もしあなたが夢の中で、人の言葉を理解する猫たちが自由に歩き回る美しい町を見たとしたら、それはウルタールかもしれません。
この町には「猫を殺してはいけない」という奇妙な法律があります。
そしてこの法律が生まれた背景には、ある恐ろしい事件があったのです。
この記事では、クトゥルフ神話に登場する猫の町「ウルタール」について、その特徴や伝承、神秘的な魅力を詳しくご紹介します。
概要

ウルタールは、アメリカの怪奇小説家H.P.ラヴクラフトが創造した架空の町です。
クトゥルフ神話における「ドリームランド(夢の国)」という幻想世界に存在し、1920年に発表された短編小説『ウルタールの猫』で初めて登場しました。
ドリームランドというのは、人が深い眠りについたときに訪れることができる異世界のこと。ウルタールはその世界の中でも特に美しく、交易が盛んな重要な町なんですね。
約4万年前に近隣のハテグやニルという町と同時期に作られたとされ、長い歴史を持つ古都として描かれています。
何より特徴的なのは、町中に猫が溢れており、その猫たちが人間の言葉を理解する知性を持っているという点です。
町の姿と特徴
ウルタールは、とても美しく穏やかな雰囲気の町として描かれています。
町の様子
町の主な特徴
- 郊外には緑の農場や牧草地が広がる
- 玉石敷きの通りと古風な尖り屋根の家々
- 町の中心には猫用の家屋や煙突の送風管が並ぶ
- 石造りの外壁に蔦が絡まる美しい建物
- 主な産業はキャベツと毛糸の生産
スカイ川という川の近くに位置しており、交通の要所として商人たちが行き交う賑やかな場所なんです。特にダイラース=リーンという大きな商業都市から、年に2回キャラバン隊が訪れるそうです。
不思議な猫たち
ウルタールの最大の特徴は、やはり猫でしょう。
ウルタールの猫の特徴
- 人間の言葉を理解できる高い知性を持つ
- 猫の言葉に通じていれば会話も可能
- 様々な種類の猫が自由に暮らしている(黒猫、ぶち猫、チベット猫など)
- 非常に義理堅く、恩を忘れない
- 敵対する者には容赦なく襲いかかる
猫たちは町の人々に可愛がられており、町には猫専用の神殿まであるといいます。まさに猫好きにとっては天国のような場所ですね。
「猫を殺してはいけない」法律の由来

ウルタールで最も有名なのが、この奇妙な法律です。しかし、この法律には忘れてはならない悲しい物語があります。
事件の経緯
むかしむかし、ウルタールには近隣の猫を捕まえて残酷に殺すことを好む老夫婦が住んでいました。
村人たちは夫婦を恐れており、飼い猫が行方不明になっても、誰も文句を言うことができませんでした。人の子ではなく猫だからまだましだと、自分を慰めるしかなかったのです。
ある日、放浪民のキャラバン隊が町にやってきました。
その中にメネスという黒髪の孤児の少年がいて、彼は小さな黒猫だけを大切にしていました。ところが3日目の朝、その黒猫が姿を消してしまったんです。
泣きじゃくるメネスに、村人たちはあの老夫婦のことを教えました。
復讐の夜
メネスは空に向かって祈りを捧げました。すると、雲が奇妙な生物のような形に変わっていったのです。
その夜、放浪民たちは町を離れました。
そして不思議なことに、翌日からウルタールの猫が1匹残らず消えてしまったのです。市長は放浪民が連れ去ったと考えましたが、公証人のニスは老夫婦が怪しいと主張します。
宿屋の息子アタル(後に神官となる人物)は、全ての猫たちが老夫婦の家の近くで不思議な儀式のようなことをしていたと証言しました。
恐ろしい結末
翌朝、猫たちは全員戻ってきました。
いずれも毛並みがつややかで満腹そうでしたが、奇妙なことに数日間は餌を一切食べなかったのです。
その日の夜から、誰も老夫婦の姿を見ていないことに人々が気づきました。
老夫婦の家に入った村人たちが発見したのは、肉をすっかり失った人間2人分の骸骨でした。猫たちが復讐を遂げたのです。
この恐ろしい事件の後、ウルタールでは「何人も猫を殺してはならない」という法律が定められました。
スフィンクスの謎を解き、スフィンクスよりも齢を重ね、スフィンクスが忘れ果てたことを覚えている猫。猫を殺す者に災いあれ。
これはウルタールで語り継がれる言葉なんです。
神官アタルと神殿
ウルタールで忘れてはならないのが、町を見守る神官アタルと、丘の上にそびえる神殿です。
神官アタルの物語
アタルは元々、宿屋の息子でした。あの猫の事件を目撃した少年です。
その後、彼は賢者バルザイの弟子となり、聖なるハテグ=クラ山への探索に同行します。この山は「大地の神々」と呼ばれる存在が訪れる聖なる場所でした。
しかし探索は悲劇に終わり、師バルザイは姿を消してしまいます。アタルだけが唯一生還し、その経験を語り継ぐこととなったのです。
現在のアタルは300歳を超える大賢者として、ウルタールの神殿を守っています。迷える「夢見る人」たちに助言や忠告を授けてくれる、町の精神的支柱なんですね。
古文書の宝庫
町の最も高い丘の上にある神殿には、数々の貴重な魔導書が保管されています。
神殿に保管されている古文書
- ナコト写本:ロマールから持ち込まれた最古の魔導書の最後の1冊
- サンの謎の七書(別名「フサの謎の書籍」)
- その他多数の古代の知識を記した文書
特にナコト写本は、クトゥルフ神話の世界では非常に重要な書物とされています。この最後の1冊がウルタールにあるというのは、町の重要性を物語っているんですね。
神殿は石造りの円筒型をしており、外壁には蔦が絡まっている美しい建物だそうです。
ウルタールへの行き方
もしあなたがドリームランドを訪れる機会があれば、ウルタールへはこのように行けます。
ウルタールへの道順
- 浅き眠りの門を通過する(ドリームランドの入口)
- 深き眠りの門をくぐる
- 小さな褐色の体を持つズーグ族が住む魔法の森に出る
- 森を抜けてスカイ川の流れる平原へ
- 川沿いを進むと大きな石橋が見える
- 橋を渡ればウルタールに到着
別のルートとして、ニルという町から橋を渡る方法や、大商業都市ダイラース=リーンからスカイ川を7日間北上する方法もあるそうです。
橋に近づくにつれて、猫を見かける回数がどんどん増えていくのが目印になります。
まとめ
ウルタールは、猫を愛するラヴクラフトが創造した、猫と人間が共存する理想の町です。
重要なポイント
- クトゥルフ神話のドリームランドに存在する美しい古都
- 「猫を殺してはいけない」という法律で有名
- 知性を持つ猫たちが自由に暮らしている
- 残酷な老夫婦への猫たちの復讐が法律の起源
- 300歳を超える神官アタルが守る神殿がある
- 貴重な古文書「ナコト写本」が保管されている
- スカイ川沿いの交易の要所として栄えている
猫好きで知られたラヴクラフトは、この物語に「復讐」というテーマを込めました。残酷な行為には必ず報いがあるという教訓と、猫という動物への深い愛情が感じられる作品なんですね。
もし夢の中でウルタールを訪れることがあったら、猫たちを大切にしてください。そうすれば、きっと彼らはあなたの良き友となってくれるでしょう。


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