:既存の拡張機能を削除
- Chromeを起動
- アドレスバーに「chrome://extensions/」と入力してEnter
- 「Microsoft Power Automate」または「Microsoft Power Automate (Legacy)」を探す
- 「削除」ボタンをクリック
手順2:拡張機能を再インストール
- Chrome ウェブストアにアクセス
- 検索窓に「Microsoft Power Automate」と入力
- 正しい拡張機能を選択(バージョンに注意!)
- 「Chromeに追加」をクリック
- 確認ダイアログで「拡張機能を追加」をクリック
手順3:拡張機能が有効化されているか確認
- Chromeの右上にあるパズルピースアイコンをクリック
- 「拡張機能の管理」を選択
- 「Microsoft Power Automate」がオンになっているか確認
オフになっていたら、トグルスイッチをクリックしてオンにします。
手順4:Chromeとフローを再起動
- Chromeを完全に終了(すべてのタブを閉じる)
- Power Automate Desktopも再起動
- フローを再実行
これで、多くの場合は解決します。
解決策2:PAD本体を再インストールする(ストア版→ダウンロード版)
拡張機能の再インストールで解決しない場合は、PAD本体に問題がある可能性があります。
重要な注意事項
フローは削除されません!
PADのフローはOneDrive上に保存されているため、アプリをアンインストールしてもフローは残ります。安心して再インストールしてください。
手順1:現在のPADをアンインストール
- Windowsの「設定」を開く
- 「アプリ」→「アプリと機能」を選択
- 「Power Automate」または「Power Automate Desktop」を探す
- クリックして「アンインストール」を選択
- アンインストール完了後、PCを再起動
手順2:ダウンロード版をインストール
- Power Automate公式サイトにアクセス
- 「Power Automate Desktop」のダウンロードページへ
- MSIインストーラーをダウンロード
- ダウンロードしたファイルを実行してインストール
- インストール完了後、PCを再起動
手順3:拡張機能を再インストール
PADを再インストールしたら、必ず拡張機能も入れ直します。
解決策1の手順に従って、拡張機能を再インストールしてください。
解決策3:ブラウザのキャッシュとCookieを削除
ブラウザに蓄積されたデータが原因のこともあります。
Chromeのキャッシュ削除手順
- Chromeを起動
- 右上の「︙」(3点リーダー)をクリック
- 「その他のツール」→「閲覧履歴を消去」を選択
- 期間を「全期間」に設定
- 以下にチェックを入れる:
- 閲覧履歴
- Cookieと他のサイトデータ
- キャッシュされた画像とファイル
- 「データを削除」をクリック
- Chromeを再起動
解決策4:タイムアウト時間を延長する
ブラウザの起動が遅い場合は、タイムアウト設定を変更します。
設定変更手順
- Power Automate Desktopでフローを開く
- 「新しいChromeを起動する」アクションをダブルクリック
- 「詳細設定」を展開
- 以下の値を変更:
- 「Webページ読み込みのタイムアウト」:120秒
- 「タイムアウト」:120秒
- 「保存」をクリック
これで、起動に時間がかかっても待ってくれるようになります。
解決策5:PADのバージョンを最新に更新
古いバージョンのPADを使っていると、最新のChromeに対応していないことがあります。
更新確認手順
- Power Automate Desktopを起動
- 右上の「︙」メニューをクリック
- 「ヘルプ」→「バージョン情報」を選択
- 現在のバージョンを確認
- 最新版がある場合は、公式サイトからダウンロード
推奨バージョン
- PAD 2.62以降(WebDriver方式に対応)
- それ以前のバージョンを使っている場合は更新推奨
解決策6:レジストリ設定を確認(上級者向け)
企業環境や管理されたPCの場合、ポリシー設定が原因のこともあります。
確認すべきレジストリキー
以下のレジストリが正しく設定されているか確認します:
Chromeの場合:
Computer\HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Policies\Google\Chrome\NativeMessagingAllowlist
Edgeの場合:
Computer\HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Policies\Microsoft\Edge\NativeMessagingAllowlist
データ値に以下が含まれているか確認:
com.robin.messagehost(Legacy拡張機能用)com.microsoft.pad.messagehost(新拡張機能用)
注意事項
レジストリ編集は慎重に行ってください。間違えるとシステムに影響が出ます。
企業PCの場合は、IT管理者に確認してから実施しましょう。
解決策7:エラー処理とリトライを設定(暫定対応)
どうしても解決しない場合、フロー側でエラー処理を組み込む方法もあります。
フローの修正手順
- 「新しいChromeを起動する」アクションを右クリック
- 「エラー発生時」を選択
- 「エラー発生時にアクションを再試行する」を有効化
- 以下のように設定:
- 再試行回数:20回
- 間隔:5秒
- 「保存」をクリック
これで、一時的な通信エラーが起きても自動で再試行してくれます。
トラブルシューティングのチェックリスト

エラーが解決しない場合は、以下を順番に確認してみてください。
拡張機能の確認
- [ ] Chrome拡張機能がインストールされている
- [ ] 拡張機能が有効化されている(オンになっている)
- [ ] PADのバージョンと拡張機能のバージョンが対応している
- [ ] 複数の拡張機能(LegacyとNew)が同時にインストールされていない
PADの確認
- [ ] PADが最新バージョンに更新されている
- [ ] PADをダウンロード版(MSI)でインストールしている
- [ ] PADを管理者権限で実行している
- [ ] フローの変数%Browser%に値が正しく格納されている
ブラウザの確認
- [ ] Chromeが最新バージョンに更新されている
- [ ] キャッシュとCookieを削除した
- [ ] 他の拡張機能が干渉していない
- [ ] Chromeの開発者モードが有効になっている
システム環境の確認
- [ ] Windows Updateが最新
- [ ] PCを再起動した
- [ ] セキュリティソフトがブロックしていない
- [ ] 管理者ポリシーで制限されていない
よくある質問
Q1: Edgeでも同じエラーが出ますが、解決方法は同じですか?
A: はい、基本的には同じ手順で解決できます。Chromeの代わりにEdgeの拡張機能を再インストールしてください。拡張機能の名前も同じ「Microsoft Power Automate」です。
Q2: デスクトップフロー単体では動くのに、クラウドフローから呼び出すとエラーになります
A: これはよくあるパターンです。クラウドフローから実行する場合、実行ユーザーの権限や環境が異なることが原因です。解決策2(PADの再インストール)を試してみてください。
Q3: PADをアップデートするたびにこのエラーが出ます
A: PADのアップデートと同時に拡張機能のバージョンも変わることがあります。PADアップデート後は、必ず拡張機能も再インストールする習慣をつけましょう。企業環境では、PADを自動更新ではなく手動更新にすることをおすすめします。
Q4: Firefoxでも使えますか?
A: PADはFirefoxにも対応していますが、同様のエラーが発生することがあります。解決方法も基本的には同じで、Firefox用の拡張機能を再インストールしてください。
Q5: 「フロー変数%Browser%に値が保存されない」と表示されます
A: これは、ブラウザの起動自体が失敗しているサインです。拡張機能の問題が濃厚なので、解決策1(拡張機能の再インストール)を最優先で試してください。
Q6: WebDriver方式とは何ですか?
A: PAD 2.62以降で導入された新しい通信方式です。拡張機能を使わずにブラウザを制御できます。この方式を使うことで、拡張機能関連のエラーを回避できる可能性があります。最新版のPADでは、設定から切り替えられます。
Q7: 会社のPCで使っています。IT管理者に何を伝えればいい?
A: 以下を伝えてください:
- NativeMessagingAllowlistポリシーの設定確認
- Power Automate拡張機能のインストール許可
- 必要に応じてレジストリ設定の追加
技術担当者には、この記事のURLを共有すると話が早いです。
予防策:エラーを起こさないための対策
トラブルを未然に防ぐための対策も覚えておきましょう。
1. PADを手動更新にする
自動更新をオフにして、安定版を確認してから更新する
企業で使っている場合や、重要な業務フローを動かしている場合は特に重要です。
設定方法
- Power Automate Desktopを起動
- 「設定」を開く
- 「更新」セクションで「自動更新」をオフに設定
2. 定期的な動作確認
月に1回程度、以下を確認しましょう:
- PADのバージョン
- 拡張機能のバージョン
- Chromeのバージョン
- フローの正常動作
3. 変更管理の徹底
以下を変更した後は、必ずフローの動作確認を:
- Windows Update実施後
- ブラウザのアップデート後
- PADのアップデート後
- 拡張機能の更新後
4. バックアップの習慣
重要なフローは定期的にエクスポートしておきましょう。
万が一の時に、すぐに復旧できます。
Microsoft公式のトラブルシューティングツール
PAD 2.27以降には、公式のトラブルシューティングツールが搭載されています。
使い方
- Power Automate Desktopを起動
- 「ヘルプ」→「トラブルシューティング」を選択
- 「UI/Web自動化の問題のトラブルシューティング」を実行
- 診断結果が表示されたら「修正」ボタンをクリック
このツールで自動的に問題を検出・修正してくれることがあります。
まとめ
「Chromeを制御することができませんでした」エラーは、主に以下の対処法で解決できます:
最優先で試すこと:
- 拡張機能を削除して再インストール
- Chromeとフローを再起動
- 拡張機能が有効化されているか確認
それでも解決しない場合:
- PADをアンインストールして再インストール(ストア版→ダウンロード版)
- ブラウザのキャッシュとCookieを削除
- タイムアウト時間を延長(120秒)
根本的な対策:
- PADとブラウザを最新版に更新
- 定期的な動作確認と変更管理
このエラーは、PADのアップデートやブラウザ更新のタイミングで頻発しますが、ほとんどの場合は拡張機能の再インストールで解決します。
落ち着いて一つずつ対処していけば、必ず解決できるトラブルです。業務自動化を安定して動かすため、この記事をブックマークしておいてくださいね!


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