XMLファイルを見ていると、<xsl:template>や<soap:Envelope>のように、コロン(:)が含まれるタグを見かけることがありますよね。
この「コロンの前の部分」がプレフィックスと呼ばれるもので、名前空間という仕組みと密接に関係しているんです。
XMLの名前空間とプレフィックスは、複数のXMLファイルを組み合わせるときに、要素名が衝突するのを防ぐための重要な仕組みです。特に、Web API、設定ファイル、データ交換などで広く使われています。
この記事では、XML名前空間とプレフィックスの基本から実際の使い方、よく見かける例まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
XMLの基本をおさらい

XMLとは?
XML(Extensible Markup Language)は、データを構造化して記述するためのマークアップ言語です。
タグ(<>で囲まれた部分)を使ってデータを表現します。
XMLの例
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<book>
<title>XMLの教科書</title>
<author>山田太郎</author>
<price>2000</price>
</book>
このように、開始タグ(<book>)と終了タグ(</book>)で要素を囲み、階層構造を作ります。
XMLの特徴
主な特徴
- 人間が読みやすい
- データの構造を明確に表現できる
- プログラムで処理しやすい
- 自由にタグ名を決められる
この「自由にタグ名を決められる」という特徴が、便利である一方で問題も生み出すんです。
なぜ名前空間が必要なの?
要素名の衝突問題
異なる組織や目的で作られたXMLファイルを組み合わせるとき、同じ要素名が使われている可能性があります。
例:衝突が起きるケース
書籍情報のXML
<book>
<title>XMLの教科書</title>
<author>山田太郎</author>
</book>
HTMLのテーブル情報
<table>
<title>売上表</title>
<row>...</row>
</table>
どちらも<title>という要素を使っていますが、意味は全く違いますよね。書籍のタイトルと表のタイトルは別物です。
この2つのXMLを1つのドキュメントに統合すると、どちらの<title>なのか区別がつかなくなってしまうんです。
名前空間による解決
名前空間(Namespace)を使えば、要素がどのグループに属しているかを明示できます。
これによって、同じ要素名でも衝突せず、それぞれを区別できるようになるんですね。
XML名前空間の基本
名前空間とは?
XML名前空間は、要素や属性に一意の識別情報を与えるための仕組みです。
通常、URI(Uniform Resource Identifier)を使って名前空間を識別します。
URIの例
http://www.example.com/bookhttp://www.w3.org/1999/xhtmlurn:isbn:0-395-36341-1
これらのURIは、実際にアクセスできるWebページである必要はありません。あくまで「一意の識別子」として使われているんです。
名前空間の宣言方法
名前空間は、xmlns属性(XML Namespace)を使って宣言します。
基本構文
<要素名 xmlns="名前空間URI">
実際の例
<book xmlns="http://www.example.com/book">
<title>XMLの教科書</title>
<author>山田太郎</author>
</book>
この例では、<book>要素とその中のすべての子要素が、http://www.example.com/bookという名前空間に属することを宣言しています。
プレフィックスとは?
プレフィックスの役割
プレフィックス(prefix)は、名前空間を識別するための短い別名です。
長いURIをいちいち書くのは大変なので、短い名前を付けて使えるようにする仕組みなんですね。
プレフィックスの宣言方法
プレフィックスを使う場合は、xmlns:プレフィックス名という形式で宣言します。
基本構文
<要素名 xmlns:プレフィックス名="名前空間URI">
実際の例
<root xmlns:book="http://www.example.com/book">
<book:title>XMLの教科書</book:title>
<book:author>山田太郎</book:author>
</root>
この例では、bookというプレフィックスをhttp://www.example.com/bookという名前空間に関連付けています。
プレフィックスの使い方
プレフィックスを宣言したら、要素名の前に「プレフィックス名:」を付けて使います。
<book:title>XMLの教科書</book:title>
これで、この<title>要素がbookプレフィックスに関連付けられた名前空間に属していることが分かるんです。
複数の名前空間を使う例

複数の名前空間を同じドキュメント内で使うこともできます。
例:書籍情報とHTML要素を混在させる
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<root
xmlns:book="http://www.example.com/book"
xmlns:html="http://www.w3.org/1999/xhtml">
<book:catalog>
<book:item>
<book:title>XMLの教科書</book:title>
<book:description>
<html:p>この本は<html:strong>XML</html:strong>の基礎を学べます。</html:p>
</book:description>
</book:item>
</book:catalog>
</root>
この例では、2つの名前空間が使われています。
bookプレフィックス:書籍情報の名前空間htmlプレフィックス:HTML要素の名前空間
同じドキュメント内に、異なる目的の要素が混在していても、プレフィックスのおかげで区別できるんですね。
デフォルト名前空間
デフォルト名前空間とは?
プレフィックスを付けずに、すべての要素に自動的に適用される名前空間をデフォルト名前空間と呼びます。
宣言方法
xmlns属性だけを使い、プレフィックス名は指定しません。
例
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<book xmlns="http://www.example.com/book">
<title>XMLの教科書</title>
<author>山田太郎</author>
<price>2000</price>
</book>
この場合、<book>、<title>、<author>、<price>のすべての要素が、自動的にhttp://www.example.com/bookという名前空間に属します。
デフォルト名前空間とプレフィックスの併用
デフォルト名前空間を設定しつつ、別の名前空間をプレフィックスで指定することもできます。
例
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<book xmlns="http://www.example.com/book"
xmlns:html="http://www.w3.org/1999/xhtml">
<title>XMLの教科書</title>
<description>
<html:p>この本は<html:strong>XML</html:strong>を学べます。</html:p>
</description>
</book>
プレフィックスが付いていない要素(<book>、<title>、<description>)は、デフォルト名前空間に属します。
html:プレフィックスが付いている要素は、HTML名前空間に属するんです。
よく使われる名前空間とプレフィックス
実際のXMLファイルでよく見かける名前空間とプレフィックスを紹介します。
XHTML
名前空間URI:http://www.w3.org/1999/xhtml
よく使われるプレフィックス:xhtml、html、またはデフォルト名前空間
用途:HTML要素をXML形式で記述する
<html xmlns="http://www.w3.org/1999/xhtml">
<head>
<title>サンプルページ</title>
</head>
<body>
<p>こんにちは</p>
</body>
</html>
XSLT
名前空間URI:http://www.w3.org/1999/XSL/Transform
よく使われるプレフィックス:xsl
用途:XMLドキュメントを変換する
<xsl:stylesheet version="1.0"
xmlns:xsl="http://www.w3.org/1999/XSL/Transform">
<xsl:template match="/">
<html>
<body>
<xsl:apply-templates/>
</body>
</html>
</xsl:template>
</xsl:stylesheet>
SOAP
名前空間URI:http://schemas.xmlsoap.org/soap/envelope/
よく使われるプレフィックス:soap、soapenv
用途:Webサービスのメッセージ交換
<soap:Envelope xmlns:soap="http://schemas.xmlsoap.org/soap/envelope/">
<soap:Body>
<GetWeather xmlns="http://www.example.com/weather">
<city>Tokyo</city>
</GetWeather>
</soap:Body>
</soap:Envelope>
SVG
名前空間URI:http://www.w3.org/2000/svg
よく使われるプレフィックス:svg、またはデフォルト名前空間
用途:ベクター画像の記述
<svg xmlns="http://www.w3.org/2000/svg"
width="100" height="100">
<circle cx="50" cy="50" r="40" fill="blue"/>
</svg>
XML Schema
名前空間URI:http://www.w3.org/2001/XMLSchema
よく使われるプレフィックス:xs、xsd
用途:XMLドキュメントの構造定義
<xs:schema xmlns:xs="http://www.w3.org/2001/XMLSchema">
<xs:element name="book">
<xs:complexType>
<xs:sequence>
<xs:element name="title" type="xs:string"/>
<xs:element name="author" type="xs:string"/>
</xs:sequence>
</xs:complexType>
</xs:element>
</xs:schema>
名前空間の適用範囲

名前空間の宣言は、宣言された要素とその子孫要素すべてに適用されます。
例:スコープの理解
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<root xmlns:a="http://example.com/a">
<a:item>
<a:name>商品A</a:name>
<details xmlns:b="http://example.com/b">
<b:description>詳細情報</b:description>
<a:price>1000</a:price>
</details>
</a:item>
</root>
適用範囲
aプレフィックス:<root>以下のすべての場所で使用可能bプレフィックス:<details>以下でのみ使用可能
<details>の外で<b:something>と書くとエラーになります。
名前空間使用時の注意点
1. プレフィックスは任意の名前でOK
プレフィックスの名前自体に意味はありません。重要なのは、それが指し示す名前空間URIです。
例:これらは同じ意味
<book:title xmlns:book="http://example.com/book">XMLの本</book:title>
<b:title xmlns:b="http://example.com/book">XMLの本</b:title>
<本:title xmlns:本="http://example.com/book">XMLの本</本:title>
ただし、慣習的に使われるプレフィックス(xsl、soapなど)に従った方が、可読性が高まります。
2. 名前空間URIは完全一致が必要
名前空間URIは、文字列として完全に一致している必要があります。
これらは異なる名前空間として扱われる
http://example.com/book
![]()
Example Domain
![]()
Example Domain
末尾のスラッシュの有無、大文字小文字の違いも区別されるので注意が必要です。
3. 属性には名前空間が自動適用されない
デフォルト名前空間は、要素には自動適用されますが、属性には適用されません。
例
<book xmlns="http://example.com/book" id="123">
<title>XMLの本</title>
</book>
この場合、<book>要素と<title>要素は名前空間に属しますが、id属性は名前空間に属していません。
属性に名前空間を適用したい場合は、明示的にプレフィックスを付ける必要があります。
<book xmlns:b="http://example.com/book" b:id="123">
<title>XMLの本</title>
</book>
4. 予約されたプレフィックス
一部のプレフィックスは、XMLで予約されています。
予約プレフィックス
xml:XML関連の標準属性用(xml:langなど)xmlns:名前空間の宣言用
これらを独自の名前空間に使うことはできません。
実践的な使用例
実際のプロジェクトでどのように使われるか、具体例を見てみましょう。
例1:RSS Feed
RSSフィード(Webサイトの更新情報)では、複数の名前空間が使われます。
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<rss version="2.0"
xmlns:dc="http://purl.org/dc/elements/1.1/"
xmlns:content="http://purl.org/rss/1.0/modules/content/">
<channel>
<title>技術ブログ</title>
<item>
<title>XMLの基礎</title>
<dc:creator>山田太郎</dc:creator>
<content:encoded>
<![CDATA[<p>XMLについて解説します。</p>]]>
</content:encoded>
</item>
</channel>
</rss>
dc:Dublin Core(メタデータ標準)content:拡張コンテンツ情報
例2:Webサービス(SOAP)
SOAPを使ったWebサービスのリクエストです。
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<soap:Envelope
xmlns:soap="http://schemas.xmlsoap.org/soap/envelope/"
xmlns:web="http://example.com/webservice">
<soap:Header>
<web:Authentication>
<web:Username>user123</web:Username>
<web:Password>pass456</web:Password>
</web:Authentication>
</soap:Header>
<soap:Body>
<web:GetUserInfo>
<web:UserId>12345</web:UserId>
</web:GetUserInfo>
</soap:Body>
</soap:Envelope>
soap:SOAPプロトコル用web:サービス固有の要素用
例3:設定ファイル(Maven)
Java開発で使われるMavenの設定ファイル(pom.xml)です。
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<project xmlns="http://maven.apache.org/POM/4.0.0"
xmlns:xsi="http://www.w3.org/2001/XMLSchema-instance"
xsi:schemaLocation="http://maven.apache.org/POM/4.0.0
http://maven.apache.org/xsd/maven-4.0.0.xsd">
<modelVersion>4.0.0</modelVersion>
<groupId>com.example</groupId>
<artifactId>my-app</artifactId>
<version>1.0</version>
</project>
- デフォルト名前空間:Mavenの設定要素
xsi:XML Schema Instance(スキーマの参照情報)
よくある質問と回答
プレフィックスを付けないとどうなる?
名前空間を宣言しているのにプレフィックスを付けないと、デフォルト名前空間として扱われます。
プレフィックスを付け忘れると、意図した名前空間に属さないため、XMLパーサーがエラーを出したり、期待通りの処理ができなかったりします。
同じ名前空間に複数のプレフィックスを使える?
技術的には可能ですが、避けるべきです。
同じ名前空間には、1つのプレフィックスを統一して使う方が、可読性が高く混乱も少なくなります。
名前空間URIは実在する必要がある?
必要ありません。
名前空間URIは、あくまで一意の識別子として使われるだけで、実際にアクセスできるWebページである必要はないんです。
ただし、組織のドメインを含めることで、他の組織との衝突を避けやすくなります。
名前空間を使わないとダメ?
シンプルなXMLファイルで、他のXMLと組み合わせる予定がないなら、名前空間は必須ではありません。
ただし、標準化されたフォーマット(SOAP、RSS、SVGなど)を使う場合は、仕様で名前空間の使用が定められています。
まとめ
XML名前空間とプレフィックスは、異なるXMLドキュメントを組み合わせる際に、要素名の衝突を防ぐための重要な仕組みです。
名前空間の基本
- 要素や属性に一意の識別情報を与える
- 通常、URIを使って識別する
xmlns属性で宣言する- 複数のXMLを安全に組み合わせられる
プレフィックスの役割
- 名前空間の短い別名
xmlns:プレフィックス名="URI"で宣言- 要素名の前に「プレフィックス:」を付けて使う
- 長いURIを毎回書く手間を省ける
デフォルト名前空間
- プレフィックスなしで適用される名前空間
xmlns="URI"で宣言- 子孫要素すべてに自動適用される
よく使われる名前空間
- XHTML:
http://www.w3.org/1999/xhtml - XSLT:
http://www.w3.org/1999/XSL/Transform - SOAP:
http://schemas.xmlsoap.org/soap/envelope/ - SVG:
http://www.w3.org/2000/svg
重要な注意点
- 名前空間URIは文字列として完全一致が必要
- プレフィックス名は任意だが、慣習に従うと良い
- 属性にはデフォルト名前空間が自動適用されない
xmlとxmlnsは予約プレフィックス
XML名前空間とプレフィックスは、最初は複雑に感じるかもしれません。でも、基本的な考え方は「同じ名前の要素を区別するための仕組み」というシンプルなものです。
SOAP、RSS、SVGなど、多くの標準フォーマットで使われているので、理解しておくとXMLファイルの読み書きがグッと楽になりますよ!


コメント