「整合性チェックが必要です」
「ディスクの整合性をチェックしています…」
「整合性エラーが検出されました」
こんなメッセージを見たことはありませんか?
パソコンやスマートフォンを使っていて、「整合性チェック」という言葉を目にすることがあります。でも、「整合性って何?」「なぜチェックが必要なの?」と疑問に思いますよね。
整合性チェックは、データの正確性を確認し、エラーを修復する重要な機能です。これを理解して正しく実行すれば、データ損失を防ぎ、システムを安定して動かすことができます。
この記事では、整合性チェックの基本から、Windows・データベース・ファイルそれぞれの整合性チェック方法まで、すべて網羅して解説します。初心者の方でも理解できるように、専門用語も丁寧に説明します。
それでは、整合性チェックをマスターしていきましょう!
整合性チェックとは?基本をわかりやすく解説

整合性(せいごうせい)の意味
整合性とは、データや情報が矛盾なく正しい状態にあることを指します。
たとえ話:
図書館の本の貸出記録を想像してください。
- 本棚に本がない → 貸出記録に「貸出中」と記載
- 本棚に本がある → 貸出記録に「館内」と記載
この状態が一致していれば「整合性がある」、一致していなければ「整合性がない」ということになります。
整合性チェックとは
整合性チェックとは、データやシステムが正しい状態にあるかを確認・検証する作業のことです。
コンピューターでの整合性チェック:
- ディスク(ハードディスク):ファイルが正しく保存されているか
- データベース:データに矛盾や重複がないか
- ファイル:ダウンロードしたファイルが壊れていないか
- システム:プログラムが正常に動作する状態か
なぜ整合性チェックが必要なのか
コンピューターを使っていると、さまざまな原因でデータが壊れることがあります。
データが壊れる原因:
- 突然の電源断:作業中に停電やバッテリー切れ
- 強制シャットダウン:フリーズして電源ボタン長押し
- ハードウェア障害:ディスクの物理的な損傷
- ソフトウェアのバグ:プログラムの不具合
- ウイルス感染:マルウェアによるデータ破壊
- 経年劣化:ハードディスクの老朽化
整合性チェックを実行することで、これらの問題を早期に発見・修復できます。
整合性チェックの効果
期待できる効果:
- データ損失の防止
- エラーの早期発見
- システムの安定化
- 動作速度の改善
- 重大なトラブルの予防
定期的に整合性チェックを実行することで、深刻な問題になる前に対処できます。
ディスクの整合性チェック【Windows】
最も一般的な整合性チェックは、ハードディスクやSSDの整合性を確認する「ディスクチェック」です。
CHKDSKとは
CHKDSK(チェックディスク)は、Windowsに標準搭載されているディスク整合性チェックツールです。
CHKDSKができること:
- ファイルシステムエラーの検出・修復
- ファイルの場所情報の修正
- 破損したファイルテーブルの修復
- 不正なセキュリティ記述子の修正
- 不良セクタ(バッドセクタ)の検出・修復
- 物理的に損傷した部分の特定
- 読み取り可能なデータの回復
- 不良セクタを使用不可にマーク
不良セクタとは
不良セクタ(バッドセクタ)とは、ハードディスク上でデータの読み書きができなくなった部分のことです。
2種類の不良セクタ:
1. ソフト不良セクタ(論理的エラー)
- データが正しく書き込まれなかった
- ファイルシステムの不整合
- CHKDSKで修復可能
2. ハード不良セクタ(物理的損傷)
- ディスクの磁気面が物理的に損傷
- ホコリや衝撃が原因
- 修復不可能→使用禁止マークを付ける
CHKDSKの実行方法【Windows】

それでは、実際にCHKDSKを実行する方法を見ていきましょう。
方法1:GUIから実行(初心者向け・簡単)
手順:
- エクスプローラーを開く(Windows キー + E)
- 「PC」または「この PC」をクリック
- チェックしたいドライブ(通常はCドライブ)を右クリック
- 「プロパティ」を選択
- 「ツール」タブをクリック
- 「エラーチェック」セクションの「チェック」ボタンをクリック
Windows 11/10の場合:
「エラーは見つかりませんでした」と表示されることがあります。その場合でも「ドライブのスキャン」をクリックすれば実行できます。
スキャン結果:
- エラーなし:「問題は見つかりませんでした」
- エラーあり:「このドライブの修復が必要です」→再起動が必要
方法2:コマンドプロンプトから実行(詳細オプション)
コマンドプロンプトを使うと、より詳細な制御ができます。
基本手順:
- スタートメニューで「cmd」と検索
- 「コマンドプロンプト」を右クリック
- 「管理者として実行」を選択
- コマンドを入力
基本コマンド:
chkdsk C:
このコマンドは、状態を表示するだけで修復は行いません。
CHKDSKの主要オプション
よく使うオプション:
/f(修復)
chkdsk C: /f
- 機能:エラーを検出して自動的に修復
- 対象:論理エラー(ファイルシステムの不整合)
- 時間:数分〜30分程度
/r(完全スキャン)
chkdsk C: /r
- 機能:不良セクタを検出し、読み取り可能なデータを回復
- 対象:論理エラー + 物理エラー
- 時間:1〜数時間(ディスクサイズによる)
- 注意:
/fも自動的に含まれる
/x(強制マウント解除)
chkdsk C: /x
- 機能:ドライブを強制的にマウント解除してからチェック
- 用途:他のプログラムが使用中のドライブをチェック
おすすめの組み合わせ:
chkdsk C: /f /r /x
これで、完全なチェックと修復を実行できます。
実行時の注意点
システムドライブ(Cドライブ)の場合:
CHKDSKを実行しようとすると、以下のメッセージが表示されます:
CHKDSK は、ボリュームが別のプロセスで使用されているため、実行できません。
次回のシステム再起動時に、このボリュームのチェックをスケジュールしますか?(Y/N)
対処:
- 「Y」を入力してEnter
- パソコンを再起動
- 起動時に自動的にCHKDSKが実行される
実行中の注意:
- CHKDSKが実行中は中断しないでください
- 完了まで数時間かかることもあります
- ノートパソコンの場合は電源に接続
CHKDSKの結果の見方
正常な場合
Windowsはファイルシステムに問題を見つけませんでした。
これ以上の操作は必要ありません。
→ ディスクは正常です。
エラーが見つかった場合
Windowsはファイルシステムにエラーを見つけ、修復しました。
→ エラーは修復されました。
不良セクタが見つかった場合
Windows は不良セクタを XX 個検出し、回復できました。
または
Windows は不良セクタを XX 個検出し、使用不可とマークしました。
対処:
- 少数(1〜10個程度):正常な経年劣化
- 多数(100個以上):ディスク故障の兆候→バックアップとディスク交換を検討
データベースの整合性チェック

データベースを扱う場合、データの整合性は特に重要です。
データベース整合性とは
データベースの整合性とは、データベース内のデータが論理的に矛盾なく正しい状態にあることを指します。
整合性の種類:
1. エンティティ整合性
- 各レコード(行)が一意に識別できる
- 主キーが重複していない、NULL値でない
例:
顧客IDが重複していたら、どの顧客か判別できません。
2. 参照整合性
- 関連するテーブル間のデータが一致している
- 外部キーが参照先に存在する
例:
注文テーブルの「顧客ID」が、顧客テーブルに存在しない場合はエラー。
3. ドメイン整合性
- データが許可された値の範囲内にある
- データ型や制約に従っている
例:
年齢フィールドにマイナスの値や文字列が入っているとエラー。
データベース整合性チェックの実施
SQL Serverの場合:
DBCC CHECKDB ('データベース名')
MySQLの場合:
CHECK TABLE テーブル名;
PostgreSQLの場合:
データベース全体の整合性チェックは管理ツールから実行します。
ファイルの整合性チェック
ダウンロードしたファイルが壊れていないかを確認する方法です。
ハッシュ値とは
ハッシュ値とは、ファイルの内容から計算される固有の文字列(指紋のようなもの)です。
特徴:
- ファイルが1ビットでも変わると、ハッシュ値も大きく変わる
- ファイルの内容が同じなら、常に同じハッシュ値
- 元のファイルには戻せない(一方向)
主なハッシュアルゴリズム:
- MD5:128ビット(古い、安全性低)
- SHA-1:160ビット(やや古い)
- SHA-256:256ビット(推奨、安全性高)
Windowsでファイルのハッシュ値を確認
コマンドプロンプトで確認:
certutil -hashfile ファイルパス SHA256
例:
certutil -hashfile C:\Downloads\setup.exe SHA256
結果例:
SHA256 ハッシュ (ファイル名):
a3b5c6d7e8f9g0h1i2j3k4l5m6n7o8p9q0r1s2t3u4v5w6x7y8z9a0b1c2d3e4f5
CertUtil: -hashfile コマンドは正常に完了しました。
確認方法:
公式サイトに記載されているハッシュ値と比較します。一致すれば、ファイルは正常です。
システムファイルの整合性チェック【Windows】
Windowsのシステムファイルが壊れている場合、専用のツールでチェック・修復できます。
SFCコマンド
SFC(System File Checker)は、Windowsのシステムファイルをチェック・修復するツールです。
実行方法:
- コマンドプロンプトを管理者として開く
- 以下のコマンドを入力:
sfc /scannow
実行内容:
- すべてのシステムファイルをスキャン
- 破損したファイルを検出
- 正常なバージョンで自動的に置き換え
所要時間:
10分〜30分程度
結果のパターン:
1. 問題なし
Windows リソース保護は、整合性違反を検出しませんでした。
→ システムファイルは正常です。
2. 修復成功
Windows リソース保護は、破損したファイルを検出し、正常に修復しました。
→ エラーは修復されました。
3. 修復失敗
Windows リソース保護は破損したファイルを検出しましたが、それらの一部を修復できませんでした。
→ DISMコマンドを実行してから、再度SFCを実行してください。
DISMコマンド
DISM(Deployment Image Servicing and Management)は、Windowsのシステムイメージを修復するツールです。
実行方法:
- コマンドプロンプトを管理者として開く
- 以下のコマンドを順番に実行:
ステップ1:状態確認
DISM /Online /Cleanup-Image /CheckHealth
簡易チェック(数秒)
ステップ2:詳細スキャン
DISM /Online /Cleanup-Image /ScanHealth
詳細スキャン(5〜10分)
ステップ3:修復
DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth
修復実行(10〜30分)
推奨手順:
- DISMでシステムイメージを修復
- その後、SFCでシステムファイルを修復
よくある整合性エラーとその対処法
エラー1:「ディスクの整合性をチェックする必要があります」
原因:
- 不適切なシャットダウン
- 停電
- ハードディスクエラー
対処法:
- CHKDSKを実行(前述の方法)
- 頻繁に表示される場合:
- ディスクの故障の可能性
- バックアップを取る
- ディスクの交換を検討
エラー2:「データベースの整合性エラー」
原因:
- データの不整合
- 不適切なデータ操作
- プログラムのバグ
対処法:
- データベースの整合性チェックを実行
- バックアップから復元
- 制約条件の見直し
エラー3:「ファイルが破損しています」
原因:
- ダウンロード中のエラー
- ウイルス感染
- ディスクエラー
対処法:
- ファイルを再ダウンロード
- ハッシュ値を確認
- ウイルススキャンを実行
エラー4:「システムファイルが破損しています」
原因:
- Windowsアップデート失敗
- ウイルス感染
- ディスク障害
対処法:
- SFCコマンドを実行
- DISMコマンドを実行
- それでも直らない場合:
- システムの復元
- Windowsの修復インストール
整合性チェックを実行すべきタイミング
定期メンテナンス
推奨頻度:
月1回:
- ディスクの整合性チェック(CHKDSK)
- システムファイルのチェック(SFC)
3ヶ月に1回:
- 完全スキャン(CHKDSK /r)
年1回:
- ハードディスクの健康診断(S.M.A.R.T.チェック)
トラブル発生時
以下の症状が出た場合は、すぐに整合性チェックを実行してください:
すぐに実行すべき症状:
- 頻繁にフリーズする
- ファイルが開けない
- アプリが突然終了する
- ブルースクリーンが表示される
- 動作が極端に遅い
- エラーメッセージが頻発
重要作業の前
こんな時は事前チェック:
- 大規模なWindowsアップデート前
- 重要なソフトウェアのインストール前
- データベースの大規模な更新前
- システムのバックアップ前
整合性チェックの結果への対応
軽微なエラーの場合
対応:
- 自動修復で解決
- 経過観察
- 次回チェック時に再確認
予防策:
- 定期的にチェックを実行
- 適切なシャットダウンを心がける
深刻なエラーの場合
対応:
ステップ1:すぐにバックアップ
- 重要なデータをすべてバックアップ
- 複数の場所に保存
ステップ2:原因の特定
- いつから症状が出たか
- 何をした後に起きたか
- エラーメッセージの内容
ステップ3:専門家への相談
- 修理業者への依頼
- データ復旧業者への相談
- メーカーサポートへの問い合わせ
ハードディスク交換のタイミング
以下の場合は、ディスクの交換を検討してください:
交換を検討すべき状況:
- 不良セクタが100個以上
- エラーが頻繁に発生
- CHKDSKが完了しない
- 異音がする(カチカチ、ガリガリ)
- 使用年数が5年以上
よくある質問(Q&A)

Q1:整合性チェックは必ず実行しないといけない?
A:定期的な実行を強く推奨します。
理由:
- エラーの早期発見
- データ損失の予防
- システムの安定化
月1回程度の実行が理想的です。
Q2:CHKDSKを中断してもいい?
A:絶対に中断しないでください。
中断すると:
- データ損失の可能性
- ファイルシステムの破壊
- Windowsが起動しなくなる恐れ
時間がかかっても、必ず完了まで待ってください。
Q3:CHKDSKで何も見つからない。それでも問題がある場合は?
A:他の原因を疑ってください。
考えられる原因:
- メモリ(RAM)の不良
- CPUの過熱
- ソフトウェアの問題
- ウイルス感染
メモリ診断ツールを実行したり、ウイルススキャンを試してください。
Q4:CHKDSKが終わらない。何時間待てばいい?
A:ディスクサイズと状態によります。
目安:
- 500GB HDD:1〜3時間
- 1TB HDD:2〜5時間
- 2TB HDD:5〜10時間
- SSD:通常はHDDより短い
24時間以上かかる場合:
- ディスクの深刻な障害の可能性
- 一度中断して専門家に相談
Q5:SSDでもCHKDSKは必要?
A:はい、必要です。
SSDも論理エラーは発生します。ただし:
- 物理的な不良セクタは基本的にない
- CHKDSKの実行時間は短い
/rオプションは不要なことが多い
Q6:整合性チェックでデータは消える?
A:通常は消えませんが、リスクはあります。
予防策:
- 実行前に必ずバックアップ
- 特に
/rオプション使用時は注意
消える可能性がある場合:
- 不良セクタにデータがある
- ファイルシステムが深刻に破損
- 修復不可能なエラー
Q7:外付けHDDやUSBメモリもチェックできる?
A:はい、できます。
手順:
同じ方法でCHKDSKを実行できます。
chkdsk E: /f
(Eはドライブレター)
注意:
外付けドライブは取り外し前に必ず「安全な取り外し」を実行してください。
Q8:Macにも整合性チェックはある?
A:はい、「ディスクユーティリティ」があります。
実行方法:
- 「アプリケーション」→「ユーティリティ」→「ディスクユーティリティ」
- チェックしたいディスクを選択
- 「First Aid」をクリック
- 「実行」
Q9:整合性チェック中にパソコンを使える?
A:使えません。
理由:
- ディスクをロックして作業
- データの整合性を保つため
作業が終わるまで待つか、別のパソコンを使用してください。
Q10:会社のパソコンで整合性チェックを実行していい?
A:IT部門に確認してください。
理由:
- 管理ポリシーがある場合がある
- 再起動が必要になる
- 業務に影響が出る可能性
勝手に実行せず、必ず許可を取ってください。
まとめ:整合性チェックで安心・安全なPC環境を
最後に、整合性チェックについて重要なポイントをまとめます。
整合性チェックとは
- データやシステムが正しい状態にあるか確認
- エラーを検出・修復する機能
- データ損失を予防する重要な作業
主な種類
1. ディスクの整合性チェック(CHKDSK)
- ファイルシステムエラーの修復
- 不良セクタの検出・修復
2. システムファイルのチェック(SFC・DISM)
- Windowsシステムファイルの修復
3. データベースの整合性チェック
- データの矛盾や不整合の検出
4. ファイルの整合性チェック
- ハッシュ値による確認
実行方法
CHKDSK(推奨):
chkdsk C: /f /r /x
SFC:
sfc /scannow
DISM:
DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth
実行タイミング
定期的に:
- 月1回:基本チェック
- 3ヶ月に1回:完全スキャン
トラブル時:
- フリーズ頻発
- エラーメッセージ
- 動作が遅い
重要作業前:
- 大規模アップデート
- システムバックアップ
注意点
- 実行前に必ずバックアップ
- 中断は絶対NG
- 時間がかかることを覚悟
- 深刻なエラーは専門家へ
トラブル対応
軽微なエラー:
- 自動修復で解決
- 経過観察
深刻なエラー:
- すぐにバックアップ
- 原因の特定
- 専門家に相談
- ディスク交換の検討
おわりに
整合性チェックは、一見難しそうに見えますが、基本を理解すれば決して難しくありません。
この記事で紹介した知識があれば:
- 整合性チェックの意味が分かる
- 自分で実行できる
- エラーに適切に対処できる
- データ損失を予防できる
重要なのは:
- 定期的な実行
- バックアップの習慣
- エラーの早期発見
- 適切な対処
整合性チェックを正しく理解して、安心・安全なパソコンライフを楽しんでください!


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