「MacでHFS+って表示が出てきたけど、これは何?」
古いMacや外付けドライブを使っていると、「Mac OS拡張(ジャーナリング)」や「HFS+」という表記を見かけることがありますよね。これは、Appleが長年使ってきたファイルシステムの名前です。
HFS+(Mac OS拡張)は、1998年から2017年まで、約20年間にわたってMacの標準ファイルシステムとして使われていました。現在ではAPFSに置き換えられましたが、古いMacや特定の用途では、今でもHFS+が使われています。
この記事では、HFS+の基本的な仕組みから、APFSとの違い、現在でもHFS+を使うべき場面、フォーマット方法まで、詳しく解説します。Macのストレージ管理を理解するために、ぜひ参考にしてください。
HFS+とは?基本を理解しよう
まず、HFS+がどんなものなのか、基本から説明しましょう。
ファイルシステムの役割
ファイルシステムとは、コンピュータがデータをストレージに保存・管理するための仕組みです。
図書館の蔵書管理システムのようなもので、「どこに何があるか」を記録して、必要なときに素早くファイルを見つけられるようにする役割があります。
HFS+の正式名称
HFS+は、正式には以下のように呼ばれます。
- HFS+(エイチエフエスプラス)
- Mac OS拡張
- Mac OS Extended
ディスクユーティリティでは、通常「Mac OS拡張(ジャーナリング)」という表記で表示されますね。
HFS+の歴史
1998年:登場
Mac OS 8.1とともに登場しました。それまで使われていたHFS(階層ファイルシステム)の改良版として開発されたんです。
1998年〜2017年:Macの標準
約20年間、すべてのMacで標準のファイルシステムとして使われてきました。Mac OS、Mac OS X、OS X、macOSと、OSの名称が変わっても、HFS+は使い続けられました。
2017年:APFSへ移行開始
macOS High Sierraで、新しいAPFS(Apple File System)が導入され、システムドライブがAPFSに移行し始めました。
現在:限定的な利用
現在では、古いMacや特定の用途(Time Machineなど)で、まだHFS+が使われています。
HFS+の種類
HFS+には、いくつかのバリエーションがあります。
Mac OS拡張(ジャーナリング)
最も一般的なHFS+のフォーマット。ジャーナリング機能により、突然の電源断でもデータが保護されます。
Mac OS拡張(大文字/小文字を区別、ジャーナリング)
ファイル名の大文字と小文字を区別する形式。通常のHFS+では、「File.txt」と「file.txt」は同じファイルとして扱われますが、この形式では別のファイルとして認識されます。
UNIX系のシステムとの互換性が必要な場合に使われます。
Mac OS拡張(ジャーナリング、暗号化)
ボリューム全体を暗号化するオプション付きのHFS+です。
Mac OS拡張
ジャーナリング機能なしの古い形式。現在ではほとんど使われません。
HFS+の主な特徴
HFS+がどんな機能を持っているのか見ていきましょう。
特徴1:ジャーナリング機能
ジャーナリングは、ファイルシステムの変更を事前に記録する仕組みです。
例えば、ファイルを保存している最中に電源が落ちた場合、ジャーナリングがあれば、システム起動時に未完了の操作を検出して、ファイルシステムを修復できます。
これにより、データの破損を最小限に抑えられるんですよ。
特徴2:大容量ファイル対応
HFS+は、理論上最大8エクサバイト(8,000,000,000GB)のボリュームと、最大8エクサバイトのファイルサイズをサポートしています。
実用上は、十分すぎる容量ですね。
特徴3:ハードリンク
ハードリンクは、同じファイルに複数の名前を付けられる機能です。
ファイルを実際にコピーせず、複数の場所から同じファイルを参照できるので、ストレージ容量を節約できます。
特徴4:エイリアス
Macのエイリアス(ショートカット)機能をサポートしています。
ファイルやフォルダへのリンクを作成して、元のファイルが移動しても、エイリアスから追跡できます。
特徴5:拡張属性
ファイルに追加情報(メタデータ)を付加できる機能です。
例えば、ファイルにタグやコメントを付けたり、アプリケーション固有の情報を保存したりできます。
特徴6:Time Machineとの互換性
Time Machineのバックアップドライブとして、長年使われてきた実績があります。
macOS Big Sur(2020年)より前のバージョンでは、Time MachineにHFS+が推奨されていました。
HFS+の仕組み
技術的な側面を、分かりやすく説明します。
ブロックとアロケーション
HFS+は、ストレージをアロケーションブロックという単位に分割して管理します。
ファイルは、これらのブロックの集まりとして保存されます。小さなファイルでも、最低1ブロック分のスペースを使うため、多数の小さなファイルがあると、実際のファイルサイズより多くのスペースを消費することがあります。
カタログファイル
HFS+は、カタログファイルというデータベースで、すべてのファイルとフォルダの情報を管理しています。
このカタログファイルには、ファイル名、場所、サイズ、作成日時などの情報が記録されているんです。
B-Treeインデックス
ファイルを素早く検索できるように、B-Tree(バランス木)というデータ構造でインデックスが作られています。
これにより、多数のファイルの中から特定のファイルを効率的に見つけられます。
APFSとの違い
新しいAPFSとHFS+の主な違いを比較しましょう。
比較表
| 項目 | HFS+ | APFS |
|---|---|---|
| 登場時期 | 1998年 | 2017年 |
| 最適化 | ハードディスク向け | SSD向け |
| タイムスタンプ精度 | 1秒 | ナノ秒 |
| スナップショット機能 | なし | あり |
| クローン機能 | なし | あり |
| スペース共有 | なし | あり |
| 暗号化性能 | 低速 | 高速 |
| クラッシュ耐性 | 中程度 | 高い |
| 対応OS | Mac OS 8.1以降 | macOS 10.13以降 |
パフォーマンスの違い
SSDでの性能
APFSはSSD向けに最適化されているため、SSDではAPFSの方が高速です。特に、メタデータの処理やディレクトリの表示が速くなっています。
HDDでの性能
従来のハードディスク(HDD)では、HFS+とAPFSの性能差はそれほど大きくありません。
むしろ、一部の操作ではHFS+の方が安定していることもあります。
機能の違い
APFSの新機能
- スナップショット(システムの状態を瞬時に保存)
- クローン(ファイルのコピーを瞬時に作成)
- スペース共有(複数のボリュームで容量を共有)
- ナノ秒精度のタイムスタンプ
HFS+の特徴
- 古いMacでも使える
- Time Machineの実績が豊富
- サードパーティツールの対応が充実
- HDDでも安定動作
HFS+のメリット
現在でもHFS+を選ぶ理由があります。
メリット1:古いMacとの互換性
Mac OS 8.1以降のすべてのMacで読み書きできます。
macOS High Sierra(2017年)より前のMacとデータをやり取りする場合、HFS+なら確実に互換性があります。
メリット2:安定性と実績
20年以上使われてきた実績があり、非常に安定したファイルシステムです。
予期しない動作やバグが少ないのが特徴ですね。
メリット3:Time Machineとの相性
Time Machineのバックアップドライブとして、長年の実績があります。
macOS Big Sur(2020年)より前のOSでは、Time MachineにHFS+が推奨されていました。
メリット4:ツールやソフトの対応
ディスク復旧ソフトやメンテナンスツールは、HFS+に対応しているものが多くあります。
APFSに対応していない古いツールでも、HFS+なら使える場合があります。
メリット5:HDDでの使用
従来のハードディスク(HDD)を使う場合、HFS+でも十分な性能が得られます。
特に、Time Machine用の外付けHDDなどでは、HFS+が適していることもあります。
メリット6:Windowsでの読み込み
サードパーティのソフトウェア(Paragon HFS+ for Windowsなど)を使えば、WindowsでもHFS+ボリュームを読み書きできます。
APFSよりも、Windows用のツールが充実しています。
HFS+のデメリット
一方で、HFS+には以下のような欠点もあります。
デメリット1:SSDでの性能
SSDに最適化されていないため、APFSに比べると、SSDでの性能が劣ります。
特に、多数の小さなファイルを扱う場合や、メタデータの処理が遅いです。
デメリット2:タイムスタンプの精度
タイムスタンプが1秒単位なので、高精度な時刻管理が必要な場合には不向きです。
デメリット3:暗号化性能
FileVaultで暗号化した場合、APFSよりも読み書き速度が遅くなります。
デメリット4:先進機能の欠如
スナップショット、クローン、スペース共有などの最新機能がありません。
デメリット5:将来性
Appleの今後の開発は、APFSを中心に進められます。
HFS+は、将来的にサポートが終了する可能性があります。
現在でもHFS+を使うべき場面
どんな場合にHFS+を選ぶべきか、具体的な状況を紹介します。
場面1:古いMacとのデータ共有
macOS High Sierra(2017年)より前のMacとデータをやり取りする外付けドライブは、HFS+でフォーマットするのが確実です。
場面2:Time Machineバックアップ(古いOS)
macOS Mojave(2018年)以前のTime Machineバックアップには、HFS+が推奨されます。
場面3:外付けHDD
大容量の外付けハードディスクは、HFS+でも問題ありません。
APFSとHFS+の性能差が小さいため、安定性を重視してHFS+を選ぶのも良いでしょう。
場面4:ブート可能なバックアップ
起動可能なクローンバックアップを作成する場合、古いOSではHFS+が必要になることがあります。
場面5:互換性重視の場合
古いMac、復旧ツール、サードパーティソフトウェアとの互換性を重視する場合、HFS+が安全な選択です。
HFS+でフォーマットする方法
実際にHFS+でドライブをフォーマットする手順です。
注意:フォーマットするとすべてのデータが消えます。必ずバックアップを取ってから実行してください。
ディスクユーティリティでフォーマット
ステップ1:ディスクユーティリティを開く
「アプリケーション」→「ユーティリティ」→「ディスクユーティリティ」を開きます。
ステップ2:ドライブを選択
左側のサイドバーで、フォーマットしたいドライブを選択してください。
ボリュームではなく、物理ドライブ(一番上の階層)を選ぶのがポイントです。
ステップ3:消去をクリック
上部ツールバーの「消去」ボタンをクリックします。
ステップ4:フォーマット設定
以下の項目を設定します。
- 名前:任意のドライブ名を入力
- フォーマット:「Mac OS拡張(ジャーナリング)」を選択
- 方式:「GUIDパーティションマップ」を選択
フォーマットの選択肢
- Mac OS拡張(ジャーナリング):標準的な選択
- Mac OS拡張(大文字/小文字を区別、ジャーナリング):UNIXシステムとの互換性が必要な場合
- Mac OS拡張(ジャーナリング、暗号化):データを暗号化したい場合
通常は、「Mac OS拡張(ジャーナリング)」を選べば問題ありません。
ステップ5:消去を実行
「消去」ボタンをクリックすると、フォーマットが開始されます。
完了したら、「完了」をクリックしてください。
暗号化オプションを選んだ場合
「Mac OS拡張(ジャーナリング、暗号化)」を選択した場合、パスワードの設定が求められます。
強力なパスワードを設定してください。このパスワードを忘れると、データにアクセスできなくなるので注意が必要ですよ。
APFSからHFS+への変換
APFSボリュームをHFS+に変換する方法です。
変換の注意点
重要:APFSからHFS+への直接変換はできません。
APFSボリュームをHFS+にするには、以下の手順が必要です。
- データをバックアップ
- ドライブをHFS+でフォーマット(すべてのデータが消える)
- バックアップからデータを復元
直接変換する機能はないので、必ずバックアップを取ってから作業してください。
システムドライブの場合
macOS High Sierra以降のMacで、システムドライブをHFS+に戻すことは、公式にはサポートされていません。
外付けドライブにTime Machineバックアップを取ってから、古いOSで復元する、といった複雑な手順が必要になります。
HFS+のメンテナンス
HFS+ボリュームを健全に保つ方法です。
First Aidで検証・修復
ステップ1:ディスクユーティリティを開く
「アプリケーション」→「ユーティリティ」→「ディスクユーティリティ」を起動します。
ステップ2:ボリュームを選択
左側のサイドバーで、検証したいボリュームを選択してください。
ステップ3:First Aidを実行
上部ツールバーの「First Aid」ボタンをクリックして、「実行」を選択します。
ディスクの検証と修復が行われます。エラーが見つかった場合、自動的に修復が試みられます。
定期的な確認
月に1回程度、First Aidを実行すると、問題を早期に発見できます。
システムドライブの場合は、macOS復旧モード(Command + R で起動)から実行する必要がありますよ。
よくある質問と回答
HFS+とAPFS、どちらを使うべき?
新しいMac(2017年以降)や外付けSSDなら、APFSが推奨されます。
古いMacとの互換性が必要な場合や、外付けHDDの場合は、HFS+も選択肢になります。
HFS+のドライブをAPFSに変換できる?
はい、「ディスクユーティリティ」の「編集」メニュー→「APFSに変換」で変換できます。
ただし、変換前に必ずバックアップを取ってください。
Time Machine用ドライブはHFS+とAPFS、どちらが良い?
macOS Big Sur(2020年)以降を使っているなら、APFSが推奨されます。
それより古いOSでは、HFS+が安定しています。
WindowsでHFS+ドライブを読める?
標準ではできませんが、Paragon HFS+ for WindowsやMacDriveなどのサードパーティソフトを使えば、読み書きできます。
HFS+は今後も使える?
当面は使えますが、Appleの開発の中心はAPFSに移っています。
長期的には、APFSへの移行を検討する方が良いでしょう。
まとめ:HFS+は実績豊富な安定したファイルシステム
HFS+について詳しく解説しました。
重要なポイントをおさらい
- HFS+は1998年から2017年まで、Macの標準ファイルシステムだった
- 安定性と互換性に優れ、20年以上の実績がある
- APFSに比べてSSDでの性能は劣るが、HDDでは十分
- 古いMacとのデータ共有や、Time Machineバックアップ(古いOS)に適している
- 新しいMacやSSDには、APFSが推奨される
- 将来的にはAPFSが主流になる見込み
HFS+は、現在ではAPFSに置き換えられつつありますが、互換性や安定性の面で、まだまだ活躍の場があります。特に、古いMacを使っている方や、Time Machineバックアップを運用している方は、HFS+の知識が役立つでしょう。
用途に応じて、HFS+とAPFSを使い分けることで、最適なストレージ管理ができますよ!

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