「お客様全員に同じお知らせメールを送りたい」
「イベントの参加者にまとめて連絡したい」
「でも、一人ずつ送るのは大変…」
Thunderbirdを使っていて、複数の人に同じメールを一度に送りたいと思ったことはありませんか?
実は、Thunderbirdには一斉送信の便利な機能がいくつも用意されています。ただし、使い方を間違えると個人情報の漏洩という重大なトラブルにつながることも。
この記事では、Thunderbirdで安全かつ効率的に一斉送信する方法を、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
一斉送信の前に知っておくべき重要なこと

TO・CC・BCCの違いを理解しよう
まず、一斉送信の基本となる「宛先の種類」について理解しておきましょう。
TO(宛先)
- メインの送信相手
- 全受信者に表示される
- 「このメールはあなた宛です」という意味
CC(カーボンコピー)
- 参考として送る相手
- 全受信者に表示される
- 「念のため共有します」という意味
BCC(ブラインドカーボンコピー)
- 他の受信者には見えない隠れた宛先
- 誰に送ったか他の人にはわからない
- 一斉送信で最もよく使われる
一斉送信の最大のリスク:個人情報漏洩
絶対に避けるべき間違い
BCCに入れるべきアドレスを、間違えてTOやCCに入れてしまうと、すべての受信者のメールアドレスがお互いに見えてしまいます。
これは重大な個人情報漏洩です。
- 企業なら信用失墜、取引停止、訴訟のリスク
- 個人でも損害賠償を求められる可能性
- 一度流出した情報は取り戻せない
実際に起きた事例
- 自治体が住民500人のアドレスを誤って全員に公開
- 企業が顧客1,000人のアドレスを流出
- イベント主催者が参加者のアドレスを全員に表示
どれも「BCCのつもりがTOだった」という単純ミスです。
送信数の上限にも注意
Thunderbird自体には送信数の制限はありませんが、メールサーバー側に制限があります。
一般的な制限の目安
- Gmail:1日あたり500通まで
- Outlook.com:1日あたり300通まで
- 企業用メールサーバー:設定による(通常100〜500通)
大量送信すると迷惑メールと判断され、ブラックリストに登録されるリスクもあります。
【基本編】アドレスリストとBCCで一斉送信
最も基本的で、多くの人が使う方法です。
手順1:アドレスリストを作成する
毎回アドレスを手入力するのは非効率です。アドレスリストを作っておきましょう。
アドレスリスト作成手順
- Thunderbirdを起動
- 画面上部の「ツール」メニューから「アドレス帳」を選択
- 左側のパネルで「新規リスト」をクリック
- リスト名を入力(例:「顧客リスト」「イベント参加者」)
- リストに追加したいアドレスを入力
- 一つずつ入力する
- または既存の連絡先をドラッグ&ドロップ
- 「OK」をクリック
これで、一斉送信用のアドレスリストが完成しました。
手順2:BCCを使ってメールを送信する
それでは、実際に一斉送信してみましょう。
安全な一斉送信の手順
- 「作成」ボタンをクリックしてメール作成画面を開く
- TO(宛先)には自分のアドレスを入力
- 「BCC」欄をクリック(表示されていない場合は後述の方法で表示)
- BCC欄に作成したリスト名を入力
- 例:「顧客リスト」と入力すると候補が表示される
- 件名と本文を入力
- 送信前に必ずBCC欄を再確認!
- 「送信」をクリック
重要ポイント
- TOには必ず自分のアドレスを入れる(空欄だとエラーになることがある)
- 本文の冒頭に「※このメールは複数の方に送信しています」と記載すると親切
BCC欄が表示されない場合の対処法
メール作成画面にBCC欄が表示されていない場合があります。
BCC欄を表示する方法
- メール作成画面を開く
- 宛先の右側にある小さな▼(下向き矢印)をクリック
- 「BCC」を選択
これで、BCC欄が追加されます。
【応用編】Mail Mergeで個別送信
「BCCだと受信者に『一斉送信メール』だとバレてしまう」
「一人ずつに個別のメールとして送りたい」
そんな時は、Mail Merge(メールマージ)というアドオンが便利です。
Mail Mergeとは?
Mail Mergeは、1通ずつ個別にメールを送信できるアドオンです。
通常のBCC一斉送信との違い
- BCC:1通のメールを複数人に送る(効率的だが一斉送信だとわかる)
- Mail Merge:同じ内容のメールを1通ずつ送る(個別対応に見える)
さらに、宛名の差し込み({{氏名}}など)もできるので、より個別感のあるメールが送れます。
Mail Mergeのインストール方法
手順
- Thunderbirdを起動
- 画面右上の「三本線」メニューをクリック
- 「アドオンとテーマ」を選択
- 検索バーに「Mail Merge」と入力
- 検索結果から「Mail Merge」を見つける
- 「Thunderbirdへ追加」ボタンをクリック
- インストール完了後、Thunderbirdを再起動
これでMail Mergeが使えるようになります。
アドレス帳を使った基本的な送信方法
手順1:送信先をアドレス帳に登録
前述の「アドレスリスト」を使います。まだ作成していない場合は作成しておきましょう。
手順2:メールを作成
- 「作成」ボタンをクリック
- メール作成画面が開く
- 宛先には何も入力しない(後で自動入力される)
- 件名と本文を入力
手順3:Mail Mergeで送信
- メール作成画面の右上に表示されている「Mail Merge」ボタンをクリック
- 送信先の選択画面が表示される
- 使いたいアドレスリストを選択
- 「OK」をクリック
これで、リストに登録された全員に個別にメールが送信されます。
CSVファイルを使った高度な送信方法
ExcelやGoogleスプレッドシートで管理している顧客リストから直接送信できます。
手順1:CSVファイルを準備
ExcelまたはGoogleスプレッドシートを開きます。
必要な列
| 氏名 | メールアドレス |
|---|---|
| 山田太郎 | yamada@example.com |
| 佐藤花子 | sato@example.com |
| 鈴木一郎 | suzuki@example.com |
1行目に「氏名」「メールアドレス」と入力し、2行目以降にデータを入力します。
保存する時は「CSV形式」を選択してください。
手順2:メール本文で宛名を差し込む
- メール作成画面で件名と本文を入力
- 宛名を入れたい場所に
{{氏名}}と入力 - 宛先には
{{メールアドレス}}と入力
例:
{{氏名}} 様
いつもお世話になっております。
これで、山田太郎さんには「山田太郎 様」、佐藤花子さんには「佐藤花子 様」と自動的に差し替わります。
手順3:CSVファイルを指定して送信
- 「Mail Merge」ボタンをクリック
- 「CSVファイルから送信」を選択
- 準備したCSVファイルを選択
- 「送信」をクリック
これで、CSVファイルに記載された全員に個別のメールが送信されます。
一斉送信で絶対に守るべき5つのルール
ルール1:送信前のダブルチェック必須
確認項目
- [ ] BCCに入れるべきアドレスが、TOやCCに入っていないか
- [ ] 宛先リストに間違ったアドレスが含まれていないか
- [ ] 本文に誤字脱字はないか
- [ ] 添付ファイルは正しいか
- [ ] テスト送信は成功したか
可能であれば、第三者にもチェックしてもらいましょう。
ルール2:必ずテスト送信をする
本番送信の前に、必ず自分宛にテスト送信してください。
テスト送信の手順
- 本番と同じ内容でメールを作成
- 宛先を自分のアドレスだけにする
- 送信
- 受信したメールを確認
- 件名は正しいか
- 本文は正しいか
- 宛名の差し込みは正しいか
- レイアウトは崩れていないか
ルール3:一度に送る件数を制限する
サーバーへの負荷を減らし、迷惑メール判定を避けるため、一度に送る件数を制限しましょう。
推奨する送信方法
- 50件以下:そのまま送信してOK
- 50〜100件:2〜3回に分けて送信
- 100件以上:時間をずらして複数回に分ける
- 500件以上:メール配信サービスの利用を検討
ルール4:オプトアウト(配信停止)手段を用意
受信者が「もう送らないでほしい」と思った時のために、配信停止の方法を明記しましょう。
記載例
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今後このようなメールが不要な方は、
お手数ですが下記アドレスまで
「配信停止希望」とご連絡ください。
contact@example.com
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
これは法律(特定電子メール法)でも義務付けられています。
ルール5:送信ログを保存する
トラブルが起きた時のために、いつ誰に送ったかの記録を残しましょう。
記録すべき内容
- 送信日時
- 送信先リスト(コピーを保存)
- 送信内容(メールのコピー)
- 担当者名
よくあるトラブルと解決方法
トラブル1:一部の人にメールが届かない
原因と解決策
原因1:メールアドレスが間違っている
- 送信先リストを再確認
- エラーメッセージをチェック
原因2:迷惑メールフォルダに入っている
- 受信者に迷惑メールフォルダを確認してもらう
- 件名に【重要】など付けすぎない(逆に迷惑メール扱いされる)
原因3:受信者のメールボックスが満杯
- 受信者に連絡して容量を確保してもらう
トラブル2:「送信できませんでした」エラー
原因と解決策
原因:一度に送りすぎ
- 送信件数を減らす
- 時間をおいて再送信
原因:サーバーの送信制限に到達
- 1日待ってから再送信
- メール配信サービスの利用を検討
トラブル3:BCCで送ったのに相手に表示された
原因
Thunderbirdの「送信済みフォルダ」では、自分の画面にBCC宛先が表示されます。これは正常です。
確認方法
受信者側で実際にどう表示されているか確認してください。受信者側では他の宛先は見えていないはずです。
トラブル4:Mail Mergeが動かない
原因と解決策
原因1:アドオンが正しくインストールされていない
- Thunderbirdを再起動
- アドオンを再インストール
原因2:CSVファイルの形式が間違っている
- 1行目に項目名(氏名、メールアドレスなど)があるか確認
- 文字コードがUTF-8になっているか確認
大量送信が必要ならメール配信サービスを検討しよう
Thunderbirdでの一斉送信が向かないケース
以下のような場合は、専用のメール配信サービスを使った方が安全で確実です。
- 定期的に500件以上送る
- メルマガを配信したい
- 開封率や クリック率を計測したい
- HTMLメールを送りたい
- セキュリティを最優先したい
メール配信サービスのメリット
安全性
- 誤送信のリスクが低い
- 個人情報漏洩対策が万全
- 法律(特定電子メール法)に自動対応
機能性
- 開封率、クリック率の計測
- 配信停止の自動処理
- HTMLメールの簡単作成
- 配信予約機能
信頼性
- 迷惑メール判定されにくい
- 大量送信でも安定
- 配信エラーの自動処理
代表的なメール配信サービス
- Cuenote FC(キューノートFC)
- blastmail(ブラストメール)
- MailChimp(メールチンプ)※海外サービス
- benchmark(ベンチマーク)
無料プランがあるサービスも多いので、試してみるのもおすすめです。
まとめ
Thunderbirdでの一斉送信について、基本から応用まで解説してきました。
この記事のポイント
- 一斉送信の基本はBCC機能
- アドレスリストを作っておくと効率的
- BCCとTOの間違いは重大な個人情報漏洩につながる
- Mail Mergeアドオンで個別送信が可能
- 宛名の差し込みもできる
- 必ず送信前のダブルチェックとテスト送信を
- 大量送信ならメール配信サービスの利用を検討
方法別の使い分け
BCC一斉送信(アドレスリスト使用)
- 向いている:数十件程度の送信、社内連絡、イベント案内
- 不向き:100件以上、定期的な送信、メルマガ
Mail Merge(個別送信)
- 向いている:個別感を出したい、宛名を差し込みたい
- 不向き:超大量送信、HTMLメール、効果測定したい
メール配信サービス
- 向いている:500件以上、定期配信、メルマガ、HTMLメール
- 不向き:数件の単発送信、コストをかけたくない
一斉送信は便利な機能ですが、使い方を誤ると取り返しのつかないトラブルにつながります。
特にBCCとTOの間違いだけは絶対に避けてください。送信ボタンを押す前に、必ず宛先欄を確認する習慣をつけましょう。
「本当にBCCに入っているか?」
「TOに余計なアドレスが入っていないか?」
この2点を毎回チェックするだけで、重大なトラブルを防ぐことができます。
安全に、そして効率的に一斉送信を活用してくださいね!

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