「プログラムを開始できません。〇〇.dllがないため…」
Windowsパソコンを使っていて、こんなエラーメッセージが突然表示されたら、焦ってしまいますよね。
アプリケーションを起動しようとしたら動かない、ゲームが始まらない、ソフトをインストールしたらエラーが出る…。DLLエラーは、パソコンを使う上でよく遭遇するトラブルの一つです。
でも安心してください。DLLエラーの多くは、適切な対処をすれば解決できます。
この記事では、DLLエラーとは何か、なぜ起こるのか、そして具体的な解決方法を、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
DLLとは何?

まずは、DLLが何なのかを理解しましょう。
DLLの正式名称
DLL = Dynamic Link Library(ダイナミックリンクライブラリ)
日本語に訳すと「動的リンクライブラリ」という意味です。
DLLファイルの役割
DLLファイルは、複数のプログラムが共有して使える部品のようなものです。
例えば、料理に例えるとこんな感じです。
DLLがない場合
- Aさんの家:調味料を全部持っている
- Bさんの家:調味料を全部持っている
- Cさんの家:調味料を全部持っている
DLLがある場合
- 共有倉庫:調味料を保管
- A・B・Cさんの家:必要な時だけ倉庫から借りる
このように、共有することで、パソコンのメモリ(記憶容量)やディスク容量を節約できます。
DLLファイルの例
よく見かけるDLLファイルには、以下のようなものがあります。
- MSVCP140.dll
- VCRUNTIME140.dll
- MSVCR110.dll
- d3dx9_43.dll
- xinput1_3.dll
これらは、多くのアプリケーションやゲームが使う共通の機能を提供しています。
DLLエラーが起こる原因
DLLエラーはなぜ発生するのでしょうか?主な原因を見ていきましょう。
1. ファイルが削除された
最も多い原因がこれです。
- 間違って削除してしまった
- アプリをアンインストールした時に一緒に消えた
- ディスク クリーンアップで削除された
2. ファイルが破損している
DLLファイル自体が壊れている場合です。
- パソコンが突然シャットダウンした
- ハードディスクに不具合がある
- ウイルス感染でファイルが破壊された
3. 新しいプログラムが古いDLLを上書きした
新しいソフトをインストールした時に、既存のDLLファイルが書き換えられ、互換性がなくなることがあります。
4. Windowsアップデートの失敗
Windows Updateが途中で止まったり、失敗したりすると、DLLファイルが正しく更新されないことがあります。
5. ウイルス・マルウェア感染
悪意のあるプログラムが、DLLファイルを破壊したり、偽物と入れ替えたりします。
6. レジストリの問題
Windowsの設定情報を管理する「レジストリ」に誤った情報が登録されていると、DLLエラーが発生することがあります。
7. ドライバーの不具合
プリンターやグラフィックカードなどのハードウェアのドライバーが古いと、関連するDLLファイルでエラーが起こります。
よくあるDLLエラーメッセージ
実際に表示されるエラーメッセージの例を見てみましょう。
パターン1:ファイルが見つからない
プログラムを開始できません。
〇〇.dllがコンピューターにないため、
プログラムを開始できません。
この問題を解決するには、プログラムを再インストールしてみてください。
パターン2:ファイルの読み込み失敗
〇〇.dllの読み込みに失敗しました。
指定されたモジュールが見つかりません。
パターン3:エントリポイントが見つからない
プロシージャエントリポイント〇〇が
ダイナミックリンクライブラリ〇〇.dllから見つかりませんでした。
具体的なエラー例
VCRUNTIME140.dllが見つからない
- Microsoft Visual C++のランタイムライブラリが不足
MSVCR110.dllが見つからない
- Visual C++ 2012のランタイムが不足
d3dx9_43.dllが見つからない
- DirectXのコンポーネントが不足(主にゲーム関連)
【解決方法1】パソコンを再起動する
まずはこれを試しましょう。
一時的な不具合であれば、再起動だけで解決することがあります。
手順
- 開いているプログラムをすべて閉じる
- 「スタート」メニューから「再起動」を選択
- パソコンが再起動したら、もう一度エラーが出たプログラムを起動してみる
これで解決すれば、それ以上の対処は不要です。
【解決方法2】プログラムを再インストールする
特定のアプリケーションでのみエラーが出る場合、そのアプリを再インストールすると解決することが多いです。
手順
ステップ1:アンインストール
- 「スタート」→「設定」(歯車マーク)
- 「アプリ」→「アプリと機能」
- エラーが出るプログラムを探してクリック
- 「アンインストール」をクリック
- 画面の指示に従ってアンインストール
ステップ2:パソコンを再起動
アンインストール後、一度パソコンを再起動します。
ステップ3:再インストール
- プログラムの公式サイトから最新版をダウンロード
- ダウンロードしたファイルを実行
- 画面の指示に従ってインストール
- インストール完了後、プログラムが正常に動くか確認
【解決方法3】システムファイルチェッカーを実行する

Windowsの標準機能で、壊れたシステムファイルを自動修復できます。
手順
ステップ1:コマンドプロンプトを管理者として開く
- 「スタート」ボタンを右クリック
- 「Windows PowerShell(管理者)」または「コマンドプロンプト(管理者)」を選択
- ユーザーアカウント制御で「はい」をクリック
ステップ2:コマンドを実行
黒い画面(コマンドプロンプト)に以下を入力してEnterキーを押します。
sfc /scannow
ステップ3:スキャンの完了を待つ
- スキャンには10〜15分程度かかります
- 途中で中断しないでください
- 「検証100%が完了しました」と表示されるまで待ちます
ステップ4:結果を確認
成功した場合
Windows リソース保護により、破損したファイルが見つかり、
それらは正常に修復されました。
問題がなかった場合
Windows リソース保護は、整合性違反を検出しませんでした。
ステップ5:パソコンを再起動
スキャン完了後、パソコンを再起動して、エラーが解消されたか確認します。
【解決方法4】DISMツールを実行する
SFCで解決しない場合は、DISMツールを使います。
手順
ステップ1:コマンドプロンプトを管理者として開く
前述と同じ方法で開きます。
ステップ2:コマンドを実行
以下を入力してEnterキーを押します。
DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth
ステップ3:処理の完了を待つ
- 15〜20分程度かかる場合があります
- インターネット接続が必要です(Windowsの修復ファイルをダウンロードするため)
ステップ4:再度SFCを実行
DISMが完了したら、もう一度以下のコマンドを実行します。
sfc /scannow
ステップ5:パソコンを再起動
完了後、再起動して確認します。
【解決方法5】Visual C++ 再頒布可能パッケージをインストールする
多くのDLLエラーは、Microsoft Visual C++のランタイムライブラリが不足していることが原因です。
対象となるエラー
- VCRUNTIME140.dll
- VCRUNTIME140_1.dll
- MSVCP140.dll
- MSVCR110.dll
- MSVCR100.dll
これらのエラーが出ている場合は、この方法が有効です。
手順
ステップ1:Microsoftの公式ページにアクセス
ブラウザで以下を検索します。
「Microsoft Visual C++ 再頒布可能パッケージ ダウンロード」
ステップ2:必要なバージョンをダウンロード
エラーメッセージに表示されている番号に応じて、以下をダウンロードします。
- VCRUNTIME140系のエラー → Visual C++ 2015-2022
- MSVCR110.dll → Visual C++ 2012
- MSVCR100.dll → Visual C++ 2010
注意:32ビット版と64ビット版の両方をインストールすることをおすすめします
ステップ3:ダウンロードしたファイルを実行
- ダウンロードしたファイルをダブルクリック
- ライセンス条項に同意
- 「インストール」をクリック
- インストール完了を待つ
ステップ4:パソコンを再起動
インストール後、パソコンを再起動します。
【解決方法6】Windows Updateを実行する
最新の更新プログラムをインストールすることで、DLLファイルが更新され、エラーが解消されることがあります。
手順
- 「スタート」→「設定」
- 「更新とセキュリティ」(Windows 10)または「Windows Update」(Windows 11)
- 「更新プログラムのチェック」をクリック
- 利用可能な更新があれば「ダウンロードしてインストール」
- インストール完了後、再起動
【解決方法7】システムの復元を実行する

最近DLLエラーが出始めた場合、システムを以前の正常な状態に戻すことで解決できます。
注意点
システムの復元を実行すると、復元ポイント以降にインストールしたソフトやドライバーが削除される可能性があります。
手順
ステップ1:システムの復元を開く
- 「スタート」を右クリック
- 「システム」を選択
- 「システムの保護」をクリック(左側メニュー)
- 「システムの復元」ボタンをクリック
ステップ2:復元ポイントを選択
- 「別の復元ポイントを選択する」にチェックを入れて「次へ」
- DLLエラーが出る前の日付の復元ポイントを選択
- 「影響を受けるプログラムの検出」で削除されるものを確認
- 問題なければ「次へ」
ステップ3:復元を実行
- 最終確認画面で「完了」をクリック
- 警告メッセージで「はい」
- パソコンが自動的に再起動し、復元が実行されます
【解決方法8】ドライバーを更新する
プリンターやグラフィックカード使用時にDLLエラーが出る場合は、ドライバーの更新が有効です。
手順
- 「スタート」を右クリック
- 「デバイスマネージャー」を選択
- エラーが出るデバイスを右クリック
- 「ドライバーの更新」を選択
- 「ドライバーを自動的に検索」を選択
- 更新完了後、パソコンを再起動
【解決方法9】ウイルススキャンを実行する
マルウェア感染が原因の場合もあります。
手順(Windows Defender使用)
- 「スタート」→「設定」
- 「更新とセキュリティ」→「Windowsセキュリティ」
- 「ウイルスと脅威の防止」
- 「スキャンのオプション」
- 「フルスキャン」を選択して「今すぐスキャン」
- スキャン完了を待つ(30分〜1時間程度)
- 脅威が検出されたら、指示に従って削除
【解決方法10】ごみ箱を確認する
DLLファイルを誤って削除した可能性がある場合は、ごみ箱を確認しましょう。
手順
- デスクトップの「ごみ箱」をダブルクリック
- エラーメッセージに表示されているDLLファイル名で検索
- 見つかったら右クリックして「元に戻す」
- パソコンを再起動
やってはいけないこと
DLLエラーを解決しようとして、逆に問題を悪化させないために注意すべきことがあります。
1. 不明なサイトからDLLファイルをダウンロードしない
これは絶対にやめてください。
インターネットで「〇〇.dll ダウンロード」と検索すると、DLLファイルを配布しているサイトが見つかりますが、これらは危険です。
リスク
- ウイルスやマルウェアが含まれている可能性
- 古いバージョンや間違ったバージョンのファイル
- システム全体が不安定になる
安全なダウンロード先
- Microsoft公式サイト
- ソフトウェアの開発元の公式サイト
これら以外からはダウンロードしないでください。
2. System32フォルダを直接編集しない
C:\Windows\System32 フォルダには重要なDLLファイルがたくさんありますが、ここを直接いじるのは危険です。
間違ったファイルを削除すると、Windowsが起動しなくなる可能性があります。
3. レジストリを適当にいじらない
レジストリエディタでDLL関連の設定を変更すると、取り返しのつかないトラブルになることがあります。
専門知識がない場合は、レジストリの編集は避けましょう。
予防策:DLLエラーを防ぐ方法
日頃から以下の対策をしておくと、DLLエラーを防げます。
1. 定期的にWindows Updateを実行
月に一度は、Windows Updateで最新の状態に保ちましょう。
2. 信頼できるウイルス対策ソフトを使う
リアルタイム保護を有効にして、常にスキャンしておきます。
3. 不要なソフトをアンインストール
使わないソフトは削除して、システムをシンプルに保ちます。
4. ディスククリーンアップを慎重に行う
「システムファイルのクリーンアップ」では、必要なファイルまで削除しないよう注意しましょう。
5. 重要なデータをバックアップ
定期的にバックアップを取っておけば、最悪の場合もデータを失わずに済みます。
6. システムの復元ポイントを作成
重要なソフトをインストールする前に、復元ポイントを手動で作成しておくと安心です。
よくある質問
Q. DLLファイルを手動で追加してもいい?
推奨しません。必ず公式な方法(Visual C++のインストールなど)で対処してください。
Q. すべてのDLLエラーが解決できる?
ほとんどのDLLエラーは解決できますが、ハードウェアの故障が原因の場合は、修理が必要になることもあります。
Q. 複数のDLLファイルが見つからないと表示される
これは深刻な問題の可能性があります。まずウイルススキャンを実行し、その後クリーンインストールも検討してください。
Q. どの解決方法から試せばいい?
この記事の順番通りに試すのがおすすめです。簡単な方法から始めて、徐々に高度な方法に進みます。
Q. 解決しない場合はどうすれば?
すべての方法を試しても解決しない場合は、Windowsのクリーンインストールを検討するか、専門業者に相談しましょう。
まとめ
DLLエラーの解決方法をまとめます。
すぐに試せる基本対処法
- パソコンを再起動
- プログラムを再インストール
- システムファイルチェッカー(sfc /scannow)
少し高度な対処法
- DISMツールを実行
- Visual C++ 再頒布可能パッケージをインストール
- Windows Updateを実行
- システムの復元
- ドライバーを更新
- ウイルススキャン
絶対にやってはいけないこと
- 不明なサイトからDLLファイルをダウンロード
- System32フォルダを直接編集
- レジストリを適当にいじる
予防策
- 定期的なWindows Update
- ウイルス対策ソフトの使用
- 不要なソフトの削除
- 定期的なバックアップ
最後に
DLLエラーは、一見難しそうに見えますが、適切な手順で対処すれば、多くの場合は解決できます。
まずはパソコンの再起動から始めて、この記事で紹介した方法を順番に試してみてください。
ほとんどのDLLエラーは、システムファイルチェッカーやVisual C++のインストールで解決します。
それでも解決しない場合は、ハードウェアの問題やWindowsシステム自体の深刻な破損が考えられるため、専門家に相談することをおすすめします。
焦らず、一つずつ確実に対処していけば、必ず解決の糸口が見つかるはずです!

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