いつも通りハードディスクやUSBメモリを開こうとしたら、突然「ディスクはフォーマットされていません。今すぐフォーマットしますか?」というメッセージが表示された経験はありませんか?
このとき、ディスクの状態を確認すると「RAW」と表示されていることがあります。焦って「はい」を押してフォーマットしてしまうと、大切なデータがすべて消えてしまいます。
この記事では、RAWディスクとは何か、なぜRAWになってしまうのか、そして最も重要な「データを失わずに修復する方法」を詳しく解説します。
RAWディスクとは?

RAWディスクとは、ファイルシステムが破損して、Windowsが認識できなくなったディスクのことです。
ファイルシステムって何?
ファイルシステムとは、ディスクにデータを整理して保存するためのルールのようなものです。本棚に例えると、本をどこに置くか、どう分類するかを決めているシステムですね。
Windowsでは主に「NTFS」や「FAT32」というファイルシステムが使われています。ところが、何らかの理由でこのファイルシステムが壊れてしまうと、Windowsは「どこに何があるか分からない」状態になってしまいます。
この状態を「RAW(生、未加工)」と呼びます。つまり、データは残っているのに、読み取り方が分からなくなっているのです。
RAWディスクの見分け方
ディスクがRAWになっているかどうかは、「ディスクの管理」で確認できます。
- Windowsキー + Xを押す
- 「ディスクの管理」を選択
- 該当するディスクのファイルシステム欄を確認
通常は「NTFS」や「FAT32」と表示されるところが、「RAW」と表示されていれば、RAWディスクになっています。
RAWディスクになる7つの原因
ディスクがRAWになってしまう原因は様々です。主な原因を知っておくことで、予防にも役立ちます。
1. 不適切な取り外し
USBメモリや外付けハードディスクを「安全な取り外し」を行わずに抜いてしまうと、ファイルシステムが破損することがあります。
特に、Windowsがデータの読み書きをしている最中に抜くと、ファイルシステムの重要な部分が壊れてしまうリスクが高まります。
2. 突然の電源断
作業中に停電が起きたり、パソコンの電源が突然切れたりすると、書き込み途中のデータが中途半端な状態になり、ファイルシステムが破損することがあります。
3. ウイルスやマルウェアの感染
コンピューターウイルスの中には、ファイルシステムを意図的に破壊するものがあります。怪しいファイルをダウンロードしたり、不審なサイトにアクセスしたりすることで感染する可能性があります。
4. 不良セクタ(物理的な破損)
ハードディスクやSSDには、データを記録する小さな領域(セクタ)がたくさんあります。このセクタが物理的に壊れてしまうことを「不良セクタ」と呼びます。
ファイルシステムの情報が記録されている部分に不良セクタが発生すると、ディスク全体がRAWになってしまいます。
5. パーティションテーブルの破損
パーティションテーブルとは、ディスクがどのように分割されているかを記録している情報です。この情報が壊れると、Windowsはディスクの構造を認識できなくなります。
6. MBR(マスターブートレコード)の破損
MBRは、パソコンの起動に必要な重要な情報が記録されている領域です。システムドライブ(通常はCドライブ)のMBRが破損すると、Windowsが起動しなくなることもあります。
7. 接続の不具合
USBケーブルやコネクタの接触不良、電源供給の不足なども、ディスクがRAWと認識される原因になります。物理的な接続に問題がある場合は、単純にケーブルを交換するだけで解決することもあります。
RAWディスクの症状とエラーメッセージ
RAWディスクになると、以下のような症状やエラーメッセージが表示されます。
よくあるエラーメッセージ
- 「ディスクはフォーマットされていません。今すぐフォーマットしますか?」
- 「ファイルまたはディレクトリが壊れているため、読み取ることができません」
- 「ドライブにアクセスできません。アクセスが拒否されました」
- 「ディスクの構造が壊れているため、読み取ることができません」
ディスク管理での表示
- ファイルシステム:RAW
- 使用済み領域:0バイト
- 未使用領域:0バイト
このような状態になっても、慌ててフォーマットしないでください。適切な手順を踏めば、データを救出できる可能性が高いのです。
【最重要】まずデータを復旧する
RAWディスクを修復する前に、必ずデータを復旧してください。
これは絶対に守るべきルールです。修復作業を先に行うと、データが上書きされて二度と取り出せなくなる可能性があるからです。
すぐに使用を停止する
RAWディスクになったら、まずそのディスクへの書き込みを一切やめましょう。新しいデータを書き込むと、元のデータが上書きされてしまいます。
データ復旧ソフトを使う
RAWディスクからデータを取り出すには、専用のデータ復旧ソフトを使う方法が最も確実です。
主なデータ復旧ソフト
- EaseUS Data Recovery Wizard
- Recoverit
- MiniTool Power Data Recovery
- Disk Drill
これらのソフトは、ファイルシステムが壊れていても、ディスクに残っているデータの「痕跡」を頼りにファイルを探し出すことができます。
データ復旧の基本的な手順
- 復旧ソフトをインストールする(RAWディスクではなく、別のドライブにインストール)
- RAWディスクをスキャンする
- 見つかったファイルをプレビューで確認する
- 必要なファイルを選択して、別のドライブに保存する
重要なのは、復旧したデータを元のRAWディスクには保存しないことです。必ず別のドライブに保存してください。
RAWディスクの修復方法
データを無事に復旧できたら、いよいよRAWディスクの修復に取り組みます。いくつかの方法がありますので、順番に試していきましょう。
方法1:接続を確認する(最も簡単)
修復作業に入る前に、まず基本的な確認を行いましょう。
確認すべきポイント
- USBケーブルがしっかり接続されているか
- 別のUSBポートに接続してみる
- 電源供給は十分か(セルフパワーのUSBハブを使う)
- 別のパソコンに接続してみる
意外と、単純な接続不良が原因だったというケースも多いです。
方法2:ドライバを更新する
古いドライバや破損したドライバが原因でRAWと認識されることがあります。
ドライバ更新の手順
- Windowsキー + Xを押して「デバイスマネージャー」を開く
- 「ディスクドライブ」を展開する
- 該当するドライブを右クリックして「ドライバーの更新」を選択
- 「ドライバーソフトウェアの最新版を自動検索」を選択
これでドライバが更新され、問題が解決することがあります。
方法3:CHKDSKコマンドで修復する
CHKDSKは、Windowsに標準搭載されているディスク修復ツールです。
注意点:CHKDSKは修復できないデータを削除してしまう可能性があるため、必ずデータ復旧を済ませてから実行してください。
CHKDSKの実行手順
- スタートボタンを右クリック
- 「Windows PowerShell(管理者)」または「コマンドプロンプト(管理者)」を選択
- 以下のコマンドを入力
chkdsk E: /f
(Eの部分は、RAWディスクのドライブレターに置き換えてください)
- Enterキーを押して実行
- スキャンと修復が完了するまで待つ
ただし、CHKDSKはファイルシステムがRAWの場合、「CHKDSKはRAWドライブに使用できません」というエラーが出て実行できないこともあります。その場合は、次の方法を試してください。
方法4:エラーチェック機能を使う
Windowsの標準機能でディスクのエラーをチェックできます。
エラーチェックの手順
- エクスプローラーを開く
- 「PC」をクリック
- RAWディスクを右クリックして「プロパティ」を選択
- 「ツール」タブを開く
- 「エラーチェック」の「チェック」ボタンをクリック
- 画面の指示に従って修復を実行
この方法は、軽度の論理的なエラーであれば修復できる可能性があります。
方法5:TestDiskで修復する(上級者向け)
TestDiskは、無料で使えるパーティション修復ツールです。CHKDSKでは修復できない場合でも、パーティション情報を復元できる可能性があります。
TestDiskの特徴
- パーティションテーブルを再構築できる
- 削除されたパーティションも復元可能
- 無料で使える
ただし、コマンドライン(黒い画面に文字を入力する方式)での操作が必要なため、初心者には難しいかもしれません。使用する場合は、公式サイトのステップバイステップガイドをよく読んでから実行してください。
注意:TestDiskはパーティション構造を変更するため、誤操作するとデータが完全に失われる可能性があります。必ずデータのバックアップを取ってから使用してください。
方法6:フォーマットして再利用する(最終手段)
上記の方法をすべて試してもディスクが修復できない場合、あるいはデータが不要な場合は、フォーマットして初期化する方法があります。
フォーマットの手順
- エクスプローラーで「PC」を開く
- RAWディスクを右クリック
- 「フォーマット」を選択
- ファイルシステム(NTFSまたはFAT32)を選択
- 「開始」をクリック
フォーマットすると、ディスク上のデータはすべて消去されます。必要なデータは事前に復旧しておいてください。
RAWディスクを予防する7つの対策

一度RAWディスクになると復旧が大変です。日頃から以下の対策を心がけましょう。
1. 安全な取り外しを実行する
USBメモリや外付けハードディスクを取り外すときは、必ず「安全な取り外し」を実行してください。
タスクバーのUSBアイコンをクリックして、該当するドライブを選択してから取り外しましょう。
2. 無停電電源装置(UPS)を使う
停電対策として、UPS(無停電電源装置)の導入を検討してください。突然の停電でもパソコンが保護され、安全にシャットダウンできます。
3. 定期的にバックアップを取る
「データは消えるもの」と考えて、定期的にバックアップを取りましょう。
外付けハードディスク、クラウドストレージ、NASなど、複数の場所にバックアップしておくと安心です。
4. ウイルス対策ソフトを導入する
信頼できるウイルス対策ソフトをインストールして、常に最新の状態に保ちましょう。
5. ディスクの健康状態をチェックする
定期的にディスクの健康状態を確認しましょう。CrystalDiskInfoなどの無料ソフトを使えば、ディスクの状態を簡単にチェックできます。
異常が見つかったら、早めに新しいディスクにデータを移行してください。
6. システムアップデートを怠らない
Windowsのアップデートには、ディスク関連のバグ修正も含まれています。セキュリティと安定性のため、定期的にアップデートを適用しましょう。
7. 衝撃や振動を避ける
特にハードディスクは、衝撃に弱い精密機械です。
作動中のハードディスクを動かしたり、落としたりしないように注意してください。SSDは衝撃に強いですが、それでも丁寧に扱うことが大切です。
RAWディスク修復の注意点
CHKDSKの危険性を理解する
CHKDSKは便利なツールですが、修復できないデータは削除してしまいます。
また、不良セクタが多い場合、CHKDSKが延々と終わらないこともあります。数時間経っても終わらない場合は、中断して別の方法を検討しましょう。
物理的な障害には対応できない
ディスクから異音がする、認識されないなどの症状がある場合は、物理的な故障の可能性があります。
この場合、素人が修復を試みると状態が悪化する恐れがあるため、専門のデータ復旧業者に相談することをおすすめします。
無料ソフトの限界
無料のデータ復旧ソフトには、復旧できるデータ量に制限があることが多いです。
大量のデータを復旧する必要がある場合は、有料版の購入や、専門業者への依頼を検討してください。
何度も修復を試さない
修復に失敗したからといって、同じ操作を何度も繰り返すのは危険です。
ディスクへのアクセスが増えるほど、データの上書きリスクが高まります。複数の方法を試す場合は、慎重に進めてください。
まとめ:RAWディスクは冷静に対処すれば復旧できる
RAWディスクになっても、パニックにならないことが大切です。
復旧の基本的な流れ
- すぐにディスクの使用を停止する
- データ復旧ソフトでデータを救出する
- 接続やドライバなど簡単な確認を行う
- CHKDSKやエラーチェックで修復を試みる
- それでもダメならTestDiskを検討する
- 最終手段としてフォーマットする
最も重要なのは、「修復より先にデータ復旧」という順序を守ることです。
多くのケースで、適切な手順を踏めばデータを失わずにディスクを修復できます。ただし、物理的な故障が疑われる場合や、どうしても自分で対処できない場合は、無理せず専門業者に相談しましょう。
そして何より、日頃からバックアップを取る習慣をつけることが、最大の予防策です。大切なデータは、複数の場所に保存しておきましょう。
RAWディスクのトラブルは誰にでも起こりうることです。この記事の情報を参考に、落ち着いて対処してください。

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