【日本列島を守る神様】生島神・足島神(いくしまのかみ・たるしまのかみ)とは?その神格・特徴・伝承をやさしく解説!

神話・歴史・伝承

日本という国は、どんな神様に守られているのでしょうか?

実は、私たちが暮らすこの日本列島そのものに宿る神様がいるんです。

それが生島神(いくしまのかみ)足島神(たるしまのかみ)という二柱の神様。

古代の天皇が即位するたびに行われた特別な祭儀にも関わる、とても重要な存在なんですよ。

この記事では、日本の国土を守護する神「生島神・足島神」について、その神話や伝承を中心に分かりやすくご紹介します。


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1. 概要

生島神・足島神は、日本列島の国土に宿る神霊として信仰されてきた神様です。

一般的な「島の神様」というと、漁師さんたちが信仰する海の守護神をイメージするかもしれません。しかし、この二柱の神様が守っている「島」とは、なんと日本列島全体のこと。
スケールが全然違うんですね。

別名を「生国魂神(いくくにたまのかみ)」「咲国魂神(さきくにたまのかみ)」ともいい、古代から朝廷との結びつきが非常に深い神様でした。

現在では、大阪の生国魂神社や長野の生島足島神社などで祀られており、商売繁盛や国土安泰のご利益があるとされています。


2. 系譜

生島神・足島神の誕生には、日本神話の有名なエピソードが関係しています。

国生み神話との関係

『古事記』や『日本書紀』には、イザナギ神とイザナミ神が「国生み」によって八つの島を生んだという神話が記されています。この八つの島を「大八島国(おおやしまのくに)」といい、日本列島の古い呼び方なんですね。

このとき、大八島国の国土に宿った神霊こそが、生島神・足島神だとされているのです。

二柱で一対の神様

生島神と足島神は、基本的に同じ神格を持つ一対の神様として扱われます。

  • 生島神の「イ(生)」:生成・発展を意味する
  • 足島神の「タル(足)」:満ち足りて繁栄することを意味する

つまり、国土に存在するすべての生命の発展と繁栄をつかさどる神様ということになります。


3. 姿・見た目

生島神・足島神には、具体的な姿の描写が伝わっていません

これは珍しいことではなく、日本の神様の多くは目に見えない霊的な存在として信仰されてきました。特に国土そのものに宿る神霊という性格上、人の姿で表現されることは基本的にないのです。

神社では御神体として祀られていますが、その姿を直接見ることはできません。


4. 特徴

生島神・足島神には、いくつかの重要な特徴があります。

神格と役割

神格内容
国土の神日本列島全体を守護する
島の神大八島国(日本)に宿る霊
国魂(くにたま)土地に宿る霊魂を統合した存在

「国魂」という考え方

古代の日本人は、土地にも霊魂が宿っていると考えていました。もともと日本には地域ごとに多くの「国魂」が存在したのです。

生島神・足島神は、そうした各地の国魂を統合した神格として理解されています。いわば、日本全体の土地の霊を代表する存在なんですね。

朝廷との深い関係

『延喜式』という平安時代の法令集によると、生島神・足島神は宮中の神祇官西院で祀られる23座の神々の中に含まれていました。これは朝廷との結びつきがとても深かったことを示しています。


5. 神話・伝承

八十嶋祭(やそしままつり)

生島神・足島神に関する最も重要な祭儀が、八十嶋祭です。

これは天皇が即位して大嘗祭(だいじょうさい)が行われた翌年に、必ず執り行われた朝廷の祭儀でした。

八十嶋祭の意味

  • 新しい天皇による国土の統治権を精神的に裏付ける
  • 日本全土の霊を鎮め、国の安泰を祈る

祭場は大阪・難波の浜辺だったそうで、その地に建てられたのが現在の生国魂神社です。

建御名方富命との伝承

長野県の生島足島神社には、興味深い伝承が残っています。

建御名方富命(たけみなかたとみのみこと)が諏訪へ向かう途中、この地に留まり、生島・足島両神に米粥を煮て献じたというのです。

この伝承から、両神はもともとこの土地の地主神だったと考えられています。現在も「御籠祭(おこもりさい)」という特殊神事として、この故事が受け継がれているんですよ。

武将たちの崇敬

戦国時代には、多くの武将が生島足島神社を崇敬しました。

  • 北条国時:社殿を営繕
  • 真田昌幸・信之:神領を寄進し社殿を再建
  • 武田信玄:上杉謙信との戦いに際して直筆の願文を奉納

特に武田信玄の願文は、現在も「生島足島神社文書」として残されており、国の重要文化財に指定されています。


6. 出典・起源

文献上の記録

生島神・足島神に関する最古の記録は、『古事記』『日本書紀』における国生み神話にまで遡ります。

  • 『新抄格勅符抄』大同元年(806年):信濃国から神戸1戸が充てられていた記録
  • 『延喜式』延長5年(927年):信濃国小県郡に「生島足島神社二座 並名神大」と記載

「名神大社(みょうじんたいしゃ)」というのは、当時の神社の中でも特に霊験あらたかとされた格式高い神社のことです。

勧請説

一説には、神武天皇の後裔である科野国造(しなののくにのみやつこ)の一族が、宮中から両神を勧請したともいわれています。この説では、国造の本拠地だったこの土地に、国魂として両神を迎えたと考えられているのです。


7. まとめ

生島神・足島神は、日本列島そのものを守護する国土の神様です。

重要なポイント

  • イザナギ・イザナミの国生みで誕生した大八島国の霊
  • 二柱で一対の神様で、生命の発展と繁栄をつかさどる
  • 古代から朝廷との結びつきが深く、八十嶋祭で祀られた
  • 各地の国魂を統合した、日本全体の土地の霊を代表する存在
  • 戦国武将からも厚い崇敬を受けた

主な神社

  • 生国魂神社(大阪市天王寺区)
  • 生島足島神社(長野県上田市)

普段はあまり意識しないかもしれませんが、私たちの暮らすこの国土には、古代から守り続けてくれている神様がいるんですね。日本という国の成り立ちに思いを馳せるとき、生島神・足島神の存在を思い出してみてはいかがでしょうか。

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