夜の山で、木の上から赤ちゃんの泣き声が聞こえてきたら、あなたはどう思いますか?
東京都三宅島では、昔からこんな不思議な現象が語り継がれてきました。
姿は見えないのに、木の上で赤ちゃんのような声で鳴き、「オゴメ笑い」という奇妙な高笑いをする謎の存在。
この記事では、三宅島に伝わる不思議な妖怪「オゴメ」について、その特徴や興味深い伝承を詳しくご紹介します。
オゴメってどんな妖怪なの?

オゴメは、東京都三宅島に伝わる山の妖怪です。
最大の特徴は、姿が見えないということなんですね。
木の上にいることは分かるのですが、その姿を人間が目にすることはできません。
でも、その存在ははっきりと音で感じ取ることができるんです。
オゴメの主な特徴
- 赤ちゃんのような産声で鳴く
- 「オゴメ笑い」という特徴的な高笑いをする
- 姿は見えないが存在は感じられる
- 木の上に潜んでいる
- ウグメという別名でも呼ばれる
民俗学者の大間知篤三の著書『神津の花正月』によると、オゴメは三宅島の山中で笑い声をたてる怪鳥だとされています。
一説には木霊(こだま)、つまり木の精霊の一種ではないかとも考えられているんです。
産女(うぶめ)との深い関係
実はオゴメには、産女(うぶめ)という別の妖怪との興味深いつながりがあります。
産女というのは、出産で亡くなった女性の霊が妖怪化したもので、赤ちゃんを抱いて現れるという伝承があるんですね。
オゴメの別名「ウグメ」は、まさにこの産女の地方名でもあるんです。
中国の妖怪「姑獲鳥」との関連
さらに興味深いのが、オゴメのルーツが中国の妖怪にあるという説です。
中国には姑獲鳥(こかくちょう)という鬼神がいます。
この姑獲鳥の特徴を見てみましょう:
- 羽毛を着ると鳥の姿に変身する
- 羽毛を脱ぐと女性の姿になる
- 他人の子供を奪って自分の子とする習性がある
- 鳴き声が赤ん坊のよう
どうでしょう?オゴメの特徴と見事に一致していますよね。
つまり、オゴメは産女の特徴と姑獲鳥の特徴を併せ持つ、鳥の姿をした産女の一種だと考えられているんです。
伝承
京都の怪鳥伝説
オゴメと関連する興味深い話が、延宝時代の怪談集『諸国百物語』に記録されています。
「靏(つる)の林、うぐめの化け物の事」という話なんですが、これがオゴメの正体を考える上で重要な手がかりになります。
伝承のあらすじ
- 京の都の林に夜な夜な「うぐめ」という化け物が現れた
- この化け物は赤ちゃんのような声で泣いた
- ある者が正体を見極めようと刀で斬り落とした
- その正体は大きなゴイサギだった
ゴイサギは実在する鳥で、夜行性で「グワッグワッ」という独特の鳴き声を出します。
この鳴き声が暗闇で聞こえたら、確かに不気味で赤ちゃんの泣き声のように聞こえたのかもしれませんね。
各地に広がる類似伝承
実は、オゴメやウグメのような妖怪の話は、日本各地に残っているんです。
茨城県では、これに類するものを「ウバメトリ」と呼んでいます。
「産女鳥」と書いて「うばめとり」と読み、やはり産女が鳥の姿になったものとされているんですね。
こうした伝承が各地に残っているということは、昔の人々が夜の山で聞く鳥の鳴き声に、何か不思議な力を感じていたことの表れなのかもしれません。
まとめ
オゴメは、姿を見せずに音だけで存在を示す、神秘的な妖怪です。
重要なポイント
- 東京都三宅島に伝わる山の妖怪
- 姿は見えないが赤ちゃんのような鳴き声がする
- 「オゴメ笑い」という特徴的な高笑いをする
- 産女(うぶめ)という妖怪との深い関連がある
- 中国の姑獲鳥(こかくちょう)の影響を受けている
- 正体は怪鳥または木霊という説がある
- 『諸国百物語』ではゴイサギだったとされる
もし三宅島の山で、木の上から赤ちゃんの泣き声や不思議な笑い声が聞こえてきたら…それはオゴメの仕業かもしれませんね。
姿は見えなくても、確かにそこに存在する何か。
そんな不思議な存在が、今も三宅島の山々に息づいているのかもしれません。


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