無料で使えるメールソフト「Thunderbird(サンダーバード)」。Outlookの代わりに使っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、初めて使う方にとって、アカウント設定は少しハードルが高く感じるかもしれません。「Gmail を追加したいけどどうすれば?」「POPとIMAPって何が違うの?」といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。
この記事では、Thunderbirdへのメールアカウント追加方法を、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
Thunderbirdとは?基本を理解しよう

Thunderbirdの特徴
Thunderbirdは、Mozillaが開発している無料のメールソフトです。
Firefoxブラウザを作っている同じ組織が開発しているため、信頼性が高く、世界中で利用されています。オープンソースソフトウェアなので、誰でも無料で使えるのが大きな魅力です。
主な特徴
- 完全無料で広告なし
- Windows、Mac、Linuxで使える
- 複数のメールアカウントを一括管理できる
- カスタマイズ性が高い
- セキュリティが強固
OutlookやGmailとの違い
Thunderbird(メールソフト)
パソコンにインストールして使うアプリケーションです。メールをパソコンにダウンロードして管理します。
Outlook(メールソフト+サービス)
Microsoftが提供するメールソフト。有料のMicrosoft Officeに含まれています。Outlook.comというWebメールサービスもあります。
Gmail(Webメール)
ブラウザで使うメールサービスです。ただし、ThunderbirdでGmailアカウントを設定すれば、Thunderbird経由でGmailを送受信できるようになります。
複数のメールアドレス(Gmail、Yahoo!メール、会社のメールなど)を1つのソフトで管理したいなら、Thunderbirdが便利でしょう。
アカウント設定の前に準備すること
スムーズに設定するため、事前に以下の情報を用意しましょう。
必要な情報
基本情報
- メールアドレス(例:yourname@gmail.com)
- メールアカウントのパスワード
- 氏名(送信者名として表示される名前)
サーバー情報(手動設定の場合)
- 受信サーバー名(POPまたはIMAPサーバー)
- 送信サーバー名(SMTPサーバー)
- ポート番号
- セキュリティ設定(SSL/TLSの有無)
Gmail、Yahoo!メール、Outlook.comなどの主要サービスは、メールアドレスとパスワードだけで自動設定できます。
新規アカウントを追加する基本手順
自動設定で追加(推奨)
ほとんどのメールサービスは、自動設定に対応しています。
手順1:アカウント設定画面を開く
- Thunderbirdを起動
- メニューバーの「ツール」→「アカウント設定」をクリック
- または、右上の「≡」(ハンバーガーメニュー)→「アカウント設定」
初めて起動した場合は、自動的にアカウント設定画面が表示されます。
手順2:既存のメールアドレスのセットアップを選択
- 「既存のメールアドレスのセットアップ」をクリック
- 「メールアカウントを設定する」画面が開く
手順3:情報を入力
- 「あなたのお名前」:送信者として表示される名前を入力
- 「メールアドレス」:追加したいメールアドレスを入力(例:yourname@gmail.com)
- 「パスワード」:メールアカウントのパスワードを入力
- 「パスワードを記憶する」にチェックを入れる(推奨)
- 「続ける」をクリック
手順4:自動設定を確認
- Thunderbirdが自動的にサーバー設定を検索
- 設定が見つかると、受信サーバーと送信サーバーの情報が表示される
- 「IMAP」または「POP3」を選択(後述)
- 「完了」をクリック
これだけで、ほとんどの場合設定が完了します。
POPとIMAPの違いと選び方
アカウント設定時に「IMAP」か「POP3」を選ぶ必要があります。
IMAPとは
IMAP(アイマップ)は、サーバー上でメールを管理する方式です。
特徴
- メールはサーバーに保存される
- 複数のデバイス(パソコン、スマホなど)で同じメールを見られる
- どのデバイスで読んでも、既読状態が同期される
- フォルダ分けもすべてのデバイスで共有
- インターネット接続が必要
おすすめする人
- 複数のデバイスでメールを確認する人
- スマートフォンとパソコンの両方を使う人
- 外出先でもメールをチェックする人
POP3とは
POP3(ポップスリー)は、メールをパソコンにダウンロードして管理する方式です。
特徴
- メールはパソコンにダウンロードされる
- サーバーからメールを削除する設定が一般的
- オフラインでもメールを読める
- パソコンのハードディスク容量を使う
- 他のデバイスとは同期しない
おすすめする人
- 1台のパソコンだけでメールを管理する人
- メールをパソコンに保存したい人
- サーバー容量を節約したい人
どちらを選ぶべき?
現代の使い方では、IMAPが圧倒的におすすめです。
スマートフォンが普及した今、ほとんどの方が複数のデバイスでメールを確認します。IMAPなら、パソコンで読んだメールがスマホでも既読になるため、管理がとても楽になるでしょう。
迷ったらIMAPを選んでください。
主要メールサービスの設定方法

代表的なメールサービスの設定を詳しく解説します。
Gmailアカウントの追加
Gmailは自動設定に対応していますが、セキュリティ設定が必要です。
手順1:基本設定
- 前述の「新規アカウント追加」手順でGmailアドレスを入力
- 自動設定が完了
- 「完了」をクリック
手順2:Googleの認証
- ブラウザが自動的に開く
- Googleのログイン画面が表示される
- メールアドレスとパスワードを入力
- 「Thunderbirdに○○○@gmail.comへのアクセスを許可しますか?」と表示
- 「許可」をクリック
- 認証完了
重要な注意
2段階認証を設定している場合、「アプリパスワード」の生成が必要になることがあります。
アプリパスワードの生成方法
- Googleアカウントの設定を開く
- 「セキュリティ」→「2段階認証プロセス」
- 「アプリパスワード」を選択
- 「メール」と「Windows パソコン」を選択
- 「生成」をクリック
- 表示された16桁のパスワードをThunderbirdで使用
Yahoo!メールアカウントの追加
Yahoo!メールも自動設定に対応しています。
手順
- 基本設定でYahoo!メールアドレスを入力
- 自動設定が完了
- 「完了」をクリック
- Yahoo! JAPANのログイン画面が表示される
- メールアドレスとパスワードを入力してログイン
- 「同意してはじめる」をクリック
Yahoo!メールも、セキュリティ強化のため「ワンタイムパスワード」や「シークレットID」の設定をしている場合は、専用のアプリパスワードが必要です。
Outlook.com(Hotmail)アカウントの追加
Microsoftのメールサービスも自動設定可能です。
手順
- 基本設定でOutlook.comのアドレスを入力
- 自動設定が完了
- 「完了」をクリック
- Microsoftのログイン画面が表示される
- メールアドレスとパスワードを入力
- 認証を完了
Outlookアカウントの場合も、OAuth認証(安全な認証方式)が使われるため、ブラウザ経由での認証が必要です。
手動でアカウントを設定する方法
自動設定がうまくいかない場合や、会社のメールなどを設定する際は手動設定が必要です。
手動設定の手順
手順1:手動設定モードに切り替え
- アカウント設定画面で情報を入力
- 「続ける」をクリック後、自動設定の結果が表示される
- 「手動設定」をクリック
手順2:受信サーバーの設定
以下の情報を入力します。
プロトコル
- IMAP または POP3 を選択
サーバー名
- 受信メールサーバーのアドレスを入力
- 例:imap.example.com
ポート番号
- IMAP SSL/TLS:993
- IMAP STARTTLS:143
- POP3 SSL/TLS:995
- POP3 STARTTLS:110
SSL
- SSL/TLS または STARTTLS を選択
認証方式
- 通常のパスワード認証(推奨)
- 暗号化されたパスワード認証
- OAuth2(Gmail、Outlook.comなど)
ユーザー名
- メールアドレス全体を入力(例:yourname@example.com)
- または、@より前の部分のみ(サーバーにより異なる)
手順3:送信サーバー(SMTP)の設定
サーバー名
- 送信メールサーバーのアドレスを入力
- 例:smtp.example.com
ポート番号
- SMTP SSL/TLS:465
- SMTP STARTTLS:587
SSL
- SSL/TLS または STARTTLS を選択
認証方式
- 通常のパスワード認証(推奨)
ユーザー名
- 受信サーバーと同じユーザー名
手順4:設定を保存
- すべての情報を入力
- 「再テスト」をクリックして接続確認
- 成功したら「完了」をクリック
主要プロバイダのサーバー情報例
参考までに、主要なメールサービスのサーバー情報を紹介します。
Gmail
- 受信(IMAP):imap.gmail.com ポート993 SSL/TLS
- 送信(SMTP):smtp.gmail.com ポート465 SSL/TLS
Yahoo!メール
- 受信(IMAP):imap.mail.yahoo.co.jp ポート993 SSL/TLS
- 送信(SMTP):smtp.mail.yahoo.co.jp ポート465 SSL/TLS
Outlook.com
- 受信(IMAP):outlook.office365.com ポート993 SSL/TLS
- 送信(SMTP):smtp.office365.com ポート587 STARTTLS
具体的な設定は、各サービスの公式ヘルプページで確認してください。
複数アカウントの管理方法
Thunderbirdの大きな利点は、複数のメールアカウントを一元管理できることです。
2つ目以降のアカウント追加
手順
- Thunderbirdを起動
- 右上の「≡」→「新規作成」→「既存のメールアカウント」
- または「ツール」→「アカウント設定」→下部の「アカウント操作」→「メールアカウントを追加」
- 1つ目と同じ手順で設定
追加したアカウントは、左側のフォルダーウィンドウに表示されます。
既定のアカウントを設定
メールを新規作成する際、どのアカウントから送信するか既定値を決められます。
手順
- 「ツール」→「アカウント設定」
- 左側で既定にしたいアカウントを選択
- 下部の「アカウント操作」→「既定のアカウントに設定」
差出人の切り替え
メール作成時に、送信元アカウントを変更できます。
手順
- 新規メール作成画面を開く
- 「差出人」欄のドロップダウンをクリック
- 使用したいアカウントを選択
ビジネス用とプライベート用など、状況に応じて使い分けられるでしょう。
アカウント設定のトラブルシューティング
よくある問題と解決方法を紹介します。
問題1:「ユーザー名またはパスワードが無効です」エラー
原因
入力したメールアドレスまたはパスワードが間違っています。
解決方法
- メールアドレスのスペルミスがないか確認
- パスワードを再入力(大文字小文字に注意)
- ブラウザでメールサービスにログインできるか確認
- 2段階認証の場合、アプリパスワードを使用
問題2:「サーバーに接続できません」エラー
原因
サーバー名、ポート番号、またはセキュリティ設定が間違っています。
解決方法
- インターネット接続を確認
- サーバー名のスペルミスがないか確認
- ポート番号が正しいか確認
- SSL/TLS設定を確認
- ファイアウォールやウイルス対策ソフトがブロックしていないか確認
問題3:メールは受信できるが送信できない
原因
送信サーバー(SMTP)の設定が間違っています。
解決方法
- 「ツール」→「アカウント設定」
- 左下の「送信(SMTP)サーバー」をクリック
- 該当サーバーを選択して「編集」
- サーバー名、ポート番号、認証方式を確認
- 「ユーザー名とパスワードを使用する」にチェック
多くのプロバイダでは、送信時も認証が必要です。
問題4:Gmailで「安全性の低いアプリ」エラー
解決方法
現在はOAuth2認証が標準なので、このエラーは出にくくなっています。
もし出た場合:
- Thunderbirdを最新版に更新
- アカウントを削除して再追加
- OAuth2認証を使用
セキュリティ設定を強化する

アカウント設定後、セキュリティを強化しましょう。
マスターパスワードの設定
すべてのアカウントのパスワードを保護する機能です。
手順
- 「ツール」→「オプション」(または「設定」)
- 「プライバシーとセキュリティ」を選択
- 「マスターパスワードを使用する」にチェック
- マスターパスワードを設定
- 「OK」をクリック
次回起動時から、マスターパスワードの入力が求められるようになります。
SSL/TLS接続の確認
暗号化された接続を使用しているか確認しましょう。
確認手順
- 「ツール」→「アカウント設定」
- 該当アカウントの「サーバー設定」を確認
- 「接続の保護」が「SSL/TLS」になっているか確認
- 「送信(SMTP)サーバー」も同様に確認
暗号化なしの接続は、パスワードが盗まれるリスクがあります。必ずSSL/TLSを使用してください。
フィッシング詐欺対策
Thunderbirdには、フィッシング詐欺メールを検出する機能があります。
設定確認
- 「ツール」→「オプション」(または「設定」)
- 「プライバシーとセキュリティ」
- 「迷惑メール」セクションで「フィッシング詐欺メールの可能性を検出する」にチェック
アカウント設定のエクスポートとインポート
パソコンを買い替える際、設定を移行できます。
設定のバックアップ
プロファイルフォルダーのバックアップ
- Thunderbirdを終了
- プロファイルフォルダーを開く
- Windows:
C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Roaming\Thunderbird\Profiles - Mac:
~/Library/Thunderbird/Profiles - Linux:
~/.thunderbird
- プロファイルフォルダー全体をコピー
- 外付けHDDやクラウドストレージに保存
新しいパソコンへの移行
手順
- 新しいパソコンにThunderbirdをインストール
- Thunderbirdを一度起動して終了
- バックアップしたプロファイルフォルダーを、新しいパソコンの同じ場所に上書き
- Thunderbirdを起動
すべての設定、メール、アドレス帳が復元されます。
よくある質問
Q1:無料で使えますか?
A:はい、完全無料です。広告も表示されません。
Q2:何個までアカウントを追加できますか?
A:制限はありません。必要なだけアカウントを追加できます。
Q3:スマートフォンでも使えますか?
A:Androidには「Thunderbird for Mobile」のベータ版があります。iOSには公式アプリはありませんが、IMAPで設定すればパソコンとスマホのメールアプリで同じメールを管理できます。
Q4:Outlookから移行できますか?
A:はい、可能です。OutlookからPSTファイルをエクスポートし、Thunderbirdでインポートできます。
Q5:アカウントを削除するには?
A:「ツール」→「アカウント設定」で削除したいアカウントを選択し、下部の「アカウント操作」→「アカウントを削除」をクリックします。
まとめ:Thunderbirdで快適なメール管理を
Thunderbirdのアカウント設定は、思ったより簡単です。
この記事のポイント
- 基本設定:メールアドレスとパスワードで自動設定可能
- IMAP推奨:複数デバイスで使うならIMAPを選択
- 主要サービス:Gmail、Yahoo!、Outlook.comは自動設定対応
- 手動設定:サーバー情報があれば、どんなメールでも設定可能
- 複数管理:何個でもアカウントを追加して一元管理
- セキュリティ:SSL/TLS接続とマスターパスワードで保護
- 移行簡単:プロファイルフォルダーのコピーで設定移行
無料で高機能、しかもプライバシーを尊重した設計のThunderbirdは、メールソフトの定番です。
Gmail、Yahoo!メール、会社のメールなど、複数のアカウントを1つのソフトで管理できるのは非常に便利でしょう。この記事の手順に従えば、初心者の方でも簡単にアカウント設定ができます。ぜひThunderbirdで快適なメール環境を構築してください。

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