Outlookで作業をしていたら、突然「パスワードの入力が必要です」というメッセージが表示される。正しいパスワードを入れても、何度も同じメッセージが出てくる…。
このエラーメッセージ、実は多くのOutlookユーザーが遭遇するトラブルの一つなんです。特に、Windowsアップデート後やOffice更新後に発生しやすい傾向があります。
実は、このエラーの原因は、パスワードそのものではなく、認証情報の保存や同期に問題があることがほとんどです。
この記事では、「パスワードの入力が必要です」エラーの原因と、確実に解決できる方法を分かりやすく解説していきます。
「パスワードの入力が必要です」エラーとは

まず、このエラーメッセージが表示される状況を整理しましょう。
よくある表示パターン
パターン1:ポップアップウィンドウ
画面中央に小さなウィンドウが表示され、「パスワードの入力が必要です」と表示される。
パターン2:Outlookの下部に通知
Outlookウィンドウの下部に黄色や赤色のバーが表示され、「パスワードが必要です」とメッセージが出る。
パターン3:起動時のダイアログ
Outlook起動時に認証画面が表示され、「パスワードを入力してください」と求められる。
表示される具体的なメッセージ
日本語表記:
- 「パスワードの入力が必要です」
- 「ネットワーク パスワードの入力」
- 「資格情報を更新してください」
- 「Exchangeサーバーへのアクセスにはパスワードが必要です」
英語表記:
- “Enter Network Password”
- “Password Required”
- “Update your credentials”
エラーが出るタイミング
よくあるタイミング:
- Outlook起動時
- メール送受信時
- 一定時間経過後
- スリープモードから復帰後
- ネットワーク接続の切り替え時
- Windowsアップデート後
エラーが表示される主な原因8つ
考えられる原因を一つずつ見ていきましょう。
原因1:保存された資格情報の期限切れ
Windowsに保存された認証情報が古くなったり、破損していると、このエラーが表示されます。
特にパスワードを変更した後に、Windows側の情報が更新されていない場合に発生しやすいです。
原因2:アカウントの認証トークンの期限切れ
Microsoft 365やExchange Onlineでは、認証トークン(一時的な認証情報)を使用します。
このトークンの有効期限が切れると、再度パスワード入力が必要になります。
原因3:Modern認証の問題
Modern認証(OAuth認証)が正しく機能していないと、従来型の認証にフォールバックして、繰り返しパスワードを求められることがあります。
原因4:ネットワーク接続の不安定さ
VPN接続、プロキシサーバー、ファイアウォールなどが原因で、認証サーバーへの接続が不安定になっている場合があります。
原因5:Outlookプロファイルの破損
Outlookのプロファイル(設定ファイル)が破損していると、認証情報が正しく読み込めなくなります。
原因6:アカウントのセキュリティ設定
メールアカウント側で2段階認証が有効になっている場合、通常のパスワードではなく「アプリパスワード」が必要になることがあります。
原因7:Officeライセンスの問題
Officeのライセンス認証に問題があると、連動してOutlookの認証にも影響が出ることがあります。
原因8:サーバー側の一時的な障害
Microsoftのサーバー側で一時的な障害が発生している場合、認証エラーが表示されることがあります。
解決方法1:保存された資格情報を削除して再登録
最も効果的な方法です。Windows資格情報マネージャーに保存された情報をリセットします。
Windows資格情報マネージャーで削除
手順1:資格情報マネージャーを開く
- Windowsキー + R を押す
- 以下を入力してEnter:
control /name Microsoft.CredentialManager
- または、スタートメニューで「資格情報マネージャー」と検索
手順2:Windows資格情報を表示
- 「Windows資格情報」タブをクリック
- 保存されている資格情報の一覧が表示される
手順3:Outlook関連の資格情報を削除
以下のような項目を探して削除:
- outlook.office365.com
- outlook.com
- MicrosoftOffice16_Data:***
- あなたのメールアドレスを含む項目
- Exchange関連の項目
各項目について:
- クリックして展開
- 「削除」をクリック
- 確認メッセージで「はい」
手順4:Outlookを再起動
- すべての関連資格情報を削除
- Outlookを完全に終了
- Outlookを再起動
- パスワード入力画面が表示される
- 正しいパスワードを入力
- 「パスワードを記憶する」にチェック
- サインイン
解決方法2:Modern認証を有効にする
Microsoft 365やExchange Onlineの場合、Modern認証を有効化することで問題が解決します。
レジストリでModern認証を有効化
⚠️ 注意: レジストリの編集は慎重に行ってください。間違えるとシステムに影響が出る可能性があります。
手順1:レジストリエディタを開く
- Windowsキー + R を押す
- 「regedit」と入力してEnter
- ユーザーアカウント制御で「はい」をクリック
手順2:該当キーに移動
以下のパスに移動:
HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Office\16.0\Common\Identity
※「16.0」はOfficeのバージョンによって異なります
- Office 2016/2019/2021/Microsoft 365:16.0
- Office 2013:15.0
手順3:値を確認・作成
- 右側のペインを確認
- 「EnableADAL」という名前のDWORD値があるか確認
ない場合は作成:
- 右クリック→「新規」→「DWORD(32ビット)値」
- 名前を「EnableADAL」にする
- ダブルクリックして値を「1」に設定
- 同様に「Version」を確認
- ない場合は作成して値を「1」に設定
手順4:追加の設定(推奨)
同じ場所に以下も作成:
- 「DisableADALatopWAMOverride」:値を「1」
- 「DisableAADWAM」:値を「0」
手順5:Outlookを再起動
- レジストリエディタを閉じる
- Outlookを完全に終了
- パソコンを再起動(推奨)
- Outlookを起動
解決方法3:「ユーザー名とパスワードを記憶する」を確認
アカウント設定でパスワード保存が有効になっているか確認します。
アカウント設定の確認手順
ステップ1:アカウント設定を開く
- Outlookを起動
- 「ファイル」タブをクリック
- 「アカウント設定」→「アカウント設定」を選択
ステップ2:アカウントを編集
- 「電子メール」タブを選択
- 問題のあるアカウントを選択
- 「変更」ボタンをクリック
ステップ3:パスワード設定を確認
- パスワード入力欄を確認
- 「パスワードを保存する」または「資格情報を記憶する」にチェックが入っているか確認
- チェックが外れていたら、チェックを入れる
- パスワードを再入力
- 「次へ」→「完了」をクリック
ステップ4:Outlookを再起動
設定を保存したら、Outlookを再起動して確認します。
解決方法4:アプリパスワードを使用する

2段階認証を有効にしている場合の対処法です。
2段階認証が原因かどうか確認
確認方法:
- ブラウザでメールサービスにログイン
- Microsoft 365:office.com
- Outlook.com:outlook.live.com
- セキュリティ設定を確認
- 2段階認証が有効になっているか確認
Microsoftアカウントでアプリパスワードを作成
手順1:Microsoftアカウントページにアクセス
- ブラウザで account.microsoft.com を開く
- サインイン
手順2:セキュリティページを開く
- 「セキュリティ」タブをクリック
- 「セキュリティの詳細オプション」を選択
手順3:アプリパスワードを作成
- 「アプリパスワード」セクションを探す
- 「新しいアプリパスワードの作成」をクリック
- 表示されたパスワードをコピー(一度しか表示されません)
手順4:Outlookで使用
- Outlookのアカウント設定を開く
- パスワード欄に、通常のパスワードではなく、コピーしたアプリパスワードを貼り付け
- 「パスワードを保存する」にチェック
- 設定を保存
解決方法5:Outlookを修復する
アプリケーション自体に問題がある場合の対処法です。
クイック修復の手順
ステップ1:コントロールパネルを開く
- Windowsキー + R を押す
- 「control」と入力してEnter
ステップ2:プログラムと機能を開く
- 「プログラムと機能」をクリック
- プログラム一覧が表示される
ステップ3:Officeを修復
- 「Microsoft Office」または「Microsoft 365」を探す
- 右クリックして「変更」を選択
- 「クイック修復」を選択
- 「修復」ボタンをクリック
ステップ4:再起動
修復完了後、パソコンを再起動します。
オンライン修復
クイック修復で解決しない場合:
- 同じ手順で「変更」を選択
- 「オンライン修復」を選択
- 「修復」ボタンをクリック(インターネット接続が必要)
- 完了まで待つ(30分~1時間程度)
- 再起動
解決方法6:新しいOutlookプロファイルを作成
プロファイルが破損している場合の最終手段です。
新規プロファイル作成手順
ステップ1:Mail設定を開く
- Windowsキー + R を押す
- 「control」と入力してEnter
- 「Mail(Microsoft Outlook)」を探してクリック
ステップ2:プロファイルの表示
- 「プロファイルの表示」ボタンをクリック
- 現在のプロファイル一覧が表示される
ステップ3:新しいプロファイルを追加
- 「追加」ボタンをクリック
- プロファイル名を入力(例:「Outlook2024」)
- 「OK」をクリック
ステップ4:アカウントを設定
- アカウント設定ウィザードが開始
- メールアドレスを入力
- パスワードを入力
- 「パスワードを記憶する」にチェック
- 設定を完了
ステップ5:既定のプロファイルに設定
- プロファイル一覧に戻る
- 「常に使用するプロファイル」を選択
- 新しく作成したプロファイルを選択
- 「OK」をクリック
次回Outlookを起動すると、新しいプロファイルが使用されます。
解決方法7:ネットワーク設定を確認する
企業ネットワークやVPN使用時の対処法です。
プロキシ設定の確認
手順:
- Outlookの「ファイル」→「オプション」
- 「詳細設定」を選択
- 「接続」セクションの「Exchangeプロキシ設定」をクリック
- プロキシ設定を確認
- 必要に応じて「プロキシ サーバーを使用しない」にチェック
ファイアウォール設定の確認
確認項目:
- Windowsファイアウォールの設定
- セキュリティソフトのファイアウォール
- 以下のドメインへのアクセスが許可されているか:
- outlook.office365.com
- smtp.office365.com
- *.outlook.com
- *.microsoft.com
企業ネットワークの場合は、IT管理者に確認してください。
解決方法8:Officeライセンスを再認証する
Officeのライセンスに問題がある場合の対処法です。
ライセンス状態の確認
手順:
- Outlookまたは他のOfficeアプリを起動
- 「ファイル」→「アカウント」
- 「製品情報」でライセンス状態を確認
サインアウトして再サインイン
手順:
- 「ファイル」→「アカウント」
- 「ユーザー情報」セクションで「サインアウト」をクリック
- 確認メッセージで「サインアウト」
- すべてのOfficeアプリを閉じる
- Outlookを再起動
- サインイン画面で正しいアカウントでサインイン
特定の状況での対処法
よくある特定の状況への対処法です。
Windows Update後にエラーが出る場合
対処法:
- Windows資格情報マネージャーで削除(解決方法1)
- Outlookの再起動
- 必要に応じてWindows Updateのロールバック
VPN接続時のみエラーが出る場合
対処法:
- VPN接続前にOutlookを起動
- または、VPN設定でスプリットトンネリングを有効化
- IT管理者にVPN設定の確認を依頼
特定のWi-Fiでのみエラーが出る場合
対処法:
- Wi-Fiネットワークのセキュリティ設定を確認
- DNSサーバー設定を確認(8.8.8.8など公開DNSに変更してみる)
- ルーターの再起動
複数のMicrosoftアカウントを使用している場合
対処法:
- Outlookで使用しているアカウントを確認
- Windows設定→「アカウント」でサインインしているアカウントを確認
- 同じアカウントを使用しているか確認
- 異なる場合は、統一する
エラーメッセージ別の対処法

具体的なエラーメッセージごとの対処法です。
「ネットワーク パスワードの入力」と表示される
主な原因:
Exchange ServerやMicrosoft 365への接続に問題がある
対処法:
- インターネット接続を確認
- サーバー名が正しいか確認
- Modern認証を有効化(解決方法2)
「資格情報を更新してください」と表示される
主な原因:
保存された認証情報が古い
対処法:
- Windows資格情報マネージャーで削除(解決方法1)
- Outlookでパスワードを再入力
「パスワードを確認してください」と表示される
主な原因:
パスワードが実際に間違っているか、2段階認証の問題
対処法:
- ブラウザでメールサービスにログインできるか確認
- 2段階認証が有効ならアプリパスワードを使用(解決方法4)
「このアカウントにアクセスできません」と表示される
主な原因:
アカウントがロックされているか、サービス障害
対処法:
- ブラウザでアカウントにアクセスして状態を確認
- Microsoftサービス正常性を確認
- アカウントのロック解除
よくある質問と回答
エラーに関するよくある疑問にお答えします。
Q1:パスワードは正しいのに何度も聞かれる理由は?
A: パスワード自体ではなく、Windowsに保存された認証情報や認証トークンに問題があります。解決方法1(資格情報マネージャーでの削除)を試してください。
Q2:毎回パスワードを入力するのは面倒。自動化できる?
A: 「パスワードを記憶する」にチェックを入れることで、自動化できます。ただし、セキュリティ上の理由で定期的な再認証が必要になることもあります。
Q3:会社のパソコンでエラーが出る。個人で解決できる?
A: 企業環境の場合、ポリシーや設定が管理者によって制御されていることがあります。解決方法1~4を試しても解決しない場合は、IT管理者に相談してください。
Q4:エラー後、メールは正常に送受信できている?
A: エラーが表示されても、一時的にメールの送受信ができることがあります。ただし、認証に失敗している状態なので、早めに解決することをおすすめします。
Q5:パスワードを変更したら解決する?
A: メールアカウントのパスワードを変更しても、根本的な解決にはなりません。変更する場合は、必ずWindows資格情報マネージャーとOutlookの両方で新しいパスワードに更新してください。
トラブル予防のためのベストプラクティス
今後同じエラーを防ぐための対策です。
定期的なメンテナンス
月に1回程度:
- Outlookの更新プログラムを確認
- Windows Updateを実行
- Windows資格情報マネージャーを確認
パスワード変更時の注意
パスワードを変更したら:
- Windows資格情報マネージャーで古い情報を削除
- Outlookでアカウント設定を更新
- 「パスワードを記憶する」にチェック
- すべてのデバイスで更新
セキュリティ設定の最適化
推奨設定:
- Modern認証を有効化
- 2段階認証を使用する場合はアプリパスワードを準備
- 信頼できるデバイスとして登録
バックアップと記録
記録しておくべき情報:
- メールアカウントの設定情報
- サーバー名、ポート番号
- 使用している認証方式
- アプリパスワード(安全な場所に保管)
まとめ:資格情報の削除と再登録が最も効果的
「パスワードの入力が必要です」エラーは、ほとんどの場合、保存された認証情報に問題があります。
この記事のポイント:
- Windows資格情報マネージャーで古い情報を削除
- Modern認証を有効化する(Microsoft 365の場合)
- 「パスワードを記憶する」にチェックを入れる
- 2段階認証ではアプリパスワードを使用
- ネットワーク設定やVPN設定を確認
- 解決しない場合はプロファイルの再作成
- 定期的なメンテナンスで予防
特に効果的なのは、Windows資格情報マネージャーでの削除と再登録(解決方法1)です。
多くの場合、この方法で問題は解決します。それでも解決しない場合は、Modern認証の有効化(解決方法2)やプロファイルの再作成(解決方法6)を試してみましょう。
企業環境で使用している場合は、IT管理者の協力が必要になることもあります。自分で解決できない場合は、早めに相談することをおすすめします。
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