「外付けハードディスクを接続したら、『フォーマットする必要があります』と表示された…」
USBメモリや外付けHDD、SDカードなどをパソコンに接続したとき、突然「フォーマットしますか?」と聞かれて、中のデータが見られなくなった経験はありませんか?ディスクの管理を開くと、「RAW」と表示されていることがあります。
RAWフォーマットとは、ファイルシステムが認識できない状態のことです。正確には「フォーマットされていない」わけではなく、Windowsが正しくファイルシステムを読み取れない状態を指します。大切なデータが入っている場合、適切に対処すればデータを復旧できる可能性があるんです。
この記事では、RAWフォーマットの基本的な意味から、原因、データ復旧方法、修復手順、そして予防策まで、初心者にも分かりやすく解説します。突然のトラブルに慌てないよう、ぜひ参考にしてください。
RAWフォーマットとは?基本を理解しよう
まず、RAWフォーマットがどんな状態なのか理解しておきましょう。
ファイルシステムの役割
ファイルシステムとは、コンピュータがデータをストレージに保存・管理するための仕組みです。
図書館の目録のようなもので、「どこに何のファイルがあるか」を記録しています。Windowsでは主にNTFS、exFAT、FAT32などのファイルシステムが使われます。
RAWフォーマットの意味
RAWフォーマットとは、Windowsがストレージデバイスのファイルシステムを認識できない状態を指します。
「RAW」という英語は「生の」「未加工の」という意味です。つまり、ファイルシステムが正しく読み取れず、データが「生のまま」の状態になっているということですね。
ディスクの管理画面で確認すると、通常は「NTFS」や「FAT32」と表示される部分が「RAW」になっています。
RAW状態の症状
ディスクやドライブがRAW状態になると、以下のような症状が現れます。
エクスプローラーでの表示
- ドライブをクリックすると「フォーマットする必要があります。フォーマットしますか?」と表示される
- ドライブのアイコンは表示されるが、中身が見られない
- 使用領域が0バイトと表示される
ディスクの管理での表示
- ファイルシステムが「RAW」と表示される
- 「正常」ではなく「正常(不明なパーティション)」などと表示される
プロパティでの表示
- ファイルシステム:RAW
- 使用領域:0バイト
- 空き領域:0バイト
RAWフォーマットとフォーマットの違い
混同しやすいのですが、以下の違いがあります。
RAWフォーマット(RAW状態)
ファイルシステムが認識できない異常な状態。データは物理的には存在している可能性が高い。
フォーマット(初期化)
意図的にディスクを初期化して、新しいファイルシステムを作成すること。実行するとデータが消える。
RAW状態のディスクに対して「フォーマットしますか?」と聞かれても、すぐに実行してはいけません。まずはデータ復旧を試みるべきです。
RAW状態になる主な原因
ディスクがRAW状態になる原因は様々です。
原因1:突然の電源断
最も多い原因
外付けHDDを使用中に、USBケーブルを抜いてしまったり、停電が発生したりすると、ファイルシステムが破損することがあります。
書き込み中に電源が切れると、ファイルシステムの管理情報が不完全な状態で残ってしまうんです。
原因2:不良セクタの発生
物理的な問題
ハードディスクやSSDに物理的な損傷(不良セクタ)が発生すると、ファイルシステムの重要な部分が読み取れなくなることがあります。
特に、ファイルシステムの管理情報が保存されている領域に不良セクタができると、RAW状態になりやすいです。
原因3:ウイルス感染
マルウェアによる破壊
一部のウイルスやマルウェアは、ファイルシステムを破壊してデータにアクセスできなくすることがあります。
USBメモリを不特定多数のパソコンで使っていると、感染リスクが高まります。
原因4:不適切な取り外し
安全な取り外しをしなかった
Windowsの「ハードウェアの安全な取り外し」を実行せずに、USBメモリや外付けHDDを抜いてしまうと、ファイルシステムが破損する可能性があります。
特に、バックグラウンドで書き込みが行われている最中に抜くと危険です。
原因5:パーティションテーブルの破損
MBRやGPTの問題
ディスクのパーティション情報を管理するMBR(マスターブートレコード)やGPT(GUIDパーティションテーブル)が破損すると、パーティション自体が認識できなくなり、RAW状態と表示されることがあります。
原因6:ファイルシステムの互換性
OSやツールの非対応
Windowsが対応していないファイルシステム(例:Linuxのext4、macOSのAPFS)でフォーマットされたディスクは、WindowsではRAWとして認識されます。
この場合、実際には正常なのですが、Windowsが読めないだけです。
原因7:物理的な故障
ハードウェアの寿命
ハードディスクやSSDが寿命を迎えて故障すると、データが読み取れなくなり、RAW状態として表示されることがあります。
RAW状態からデータを復旧する方法
大切なデータが入っている場合、まずは復旧を試みましょう。
重要な注意点
絶対にやってはいけないこと
- すぐにフォーマットしない(データが完全に消える)
- 新しいデータを書き込まない(復旧率が下がる)
- 何度も復旧を試みない(状態が悪化する可能性)
基本方針
データ復旧を最優先にして、一度きりのチャンスだと思って慎重に対処してください。
方法1:CHKDSKで修復を試みる
軽度の論理的な問題なら、WindowsのCHKDSKコマンドで修復できることがあります。
ステップ1:コマンドプロンプトを管理者として開く
スタートメニューで「cmd」と検索して、「管理者として実行」を選択します。
ステップ2:CHKDSKを実行
以下のコマンドを入力してEnterキーを押します。
chkdsk X: /f /r
(Xの部分は、対象のドライブレターに置き換えてください)
/f:エラーを修復/r:不良セクタを検出して回復
ステップ3:処理を待つ
容量が大きいディスクでは、数時間かかることもあります。辛抱強く待ちましょう。
結果の確認
修復が成功すれば、ファイルシステムが復元され、データにアクセスできるようになります。
注意点
RAW状態のディスクに対してCHKDSKを実行すると、「ファイルシステムの種類はRAWです。RAWドライブにはCHKDSKは使用できません」というエラーメッセージが表示されることがあります。この場合、他の方法を試す必要があります。
方法2:データ復旧ソフトを使う
CHKDSKで修復できない場合、データ復旧ソフトウェアを使います。
おすすめのデータ復旧ソフト
Recuva(無料)
Piriform社が提供する無料のデータ復旧ソフト。初心者でも使いやすいウィザード形式です。
EaseUS Data Recovery Wizard(無料版は2GBまで)
直感的な操作で、削除されたファイルやRAWドライブからデータを復旧できます。
TestDisk(無料・上級者向け)
コマンドライン形式の強力なツール。パーティションテーブルの修復も可能です。
Stellar Data Recovery(有料)
高度な復旧機能を持つプロフェッショナル向けソフトウェアです。
基本的な使い方(EaseUS Data Recovery Wizardの例)
ステップ1:ソフトをダウンロード・インストール
公式サイトからダウンロードして、RAW状態になっていない別のドライブにインストールします。
ステップ2:対象ドライブを選択
ソフトを起動して、RAW状態のドライブを選択し、「スキャン」をクリックします。
ステップ3:スキャンを待つ
ディスク全体がスキャンされます。見つかったファイルがリアルタイムで表示されます。
ステップ4:復旧したいファイルを選択
スキャン結果から、復旧したいファイルにチェックを入れます。
プレビュー機能があれば、ファイルの中身を確認できますよ。
ステップ5:保存先を指定
復旧したファイルの保存先を指定します。
重要:元のドライブとは別の場所に保存してください(上書きを防ぐため)。
ステップ6:復旧を実行
「復旧」ボタンをクリックして、ファイルを保存します。
方法3:パーティションテーブルを修復する
パーティション情報が破損している場合、TestDiskで修復できることがあります。
TestDiskの使い方(概要)
- TestDiskをダウンロード・解凍
- testdisk.exeを管理者として実行
- 対象のディスクを選択
- パーティションテーブルのタイプを選択(通常はIntel/PC)
- 「Analyse」を選択してパーティション構造を解析
- 「Quick Search」または「Deeper Search」でパーティションを検索
- 見つかったパーティションを選択して「Write」で書き込み
TestDiskは上級者向けなので、不安な場合は専門業者に依頼することをおすすめします。
方法4:専門業者に依頼
以下の場合は、データ復旧の専門業者に依頼することを検討してください。
- 重要なビジネスデータで失敗が許されない
- 物理的な故障の疑いがある
- 自分で試して悪化させたくない
- 復旧ソフトで復旧できなかった
費用は数万円から数十万円と高額ですが、成功率は高いです。
RAWドライブをフォーマットして使えるようにする
データが不要な場合、またはデータ復旧が完了した後は、ドライブをフォーマットして正常に使えるようにします。
Windowsの標準機能でフォーマット
方法1:エクスプローラーから
ステップ1:ドライブを右クリック
エクスプローラーでRAW状態のドライブを右クリックして、「フォーマット」を選択します。
ステップ2:設定を選択
- ファイルシステム:NTFS(Windows用)、exFAT(Windows/Mac共用)、FAT32(互換性重視)
- アロケーションユニットサイズ:既定値のまま
- ボリュームラベル:任意の名前
- クイックフォーマット:チェックを入れる(通常はこれで十分)
ステップ3:開始
「開始」ボタンをクリックすると、フォーマットが実行されます。
警告メッセージが表示されますが、データが不要であれば「OK」を選択してください。
方法2:ディスクの管理から
ステップ1:ディスクの管理を開く
Windows + X キーを押して、「ディスクの管理」を選択します。
ステップ2:ボリュームをフォーマット
RAW状態のパーティションを右クリック→「フォーマット」を選択します。
前述と同様の設定を選んで、フォーマットを実行してください。
DISKPARTでフォーマット
コマンドラインでフォーマットしたい場合は、DISKPARTを使います。
ステップ1:DISKPARTを起動
コマンドプロンプトを管理者として開き、以下を入力します。
diskpart
ステップ2:ディスクとボリュームを選択
list disk
select disk 1 (対象のディスク番号)
list volume
select volume 3 (対象のボリューム番号)
ステップ3:フォーマット
format fs=ntfs quick label="データ"
(fs=ntfs の部分は、希望のファイルシステムに変更可能)
ステップ4:完了
フォーマットが完了したら、exitで終了します。
RAW状態を予防する方法
トラブルを未然に防ぐための対策です。
予防策1:安全な取り外しを徹底
外付けドライブやUSBメモリは、必ず「ハードウェアの安全な取り外し」を実行してから抜いてください。
タスクバーの通知領域(時計の近く)にあるUSBアイコンから実行できます。
予防策2:UPS(無停電電源装置)の使用
停電や瞬間的な電圧降下から、パソコンとストレージを守ります。
デスクトップパソコンを使っている場合、特に重要ですよ。
予防策3:定期的なバックアップ
3-2-1ルール
- データのコピーを3つ作る
- 2種類の異なるメディアに保存
- 1つは別の場所(クラウドなど)に保管
こうすることで、1つのドライブがRAW状態になっても、データを失いません。
予防策4:ディスクの健康状態チェック
定期的に、ディスクの健康状態を確認します。
CrystalDiskInfo(無料)
S.M.A.R.T.情報を読み取って、ディスクの健康状態を表示してくれるソフトです。
警告が出たら、早めにデータをバックアップして、ドライブを交換しましょう。
予防策5:ウイルス対策
信頼できるアンチウイルスソフトを導入して、定期的にスキャンしてください。
USBメモリは、接続時に自動的にスキャンされるように設定しておくと安心です。
予防策6:書き込みキャッシュの無効化
外付けドライブの場合、書き込みキャッシュを無効にすると、データの安全性が高まります。
設定方法
- デバイスマネージャーを開く
- 「ディスクドライブ」から対象のドライブを右クリック→「プロパティ」
- 「ポリシー」タブ→「クイック削除」を選択
- 「OK」をクリック
これにより、書き込みが即座に完了するため、突然の取り外しにも強くなります。
トラブルシューティング
RAW状態に関する問題と解決策です。
問題1:CHKDSKが使えない
「RAWドライブにはCHKDSKは使用できません」と表示される場合、ファイルシステムが完全に破損しています。
データ復旧ソフトを使うか、専門業者に依頼してください。
問題2:復旧ソフトでファイルが見つからない
物理的に損傷が激しい場合、復旧ソフトでもファイルを検出できないことがあります。
この場合、専門業者のクリーンルーム作業が必要になる可能性があります。
問題3:フォーマットできない
「Windowsはフォーマットを完了できませんでした」と表示される場合、物理的な故障の可能性があります。
別のフォーマットツール(例:SD Card Formatter、HP USB Disk Storage Format Tool)を試すか、ドライブの交換を検討してください。
問題4:フォーマット後も容量が正しくない
パーティションテーブルに問題がある可能性があります。
DISKPARTで既存のパーティションをすべて削除してから、新しいパーティションを作成してみてください。
問題5:物理的な異音がする
カチカチ、カタカタといった異音がする場合、ハードディスクの物理的な故障です。
すぐに使用を中止して、専門のデータ復旧業者に相談してください。自分で何度も試すと、状態が悪化します。
よくある質問と回答
RAWフォーマットと未フォーマットは違う?
はい、違います。未フォーマットは本当にファイルシステムが存在しない状態。RAWは、ファイルシステムが存在するはずなのに認識できない異常な状態です。
フォーマットすればデータは完全に消える?
クイックフォーマットなら、データ復旧ソフトで復旧できる可能性があります。完全フォーマットの場合、復旧は非常に困難です。
RAW状態のドライブは修理できる?
ソフトウェア的な問題なら、修復や復旧が可能です。物理的な故障の場合、ドライブ自体の交換が必要になります。
SDカードもRAW状態になる?
はい、SDカードも同じようにRAW状態になることがあります。対処方法は基本的に同じです。
Macでも同じ問題が起きる?
はい、Macでも同様の問題が発生します。ディスクユーティリティで「マウントできません」と表示されることがあります。
まとめ:RAW状態は慌てず適切に対処しよう
RAWフォーマットについて詳しく解説しました。
重要なポイントをおさらい
- RAW状態はファイルシステムが認識できない異常な状態
- 突然の電源断や不適切な取り外しが主な原因
- データが必要なら、すぐにフォーマットしてはいけない
- CHKDSKや復旧ソフトでデータを復旧できる可能性がある
- 復旧後はフォーマットして正常に使えるようにする
- 安全な取り外しと定期的なバックアップで予防できる
RAW状態は誰にでも起こりうるトラブルです。大切なデータを守るためには、日頃からのバックアップが何より重要ですね。
もしRAW状態になってしまっても、この記事の手順に従って慎重に対処すれば、データを復旧できる可能性があります。落ち着いて、一つずつ試してみてくださいね!

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