「パソコンの動作が遅くなった」「ファイルが開けなくなった」「変な音がする」そんな症状が出ていませんか?
不良セクタ(Bad Sector)は、ハードディスクやSSDなどの記憶装置で、データの読み書きができなくなった領域のことです。簡単に言えば、ディスクの「壊れた部分」のことを指します。
不良セクタが発生すると、データの読み書きエラーや、システムの動作不良、最悪の場合はデータの損失につながることがあるんです。しかし、早期に発見して適切に対処すれば、被害を最小限に抑えられます。
今回は、不良セクタとは何か、なぜ発生するのか、どうやって確認・修復するのか、そして予防方法まで、詳しく解説していきます。
不良セクタとは?基本を理解しよう

まずは、不良セクタがどんなものなのか、基本から見ていきましょう。
セクタとは
セクタ(Sector)は、ハードディスクやSSDがデータを記録する最小単位のことです。
ハードディスクは、本のページのように、データを小さな区画に分けて保存しています。この一つ一つの区画が「セクタ」です。通常、1セクタは512バイトまたは4096バイト(4KB)のデータを格納します。
例えるなら:
ハードディスク全体を「大きな駐車場」とすると、セクタは「一台分の駐車スペース」のようなものです。
不良セクタの定義
不良セクタは、この駐車スペースが「使用不可」になった状態を指します。
データの読み書きができなくなったセクタのことで、物理的な損傷や電気的な問題によって発生します。不良セクタがあると、そこに保存されていたデータが読めなくなったり、新しいデータを書き込めなくなったりするんです。
不良セクタの影響
不良セクタが少数であれば、すぐに大きな問題にはなりません。
ハードディスクは、不良セクタを検出すると、自動的にその部分を使わないようにマークして、予備のセクタを使用します。しかし、不良セクタが増え続けると、以下のような問題が発生します:
- ファイルの読み書きエラー
- システムの動作が遅くなる
- アプリケーションのクラッシュ
- パソコンが起動しなくなる
- データの損失
不良セクタの種類
不良セクタには、大きく分けて2つの種類があります。
物理的不良セクタ
ハードディスクの物理的な損傷によって発生する不良セクタです。
原因:
- ディスク表面の傷
- 磁性体の劣化
- 衝撃による損傷
- 長期使用による摩耗
- 製造時の欠陥
特徴:
物理的に壊れているため、修復することはできません。ハードディスクは、この部分を使用不可としてマークし、予備セクタに置き換えます。
対処:
データをバックアップして、ディスクの交換を検討する必要があります。
論理的不良セクタ
ソフトウェア的な問題で発生する不良セクタです。
原因:
- ファイルシステムのエラー
- 不適切なシャットダウン
- ウイルスやマルウェア
- ソフトウェアのバグ
- データの書き込み中の電源断
特徴:
物理的には問題ないため、修復可能な場合があります。ディスクのチェックツールを使うことで、論理的なエラーを修正できます。
対処:
チェックディスクツール(Windowsのchkdsk、MacのFirst Aid)を実行して修復を試みます。
不良セクタが発生する原因
なぜ不良セクタは発生するのでしょうか?主な原因を見ていきましょう。
物理的衝撃
ハードディスクは精密機器で、衝撃に弱い構造をしています。
具体例:
- パソコンを動作中に移動させた
- 落下させた
- 強い振動を与えた
- 輸送中の衝撃
ハードディスク内部では、データを読み書きする「ヘッド」が、高速回転する「プラッタ」の表面すれすれを浮遊しています。衝撃によってヘッドがプラッタに接触すると、表面に傷がつき、不良セクタが発生するんです。
経年劣化
ハードディスクの寿命は一般的に3~5年程度と言われています。
劣化の要因:
- 磁性体の劣化
- 機械部品の摩耗
- 回転ベアリングの劣化
- ヘッドの消耗
長期間使用していると、自然に不良セクタが増えていきます。
温度の問題
高温環境での使用は、ハードディスクにダメージを与えます。
問題となる状況:
- パソコンの冷却不足
- 密閉された場所での使用
- 直射日光の当たる場所
- 夏場の高温環境
ハードディスクの適正動作温度は、通常0~60℃程度です。この範囲を超えると、故障リスクが高まります。
電源の問題
不安定な電源供給や突然の電源断は、不良セクタの原因になります。
問題となる状況:
- 停電
- 電源ケーブルの抜き差し
- 不安定な電圧
- シャットダウン中の強制終了
データの書き込み中に電源が切れると、そのセクタが破損する可能性があります。
製造時の欠陥
新品のハードディスクでも、製造時から不良セクタが存在する場合があります。
多くのハードディスクは、出荷時にすでに数個~数十個の不良セクタを持っていますが、予備セクタに置き換えられているため、通常は問題になりません。
不良セクタの症状・兆候
不良セクタが発生すると、以下のような症状が現れることがあります。
ファイルの読み書きエラー
ファイルを開こうとすると、エラーメッセージが表示されることがあります。
典型的なメッセージ:
- 「ファイルが見つかりません」
- 「アクセスできません」
- 「CRCエラー」
- 「読み取りエラー」
特定のファイルだけでなく、フォルダ全体がアクセスできなくなることもあります。
システムの動作が遅い
ハードディスクが不良セクタを読み飛ばそうとするため、動作が極端に遅くなります。
具体的な症状:
- ファイルを開くのに時間がかかる
- パソコンの起動が遅い
- アプリケーションの起動が遅い
- コピー作業が途中で止まる
通常数秒で終わる作業が、数分かかるようになることもあるでしょう。
異音
ハードディスクから普段と違う音が聞こえることがあります。
注意すべき音:
- 「カチカチ」「カタカタ」という規則的な音
- 「ギー」「キー」という擦れる音
- 「カツン」という衝突音
これらの音は、ヘッドが正常に動作していない兆候です。この状態が続くと、物理的不良セクタが増加していきます。
ブルースクリーン・フリーズ
Windowsの場合、ブルースクリーン(BSoD)が頻発することがあります。
不良セクタにアクセスしようとすると、システムが応答しなくなったり、強制的に再起動したりすることがあるんです。
ディスクチェックの自動実行
パソコン起動時に、自動的にディスクチェックが始まることがあります。
これは、システムがディスクに問題があると検出した証拠です。「問題を検出しました」というメッセージが表示されたら、不良セクタの可能性を疑いましょう。
不良セクタの確認方法
自分のハードディスクに不良セクタがあるか確認する方法を紹介します。
Windowsでの確認方法
Windowsには、標準でディスクチェック機能が備わっています。
方法1:エクスプローラーから実行
- エクスプローラーを開く:Windowsキー + Eを押します
- ドライブを右クリック:チェックしたいドライブ(通常はCドライブ)を右クリックしましょう
- 「プロパティ」を選択:メニューから選びます
- 「ツール」タブをクリック:タブを切り替えます
- 「チェック」をクリック:エラーチェックのセクションにあります
- 「ドライブのスキャン」を実行:スキャンが開始されます
方法2:コマンドプロンプトから実行
より詳細なチェックを行う場合は、コマンドプロンプトを使用します。
- コマンドプロンプトを管理者として起動:スタートメニューで「cmd」と検索し、右クリックして「管理者として実行」を選びます
- chkdskコマンドを実行:以下を入力します
chkdsk C: /f /r
- Yを入力:次回起動時にスキャンするか聞かれたら、Yと入力してEnterを押します
- 再起動:パソコンを再起動すると、スキャンが実行されます
オプションの意味:
/f:エラーを自動的に修復/r:不良セクタを見つけて、読み取り可能な情報を回復
Macでの確認方法
MacではディスクユーティリティのFirst Aid機能を使用します。
手順:
- ディスクユーティリティを起動:アプリケーション→ユーティリティから開きます
- 対象ドライブを選択:左側のサイドバーから選びましょう
- 「First Aid」をクリック:上部のツールバーにあります
- 「実行」をクリック:確認画面で実行を選びます
- 完了を待つ:チェックと修復が自動的に行われます
- 結果を確認:エラーが見つかったか報告されます
起動ディスク自体をチェックする場合は、復旧モード(Command + R)から起動する必要があります。
S.M.A.R.T.情報の確認
S.M.A.R.T.(Self-Monitoring, Analysis and Reporting Technology)は、ハードディスクの健康状態を監視する機能です。
Windowsでの確認方法:
CrystalDiskInfoなどの無料ソフトウェアを使用すると、S.M.A.R.T.情報を詳しく確認できます。
注目すべき項目:
- 代替処理済のセクタ数:不良セクタがどれだけあるか
- 代替処理保留中のセクタ数:不安定なセクタの数
- 回復不可能セクタ数:重大な不良セクタの数
これらの値が増加している場合、ハードディスクの寿命が近づいている可能性があります。
不良セクタの修復方法

不良セクタが見つかった場合の対処法を説明します。
論理的不良セクタの修復
ソフトウェアエラーによる不良セクタは、修復できる可能性があります。
Windowsの場合:
前述のchkdskコマンドを使用します:
chkdsk C: /f /r
このコマンドは以下を実行します:
- ファイルシステムのエラーを修正
- 不良セクタを検出
- 読み取り可能なデータを回復
- 不良セクタをマークして使用不可にする
Macの場合:
ディスクユーティリティのFirst Aidを実行します。これで論理的なエラーが修復されることがあります。
物理的不良セクタへの対処
物理的に損傷したセクタは修復できません。
しかし、システムがそのセクタを使用不可としてマークし、予備セクタに置き換えることで、ディスクは使い続けられます。
重要な注意:
物理的不良セクタが増え続けている場合、ハードディスクの寿命が近づいています。早めにデータをバックアップして、ディスクの交換を検討しましょう。
サードパーティ製ツールの使用
専門的なツールを使うと、より詳細な診断と修復ができます。
代表的なツール:
- HDD Regenerator:物理的不良セクタの修復を試みる(有料)
- Victoria:詳細なディスク診断(無料)
- HD Tune:健康状態の確認(無料版あり)
これらのツールは、特殊な技術を使って不良セクタを回復しようとしますが、完全に修復できる保証はありません。
フォーマットによる対処
ローレベルフォーマットを行うと、論理的な問題がリセットされます。
注意:
- すべてのデータが消去されます
- 物理的不良セクタは修復されません
- ハードディスクに負担をかけるため、頻繁に行うべきではありません
通常のフォーマットではなく、メーカー提供の専用ツールを使用したローレベルフォーマットが効果的です。
データの救出と復旧
不良セクタがあるディスクからデータを救出する方法です。
データ救出の基本方針
不良セクタがあるディスクは、できるだけ使用を控えましょう。
理由:
- 使用し続けると不良セクタが増える
- データ復旧の成功率が下がる
- 完全に読めなくなる可能性がある
異音がする、アクセスが極端に遅いなどの症状がある場合は、すぐに電源を切って専門業者に相談することをおすすめします。
自分でできるデータ救出
症状が軽い場合、自分でデータをコピーできることがあります。
手順:
- 別のドライブを用意:外付けハードディスクやUSBメモリを準備します
- 重要なファイルから優先的にコピー:すべてをコピーしようとせず、必要なものから順番に救出しましょう
- エラーが出たらスキップ:無理にコピーしようとすると、状態が悪化します
- 作業は短時間で:長時間稼働させると、ディスクにダメージを与えます
データ復旧ソフトの使用
専門のデータ復旧ソフトを使うと、より多くのデータを救出できる可能性があります。
代表的なソフト:
- Recuva(Windows、無料版あり)
- TestDisk(Windows/Mac/Linux、無料)
- EaseUS Data Recovery Wizard(有料、無料版は制限あり)
これらのソフトは、削除されたファイルや、アクセスできないファイルの復元を試みます。
専門業者への依頼
以下の場合は、専門のデータ復旧業者に依頼することを検討しましょう:
依頼すべき状況:
- 異音がして全くアクセスできない
- 自分で試しても復旧できない
- 非常に重要なデータが含まれている
- 費用をかけてでも確実に復旧したい
注意点:
- 費用は数万円~数十万円以上かかることがある
- 100%復旧できる保証はない
- 複数の業者に見積もりを取ることを推奨
不良セクタの予防方法

不良セクタの発生を防ぐための対策を紹介します。
適切な環境で使用する
ハードディスクに優しい環境を整えましょう。
推奨環境:
- 温度:10~35℃程度
- 湿度:20~80%程度
- 振動や衝撃のない安定した場所
- 十分な通気性
避けるべき環境:
- 直射日光が当たる場所
- 密閉された空間
- 不安定な台の上
- 強い磁気の近く
正しいシャットダウン
電源の扱いに注意しましょう。
守るべきルール:
- 必ず正常な手順でシャットダウンする
- 電源ボタンの長押しで強制終了しない
- データ書き込み中に電源を切らない
- 無停電電源装置(UPS)の使用を検討する
定期的なディスクチェック
早期発見が重要です。
推奨頻度:
- 月に1回程度、エラーチェックを実行
- S.M.A.R.T.情報を定期的に確認
- 異常な動作や音に気づいたらすぐにチェック
デフラグの実施
ハードディスク(HDDのみ、SSDは不要)の断片化を解消します。
デフラグによって、ファイルの読み書きが効率化され、ディスクへの負担が減ります。ただし、SSDではデフラグを行わないでください。寿命を縮める原因になります。
バックアップの習慣
最も重要な予防策は、定期的なバックアップです。
バックアップの基本:
- 重要なデータは複数の場所に保存
- 定期的にバックアップを更新
- クラウドストレージも活用
- バックアップが正しく取れているか確認
不良セクタによるデータ損失は、バックアップがあれば怖くありません。
SSDと不良セクタ
SSDの場合、不良セクタの扱いが少し異なります。
SSDの不良ブロック
SSDでは「セクタ」ではなく「ブロック」という単位でデータを管理します。
SSDにも、読み書きができなくなる不良ブロックが発生しますが、ハードディスクとは仕組みが異なるんです。
SSDの自動管理機能
SSDには、不良ブロックを自動的に管理する機能があります。
主な機能:
- ウェアレベリング:書き込みを均等に分散
- スペアエリア:予備のブロックを使って置き換え
- TRIM:不要なデータを整理
これらの機能により、SSDは不良ブロックが発生しても、ある程度は自動的に対処します。
SSDでの注意点
SSDの寿命は書き込み回数で決まります。
推奨事項:
- デフラグを実行しない
- 頻繁なフォーマットを避ける
- ファームウェアを最新に保つ
- TRIMコマンドを有効にする
SSDの場合、S.M.A.R.T.情報で「総書き込み量」や「残り寿命」を確認できるツールを使用すると良いでしょう。
よくある質問とトラブルシューティング
Q1:不良セクタは完全に修復できる?
答え:
論理的不良セクタは修復できる可能性がありますが、物理的不良セクタは修復できません。
物理的に壊れたセクタは、システムが使用不可としてマークし、予備セクタで代替します。不良セクタが増え続ける場合は、ディスクの交換を検討してください。
Q2:不良セクタが1つでもあったら危険?
答え:
少数の不良セクタは、それほど心配する必要はありません。
多くのハードディスクは、出荷時から数個~数十個の不良セクタを持っています。問題は、不良セクタが急激に増加している場合です。S.M.A.R.T.情報で増加傾向を確認しましょう。
Q3:chkdskを実行したらデータが消えた
原因:
chkdskは、回復不可能なファイルを削除することがあります。
対策:
- chkdsk実行前に必ずバックアップを取る
/fオプションだけを使い、まず軽いチェックを試す- 重要なデータがある場合は、まずデータ救出を優先
Q4:ハードディスクから異音がするけど使える
答え:
すぐに使用を停止してください。
異音は物理的な故障の兆候です。使い続けると、完全に壊れてデータが取り出せなくなる可能性があります。重要なデータがある場合は、専門業者に相談しましょう。
Q5:新品のハードディスクに不良セクタがある
答え:
数個程度であれば正常範囲です。
ただし、以下の場合は初期不良の可能性があります:
- 購入直後から大量の不良セクタがある
- 急速に増加している
- 異音やエラーが頻発する
保証期間内であれば、販売店やメーカーに相談してください。
まとめ
不良セクタは、ハードディスクやSSDで避けられない問題ですが、適切に対処すればデータを守ることができます。
重要なポイントをおさらいしましょう:
- 不良セクタはデータの読み書きができなくなった領域
- 物理的不良セクタと論理的不良セクタの2種類がある
- 物理的不良セクタは修復不可能
- 論理的不良セクタはchkdskやFirst Aidで修復可能
- 不良セクタの増加は、ディスク故障の兆候
- 定期的なチェックとバックアップが最も重要
- SSDは自動的に不良ブロックを管理する
不良セクタが見つかったからといって、すぐにパニックになる必要はありません。
まずは落ち着いて、データをバックアップし、ディスクチェックツールで状態を確認しましょう。不良セクタが急増している、異音がするなどの症状がある場合は、早めにディスクの交換を検討してください。
何より大切なのは、日頃からバックアップの習慣を持つことです。ハードディスクは消耗品であり、いつかは必ず壊れます。「もしもの時」に備えて、大切なデータは複数の場所に保存しておきましょう!

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