Webサイトやアプリの開発をしていると、データベースを扱う場面が必ず出てきます。しかし、コマンドライン(黒い画面)でSQLを打ち込むのは、初心者にはハードルが高いですよね。
「もっと直感的にデータベースを操作できたら…」そう思ったことはありませんか?
そんな方におすすめなのが「HeidiSQL(ハイディーSQL)」です。無料で使えて、マウス操作だけでデータベースを管理できる便利なツールです。この記事では、HeidiSQLの基本的な使い方を、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
HeidiSQLとは?基本を理解しよう

HeidiSQLの特徴
HeidiSQLは、データベースを視覚的に管理できる無料のツールです。
データベースとは
データを整理して保存する仕組みのことです。Webサイトの会員情報や、ブログの記事データなどが保存されています。
主な特徴
- 完全無料のオープンソースソフトウェア
- Windowsで動作(Mac/LinuxはWineで利用可能)
- MySQL、MariaDB、PostgreSQL、Microsoft SQL Serverに対応
- 日本語にも対応
- 直感的な操作画面
プログラミング初心者でも、すぐに使い始められるでしょう。
どんなときに使うの?
HeidiSQLが活躍する場面を紹介します。
Webサイト開発
WordPressやその他のCMSのデータベースを直接編集したいときに便利です。
アプリ開発
開発中のアプリケーションのデータベースを確認・修正できます。
データ分析
データベースに保存されているデータを抽出して分析する際に使えるでしょう。
学習用途
SQLの勉強をする際、実際にデータベースを操作しながら学べます。
他のツールとの違い
phpMyAdmin(Webベース)
ブラウザで動作するツールです。サーバーにインストールが必要ですが、HeidiSQLはパソコンにインストールするだけで使えます。
MySQL Workbench(公式ツール)
MySQLの公式ツールですが、やや重く複雑です。HeidiSQLの方が軽快で初心者向けでしょう。
コマンドライン
最も基本的な操作方法ですが、覚えることが多く敷居が高めです。HeidiSQLなら視覚的に操作できます。
HeidiSQLのダウンロードとインストール
まずはソフトウェアを入手しましょう。
ダウンロード方法
手順
- 公式サイトにアクセス:https://www.heidisql.com/
- 「Download」ボタンをクリック
- 最新版のインストーラーをダウンロード
- ポータブル版(インストール不要)もあり
安全性
公式サイトからのダウンロードなら安全です。ウイルス対策ソフトが反応することもありますが、誤検知の場合がほとんどでしょう。
インストール手順
手順
- ダウンロードしたファイルをダブルクリック
- 言語選択画面で「日本語」を選択
- 「次へ」をクリック
- ライセンス規約に同意
- インストール先を指定(デフォルトでOK)
- 「インストール」をクリック
- 完了したら「完了」をクリック
インストールは数分で完了します。
初回起動
手順
- デスクトップまたはスタートメニューからHeidiSQLを起動
- 「セッションマネージャー」という画面が開く
- ここでデータベースへの接続設定を行う
データベースに接続する方法
HeidiSQLを使うには、まずデータベースサーバーに接続する必要があります。
接続に必要な情報
接続前に、以下の情報を用意しましょう。
必須情報
- ホスト名(サーバーのアドレス):例「localhost」や「192.168.1.100」
- ユーザー名:例「root」や「dbuser」
- パスワード:データベースユーザーのパスワード
- ポート番号:通常はデフォルト(MySQL/MariaDBは3306、PostgreSQLは5432)
新しいセッションの作成
手順1:セッションマネージャーを開く
- HeidiSQLを起動すると自動的に開く
- または、メニューバーの「ファイル」→「セッションマネージャー」
手順2:新規セッションを作成
- 左下の「新規」ボタンをクリック
- セッション名を入力(例:「ローカルMySQL」)
- ネットワークタイプを選択(通常は「MySQL (TCP/IP)」)
手順3:接続情報を入力
- 「設定」タブで以下を入力:
- ホスト名/IP:localhost(自分のパソコン上のデータベース)
- ユーザー:root(または指定されたユーザー名)
- パスワード:データベースのパスワード
- ポート:3306(MySQLのデフォルト)
手順4:接続テスト
- 下部の「開く」ボタンをクリック
- 接続が成功すると、データベース一覧が表示される
ローカル環境への接続例
XAMPP/MAMPを使っている場合
- ホスト名:localhost
- ユーザー:root
- パスワード:(空欄、またはXAMPP/MAMPで設定したパスワード)
- ポート:3306
Docker環境の場合
- ホスト名:localhost または 127.0.0.1
- ユーザー:docker-compose.ymlで設定したユーザー名
- パスワード:docker-compose.ymlで設定したパスワード
- ポート:docker-compose.ymlで設定したポート
リモートサーバーへの接続
レンタルサーバーなど、外部のデータベースに接続することもできます。
追加で必要な情報
- SSHトンネル設定(セキュリティのため推奨)
- SSHホスト、ユーザー、パスワードまたは秘密鍵
手順
- 「SSHトンネル」タブを開く
- 「SSHトンネルを使う」にチェック
- SSHホスト、ポート、ユーザー名を入力
- 「plink.exe」の場所を指定(HeidiSQLに付属)
- パスワードまたは秘密鍵ファイルを設定
基本的な画面構成と使い方

接続に成功したら、メイン画面が表示されます。
画面の見方
左側:データベースツリー
接続したサーバー内のデータベース、テーブル、ビューなどが階層表示されます。
右側上部:データ表示エリア
テーブルのデータが表形式で表示されます。
右側下部:クエリタブ
SQLを直接入力して実行できるエリアです。
下部:ログ/情報パネル
実行したSQLや、エラーメッセージが表示されます。
データベースを開く
手順
- 左側のデータベースツリーでデータベース名をダブルクリック
- テーブル一覧が表示される
- テーブル名をクリックすると、データが表示される
テーブルのデータを表示
手順
- データベースを展開
- テーブル名をクリック
- 右側の「データ」タブでデータが表形式で表示される
操作方法
- スクロール:マウスホイールまたはスクロールバー
- ソート:列見出しをクリック
- フィルター:上部の検索ボックスを使用
よく使う基本操作
日常的に使う操作を紹介します。
データの表示と検索
特定のデータを探す
- テーブルを開く
- 上部のフィルターボックスに検索語を入力
- 該当する行だけが表示される
ソート(並び替え)
- 列見出しをクリック
- 昇順・降順が切り替わる
データの編集
既存データの変更
- テーブルのデータ画面を開く
- 変更したいセル(マス目)をダブルクリック
- 新しい値を入力
- 上部の「保存」ボタン(またはCtrl + S)をクリック
注意点
保存ボタンを押すまで変更は確定しません。間違えた場合は「キャンセル」ボタンで元に戻せます。
新しい行の追加
手順
- データ表示画面で「Insertキー」を押す
- または、上部の「+」アイコンをクリック
- 新しい行が追加される
- 各セルに値を入力
- 「保存」ボタンで確定
データの削除
手順
- 削除したい行を選択(行番号をクリック)
- 「Deleteキー」を押す
- または、上部の「−」アイコンをクリック
- 確認メッセージで「はい」
- 「保存」ボタンで確定
重要な注意
削除は元に戻せません。重要なデータの場合は、事前にバックアップを取りましょう。
SQLクエリを実行する方法
直接SQLを書いて実行することもできます。
クエリタブの使い方
基本手順
- 画面下部の「クエリ」タブをクリック
- SQLを入力
- F9キーまたは「▶」(実行)ボタンをクリック
- 結果が下部に表示される
よく使うSQL例
全データの取得
SELECT * FROM users;
条件付き検索
SELECT * FROM users WHERE age > 20;
データの追加
INSERT INTO users (name, email) VALUES ('山田太郎', 'yamada@example.com');
データの更新
UPDATE users SET email = 'new@example.com' WHERE id = 1;
データの削除
DELETE FROM users WHERE id = 1;
注意点
UPDATE文やDELETE文を実行する際は、必ずWHERE句を付けて対象を限定してください。WHERE句がないと、すべてのデータが変更・削除されてしまいます。
データベースとテーブルの作成
新しいデータベースやテーブルを作る方法です。
データベースの作成
手順
- データベースツリーの何もないところを右クリック
- 「新規作成」→「データベース」を選択
- データベース名を入力
- 文字コード(照合順序)を選択(通常は「utf8mb4_general_ci」)
- 「OK」をクリック
テーブルの作成
手順
- データベースを右クリック
- 「新規作成」→「テーブル」を選択
- テーブル名を入力
- カラム(列)を定義:
- 名前:カラム名(例:id, name, email)
- データ型:VARCHAR、INT、DATEなど
- 長さ:VARCHARの場合は文字数(例:255)
- NULL許可:空欄を許すかどうか
- デフォルト値:初期値
- 主キー:AUTO_INCREMENTなど
- 「保存」をクリック
カラムのデータ型
よく使うデータ型を紹介します。
INT(整数)
数値を保存します。例:年齢、ID
VARCHAR(可変長文字列)
テキストを保存します。例:名前、メールアドレス
TEXT(長文)
長い文章を保存します。例:記事本文、説明文
DATE(日付)
日付を保存します。形式:YYYY-MM-DD
DATETIME(日時)
日付と時刻を保存します。形式:YYYY-MM-DD HH:MM:SS
データのエクスポートとインポート

データのバックアップや移行に使います。
データのエクスポート(バックアップ)
手順
- エクスポートしたいデータベースを右クリック
- 「SQLへエクスポート」を選択
- 「データベース」タブで対象を選択
- 「出力」タブで保存先を指定
- ファイル名を入力(例:backup_20250120.sql)
- 「エクスポート」をクリック
オプション
- データのみ:テーブル構造は含めず、データだけエクスポート
- 構造のみ:データは含めず、テーブル定義だけエクスポート
- 構造とデータ:両方エクスポート(推奨)
データのインポート(復元)
手順
- メニューバーの「ファイル」→「SQLファイルを実行」
- インポートしたい.sqlファイルを選択
- 「開く」をクリック
- SQLが実行され、データが復元される
CSV形式のインポート
- テーブルを右クリック
- 「テーブルデータのインポート」を選択
- CSVファイルを選択
- 区切り文字やエンコーディングを設定
- 「インポート」をクリック
便利な機能
HeidiSQLの便利な機能を紹介します。
お気に入りクエリの保存
よく使うSQLは保存できます。
手順
- クエリタブでSQLを入力
- 上部の「保存」アイコンをクリック
- クエリ名を入力
- 次回から「読み込み」で呼び出せる
テーブルのコピー
テーブルを丸ごとコピーできます。
手順
- テーブルを右クリック
- 「テーブルをコピー」を選択
- 新しいテーブル名を入力
- データもコピーするか選択
- 「OK」をクリック
データのフィルター機能
複雑な条件でデータを絞り込めます。
手順
- テーブルのデータ画面を開く
- 上部の「フィルター」ボタンをクリック
- 条件を設定(例:age > 20 AND city = ‘東京’)
- 「適用」をクリック
SQL整形(フォーマット)
読みやすくSQLを整形できます。
手順
- クエリタブでSQLを選択
- 右クリック→「SQL整形」
- 自動的に整形される
セキュリティとバックアップ
データベースを安全に管理するための注意点です。
定期的なバックアップ
推奨する頻度
- 本番環境:毎日
- 開発環境:週1回
- 重要な変更前:必ず実施
バックアップ先
- 外付けハードディスク
- クラウドストレージ
- 別のサーバー
複数の場所に保存することで、データ損失のリスクを減らせます。
パスワード管理
セッション情報の保護
HeidiSQLはパスワードを保存できますが、セキュリティリスクがあります。
推奨する方法
- 重要なデータベースはパスワードを保存しない
- マスターパスワード機能を使う
- パスワード管理ツールを併用
ユーザー権限の確認
最小権限の原則
必要最小限の権限だけを持つユーザーでアクセスしましょう。
例
- 閲覧のみ:SELECT権限だけ
- データ編集:SELECT、INSERT、UPDATE権限
- 管理者:すべての権限
トラブルシューティング
よくある問題と解決方法です。
接続できない
原因1:データベースサーバーが起動していない
- XAMPPやMAMPでMySQLを起動しているか確認
- Dockerコンテナが動いているか確認
原因2:ホスト名やポート番号が間違っている
- localhostではなく127.0.0.1を試す
- ポート番号を再確認
原因3:ファイアウォールでブロックされている
- Windowsファイアウォールの設定を確認
- ポート3306が開いているか確認
文字化けする
原因:文字コードの不一致
解決方法
- セッションマネージャーを開く
- 該当セッションの「詳細設定」タブ
- 「サーバーエンコーディング」を「utf8mb4」に設定
- 再接続
変更が保存されない
原因:保存ボタンを押していない
解決方法
データを編集したら、必ず上部の「保存」ボタン(Ctrl + S)を押してください。
エラーメッセージが出る
よくあるエラー
- “Access denied”:パスワードが間違っている
- “Unknown database”:データベース名が間違っている
- “Syntax error”:SQLの文法が間違っている
エラーメッセージをよく読んで、該当する箇所を修正しましょう。
よくある質問
Q1:無料で使えますか?
A:はい、完全無料です。商用利用も可能です。
Q2:Macでも使えますか?
A:公式にはWindows版のみですが、WineやParallels Desktopを使えばMacでも動作します。
Q3:複数のデータベースを同時に操作できますか?
A:はい、セッションを複数開けば、異なるデータベースを同時に扱えます。
Q4:スマートフォンから使えますか?
A:HeidiSQL自体はパソコン専用ですが、スマホからリモートデスクトップ接続してHeidiSQLを操作することは可能です。
まとめ:HeidiSQLで効率的なデータベース管理を
HeidiSQLは、データベース初心者にも優しい、無料で高機能なツールです。
この記事のポイント
- 無料で多機能:MySQL、MariaDB、PostgreSQL、SQL Serverに対応
- 直感的な操作:マウスクリックだけでデータ編集可能
- 接続設定:ホスト名、ユーザー名、パスワードで簡単接続
- 基本操作:データ表示、編集、追加、削除が視覚的にできる
- SQLも実行可能:クエリタブで直接SQL入力も可能
- バックアップ簡単:エクスポート/インポートでデータ保護
- 便利機能:フィルター、お気に入りクエリ、テーブルコピーなど
コマンドラインでSQLを打ち込むのは難しいですが、HeidiSQLなら表計算ソフトのような感覚で操作できます。
Web開発やアプリ開発でデータベースを扱う機会があるなら、ぜひHeidiSQLを試してみてください。直感的な操作で、データベース管理が格段に楽になるはずです。この記事の手順に従えば、初心者の方でもすぐに使い始められるでしょう。


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