「MacやiPhoneで使われているAPFSって、何のこと?」
Macを使っていると、ディスクユーティリティやストレージ情報で「APFS」という言葉を見かけることがありますよね。でも、普段あまり意識することがないので、実際にどんなものなのか分からない人も多いでしょう。
APFS(Apple File System)は、Appleが開発した最新のファイルシステムです。macOS、iOS、iPadOS、watchOS、tvOSなど、すべてのApple製品で使われています。以前使われていたHFS+に比べて、速度、セキュリティ、信頼性が大幅に向上しているんです。
この記事では、APFSの基本的な仕組みから、主な特徴、メリット・デメリット、実際の使い方まで、初心者にも分かりやすく解説します。Macを使っている方は、ぜひ参考にしてください。
APFSとは?基本を理解しよう

まず、APFSがどんなものなのか、基本から説明しましょう。
ファイルシステムとは
ファイルシステムとは、コンピュータがデータをストレージ(ハードディスクやSSDなど)に保存・管理するための仕組みです。
本棚に例えると、ファイルシステムは「本の整理方法」のようなもの。どこに何があるかを記録し、必要なときに素早く取り出せるようにする役割があります。
WindowsではNTFS、macOSではAPFS、LinuxではExt4といった具合に、OSによって異なるファイルシステムが使われているんです。
APFSの概要
APFS(Apple File System)は、2017年にAppleが導入した新しいファイルシステムです。
- 読み方:エーピーエフエス または アップルファイルシステム
- 登場時期:2017年(macOS High Sierra、iOS 10.3)
- 対応デバイス:Mac、iPhone、iPad、Apple Watch、Apple TV
- 対応ストレージ:SSD、ハードディスク、USBフラッシュドライブなど
macOS High Sierra(2017年)以降のMacでは、システムドライブにAPFSが標準で使われています。
APFSが開発された背景
以前、MacではHFS+(Mac OS拡張)というファイルシステムが使われていました。
しかし、HFS+は1998年に導入された古い技術で、以下のような問題がありました。
- SSDの性能を十分に活かせない
- データの整合性を保つ仕組みが弱い
- 暗号化の性能が低い
- タイムスタンプの精度が低い
これらの問題を解決し、現代のストレージ技術に最適化されたファイルシステムとして、APFSが開発されたんです。
APFSの主な特徴と機能
APFSには、多くの先進的な機能が搭載されています。
特徴1:スペース共有
スペース共有とは、1つの物理ストレージを複数のボリューム(仮想的なドライブ)で共有できる機能です。
従来のファイルシステムでは、ボリュームごとに固定のサイズを割り当てる必要がありました。例えば、500GBのドライブを2つのボリュームに分ける場合、それぞれに250GBずつ固定で割り当てる形です。
APFSでは、すべてのボリュームが空き容量を共有します。必要に応じて動的に容量が調整されるので、スペースを無駄なく使えるんですよ。
特徴2:スナップショット
スナップショットは、特定の時点でのファイルシステムの状態を瞬時に記録する機能です。
Time Machineのバックアップや、macOSのアップデート時に、自動的にスナップショットが作成されます。万が一、アップデートに失敗しても、スナップショットから元の状態に復元できるので安心ですね。
特徴3:クローン機能
クローン機能は、ファイルやフォルダのコピーを、実際にデータを複製せずに作成できる機能です。
通常、大きなファイルをコピーすると、同じサイズの新しいファイルが作られます。しかしAPFSのクローンでは、元のデータを参照するだけなので、瞬時にコピーが完了し、ストレージ容量も節約できます。
変更があった部分だけが新しく保存される仕組みなんです。
特徴4:強力な暗号化
APFSは、ボリューム全体を暗号化する機能を標準で備えています。
- シングルキー暗号化:ボリューム全体を1つの鍵で暗号化
- マルチキー暗号化:ファイルごとに異なる鍵で暗号化
FileVaultを有効にすると、APFSの暗号化機能が使われ、データが保護されます。
特徴5:クラッシュプロテクション
クラッシュプロテクションは、突然の電源断やシステムクラッシュからデータを守る機能です。
APFSは「コピーオンライト」という仕組みを採用していて、データを書き込む際に、元のデータを上書きせず、新しい場所に書き込みます。書き込みが完了してから参照先を変更するので、途中でクラッシュしてもデータが壊れにくいんです。
特徴6:高精度なタイムスタンプ
APFSは、ナノ秒単位(10億分の1秒)の精度でファイルのタイムスタンプを記録します。
HFS+は1秒単位だったので、大幅に精度が向上しました。これにより、ファイルの作成・変更・アクセスの時刻をより正確に管理できます。
特徴7:高速な処理
SSDに最適化された設計により、ファイルの読み書き、フォルダの表示、ファイルのコピーなどが高速化されています。
特に、多数の小さなファイルを扱う場合や、メタデータ(ファイル情報)の処理速度が向上しています。
HFS+(Mac OS拡張)との違い
以前のファイルシステムとの主な違いを見ていきましょう。
比較表
| 項目 | APFS | HFS+ |
|---|---|---|
| 登場時期 | 2017年 | 1998年 |
| 最適化 | SSD向け | ハードディスク向け |
| タイムスタンプ精度 | ナノ秒 | 1秒 |
| スナップショット | あり | なし |
| クローン機能 | あり | なし |
| スペース共有 | あり | なし |
| 暗号化性能 | 高速 | 低速 |
| クラッシュ耐性 | 高い | 低い |
パフォーマンスの違い
APFSは、特に以下の操作で高速です。
- ファイルのコピー(クローン機能により瞬時)
- フォルダの表示(メタデータの処理が高速)
- ディスクの空き容量の計算(スペース共有により効率的)
- 暗号化されたボリュームの読み書き
互換性の違い
HFS+は古いMacやWindowsでも読み込める場合がありますが、APFSは比較的新しいOSでないと認識されません。
- APFS:macOS High Sierra以降、iOS 10.3以降でサポート
- HFS+:Mac OS 8.1以降、サードパーティツールでWindowsでも読み込み可能
外付けドライブをWindowsとMacの両方で使いたい場合は、exFATなど別のファイルシステムを選ぶ必要がありますね。
APFSのメリット
APFSを使うことで得られる利点です。
メリット1:高速なパフォーマンス
SSDでの動作が最適化されているため、ファイル操作が高速です。特に、大量のファイルを扱う場合に、その差が顕著に現れます。
メリット2:ストレージの効率的な利用
スペース共有により、ボリュームごとに固定容量を割り当てる必要がありません。必要な分だけ使えるので、無駄がないんです。
メリット3:データの安全性向上
クラッシュプロテクション機能により、突然のシステム障害でもデータが保護されます。
スナップショット機能で、システムの状態を保存できるのも安心ですね。
メリット4:強力なセキュリティ
FileVaultと組み合わせることで、高速かつ強力な暗号化が可能です。ノートパソコンの紛失時などでも、データを守れます。
メリット5:Time Machineとの統合
Time MachineがAPFSのスナップショット機能を活用して、ローカルスナップショットを作成します。バックアップドライブがなくても、一時的に過去の状態に戻せるんです。
メリット6:最新機能のサポート
Appleの新機能は、APFSを前提に開発されることが多いです。最新のmacOS機能を十分に活用するには、APFSが必須になっています。
APFSのデメリット・注意点

良いことばかりではなく、いくつか注意点もあります。
デメリット1:古いOSとの互換性
macOS High Sierra(2017年)より前のOSでは、APFSボリュームを読み込めません。
古いMacとデータをやり取りする場合は、HFS+やexFATを使う必要があります。
デメリット2:Windowsでは標準サポートされない
WindowsはAPFSを標準ではサポートしていません。
サードパーティのソフトウェアを使えば読み込めますが、WindowsとMacの両方で使う外付けドライブには向いていません。
デメリット3:一部のユーティリティが非対応
古いディスク管理ツールやデータ復旧ソフトは、APFSに対応していないことがあります。
ツールを使う前に、APFS対応を確認してくださいね。
デメリット4:ハードディスクでの性能
APFSはSSD向けに最適化されているため、従来のハードディスク(HDD)では、HFS+と比べて劇的な性能向上は見られません。
Time Machine用の外付けHDDなどは、HFS+のままでも問題ない場合があります。
デメリット5:Fusion Driveの制限
Fusion Drive(SSDとHDDを組み合わせたApple独自のストレージ)では、APFSの一部機能が制限されることがあります。
APFSの使い方
実際にAPFSを使う際の操作方法です。
現在のファイルシステムを確認する方法
ステップ1:ディスクユーティリティを開く
「アプリケーション」→「ユーティリティ」→「ディスクユーティリティ」を開きます。
ステップ2:ドライブを選択
左側のサイドバーで、確認したいドライブまたはボリュームを選択してください。
ステップ3:ファイルシステムを確認
右側の情報欄に、「フォーマット」として「APFS」または「Mac OS拡張(ジャーナリング)」などと表示されます。
「APFS」と表示されていれば、APFSが使われています。
外付けドライブをAPFSでフォーマットする
注意:フォーマットするとすべてのデータが消えます。必ずバックアップを取ってから実行してください。
ステップ1:ディスクユーティリティを開く
前述の方法でディスクユーティリティを起動します。
ステップ2:外付けドライブを選択
左側のサイドバーで、フォーマットしたい外付けドライブを選択してください。
ボリュームではなく、物理ドライブを選ぶのがポイントです。
ステップ3:消去をクリック
上部の「消去」ボタンをクリックします。
ステップ4:フォーマット設定
以下の項目を設定してください。
- 名前:任意の名前を入力
- フォーマット:「APFS」を選択
- 方式:「GUIDパーティションマップ」を選択
APFSのバリエーション
- APFS:標準(暗号化なし)
- APFS(暗号化):暗号化あり
- APFS(大文字/小文字を区別):ファイル名の大文字小文字を区別
- APFS(大文字/小文字を区別、暗号化):両方の機能
通常は「APFS」または「APFS(暗号化)」を選べば良いでしょう。
ステップ5:消去を実行
「消去」ボタンをクリックすると、フォーマットが開始されます。
完了したら、「完了」をクリックしてください。
HFS+からAPFSへ変換する
既存のHFS+ボリュームをAPFSに変換することもできます。
注意:変換前に必ずバックアップを取ってください。
方法1:システムアップデート時に自動変換
macOS High Sierra以降にアップデートすると、システムドライブが自動的にAPFSに変換されることがあります。
方法2:ディスクユーティリティで変換
「ディスクユーティリティ」の「編集」メニュー→「APFSに変換」を選択して、手動で変換できます。
ただし、この機能はmacOSのバージョンによって利用できない場合があります。
方法3:ターミナルコマンド
上級者向けですが、ターミナルから以下のコマンドで変換できます。
diskutil apfs convert disk2s2
(disk2s2の部分は、対象のボリューム識別子に置き換えてください)
APFSボリュームの管理
APFSボリュームならではの操作方法です。
ボリュームの追加
1つのAPFSコンテナ内に、複数のボリュームを追加できます。
ディスクユーティリティで追加
- APFSコンテナを選択
- 上部の「+」ボタンをクリック
- ボリューム名とオプションを設定
- 「追加」をクリック
新しいボリュームは、コンテナの空き容量を共有します。サイズの上限を設定することもできますよ。
スナップショットの確認
ターミナルから、スナップショットを確認できます。
tmutil listlocalsnapshots /
Time Machineが作成したローカルスナップショットの一覧が表示されます。
よくある質問と回答
APFSとHFS+、どちらを使うべき?
新しいMacや外付けSSDなら、APFSを使うべきです。高速で、セキュリティも優れています。
ただし、Windows PCと共用する外付けドライブや、古いMacとのデータ交換が必要な場合は、exFATやHFS+を検討してください。
Time Machine用のドライブもAPFSにすべき?
macOS Big Sur(2020年)以降では、Time MachineバックアップもAPFSが推奨されています。
それ以前のOSでは、HFS+でも問題ありません。
APFSは自動的にデフラグする?
SSDではデフラグは不要です。APFSは、SSDの特性に合わせて最適化されているので、デフラグツールを使う必要はありません。
むしろ、SSDの寿命を縮める可能性があるので、避けてくださいね。
APFSでディスクが破損したら復旧できる?
First Aid(ディスクユーティリティの「First Aidを実行」)で、多くの問題を修復できます。
それでもダメな場合は、データ復旧ソフト(APFS対応のもの)を使うか、専門業者に依頼する必要があります。
iPhoneもAPFS?
はい、iOS 10.3以降のiPhoneやiPadは、APFSを使っています。
これにより、iOSデバイスでもストレージの効率化やセキュリティの向上が実現されています。
まとめ:APFSは現代のAppleデバイスに最適なファイルシステム
APFSについて詳しく解説しました。
重要なポイントをおさらい
- APFSはAppleの最新ファイルシステム(2017年〜)
- SSDに最適化され、高速で安全
- スペース共有、スナップショット、クローン機能が便利
- macOS High Sierra以降、iOS 10.3以降で標準採用
- HFS+より高性能だが、古いOSやWindowsとの互換性は低い
- 新しいMacやSSDはAPFS、Windows共用ならexFATを選ぶ
APFSは、現代のストレージ技術に合わせて設計された優れたファイルシステムです。普段は意識することがなくても、裏側でMacのパフォーマンスとセキュリティを支えているんですよ。
外付けドライブのフォーマットやバックアップ設定をする際は、この記事を参考に、目的に合ったファイルシステムを選んでくださいね!

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