中国の深い山奥で、赤黒い毛に覆われた謎の生物が目撃され続けているのをご存知でしょうか?
その名は「イエレン」。中国語で「野人」と書き、人間のように二足歩行しながら、全身が毛で覆われた不思議な獣人なんです。三千年以上も前から中国の歴史書に記録され、詩人の李白も作品に登場させたこの存在は、今なお謎に包まれています。
この記事では、中国最大の未確認生物「イエレン」について、その姿や特徴、数々の目撃談、そして科学調査の真相まで詳しくご紹介します。
概要

イエレンは、中国で古くから目撃されている未確認動物(UMA)の一種です。
特に湖北省の神農架(しんのうが)林区という、開発が進んでいない山岳地帯で多くの目撃情報が集まっています。神農架は中国国内唯一の林区として知られ、人が住んでおらず、深い森に覆われた場所なんですね。
イエレンは「野人」という漢字で表記され、その名の通り野生の人間のような存在として恐れられてきました。ビッグフット(北米)や雪男(ヒマラヤ)と同じく、人間と猿の中間のような特徴を持つとされています。
興味深いのは、ただの民間伝承ではなく、中国政府が正式に調査隊を結成するほど本格的に研究された存在だということです。
姿・見た目
イエレンの姿は、目撃者たちの証言からかなり具体的に描き出されています。
イエレンの外見的特徴
- 体長:1.8メートルから2メートル(人間より少し大きい)
- 体毛:全身が赤黒い毛で覆われている
- 顔:猿と人間の中間のような顔つき
- 腕:長く、膝まで届くほど
- 目:飛び出したような大きな目
- 足:大きな足で、二足歩行する
目撃証言によれば、オスもメスも存在し、子どもと思われる小さなイエレンを見たという報告もあるんです。つまり、単独で生きているのではなく、家族や群れで暮らしている可能性が高いということですね。
体毛の色については「赤黒い」と表現されることが多いですが、茶色っぽく見えたという証言もあります。また、頭の毛は特に長いという特徴も報告されています。
特徴
イエレンには、他の獣人と区別される独特の特徴があります。
行動の特徴
イエレンの最大の特徴は、20種類もの声を使い分けるというコミュニケーション能力なんです。
スズメ、ロバ、犬などの動物の鳴き声を真似て、仲間に合図を送ると言われています。この優れた物まね能力は、知能の高さを示しているのかもしれません。
また、性格は粗暴で力が強いとされています。人間を捕まえようとした事件も報告されていて、決して友好的な存在ではないようです。
生活習慣
- 山の洞窟に住んでいる
- 木に体をこすりつける習性がある(縄張りを示すため?)
- 夜行性の可能性が高い
- 人間の笑い声のような音を出すこともある
興味深いのは、フンや足跡、巣といった痕跡も多数発見されているということ。つまり、完全に幻想の存在ではなく、何らかの生物が実際に存在している証拠はあるんですね。
伝承

イエレンの歴史は驚くほど古く、現代の目撃談だけでなく、古代からの記録も残されています。
古代中国の記録
イエレンに関する最古の記録は、紀元前340年頃の戦国時代にまでさかのぼります。
詩人の屈原(くつげん)が書いた『九歌(きゅうか)』という詩集に、「山鬼(さんき)」という存在が登場するのですが、これがイエレンの原型だと考えられているんです。また、詩人の李白も作品の中でこうした野人について触れています。
中国の古い文献には、「毛人(もうじん)」「狒狒(ひひ)」「猩々(しょうじょう)」といった、毛深い人型の生物がたびたび登場します。これらは時代や地域によって呼び名が違うだけで、同じ存在を指しているのかもしれません。
現代の目撃事件
20世紀に入ってから、目撃報告が一気に増加しました。
1974年の襲撃事件
林区を調査中の人物がイエレンに襲われそうになり、格闘の末に逃げ出しました。この時、イエレンの体毛を採取し、報告書として国家に提出したんです。これが現代における本格的なイエレン研究の始まりとなりました。
1982年の親子目撃事件
木に体をこすりつけているイエレンを親子が目撃し、襲われそうになったという事件が発生。通報を受けた調査員が現場から大量の毛を採取しました。分析の結果、極めて人間に近い霊長類の一種であることが確認されたんです。
中国政府による大規模調査
これらの事件を受けて、中国政府は本格的に動き出しました。
1987年:湖北省西北部高等動物調査隊の結成
総勢100人以上という壮大な規模の調査隊が組織されました。科学者、技術者、政府関係者、地元住民が参加し、半年以上にわたって神農架を調査したんです。
調査の成果:
- 聞き込みによる250件以上の目撃情報の収集
- 足跡、体毛、フン、巣などの物的証拠の発見
- イエレンの詳細な特徴の把握
1990年:第二次調査隊と賞金制度
さらに第二次調査隊が結成され、イエレンの生け捕りに賞金がかけられました。死体なら5,000元、生きたまま捕獲なら10,000元という高額な賞金です。
しかし、「イエレンは保護すべき存在だ」という意見が出て、賞金制度は取り消されてしまいました。皮肉なことに、それ以降、目撃事件が激減してしまったんです。
調査結果の非公開化
その後の調査では、地元住民が切り落としたとされるミイラ化した手と足が見つかったり、「イエレンとの間に子どもを授かった」という女性が現れたりと、興味深い情報が次々と出てきました。
ところが、あるテレビ番組が身長2メートルの人間を「野人(イエレン)」として取り上げるという、でたらめな報道を行ってしまいます。これが国際的な非難を浴び、中国政府はそれ以降、調査結果を一切公表しなくなってしまったんです。
起源
イエレンの正体については、いくつかの仮説が提唱されています。
ギガントピテクス説
最も有力視されているのが、ギガントピテクスの生き残り説です。
ギガントピテクスとは、約30万年前まで中国に生息していた巨大な類人猿のこと。身長3メートルにもなる史上最大の霊長類だったと考えられています。中国の古生物学者・黄万波(こうばんは)は、「ギガントピテクスがイエレンと一致する特徴が多い」と主張しました。
ただし、大きな矛盾点が一つあります。ギガントピテクスは四足歩行だったと考えられているのに対し、イエレンは二足歩行するという点です。
もしギガントピテクスの進化した姿がイエレンだとすれば、どこかの段階で二足歩行に移行したことになりますが、それを裏づける証拠は現在のところ見つかっていません。
その他の仮説
- 原人の生き残り説:北京原人などの原人が進化せずに生き残っているという説
- アウストラロピテクス説:人類の祖先とされるアウストラロピテクスの子孫という説
- 未知の霊長類説:まだ発見されていない新種の類人猿という説
- 熊の誤認説:アジアクロクマやヒグマを見間違えたという説
現代の科学者の多くは、イエレンの正体は既存の動物(特に熊や猿)の誤認、あるいは作り話だと考えています。実際、提出された証拠のほとんどは、既知の動物のものだったことが判明しているんです。
民間伝承との関係
興味深いのは、地元の湖北省では、イエレンを万里の長城を建設するために徴用された労働者の子孫だとする言い伝えがあることです。過酷な労働から逃げ出した人々が山に隠れ住み、文明から離れて野生化していったという物語なんですね。
まとめ
イエレンは、三千年にわたって中国の人々を魅了し続けている謎の獣人です。
重要なポイント
- 中国湖北省の神農架林区を中心に目撃される未確認動物
- 体長1.8~2m、赤黒い毛で覆われ、二足歩行する
- 紀元前から中国の文献に記録されている
- 1970~80年代に中国政府が大規模な科学調査を実施
- 250件以上の目撃情報と多数の物的証拠が集まった
- ギガントピテクスの生き残りという説が有力
- 現代科学では既存動物の誤認とされることが多い
- 調査結果は非公開のまま謎が残されている
中国政府が本気で調査に乗り出したという事実は、イエレンが単なる民間伝承以上の何かであることを示しています。真実はまだ深い森の中に隠されたままなのかもしれませんね。


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