Android Studioでアプリ開発を始めようとしたら、エミュレータが起動しない。
「さっきまで動いていたのに急に起動しなくなった」「新しくエミュレータを作ったけど全然動かない」そんな経験、ありませんか?
エミュレータのトラブルは、Android開発者なら誰もが一度は経験する問題です。でも安心してください。この記事では、よくある原因とその解決方法を、初心者の方でも分かるように丁寧に説明していきます。
エミュレータが起動しない主な原因とは?

Android Studioのエミュレータが起動しない原因は、大きく分けて以下のようなものがあります。
パソコン側の問題
- ディスク容量が足りない
- メモリ(RAM)が不足している
- 仮想化技術が有効になっていない
設定の問題
- HAXMが正しくインストールされていない
- グラフィックス設定が適切でない
- システムイメージの選択ミス
ファイルの問題
- ロックファイルが残っている
- エミュレータのデータが破損している
それでは、これらの問題を一つずつ解決していきましょう。
【最重要】ディスク容量を確認する
エミュレータは起動時に最低でも5GB以上の空き容量をチェックします。容量が足りないと、そもそも起動できません。
確認方法
Windows の場合
- エクスプローラーを開く
- 「PC」または「コンピューター」をクリック
- Cドライブの空き容量を確認
推奨される空き容量
- 最低限:5GB以上
- 安定動作:10GB以上
- 快適動作:20GB以上
空き容量が足りない場合は、不要なファイルを削除したり、ディスククリーンアップを実行したりして容量を確保しましょう。
ロックファイルを削除する
エミュレータが前回正常に終了しなかった場合、ロックファイルというものが残ってしまうことがあります。このファイルがあると、「既に起動中」と判断されて新たに起動できなくなります。
削除手順
- 以下のフォルダを開く
C:\Users\ユーザー名\.android\avd\エミュレータ名.avd
- 「multiinstance.lock」というファイルを探す
- このファイルがあれば削除する
- Android Studioを再起動してエミュレータを起動
エミュレータのデータをリセット(初期化)する
エミュレータのデータが破損している場合、初期化することで問題が解決することがあります。
リセット方法
- Android Studio上部のメニューから「Tools」→「Device Manager」を開く
- リセットしたいエミュレータの右端にある「⋮」(縦3点)をクリック
- 「Wipe Data」を選択
- 確認画面が表示されたら「Yes」をクリック
これでエミュレータが初期化されます。もう一度起動を試してみてください。
仮想化技術を有効にする
Intel製のCPUを使っている場合、BIOS設定で仮想化技術(VT-x)を有効にする必要があります。
確認方法
Windows の場合
- タスクマネージャーを開く(Ctrl + Shift + Esc)
- 「パフォーマンス」タブをクリック
- 「CPU」を選択
- 「仮想化」の項目を確認
「有効」になっていればOKです。「無効」の場合は、BIOS設定から有効にする必要があります。
BIOS設定の変更方法
- パソコンを再起動
- メーカーロゴが表示されたらF2キー、F10キー、またはDeleteキーを連打(メーカーによって異なる)
- BIOS設定画面で「Virtualization Technology」や「Intel VT-x」を探す
- 「Enabled」に設定
- 設定を保存して再起動
※BIOS設定は慎重に行ってください。分からない場合は、パソコンメーカーのサポートページを確認することをおすすめします。
HAXMを再インストールする
HAXM(Hardware Accelerated Execution Manager)は、エミュレータを高速化するための重要なツールです。これが正しくインストールされていないと、エミュレータが起動しないことがあります。
再インストール手順
- Android Studioのメニューから「Tools」→「SDK Manager」を開く
- 「SDK Tools」タブをクリック
- 「Intel x86 Emulator Accelerator (HAXM installer)」のチェックを外す
- 「Apply」をクリックしてアンインストール
- Android Studioを再起動
- 再度「SDK Tools」を開き、「Intel x86 Emulator Accelerator (HAXM installer)」にチェックを入れる
- 「Apply」をクリックしてインストール
- 以下のフォルダに移動して、HAXMのインストーラーを実行
C:\Users\ユーザー名\AppData\Local\Android\Sdk\extras\intel\Hardware_Accelerated_Execution_Manager
- 「intelhaxm-android.exe」をダブルクリックして実行
グラフィックス設定を変更する

グラフィックスの設定が合っていないと、エミュレータが起動しなかったり、起動しても画面が真っ黒になったりします。
設定変更方法
- Device Managerを開く
- エミュレータの「⋮」から「Edit」を選択
- 「Show Advanced Settings」をクリック
- 「Graphics」の項目を探す
- 以下の順で試してみる
- まず「Hardware – GLES 2.0」を試す
- ダメなら「Software – GLES 2.0」に変更
- それでもダメなら「Automatic」を選択
- 「Finish」をクリックして保存
- エミュレータを起動
システムイメージを変更する
特にAPI 35など新しいバージョンで問題が起きやすいです。システムイメージの種類を変更すると解決することがあります。
変更方法
- 「Tools」→「SDK Manager」を開く
- 「SDK Platforms」タブで、右下の「Show Package Details」にチェックを入れる
- 使用中のAndroidバージョンを展開
- 「Google Play~」で始まるイメージを使っている場合は、チェックを外す
- 代わりに「Google APIs~」で始まるイメージにチェックを入れる
- 「Apply」をクリックしてインストール
- Device Managerでエミュレータを編集し、新しくインストールしたシステムイメージを選択
メモリ設定を調整する
エミュレータに割り当てるメモリが多すぎると、パソコンのメモリが足りなくなって起動できません。
推奨設定
パソコンのメモリが4GBの場合
- エミュレータのRAM:1GB(1024MB)
パソコンのメモリが8GBの場合
- エミュレータのRAM:2GB(2048MB)
パソコンのメモリが16GB以上の場合
- エミュレータのRAM:4GB(4096MB)
変更方法
- Device Managerでエミュレータを編集
- 「Show Advanced Settings」をクリック
- 「RAM」の項目を上記の推奨値に変更
- 「Finish」をクリック
Hyper-Vを無効にする(Windows)
Windows 10/11のHyper-Vという機能が有効になっていると、HAXMと競合してエミュレータが起動しないことがあります。
無効化の手順
- 「コントロールパネル」を開く
- 「プログラム」→「プログラムと機能」をクリック
- 左側の「Windowsの機能の有効化または無効化」をクリック
- 「Hyper-V」のチェックを外す
- 「OK」をクリック
- パソコンを再起動
※Hyper-Vを使用している他のソフトがある場合は注意が必要です。
アンチウイルスソフトの設定を確認する
セキュリティソフトがエミュレータの動作を妨げている可能性があります。
対処方法
- Android Studioのインストールフォルダを、セキュリティソフトの除外リストに追加
- 通常は「C:\Program Files\Android\Android Studio」
- SDKのフォルダも除外リストに追加
- 通常は「C:\Users\ユーザー名\AppData\Local\Android\Sdk」
- エミュレータのプロセス「qemu-system-x86_64.exe」も除外
設定方法はセキュリティソフトによって異なるので、各ソフトのマニュアルを確認してください。
コマンドラインから起動してエラーを確認する
Android Studioから起動すると具体的なエラーが分かりにくいことがあります。コマンドラインから起動すると、詳しいエラーメッセージが表示されます。
起動方法
Windows の場合
- コマンドプロンプトを開く
- SDKのemulatorフォルダに移動
cd C:\Users\ユーザー名\AppData\Local\Android\Sdk\emulator
- エミュレータを起動
emulator -avd エミュレータ名 -verbose
エラーメッセージが表示されたら、そのメッセージで検索すると具体的な解決策が見つかることがあります。
それでも起動しない場合の最終手段

上記の方法を全て試しても解決しない場合は、以下の方法を試してみてください。
エミュレータを作り直す
- Device Managerで問題のあるエミュレータを削除
- 「Create Device」から新しくエミュレータを作成
- 異なる機種やAPIレベルを試してみる
Android Studioを再インストール
- Android Studioをアンインストール
- 以下のフォルダを削除
C:\Users\ユーザー名\.androidC:\Users\ユーザー名\AppData\Local\Google\AndroidStudio*C:\Users\ユーザー名\AppData\Roaming\Google\AndroidStudio*
- Android Studioを再インストール
- SDKとエミュレータを再設定
実機でテストする
エミュレータにこだわらず、実際のAndroid端末でテストするのも一つの方法です。USBデバッグを有効にした実機をパソコンに接続すれば、すぐにテストできます。
よくある質問
Q: エミュレータが起動するけど真っ黒な画面のままです
A: グラフィックス設定を「Software – GLES 2.0」に変更してみてください。それでもダメな場合は、グラフィックドライバを最新版に更新してください。
Q: エミュレータの起動が遅すぎます
A: これは正常な動作です。初回起動時は特に時間がかかります(3〜5分程度)。2回目以降は「Cold Boot」ではなく通常起動すると速くなります。
Q: AMD製CPUを使っていますが動きません
A: AMD製CPUの場合、Intel HAXMは使えません。システムイメージでx86ではなくARM系のイメージを選択してください。ただし、動作は遅くなります。
まとめ:エミュレータトラブルは段階的に解決しよう
Android Studioのエミュレータが起動しない問題は、原因が多岐にわたります。焦らず、以下の順番で確認していきましょう。
最初に確認すべきこと
- ディスク容量(5GB以上の空き)
- ロックファイルの削除
- エミュレータのデータリセット
次に試すこと
- 仮想化技術の有効化
- HAXMの再インストール
- グラフィックス設定の変更
それでもダメなら
- システムイメージの変更
- メモリ設定の調整
- Hyper-Vの無効化
- アンチウイルスの除外設定
最終手段
- エミュレータの作り直し
- Android Studioの再インストール
- 実機でのテスト
パソコンのスペックが低い場合(メモリ4GB以下、古いCPU)は、エミュレータよりも実機でのテストを強くおすすめします。エミュレータは便利ですが、それなりのマシンパワーが必要なツールです。
一つずつ試していけば、必ず解決する問題です。諦めずにトライしてみてくださいね。

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