Visual Studioなどの開発ツールを使っていると、プロジェクトフォルダの中に「obj」というフォルダが自動的に作られます。
「これって何のフォルダ?」「消しても大丈夫?」と疑問に思ったことはありませんか?
この記事では、objフォルダの役割や中身について、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
objフォルダとは?

objは「Object(オブジェクト)」の略です。
プログラムをビルド(コンパイル)するときに生成される「中間ファイル」を保存するフォルダです。
中間ファイルとは、ソースコード(人間が書いたプログラム)を最終的な実行ファイルに変換する途中で作られるファイルのこと。
料理に例えると、完成した料理が「実行ファイル」だとすれば、objフォルダに入っているのは「下ごしらえした材料」のようなものです。
最終的な製品ではありませんが、完成させるためには欠かせない存在です。
ビルドの流れとobjフォルダの役割
objフォルダの役割を理解するには、プログラムがどのように作られるかを知っておくと分かりやすくなります。
プログラムのビルド(構築)は、大きく2つの段階に分かれます。
1. コンパイル(Compile)
ソースコード(.csや.cppなどのファイル)を、コンピュータが理解できる形式に変換します。
この段階で作られるのが「オブジェクトファイル」です。
オブジェクトファイルは、まだ単独では動作できない「部品」の状態。
これらのファイルが、objフォルダに保存されます。
2. リンク(Link)
複数のオブジェクトファイルと、必要なライブラリを結合して、最終的な実行ファイル(.exeや.dll)を作成します。
完成したファイルは、binフォルダに出力されます。
図解:ビルドの流れ
[ソースコード]
↓ コンパイル
[オブジェクトファイル] ← objフォルダに保存
↓ リンク
[実行ファイル] ← binフォルダに保存
つまり、objフォルダは「ビルドの途中経過を保存する作業場」のような存在です。
objフォルダとbinフォルダの違い
Visual Studioでプロジェクトを作ると、「obj」と「bin」という2つのフォルダが作成されます。
名前が似ていて混乱しやすいので、違いを整理しておきましょう。
| 項目 | objフォルダ | binフォルダ |
|---|---|---|
| 正式名称 | Object(オブジェクト) | Binary(バイナリ) |
| 役割 | 中間ファイルの保存 | 最終的な実行ファイルの保存 |
| 中身 | コンパイル済みだがリンク前のファイル | 実行可能なファイル(.exe、.dllなど) |
| 配布対象 | 配布しない | 配布する |
| 削除 | 削除可能(再ビルドで復元) | 削除可能(再ビルドで復元) |
簡単に言うと、objは「作業中のファイル」、binは「完成品」という違いがあります。
objフォルダの中身
objフォルダの中には、ビルド設定に応じたサブフォルダが作られます。
一般的なフォルダ構造
obj/
├── Debug/ ← デバッグビルド用
│ ├── net8.0/ ← ターゲットフレームワーク
│ │ ├── ○○.dll
│ │ ├── ○○.pdb
│ │ └── ...
│ └── ...
└── Release/ ← リリースビルド用
└── ...
Debugフォルダ
デバッグ用のビルドで生成されるファイルが入ります。
デバッグ情報が含まれており、最適化されていないため、ファイルサイズが大きくなる傾向があります。
Releaseフォルダ
リリース用のビルドで生成されるファイルが入ります。
最適化が適用され、デバッグ情報が含まれないため、Debugより高速でコンパクトになります。
objフォルダに入っている主なファイル
objフォルダには、さまざまな種類のファイルが生成されます。
主なものを紹介します。
オブジェクトファイル(.obj)
C++などの言語でコンパイルすると生成されるファイルです。
ソースファイル1つにつき、オブジェクトファイルが1つ作られます。
リンカがこれらを結合して、最終的な実行ファイルを作成します。
中間アセンブリファイル(.dll)
C#やVB.NETでは、コンパイル結果が中間言語(IL)としてDLLファイルに出力されます。
このファイルがリンクされて、最終的なバイナリになります。
デバッグシンボルファイル(.pdb)
Program Database(プログラムデータベース)ファイルです。
デバッグに必要な情報(変数名、行番号など)が含まれています。
リリース時には通常含めません。
自動生成されたソースファイル(.g.cs)
WPFやBlazorなどのフレームワークでは、XAMLファイルから自動生成されたC#コードがここに保存されます。
キャッシュファイル
ビルドを高速化するために、前回のビルド結果がキャッシュとして保存されます。
objフォルダは削除しても大丈夫?
結論から言うと、objフォルダは削除しても問題ありません。
次にビルドしたときに、自動的に再生成されます。
ただし、削除すると次回のビルドで「フルビルド」が必要になるため、ビルド時間が長くなることがあります。
削除したほうがいい場面
- ビルドエラーが解消しないとき
- プロジェクトを別の環境に移動するとき
- ディスク容量を節約したいとき
- 原因不明のバグが発生しているとき
削除の方法
Visual Studioでは、メニューから「ビルド」→「ソリューションのクリーン」を選ぶと、objフォルダとbinフォルダの中身が削除されます。
手動で削除する場合は、フォルダごと削除してしまって構いません。
Gitなどのソース管理ではobjフォルダを除外しよう

objフォルダは、ソース管理(Git、SVNなど)に含めるべきではありません。
理由は以下の通りです。
- ビルドすれば再生成できるので、管理する必要がない
- 開発者ごとに内容が異なるため、コンフリクト(衝突)が起きやすい
- ファイルサイズが大きく、リポジトリを肥大化させる
.gitignoreの設定例
Gitを使っている場合は、.gitignoreファイルに以下を追加しましょう。
# Visual Studio
bin/
obj/
.vs/
Visual Studioでプロジェクトを新規作成すると、通常は自動的に適切な.gitignoreが生成されます。
objフォルダの場所を変更する方法
デフォルトでは、objフォルダはプロジェクトフォルダ内に作成されます。
しかし、設定を変更すれば別の場所に出力することも可能です。
Visual Studioでの設定方法
- ソリューションエクスプローラーでプロジェクトを右クリック
- 「プロパティ」を選択
- 「ビルド」タブで出力パスを変更
プロジェクトファイル(.csproj)での設定
<PropertyGroup>
<IntermediateOutputPath>C:\Build\obj\</IntermediateOutputPath>
</PropertyGroup>
ビルドサーバーなど、特殊な環境でビルドする場合に活用できます。
よくある質問
Q. objフォルダがどんどん大きくなっています。減らす方法は?
「ビルド」→「ソリューションのクリーン」を実行すると、中間ファイルが削除されます。
また、不要なビルド構成(Debug/Releaseの片方など)を削除することでも容量を減らせます。
Q. objフォルダがないのですが?
まだ一度もビルドしていない場合、objフォルダは存在しません。
ビルドを実行すると自動的に作成されます。
Q. objフォルダの中身が壊れているようです。どうすればいい?
objフォルダを削除してから、再度ビルドしてください。
Visual Studioの「ビルド」→「ソリューションのクリーン」→「ソリューションのリビルド」の順に実行するのが確実です。
Q. binフォルダだけでなくobjフォルダも配布する必要がありますか?
いいえ、objフォルダを配布する必要はありません。
ユーザーに配布するのは、binフォルダ内の実行ファイルだけで十分です。
まとめ
objフォルダは、プログラムをビルドするときに生成される「中間ファイル」を保存するフォルダです。
ポイントのおさらい
- objは「Object(オブジェクト)」の略
- コンパイル時に生成される中間ファイルを保存する
- binフォルダには最終的な実行ファイル、objフォルダには途中経過のファイルが入る
- Debug/Releaseのサブフォルダでビルド構成ごとに分かれている
- 削除してもビルドすれば再生成される
- Gitなどのソース管理からは除外すべき
objフォルダは普段意識することが少ないですが、ビルドの仕組みを理解する上で重要なフォルダです。
ビルドエラーが解消しないときや、プロジェクトの引っ越しをするときには、objフォルダの削除を試してみると解決することがあります。


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