Windows 11にAI機能「Copilot」が搭載されて便利になりましたが、企業や組織によっては「まだ使いたくない」「セキュリティ上の理由で無効にしたい」というケースもありますよね。
特に、会社のIT管理者の方なら「複数のパソコンをまとめて管理したい」と考えるはずです。
そんなときに便利なのが、グループポリシーを使った無効化方法です。この方法なら、ドメインに参加している全てのパソコンに対して、一括でCopilotを無効化できます。
この記事では、グループポリシーを使ってCopilotを無効化する手順を、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
そもそもグループポリシーとは?

グループポリシーは、Windows Pro以上のエディションで使える管理機能です。
簡単に言うと、「パソコンの設定をまとめて管理できる仕組み」のことです。個別に設定変更する必要がなく、ポリシーを一つ作れば、複数のパソコンに自動的に適用されます。
グループポリシーが使えるエディション:
- Windows 11 Pro
- Windows 11 Enterprise
- Windows 11 Education
注意: Windows 11 Homeでは、グループポリシーエディターは使えません。Homeの方は、後述するレジストリ編集での無効化方法をご確認ください。
Copilotをグループポリシーで無効化するメリット
個人のパソコンなら、タスクバー設定でアイコンを消すだけでも十分です。しかし、企業や組織で多数のパソコンを管理する場合、グループポリシーを使うべき理由があります。
メリット1:一括管理が可能
ドメインに参加している全てのパソコンに対して、一度の設定で無効化できます。100台でも1000台でも、同じ手間で管理可能です。
メリット2:確実に無効化できる
タスクバー設定で非表示にするだけでは、ユーザーが再び有効にできてしまいます。グループポリシーなら、システムレベルで完全に無効化するため、一般ユーザーは勝手に有効化できません。
メリット3:Windowsアップデート後も維持される
通常の設定変更だと、Windowsアップデート後に設定がリセットされることがあります。しかし、グループポリシーで設定すれば、アップデート後も無効化状態が維持されます。
メリット4:セキュリティポリシーの徹底
企業のセキュリティ方針で「AI機能は使用禁止」となっている場合、グループポリシーなら確実に遵守できます。
【方法1】ローカルグループポリシーでCopilotを無効化する
まずは、単体のパソコンでCopilotを無効化する方法を見ていきましょう。ドメインに参加していない場合でも、この方法なら使えます。
手順1:グループポリシーエディターを開く
Windowsキー + Rを押して、「ファイル名を指定して実行」を開きます。
入力欄に以下を入力して、OKをクリック:
gpedit.msc
これでグループポリシーエディターが起動します。
手順2:Copilot設定の場所に移動する
左側のツリーメニューで、以下の順にフォルダを開いていきます:
ユーザーの構成
↓
管理用テンプレート
↓
Windowsコンポーネント
↓
Windows Copilot
手順3:「Windows Copilotをオフにする」を有効にする
右側のパネルに「Windows Copilotをオフにする」という項目が表示されます。
この項目をダブルクリックして設定画面を開きます。
設定画面で以下を選択:
- 「有効」を選択(ここが少しややこしいポイントです)
- 「適用」ボタンをクリック
- 「OK」をクリック
注意: 「Windows Copilotをオフにする」という設定を「有効」にすることで、Copilot自体が無効化されます。直感に反するかもしれませんが、これが正しい設定方法です。
手順4:設定を適用させる
設定を即座に反映させたい場合は、以下の手順を実行します:
- コマンドプロンプトを管理者権限で開く
- 以下のコマンドを実行:
gpupdate /force
このコマンドで、グループポリシーの更新が強制的に実行されます。
またはパソコンを再起動しても、設定が反映されます。
確認方法
設定後、以下を確認してください:
- タスクバーのCopilotアイコンが消えている
- Windowsキー + Cを押してもCopilotが起動しない
- タスクバー設定に「Copilot」の項目が表示されない(または無効化されている)
【方法2】Active Directoryのグループポリシーで無効化する
企業などでActive Directory(AD)環境を構築している場合、ドメインコントローラーから一括設定できます。
事前準備:ADMXテンプレートの配置
Windows 11の新しいポリシーを使うには、最新のADMXテンプレートをドメインコントローラーに配置する必要があります。
ADMXテンプレートのダウンロード
- Microsoftの公式サイトから最新のADMXテンプレートをダウンロード
- Windows 11 23H2以降のテンプレートが必要
- ダウンロードURL:https://www.microsoft.com/en-us/download/details.aspx?id=105667
- ダウンロードしたファイルを解凍
ADMXファイルの配置場所
ドメインコントローラー上の以下の場所にファイルをコピーします:
ADMXファイル(.admx)のコピー先:
C:\Windows\SYSVOL\sysvol\[ドメイン名]\Policies\PolicyDefinitions\
ADMLファイル(.adml)のコピー先:
C:\Windows\SYSVOL\sysvol\[ドメイン名]\Policies\PolicyDefinitions\ja-JP\
重要なファイル:
WindowsCopilot.admxja-JP\WindowsCopilot.adml(日本語表示用)
これらのファイルを正しく配置しないと、グループポリシー管理コンソールに「Windows Copilot」の設定項目が表示されません。
GPOの作成と設定
手順1:グループポリシー管理コンソールを開く
ドメインコントローラーまたは管理用PCで、以下のいずれかの方法で開きます:
- スタートメニューから「グループポリシーの管理」を検索
- サーバーマネージャーから「ツール」→「グループポリシーの管理」
手順2:新しいGPOを作成
- 対象となるOU(組織単位)を選択
- 右クリックして「このドメインにGPOを作成し、このコンテナーにリンクする」を選択
- GPO名を入力(例:「Disable Windows Copilot」)
- 「OK」をクリック
手順3:GPOを編集
作成したGPOを右クリックして「編集」を選択します。
手順4:Copilot無効化の設定
グループポリシー管理エディターで、以下の場所に移動:
ユーザーの構成
↓
管理用テンプレート
↓
Windowsコンポーネント
↓
Windows Copilot
「Windows Copilotをオフにする」をダブルクリックして、「有効」を選択し、適用します。
手順5:対象の設定
GPOを適用する対象を設定します:
- セキュリティフィルタリングで対象グループを指定
- WMIフィルターでWindows 11のみに適用することも可能
手順6:設定の適用を確認
クライアントPCで以下のコマンドを実行して、ポリシーを強制的に適用:
gpupdate /force
その後、パソコンを再起動して設定が反映されているか確認します。
【方法3】Microsoft Intune(クラウド管理)で無効化する

Microsoft Intuneを使っている企業では、クラウドベースの管理が可能です。
Settings Catalogでの設定方法
Intune管理センターで以下の手順を実行します:
手順1:新しいポリシーを作成
- Intune管理センター(https://intune.microsoft.com)にサインイン
- 「デバイス」→「構成プロファイル」→「作成」
- プラットフォーム:「Windows 10以降」を選択
- プロファイルの種類:「設定カタログ」を選択
手順2:Copilot設定を追加
- 「設定を追加」をクリック
- 検索ボックスに「Turn off Copilot」と入力
- 「Windows AI」カテゴリから「Turn off Copilot in Windows (User)」を選択
- この設定を「有効」に設定
手順3:割り当て
- 「次へ」をクリックして「割り当て」タブに移動
- 対象となるユーザーグループまたはデバイスグループを選択
- 「次へ」→「作成」
OMA-URI設定での方法(従来の方法)
カスタムプロファイルを作成する場合:
OMA-URI:
./User/Vendor/MSFT/Policy/Config/WindowsAI/TurnOffWindowsCopilot
データ型: Integer
値:
- 0 = Copilot有効
- 1 = Copilot無効
注意: Microsoftは今後、Settings Catalogでの設定を推奨しています。OMA-URIでの設定は将来的に非推奨になる可能性があります。
【方法4】レジストリ編集で無効化する(Windows Home向け)
Windows 11 Homeエディションでは、グループポリシーエディターが使えません。その場合は、レジストリを直接編集することでCopilotを無効化できます。
重要な注意事項
レジストリ編集は慎重に行ってください。
誤った操作をすると、Windowsが起動しなくなる可能性があります。必ずバックアップを取ってから作業してください。
レジストリのバックアップ方法
- Windowsキー + Rを押して「regedit」と入力
- レジストリエディターが起動したら「ファイル」→「エクスポート」
- 保存場所を指定して、全体をバックアップ
手順1:レジストリエディターを開く
- Windowsキー + Rを押す
- 「regedit」と入力してOKをクリック
- ユーザーアカウント制御の画面で「はい」をクリック
手順2:キーの場所に移動
レジストリエディターのアドレスバーに、以下のパスをコピー&ペーストします:
HKEY_CURRENT_USER\Software\Policies\Microsoft\Windows
手順3:新しいキーを作成
- 「Windows」キーを右クリック
- 「新規」→「キー」を選択
- キー名を「WindowsCopilot」に変更
手順4:DWORD値を作成
- 作成した「WindowsCopilot」キーを右クリック
- 「新規」→「DWORD(32ビット)値」を選択
- 値の名前を「TurnOffWindowsCopilot」に変更
手順5:値を設定
- 作成した「TurnOffWindowsCopilot」をダブルクリック
- 「値のデータ」を「1」に設定
- 「OK」をクリック
手順6:パソコンを再起動
レジストリエディターを閉じて、パソコンを再起動します。
再起動後、Copilotが無効化されているはずです。
再び有効化したい場合
「TurnOffWindowsCopilot」の値を「0」に変更するか、このレジストリ値自体を削除すれば、Copilotが再び有効になります。
トラブルシューティング:よくある問題と解決方法
問題1:グループポリシーに「Windows Copilot」が表示されない
原因:
- ADMXテンプレートが正しく配置されていない
- Windows 11のバージョンが古い
解決方法:
- Windows 11が23H2以降であることを確認
- 「設定」→「システム」→「バージョン情報」で確認
- ADMXテンプレートを最新版に更新
- Microsoftから最新のテンプレートをダウンロード
- PolicyDefinitionsフォルダに正しく配置
- グループポリシーエディターを再起動
問題2:ポリシーを設定してもCopilotが無効にならない
原因:
- ポリシーがクライアントPCに適用されていない
- Windows 11の最新バージョン(24H2以降)では挙動が変わっている可能性
解決方法:
- クライアントPCでポリシーの適用を確認:
gpresult /r
このコマンドで、適用されているポリシーを確認できます。
- レジストリを確認:
reg query HKCU\Software\Policies\Microsoft\Windows\WindowsCopilot
「TurnOffWindowsCopilot」の値が1になっているか確認してください。
- 最新版Windows 11(24H2以降)の場合は、AppLockerでの制御が必要になることがあります。
問題3:検索からCopilotが起動できてしまう
原因:
グループポリシーでは、タスクバーのアイコンとショートカットキー(Windows + C)は無効化できますが、スタートメニューの検索からの起動は別の制御が必要な場合があります。
解決方法:
AppLockerまたはソフトウェア制限ポリシーを使って、Copilotアプリ自体の実行をブロックします。
問題4:Windowsアップデート後にCopilotが再び有効になる
原因:
一部のWindowsアップデートでは、設定がリセットされることがあります。
解決方法:
- グループポリシー設定を再確認
- レジストリ値を確認し、必要に応じて再設定
- 定期的な監視とメンテナンスを実施
Copilotを無効化した場合の影響
Copilotを無効化すると、以下のような影響があります:
使えなくなる機能
- タスクバーからのCopilot起動
- ショートカットキー(Windows + C)での起動
- Windowsの設定変更をAIに依頼
- 画面キャプチャの解析機能
使える機能(影響なし)
- Microsoft EdgeのCopilot(ブラウザ版は別物)
- Microsoft 365 Copilot(Office製品のCopilot)
- Webブラウザからcopilot.microsoft.comへのアクセス
重要: グループポリシーで無効化されるのは「Copilot in Windows」だけです。EdgeやOfficeのCopilot機能は別途制御する必要があります。
セキュリティとプライバシーの考慮事項

企業でCopilotを無効化する主な理由として、以下が挙げられます:
データの機密性
Copilotは、ユーザーの操作やデータをクラウドに送信してAI処理を行います。機密情報を扱う企業では、これがセキュリティリスクになる可能性があります。
コンプライアンス要件
業界によっては、AI機能の使用が規制に抵触する可能性があります。医療、金融、法律などの分野では、特に慎重な対応が必要です。
管理の一貫性
新機能が導入される際、まずはテスト環境で検証してから本番環境に展開するのが一般的です。その間、Copilotを無効化しておくことで、予期しないトラブルを防げます。
まとめ
Copilotをグループポリシーで無効化する方法をまとめます。
方法の選択基準
Active Directory環境(ドメイン管理)の場合:
→ ドメインコントローラーでGPOを作成・配布
クラウド管理(Intune)の場合:
→ Settings Catalogで設定
個別のWindows 11 Proの場合:
→ ローカルグループポリシーで設定
Windows 11 Homeの場合:
→ レジストリ編集で対応
重要なポイント
- Windows 11 Pro以上が必要
- Homeエディションではレジストリ編集のみ
- ADMXテンプレートが必須
- 最新版(23H2以降)をダウンロード
- 正しい場所に配置
- 「有効」が「無効化」を意味する
- 「Windows Copilotをオフにする」を「有効」にする
- 直感に反するので注意
- 複数の管理方法を組み合わせる
- グループポリシーだけでは不十分な場合がある
- 必要に応じてAppLockerやレジストリも活用
- 定期的な確認が重要
- Windowsアップデート後は設定を再確認
- ユーザーからの問い合わせにも対応
グループポリシーを使えば、組織全体で一貫したCopilot管理が可能になります。セキュリティ要件や業務方針に合わせて、適切な方法を選択してください。
新しいAI機能は魅力的ですが、企業環境では慎重な導入が求められます。この記事で紹介した方法を使って、安全で管理しやすい環境を構築しましょう!

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