パソコンやファイルのダウンロード中に「Checksum Mismatch」というエラーメッセージを見たことはありませんか?
突然表示されるこのエラーに、多くの方が戸惑ってしまいます。
この記事では、Checksum Mismatchエラーの意味から、発生する様々なシーンでの具体的な対処法まで、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。IT技術者の方にも、トラブルシューティングの参考になる内容をお届けします。
チェックサムとは?

まず、「チェックサム(Checksum)」について理解しましょう。
チェックサムの基本
チェックサムとは、データが正しく送られたか、または保存されているかを確認するための「検査値」のことです。
簡単に言えば、データの「指紋」のようなものです。
人間の指紋が一人ひとり違うように、データの内容が少しでも変わると、チェックサムの値も変わります。
チェックサムの仕組み
データを送る側と受け取る側で、それぞれチェックサムを計算します。
送信側の処理:
- 元のデータからチェックサムを計算する
- データとチェックサムを一緒に送る
受信側の処理:
- 受け取ったデータからチェックサムを計算する
- 送られてきたチェックサムと比較する
- 一致すれば正常、不一致ならエラー
具体例で理解しよう
例えば、「1234」という数字を送るとします。
最も単純なチェックサムは、すべての数字を足し合わせた値です。
- 1 + 2 + 3 + 4 = 10
受信側でも同じ計算をして、「10」になれば正常。もし「9」や「11」になったら、データが途中で変わってしまったということです。
実際のシステムでは、もっと複雑な計算方法を使いますが、基本的な考え方は同じです。
チェックサムの主な種類
単純加算方式
- データの各バイトを足し合わせる
- 計算が簡単で高速
- 信頼性は低め
CRC(巡回冗長検査)
- より複雑な計算方法
- データの位置も考慮する
- 高い検出精度
MD5・SHA
- ハッシュ関数を使用
- 非常に高い信頼性
- ファイルの同一性確認によく使われる
Checksum Mismatchとは?
Checksum Mismatch(チェックサム不一致)とは、計算されたチェックサムの値が一致しないエラーのことです。
つまり、「データが正しく届いていない」「データが破損している」ことを示す警告なんです。
エラーが意味すること
このエラーが出たときは、次のいずれかの問題が発生しています。
データの破損
- 送信中にデータの一部が変わってしまった
- 保存中にファイルが壊れてしまった
通信エラー
- ネットワークの不安定さ
- 電波の干渉
ハードウェアの問題
- ハードディスクやメモリの故障
- ケーブルの接触不良
ソフトウェアの不具合
- プログラムのバグ
- 設定の誤り
発生する主なシーンと原因
Checksum Mismatchエラーは、様々な場面で発生します。
シーン1: CMOS Checksum Error(パソコン起動時)
どんなエラー?
パソコンを起動したときに、黒い画面に次のようなメッセージが表示されます。
CMOS checksum error - Defaults loaded
Press F1 to continue, or DEL to enter SETUP
CMOSとは?
CMOS(シーモス)は、マザーボード上にある小さなメモリのことです。
ここには、パソコンの基本的な設定情報が保存されています。
- 日付と時刻
- 起動デバイスの順番
- CPUやメモリの設定
この情報を保持するために、マザーボードには小さなリチウム電池(ボタン電池)が付いています。
主な原因:
1. CMOS電池の消耗(最も多い)
- 電池が切れると設定情報が保持できない
- 通常3〜5年で交換が必要
2. 不適切なシャットダウン
- 電源ボタン長押しで強制終了した
- 停電が発生した
3. BIOSの設定ミス
- BIOS更新の失敗
- 設定値の不整合
対処方法:
ステップ1: F1キーを押して起動を試す
一時的なエラーなら、これで起動できることがあります。
ステップ2: BIOS設定で日時を修正
- エラー画面で「DEL」キーを押す(機種によっては「F2」や「F10」)
- BIOS設定画面が開く
- 日付と時刻を正しく設定
- 「F10」キーを押して保存して終了
ステップ3: CMOS電池の交換
繰り返しエラーが出る場合は、電池交換が必要です。
- パソコンの電源を完全に切る
- 電源ケーブルを抜く
- ケースを開ける
- マザーボード上のボタン電池(CR2032が多い)を交換
- ケースを閉じて起動
注意: デスクトップPCなら自分で交換できますが、ノートPCは分解が難しいので、メーカーや修理店に相談することをおすすめします。
シーン2: SVN/Gitでのchecksum mismatch
どんなエラー?
バージョン管理システム(Subversion、Gitなど)を使っているときに、コミットやアップデート時にエラーが出ます。
svn: Checksum mismatch
svn: Base checksum mismatch on 'filename.php':
expected: d94d3834e5af1ece58b41667c28b53da
actual: f7772108d507d356649bdd2d64978f1d
主な原因:
1. 作業コピーの破損
- ファイルを手動で編集してしまった
- .svnディレクトリ内のファイルが壊れた
2. 不適切な操作
- 更新中に強制終了した
- 複数の操作を同時に行った
3. ディスクエラー
- ハードディスクの不良セクタ
- 書き込み中の電源断
対処方法:
方法1: クリーンアップを実行
# Subversionの場合
svn cleanup
# Gitの場合
git fsck
git gc
これで解決しない場合は、次の方法を試します。
方法2: 再チェックアウト(Subversion)
- 変更したファイルを別の場所にバックアップ
- 問題のあるディレクトリを削除
- リポジトリから再度チェックアウト
- バックアップしたファイルを戻す
- 改めてコミット
# バックアップを作成
cp 変更ファイル.txt ~/backup/
# 再チェックアウト
svn checkout リポジトリURL
# ファイルを戻してコミット
cp ~/backup/変更ファイル.txt .
svn commit -m "修正内容"
方法3: .svnディレクトリの修復
エラーが出ているファイルの.svn/text-baseディレクトリを確認し、破損したファイルを削除してから、再度updateを実行します。
シーン3: ファイルダウンロード時
どんなエラー?
ソフトウェアやファイルをダウンロードした後、インストールしようとするとエラーが出ます。
「ファイルのチェックサムが一致しません」
「ダウンロードしたファイルが破損しています」
主な原因:
1. ダウンロードの中断
- ネットワークが不安定
- ダウンロード途中でブラウザを閉じた
2. 通信エラー
- Wi-Fiの電波が弱い
- パケットロス(データの欠損)
3. ディスク容量不足
- 保存先の空き容量が足りない
- 一時ファイルの領域不足
対処方法:
ステップ1: ファイルを削除して再ダウンロード
- 不完全なファイルを削除
- 安定したネットワーク環境で再ダウンロード
- ダウンロードマネージャーの使用を検討
ステップ2: チェックサムの手動確認
配布元がチェックサム(MD5、SHA-256など)を公開している場合、自分で確認できます。
Windowsの場合:
# SHA-256の確認
certutil -hashfile ダウンロードファイル.zip SHA256
macOS/Linuxの場合:
# SHA-256の確認
shasum -a 256 ダウンロードファイル.zip
# MD5の確認
md5sum ダウンロードファイル.zip
表示された値を、配布元が公開しているチェックサム値と比較します。一致していればファイルは正常です。
ステップ3: 別のダウンロード方法を試す
- 別のブラウザを使う
- ミラーサイトからダウンロード
- VPNを使って経路を変える
シーン4: STATUS_IMAGE_CHECKSUM_MISMATCH(Windows)
どんなエラー?
Windows使用中に突然ブルースクリーン(青い画面)が表示されます。
STATUS_IMAGE_CHECKSUM_MISMATCH
エラーコード: 0xC0000221
主な原因:
1. システムファイルの破損
- Windowsの重要なファイルが壊れた
- ドライバーファイルの不整合
2. ハードウェアの問題
- ハードディスク/SSDの故障
- メモリ(RAM)の不良
3. ドライバーの不具合
- 古いドライバー
- 互換性のないドライバー
対処方法:
方法1: システムファイルチェック(SFC)
- コマンドプロンプトを管理者として開く
- 次のコマンドを実行
sfc /scannow
このコマンドは、破損したシステムファイルを自動的に修復します。完了まで20〜30分かかることがあります。
方法2: ディスクチェック
chkdsk C: /f /r
/f: エラーを修復/r: 不良セクタを検出して修復
再起動が必要なので、「Y」を入力して再起動します。
方法3: ドライバーの更新
- 「デバイスマネージャー」を開く
- 問題のあるデバイス(黄色い!マーク)を探す
- 右クリックして「ドライバーの更新」
- 「ドライバーを自動的に検索」を選択
特に、ディスプレイアダプターとディスクドライバーを重点的に確認しましょう。
方法4: メモリ診断
- 「Windowsメモリ診断」を起動
- 「今すぐ再起動して問題の有無を確認する」を選択
- 自動的にメモリのテストが実行される
エラーが見つかった場合は、メモリの交換が必要です。
シーン5: ネットワーク通信時
どんなエラー?
データ転送中やネットワーク通信時にエラーが発生します。
- FTPでのファイル転送失敗
- ネットワークドライブのファイルが開けない
- リモートアクセス時の切断
主な原因:
1. ネットワークの不安定
- 無線LANの電波が弱い
- ルーターの不調
2. ケーブルの問題
- LANケーブルの断線
- コネクタの接触不良
3. パケットロス
- 通信経路上でのデータ欠損
- ファイアウォールの誤動作
対処方法:
ステップ1: ネットワーク機器の再起動
- パソコンを再起動
- ルーターの電源を切る
- 30秒待つ
- ルーターの電源を入れる
- 接続が安定するまで待つ
ステップ2: 有線接続に切り替え
Wi-Fiで問題が出る場合は、LANケーブルでの有線接続を試しましょう。
ステップ3: ケーブルの確認
LANケーブルを別のものに交換してみます。特に、古いケーブルや踏まれたり曲げられたりしたケーブルは要注意です。
共通の予防策

Checksum Mismatchエラーを防ぐための対策を紹介します。
ハードウェアの定期メンテナンス
ハードディスク/SSDの健康状態をチェック
CrystalDiskInfoなどのツールで、定期的にストレージの状態を確認しましょう。
メモリテストの実施
年に1回程度、メモリ診断ツールでチェックすることをおすすめします。
CMOS電池の定期交換
デスクトップPCなら、3〜5年に一度は交換を検討しましょう。
ソフトウェアの適切な管理
OSとドライバーの更新
- Windows Updateを定期的に実行
- デバイスドライバーを最新に保つ
正しいシャットダウン
- 電源ボタン長押しでの強制終了は避ける
- アップデート中は電源を切らない
データバックアップ
重要なデータは複数の場所に保存
- 外付けHDD/SSD
- クラウドストレージ
- 別のパソコン
チェックサムエラーでデータが失われても、バックアップがあれば安心です。
ネットワーク環境の改善
安定した通信環境を確保
- ルーターを最新のものに更新
- Wi-Fiの電波状況を改善
- 重要なダウンロードは有線接続で
ダウンロードマネージャーの活用
大きなファイルをダウンロードするときは、中断・再開機能のあるダウンロードマネージャーを使いましょう。
エラーが解決しない場合
上記の方法を試しても解決しない場合は、より深刻な問題が考えられます。
ハードウェア故障の可能性
ハードディスク/SSDの故障
頻繁にチェックサムエラーが出る場合、ストレージが寿命を迎えている可能性があります。
早めにバックアップを取って、交換を検討しましょう。
メモリの故障
メモリが故障すると、様々なチェックサムエラーが発生します。
メモリ診断ツールでエラーが検出されたら、速やかに交換が必要です。
マザーボードの問題
CMOS電池を交換してもエラーが続く場合、マザーボード自体の故障も考えられます。
この場合は、専門の修理業者に相談しましょう。
専門家への相談
どんなときに相談すべき?
- 自分で対処しても解決しない
- 重要なデータが失われる危険がある
- ハードウェアの交換が必要そう
相談先:
- パソコンメーカーのサポート
- 専門の修理業者
- データ復旧サービス(データが重要な場合)
まとめ
Checksum Mismatchエラーについて解説してきました。
チェックサムの基本:
- データの正しさを確認するための検査値
- 送信側と受信側で計算した値を比較
- 不一致があればデータの破損や通信エラーを示す
主な発生シーン:
- CMOS checksum error:パソコン起動時(CMOS電池切れなど)
- SVN/Git:バージョン管理システム(作業コピーの破損など)
- ファイルダウンロード:通信エラーやディスク問題
- Windowsブルースクリーン:システムファイルやドライバーの破損
- ネットワーク通信:ネットワークの不安定やケーブル不良
共通の対処法:
- 再起動・再実行を試す
- ハードウェアの状態を確認
- ソフトウェアやドライバーを更新
- ネットワーク環境を改善
予防策:
- 定期的なハードウェアメンテナンス
- OSとドライバーの最新化
- 重要なデータのバックアップ
- 安定したネットワーク環境の確保
Checksum Mismatchエラーは、「データが正しくない」という重要な警告です。
放置すると、データの損失やシステムの不安定につながる可能性があります。エラーが出たら、この記事の対処法を試して、早めに解決することをおすすめします。
それでも解決しない場合は、ハードウェアの故障など深刻な問題の可能性があるため、専門家に相談しましょう。
日頃からバックアップを取る習慣をつけておけば、万が一のときも安心です。大切なデータを守るために、できることから始めてみてくださいね。

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