「Thunderbirdを使っていたけど、仕事でOutlookが必要になった」「Office 365を契約したから、Outlookに統一したい」
メールソフトを乗り換える際、最も心配なのがデータの移行ですよね。何年も使ってきたメール、大切な連絡先、すべてを失うわけにはいきません。
この記事では、ThunderbirdからOutlookへ安全にデータを移行する方法を、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。メール、アドレス帳、予定表まで、すべてのデータを確実に引き継げるでしょう。
移行前に知っておくべきこと

作業を始める前に、重要なポイントを理解しましょう。
移行できるデータ
ThunderbirdからOutlookへ移行できるデータは以下の通りです。
メール
受信トレイ、送信済みアイテム、フォルダー分けしたメールなど、すべてのメールを移行できます。
アドレス帳(連絡先)
登録している連絡先情報を移行可能です。
予定表(カレンダー)
Thunderbirdで管理している予定も移行できますが、少し手順が複雑になります。
移行方法の選択肢
大きく分けて3つの方法があります。
方法1:IMAP経由での移行(推奨)
両方のソフトでIMAPアカウントを設定し、サーバー経由で同期します。最も簡単で確実な方法です。
方法2:EMLファイル経由での移行
Thunderbirdからメールを個別にエクスポートし、Outlookにドラッグ&ドロップします。
方法3:変換ツールを使った移行
サードパーティのツールを使って、Thunderbird形式をOutlook形式に変換します。
それぞれの方法を詳しく解説していきましょう。
移行前の準備
安全に移行するため、必ず準備作業を行ってください。
Thunderbirdデータのバックアップ
手順
- Thunderbirdを起動
- プロファイルフォルダーの場所を確認
- 「ヘルプ」→「トラブルシューティング情報」
- 「プロファイルフォルダー」の「フォルダーを開く」をクリック
- Thunderbirdを完全に終了
- プロファイルフォルダー全体をコピー
- 外付けHDDやクラウドストレージに保存
Windowsでのプロファイル場所
C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Roaming\Thunderbird\Profiles
このバックアップがあれば、万が一失敗しても元に戻せます。
Outlookのインストール確認
確認事項
- Outlookがインストールされているか
- バージョンは何か(Outlook 2016、2019、365など)
- ライセンスは有効か
まだインストールしていない場合は、先にOutlookをインストールしてください。
方法1:IMAP経由での移行(最も簡単)
メールアカウントがIMAP対応なら、この方法が最適です。
IMAPとは
IMAP(アイマップ)は、メールをサーバー上で管理する仕組みです。
Gmail、Outlook.com、Yahoo!メールなど、主要なメールサービスはすべてIMAPに対応しています。IMAPなら、Thunderbirdで見ているメールと、Outlookで見るメールが完全に同じになるのです。
この方法が使える条件
確認ポイント
- Thunderbirdで使っているアカウントがIMAP設定か確認
- Thunderbirdの「ツール」→「アカウント設定」
- 「サーバー設定」で「サーバーの種類」を確認
- 「IMAPメールサーバー」と表示されていればOK
POPアカウントの場合は、方法2または3を使ってください。
手順
ステップ1:Outlookでメールアカウントを設定
- Outlookを起動
- 「ファイル」→「アカウントの追加」
- メールアドレスを入力
- 自動設定が始まる(IMAP設定が自動検出される)
- パスワードを入力
- 完了
ステップ2:同期を待つ
- Outlookがサーバーからメールをダウンロードし始める
- 右下のステータスバーで進行状況を確認
- すべてのメールがダウンロードされるまで待つ
メールの数が多いと、数時間かかることもあります。
ステップ3:フォルダー構造の確認
- Thunderbirdで作成したフォルダーが、Outlookでも表示されるか確認
- 受信トレイ、送信済みアイテムなどが正しく同期されているか確認
ステップ4:Thunderbirdの接続解除
- 移行が完了したら、Thunderbirdは使わない
- または、Thunderbirdからアカウントを削除
これで、すべてのメールがOutlookで使えるようになります。
方法2:EMLファイル経由での移行
POPアカウントや、ローカルフォルダーのメールを移行する方法です。
EML形式でのエクスポート
Thunderbirdのメールを個別にエクスポートします。
手順1:ImportExportToolsアドオンのインストール
- Thunderbirdを起動
- 「ツール」→「アドオンとテーマ」
- 検索ボックスで「ImportExportTools NG」を検索
- 「Thunderbirdに追加」をクリック
- インストール完了後、Thunderbirdを再起動
手順2:メールのエクスポート
- エクスポートしたいフォルダーを右クリック
- 「ImportExportTools NG」→「フォルダーをエクスポート」→「EML形式ですべてのメッセージをエクスポート」
- 保存先フォルダーを指定(例:デスクトップに「ThunderbirdMails」フォルダーを作成)
- エクスポートが完了するまで待つ
手順3:すべてのフォルダーを繰り返す
受信トレイ、送信済みアイテム、その他のフォルダーすべてで同じ作業を繰り返します。
Outlookへのインポート
手順1:新しいフォルダーを作成(任意)
- Outlookで移行先のフォルダーを作成
- 「受信トレイ」を右クリック→「フォルダーの作成」
- 「Thunderbirdから移行」などの名前を付ける
手順2:EMLファイルをドラッグ&ドロップ
- エクスプローラーでエクスポートしたEMLファイルがあるフォルダーを開く
- すべてのEMLファイルを選択(Ctrl + A)
- Outlookの目的のフォルダーにドラッグ&ドロップ
- インポートが始まる
手順3:フォルダーごとに繰り返す
エクスポートしたすべてのフォルダーについて、同じ作業を繰り返します。
注意点
数千通のメールがある場合、この方法は時間がかかります。小規模な移行に適しているでしょう。
方法3:MBOXファイル経由での移行
Thunderbird形式のデータファイルを使う方法です。
MBOXファイルのエクスポート
手順
- ImportExportTools NGアドオンをインストール(前述)
- エクスポートしたいフォルダーを右クリック
- 「ImportExportTools NG」→「フォルダーをエクスポート」→「MBOX形式でエクスポート」
- 保存先を指定
- すべてのフォルダーで繰り返す
OutlookでMBOXファイルを開く
Outlookは直接MBOXファイルを読めないため、変換ツールが必要です。
無料ツールの例
- Aid4Mail Community Edition(制限あり)
- Thunderbird to Outlook Transfer(有料だが確実)
Aid4Mail Community Editionの使い方
- https://www.aid4mail.com/ からダウンロード
- インストールして起動
- 「Source」でMBOXファイルを選択
- 「Target」で「Outlook」を選択
- 「Run」をクリック
- 変換が完了すると、OutlookのPSTファイルが作成される
- OutlookでPSTファイルを開く
有料ツールのメリット
- 確実性が高い
- フォルダー構造を保持
- 添付ファイルも完全に移行
- サポートあり
アドレス帳の移行

連絡先もしっかり移行しましょう。
ThunderbirdからCSV形式でエクスポート
手順
- Thunderbirdを起動
- 「ツール」→「アドレス帳」を開く
- エクスポートしたいアドレス帳を選択
- 「ツール」→「エクスポート」
- 「カンマ区切り(.csv)」を選択
- ファイル名を付けて保存(例:thunderbird_contacts.csv)
OutlookへCSVファイルをインポート
手順
- Outlookを起動
- 「ファイル」→「開く/エクスポート」→「インポート/エクスポート」
- 「他のプログラムまたはファイルからのインポート」を選択
- 「次へ」をクリック
- 「テキストファイル(カンマ区切り)」を選択
- 「次へ」をクリック
- 先ほど保存したCSVファイルを選択
- 「次へ」をクリック
- インポート先として「連絡先」を選択
- 「次へ」→「完了」をクリック
フィールドのマッピング
「フィールドの一致」ボタンで、Thunderbirdの項目とOutlookの項目の対応を確認できます。
- 名前→姓名
- メールアドレス→電子メール
- 電話番号→勤務先電話番号
など、適切に対応させましょう。
vCard形式での移行
もう1つの方法として、vCard形式もあります。
手順
- Thunderbirdのアドレス帳で「ツール」→「エクスポート」
- 「vCard」を選択
- Outlookで「ファイル」→「開く」→「vCardのインポート」
- 保存したvCardファイルを選択
ただし、複数の連絡先を一度にインポートする場合、CSV形式の方が便利です。
予定表(カレンダー)の移行
Thunderbirdで予定表を使っている場合の移行方法です。
iCalendar形式でエクスポート
手順
- Thunderbirdを起動
- 予定表タブを開く
- エクスポートしたいカレンダーを右クリック
- 「カレンダーをエクスポート」を選択
- 「iCalendar形式(.ics)」で保存
- ファイル名を付けて保存
Outlookへインポート
手順
- Outlookを起動
- 「ファイル」→「開く/エクスポート」→「インポート/エクスポート」
- 「iCalendar (.ics) またはvCalendar ファイル (.vcs) のインポート」を選択
- 「次へ」をクリック
- 保存したICSファイルを選択
- 「OK」をクリック
すべての予定が、Outlookの予定表にインポートされます。
移行後の確認作業
移行が完了したら、必ず以下を確認してください。
メールの確認
チェック項目
- 受信トレイのメール数が一致しているか
- 送信済みアイテムが移行されているか
- カスタムフォルダーのメールが移行されているか
- 添付ファイルが正しく表示されるか
- 日本語メールが文字化けしていないか
アドレス帳の確認
チェック項目
- 連絡先の数が一致しているか
- 名前、メールアドレスが正しく表示されるか
- 電話番号などの情報が移行されているか
予定表の確認
チェック項目
- 過去の予定が表示されるか
- 未来の予定が表示されるか
- 繰り返し予定が正しく設定されているか
送受信テスト
手順
- Outlookから自分宛にテストメールを送信
- 他のアドレスから自分宛にメールを送信
- 正常に送受信できることを確認
トラブルシューティング
よくある問題と解決方法です。
日本語メールが文字化けする
原因
文字コードの設定が不適切です。
解決方法
- Outlookで「ファイル」→「オプション」→「詳細設定」
- 「インターナショナル オプション」をクリック
- 「優先エンコード方法」を「日本語(自動選択)」に設定
- 「OK」をクリック
添付ファイルが開けない
原因
ファイルが正しく移行されていません。
解決方法
- Thunderbirdで元のメールを開く
- 添付ファイルを手動で保存
- Outlookで新規メールを作成し、保存した添付ファイルを追加
- 自分宛に送信
フォルダー構造が崩れている
原因
IMAP同期が不完全、または手動移行時の問題です。
解決方法
- Outlookでフォルダーを手動で作成
- メールを適切なフォルダーに移動
- 検索機能を使って、特定の送信者や件名でメールを探し、整理
インポートに時間がかかりすぎる
原因
大量のメールがあります。
対処方法
- フォルダーごとに分けて少しずつインポート
- 夜間など、パソコンを使わない時間に実行
- 古いメールはアーカイブとして別管理を検討
移行後のThunderbirdデータの扱い

移行が完全に完了したら、Thunderbirdのデータをどうするか決めましょう。
しばらく併用する
推奨する期間
移行後1~2ヶ月は、Thunderbirdをアンインストールせず残しておきましょう。
理由
- 移行漏れに気づいた場合の保険
- 古いメールを確認したいときに便利
- 問題があればすぐ戻せる
バックアップを保管
手順
- 移行前に作成したプロファイルフォルダーのバックアップを保管
- 外付けHDDやクラウドストレージに保存
- 少なくとも1年間は保管
万が一のときに、データを復元できます。
Thunderbirdのアンインストール
完全に移行が確認できたら、アンインストールできます。
手順
- Windowsの「設定」→「アプリ」→「アプリと機能」
- 「Thunderbird」を選択
- 「アンインストール」をクリック
ただし、プロファイルフォルダーは念のため残しておくことをおすすめします。
Outlookへの移行後に設定すべきこと
Outlookを快適に使うための推奨設定です。
署名の設定
手順
- 「ファイル」→「オプション」→「メール」
- 「署名」ボタンをクリック
- 「新規作成」で署名を作成
- 名前、会社名、連絡先などを入力
仕訳ルールの設定
Thunderbirdで使っていたメールフィルターを、Outlookでも再現しましょう。
手順
- 「ホーム」タブ→「ルール」→「仕訳ルールと通知の管理」
- 「新しいルール」をクリック
- 条件とアクションを設定
- 例:特定の送信者からのメールを特定フォルダーに移動
クイック操作の設定
よく使う操作をワンクリックで実行できます。
手順
- 「ホーム」タブの「クイック操作」セクション
- 「新規作成」をクリック
- 名前と実行するアクションを設定
よくある質問
Q1:メールアカウントは移行できますか?
A:アカウント設定自体は手動で再設定する必要があります。ただし、IMAP経由なら自動的に同期されるため簡単です。
Q2:すべてのメールを移行できますか?
A:はい、正しい手順を踏めばすべてのメールを移行できます。ただし、大量のメールがある場合、時間がかかることがあります。
Q3:ThunderbirdのアドオンはOutlookで使えますか?
A:いいえ、Thunderbird専用のアドオンは使えません。Outlookには独自のアドインがあるので、必要に応じて新たにインストールしてください。
Q4:複数のメールアカウントを移行できますか?
A:はい、アカウントごとに同じ手順を繰り返せば移行できます。
まとめ:計画的な移行でスムーズな乗り換えを
ThunderbirdからOutlookへの移行は、適切な手順を踏めば確実にできます。
この記事のポイント
- 移行方法は3種類:IMAP経由(推奨)、EMLファイル経由、変換ツール使用
- 必ずバックアップ:作業前にThunderbirdデータをバックアップ
- IMAP推奨:対応アカウントなら最も簡単で確実
- アドレス帳:CSV形式でエクスポート→インポート
- 予定表:iCalendar形式で移行可能
- 移行後確認:メール数、添付ファイル、文字化けをチェック
- 段階的に:完全移行前に1~2ヶ月の併用期間を設ける
最も簡単なのは、IMAP経由での移行です。メールアカウントがIMAP対応なら、Outlookでアカウントを設定するだけで自動的に同期されます。
POPアカウントの場合は、EMLファイル経由または変換ツールを使った移行になりますが、少し手間がかかっても確実にデータを引き継げるでしょう。
焦らず、この記事の手順に従って段階的に進めてください。データをしっかり移行できれば、Outlookで快適なメール環境が手に入ります。

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