Macを使っていて、「システムの重要なファイルが変更できない」「特定のソフトウェアをインストールできない」といった経験はありませんか?
これは、macOSに搭載されているSystem Integrity Protection(SIP)という保護機能が働いているからなんです。
この保護機能を管理するのが、csrutilコマンドです。システムのセキュリティに関わる重要なツールなので、使い方や注意点をしっかり理解しておく必要があります。
この記事では、csrutilコマンドの基本から使い方、注意すべきポイントまで、分かりやすく解説していきます。
csrutilコマンドって何?

csrutilの基本
csrutil(シーエスアールユーティル)は、macOSでSystem Integrity Protection(SIP)を管理するためのコマンドラインツールです。
正式には「csr」は「Configurable System Runtime」の略で、「util」はユーティリティ(補助ツール)を意味しています。
System Integrity Protection(SIP)とは?
SIPは、macOSのシステムファイルやフォルダを保護するセキュリティ機能です。別名「rootless」とも呼ばれています。
この機能があることで、以下のようなことが防げるんです。
- 悪意のあるソフトウェアがシステムファイルを改ざんする
- 誤操作で重要なファイルを削除してしまう
- マルウェアがシステムの深い部分に侵入する
macOS El Capitan(10.11)から導入された機能で、それ以降のすべてのmacOSに標準搭載されています。
csrutilコマンドで何ができるの?
csrutilコマンドには、いくつかの基本的な機能があります。
1. SIPの状態確認
現在、SIPが有効になっているか無効になっているかを確認できます。
2. SIPの無効化
システムファイルの変更が必要な場合に、一時的にSIPを無効にできます。
3. SIPの有効化
無効にしていたSIPを、再び有効に戻すことができますね。
4. 設定のクリア
SIPの設定を初期状態にリセットできます。
csrutilコマンドの使い方
重要:リカバリーモードが必要
csrutilコマンドは、通常のmacOS環境からは実行できません。リカバリーモードから起動する必要があるんです。
これは、セキュリティ上の理由です。もし通常モードから簡単にSIPを無効化できたら、マルウェアも同じことができてしまいますからね。
リカバリーモードへの入り方
Intelチップ搭載のMacの場合
- Macを再起動する
- 起動音が鳴ったら、すぐに「Command + R」キーを押し続ける
- Appleロゴが表示されたら、キーを離す
Apple Silicon(M1/M2/M3など)搭載のMacの場合
- Macを完全にシャットダウンする
- 電源ボタンを長押しする
- 「起動オプションを読み込み中」と表示されたら離す
- 「オプション」を選択して「続ける」をクリック
ターミナルを開く
リカバリーモードに入ったら:
- 画面上部のメニューバーから「ユーティリティ」を選択
- 「ターミナル」をクリック
これで、csrutilコマンドを実行する準備が整います。
主なcsrutilコマンド一覧
SIPの状態を確認する
csrutil status
このコマンドを実行すると、以下のようなメッセージが表示されます。
有効な場合
System Integrity Protection status: enabled.
無効な場合
System Integrity Protection status: disabled.
SIPを無効にする
csrutil disable
実行すると、「再起動後に変更が適用されます」といったメッセージが表示されます。再起動すれば、SIPが無効になります。
SIPを有効にする
csrutil enable
無効にしていたSIPを再び有効に戻すコマンドです。作業が終わったら、必ずこのコマンドでSIPを有効に戻しましょう。
設定をクリアする
csrutil clear
SIPの設定を初期状態にリセットします。通常は、これでSIPが有効な状態に戻ります。
詳細な状態を確認する
csrutil status --verbose
より詳しいSIPの設定状況を確認できます。どの保護機能が有効で、どれが無効かが分かるんです。
SIPを無効にする必要がある場合
特定の開発作業
ソフトウェア開発者が、システムレベルのツールや機能を開発する際に、SIPを一時的に無効にする必要があることがあります。
例えば、カーネルエクステンション(システムの中核に関わる拡張機能)を開発する場合などですね。
レガシーソフトウェアの使用
古いソフトウェアの中には、SIPが有効だと動作しないものがあります。どうしてもそのソフトを使う必要がある場合は、SIPを無効にする選択肢も出てきます。
システムカスタマイズ
macOSのシステムファイルを変更して、見た目や動作をカスタマイズしたい場合に、SIPの無効化が必要になることがあります。
トラブルシューティング
システムの問題を解決するために、一時的にSIPを無効にして作業する場合もあります。
csrutilコマンド使用時の重要な注意点

1. セキュリティリスクが高まる
SIPを無効にすると、macOSのセキュリティレベルが大幅に下がります。
悪意のあるソフトウェアがシステムファイルを改ざんしやすくなったり、誤操作でMacが起動しなくなったりする可能性が出てきます。
2. 作業後は必ず有効に戻す
SIPを無効にして作業した後は、必ず有効に戻してください。無効のまま使い続けるのは、非常に危険です。
3. バックアップを取っておく
SIPを操作する前に、Time Machineなどでシステム全体のバックアップを取っておきましょう。万が一、システムに問題が起きても復元できます。
4. 管理者権限が必要
csrutilコマンドを実行するには、管理者アカウントでログインしている必要があります。また、リカバリーモードでパスワードの入力を求められることがあります。
5. すべてのMacで使える
csrutilコマンドは、macOS El Capitan(10.11)以降のすべてのバージョンで使用できます。ただし、バージョンによって細かい動作や表示が異なる場合があります。
SIPが保護している領域
SIPは、macOS内の以下のような重要な領域を保護しています。
システムディレクトリ
/System/usr(一部を除く)/bin/sbin
これらのフォルダには、macOSの動作に必要な重要なファイルが入っています。
システムアプリケーション
Mac に最初からインストールされているアプリ(SafariやFinder、メールなど)も保護対象です。
カーネルエクステンション
システムの中核部分を拡張する機能も、SIPの保護下にあります。
よくある質問と回答
SIPを無効にしても大丈夫?
短期間の作業なら問題ありませんが、長期間無効にするのは避けましょう。
どうしても必要な作業をする間だけ無効にして、終わったらすぐに有効に戻すのが基本です。
SIPが有効だと何ができなくなる?
通常の使い方であれば、SIPが有効でも困ることはほとんどありません。
システムファイルの直接編集や、一部の高度なカスタマイズができなくなるだけです。一般的なアプリのインストールや使用には影響しません。
企業や学校のMacでも使える?
管理されているMacの場合、SIPの設定が組織のポリシーで固定されていることがあります。
勝手にSIPを無効にすると、セキュリティポリシー違反になる可能性があるので、必ず管理者に確認してください。
SIPを無効にしてもAppleのサポートは受けられる?
Appleのサポートを受けること自体は可能ですが、SIPを無効にしたことが原因の問題については、サポート対象外になる可能性があります。
まとめ
csrutilコマンドは、macOSのSystem Integrity Protection(SIP)を管理するための重要なツールです。
csrutilコマンドの基本
- macOSのセキュリティ機能(SIP)を制御する
- リカバリーモードから実行する必要がある
- システムファイルの保護を一時的に解除できる
主なコマンド
csrutil status:現在の状態を確認csrutil disable:SIPを無効にするcsrutil enable:SIPを有効にするcsrutil clear:設定を初期化
重要な注意点
- SIPを無効にするとセキュリティリスクが高まる
- 作業後は必ず有効に戻す
- 事前にバックアップを取っておく
- 本当に必要な場合のみ使用する
csrutilコマンドは強力なツールですが、それだけに慎重な使用が求められます。システムのセキュリティと安定性を保つためにも、必要最小限の使用に留めることをおすすめします。
通常の使い方であれば、SIPは有効なままで問題ありません。特別な理由がない限り、デフォルトの設定(有効)のまま使い続けるのが最も安全ですよ!

コメント