「スナップショットって何?」「バックアップとどう違うの?」「Time Machineもスナップショットを使っているって本当?」そんな疑問はありませんか?
スナップショット(Snapshot)は、直訳すると「瞬間的な写真」という意味です。IT分野では、ある時点でのシステムやデータの状態を記録しておく技術のことを指します。写真を撮るように、その瞬間の状態を保存しておくイメージですね。
この技術は、MacのAPFSやTime Machine、仮想マシン、クラウドサービスなど、様々な場面で使われています。「間違えてファイルを削除してしまった」「アップデート前の状態に戻したい」という時に、スナップショットがあれば簡単に元に戻せるんです。
今回は、スナップショットの基本的な仕組みから、様々な使い方、メリット・デメリット、そして実際の活用方法まで、詳しく解説していきます。
スナップショットとは?基本を理解しよう

まずは、スナップショットがどんな技術なのか、基本から見ていきましょう。
スナップショットの基本概念
スナップショットは、ある時点でのデータやシステムの状態を記録する技術です。
例えば、写真を撮ることを想像してください。シャッターを切った瞬間の風景が、写真として残りますよね。スナップショットも同じように、ボタンを押した瞬間のデータの状態を「写真」として保存しておくんです。
重要なのは、元のデータを完全にコピーするのではなく、変更点だけを記録するという点です。これにより、容量を節約しながら、複数の時点の状態を保存できます。
バックアップとの違い
「スナップショットとバックアップって同じじゃないの?」と思うかもしれません。でも、両者には重要な違いがあります。
スナップショット:
- 同じストレージ内に保存される
- 瞬間的に作成できる(数秒)
- 変更点だけを記録するので容量が少ない
- 複数の時点を保存しやすい
- 元のドライブが壊れたら使えない
バックアップ:
- 別のストレージに完全コピーを作成
- 作成に時間がかかる(数分~数時間)
- 完全なコピーなので容量が大きい
- ドライブの物理的な故障にも対応できる
簡単に言えば、スナップショットは「素早く手軽に状態を記録」、バックアップは「別の場所に安全に保管」という違いがあります。
スナップショットが使われている場面
スナップショットは、様々な場面で活用されています:
- ファイルシステム:MacのAPFS、LinuxのBtrfsやZFS
- Time Machine:Macの標準バックアップ機能
- 仮想マシン:VMware、VirtualBox、Hyper-V
- クラウドストレージ:AWS、Azure、Google Cloud
- データベース:SQL Server、Oracle
- ストレージシステム:NAS、SAN
私たちが気づかないところで、多くのシステムがスナップショット機能を使っているんです。
スナップショットの仕組み
スナップショットがどのように動作するのか、もう少し詳しく見ていきましょう。
コピーオンライト方式
多くのスナップショットは、「コピーオンライト(Copy-on-Write)」という技術を使っています。
仕組み:
- スナップショットを作成した時点では、データのコピーは作らない
- ファイルが変更される時だけ、元のデータをコピーしてから変更する
- 変更されていないファイルは、スナップショット間で共有される
例:
100GBのデータのスナップショットを取っても、最初は数MBしか使いません。その後、5GBのファイルを変更したら、その5GB分だけ追加で容量を使います。
この仕組みにより、容量を節約しながら、複数の時点の状態を保存できるんです。
差分の記録
スナップショットは、変更された部分(差分)だけを記録します。
例:
- 月曜日:スナップショット1を作成(ベースライン)
- 火曜日:10個のファイルを変更
- スナップショット2は、この10個の変更だけを記録
- 水曜日:さらに5個のファイルを変更
- スナップショット3は、この5個の変更だけを記録
このように、変更点を積み重ねる形で記録していきます。
メタデータの管理
スナップショットは、メタデータ(データについての情報)を使って効率的に管理されます。
メタデータに含まれる情報:
- どのファイルがどのスナップショットに属するか
- ファイルの実際の保存場所
- 作成日時
- 変更履歴
ユーザーが「昨日の状態に戻す」と操作すると、システムはメタデータを参照して、その時点のファイルの組み合わせを再現します。
APFSスナップショット(Mac)
MacのAPFS(Apple File System)で使われるスナップショット機能について解説します。
APFSスナップショットとは
macOS High Sierra以降、Macは標準でAPFSというファイルシステムを使っています。
APFSには、スナップショット機能が組み込まれていて、Time Machineやシステムアップデート時に自動的に利用されています。ユーザーが意識しなくても、裏側でデータを守ってくれているんです。
Time Machineのローカルスナップショット
Time Machineは、外付けドライブへのバックアップだけでなく、内蔵ドライブにもスナップショットを作成します。
仕組み:
- 1時間ごとにローカルスナップショットを作成
- Time Machineドライブが接続されると、スナップショットをバックアップに転送
- 容量が不足すると、古いスナップショットを自動削除
これにより、外付けドライブを持ち歩かなくても、最近の状態に戻せるんです。
macOSアップデート時のスナップショット
macOSをアップデートする直前に、システムは自動的にスナップショットを作成します。
メリット:
- アップデートに失敗しても、元に戻せる
- 新しいOSに問題があれば、前のバージョンに戻せる
- データを失うリスクが減る
「復旧モードから以前のmacOSを復元」という選択肢は、このスナップショットを使っています。
スナップショットの確認方法
ターミナルで、現在のスナップショットを確認できます。
手順:
- アプリケーション→ユーティリティ→ターミナルを開く
- 以下のコマンドを入力:
tmutil listlocalsnapshots /
- Returnキーを押す
作成されているスナップショットの一覧が表示されます。
スナップショットからの復元
Time Machineインターフェースを使って、スナップショットからファイルを復元できます。
手順:
- Time Machineを起動(メニューバーのアイコンから)
- タイムラインで復元したい時点を選択
- ファイルを選んで「復元」をクリック
外付けドライブが接続されていなくても、ローカルスナップショットから復元できます。
仮想マシンのスナップショット
仮想マシンソフトウェアでのスナップショット機能について説明します。
仮想マシンスナップショットとは
VMware、VirtualBox、Parallels、Hyper-Vなどの仮想マシンソフトには、スナップショット機能があります。
仮想マシン全体の状態(OS、アプリ、データ、メモリの内容まで)を記録できるんです。まるでゲームのセーブポイントのように、いつでも特定の状態に戻れます。
いつ使うのか
仮想マシンのスナップショットは、以下のような場面で非常に便利です:
ソフトウェアのテスト:
- 新しいソフトをインストールする前にスナップショット作成
- 問題があればスナップショットから復元
開発環境の保護:
- 動作している状態を保存
- 実験的な変更を試して、失敗したら戻す
システム設定の変更:
- 設定を変更する前にスナップショット作成
- うまくいかなければ元に戻す
マルウェアの検証:
- クリーンな状態を保存
- 危険なファイルを開いても、すぐに元に戻せる
スナップショットの作成方法(VirtualBox例)
- 仮想マシンを選択:VirtualBoxで対象の仮想マシンを選びます
- スナップショットタブを開く:右側のメニューから選択しましょう
- 「取得」をクリック:新しいスナップショットを作成します
- 名前と説明を入力:「クリーンインストール直後」など分かりやすい名前を付けます
- 「OK」をクリック:スナップショットが作成されます
スナップショットからの復元
- スナップショットタブを開く:一覧が表示されます
- 復元したいスナップショットを選択:右クリックします
- 「復元」をクリック:確認画面が表示されます
- 現在の状態を保存するか選択:必要なら現在の状態もスナップショットとして保存できます
- 「復元」を実行:選択した時点の状態に戻ります
スナップショットツリー
仮想マシンでは、スナップショットを「枝分かれ」させることができます。
例:
初期状態
├─ Windows 10インストール後
│ ├─ Officeインストール後(ブランチA)
│ └─ 開発ツールインストール後(ブランチB)
└─ Linux設定済み(ブランチC)
このように、異なる設定を試したり、複数のパターンを保存したりできます。
クラウドストレージのスナップショット
クラウドサービスでのスナップショット機能について解説します。
クラウドスナップショットの特徴
AWS、Azure、Google Cloudなどのクラウドサービスでは、サーバーやストレージのスナップショットを作成できます。
メリット:
- サーバー全体を短時間でバックアップ
- 別のサーバーとして起動できる
- リージョン間でコピーして災害対策
- 開発環境と本番環境の複製が簡単
企業のシステムでは、定期的にスナップショットを取ることで、障害時の復旧時間を大幅に短縮できます。
個人で使えるクラウドスナップショット
Googleフォト、iCloud、OneDrive:
これらのサービスも、ある意味スナップショット的に使えます。自動同期により、過去の写真やファイルを保存し、削除したファイルも一定期間復元できるんです。
Dropboxのバージョン履歴:
ファイルの変更履歴を自動保存し、過去のバージョンに戻せます。これもスナップショットの一種といえます。
スナップショットのメリット
スナップショット機能の優れている点を整理しましょう。
素早い作成と復元
従来のバックアップと比べて、圧倒的に速いです。
スナップショット:
- 作成:数秒~数分
- 復元:数秒~数分
フルバックアップ:
- 作成:数十分~数時間
- 復元:数十分~数時間
緊急時に素早く対応できるのは大きなメリットです。
容量の節約
変更点だけを記録するため、効率的です。
例:
100GBのデータに対して:
- 完全バックアップ10個:1,000GB必要
- スナップショット10個:100GB + 変更分(20~50GB程度)
同じストレージで、より多くの復元ポイントを保存できます。
細かい間隔で保存可能
容量と時間の負担が小さいため、頻繁に作成できます。
Time Machineの例:
- 1時間ごとにローカルスナップショット
- 1日ごとに外付けドライブへ完全バックアップ
これにより、より最近の状態に戻せる可能性が高まります。
試行錯誤がしやすい
失敗しても簡単に戻せるため、新しいことに挑戦しやすくなります。
活用例:
- システムアップデート前にスナップショット作成
- 新しいソフトのテストインストール
- 設定の大幅な変更
- 開発環境での実験
「やってみて、ダメなら戻す」という柔軟な対応が可能になるんです。
スナップショットのデメリットと注意点
便利なスナップショットですが、限界や注意すべき点もあります。
同じストレージ内に保存される
最大の問題は、元のドライブが故障したら、スナップショットも失われることです。
対策:
- スナップショットとは別に、定期的な外部バックアップも実行する
- 重要なデータは複数の場所に保存する
- クラウドバックアップも併用する
スナップショットは「バックアップの代わり」ではなく、「バックアップの補完」として使いましょう。
容量を消費する
変更が多いと、スナップショットも多くの容量を使います。
注意点:
- 古いスナップショットは自動または手動で削除する
- ストレージの空き容量を定期的に確認する
- 必要以上にスナップショットを溜め込まない
パフォーマンスへの影響
多数のスナップショットを保持すると、システムの動作が遅くなることがあります。
理由:
- ファイル読み書き時に、どのスナップショットに属するか判断する処理が増える
- メタデータの管理が複雑になる
通常の使用では問題ありませんが、大量のスナップショットを保持する場合は注意が必要です。
すべてのファイルシステムが対応していない
スナップショット機能は、対応するファイルシステムでのみ使えます。
対応:
- APFS(Mac)
- Btrfs、ZFS(Linux)
- ReFS(Windows Server)
- NTFS(一部の機能のみ)
非対応:
- FAT32
- exFAT
- 古いバージョンのNTFS
古いフォーマットのドライブでは、スナップショットを利用できません。
スナップショットの実践的な使い方
実際にどのように活用すれば良いか、具体的な方法を紹介します。
Macでの活用
Time Machineを有効にする:
- システム設定→一般→Time Machineを開く
- 外付けドライブを接続して選択
- 自動バックアップをオンにする
これで、ローカルスナップショットも自動的に作成されます。
システムアップデート前:
macOSは自動的にスナップショットを作成しますが、手動でTime Machineバックアップも実行しておくと安心です。
仮想マシンでの活用
開発・テスト環境:
- クリーンな状態でスナップショット作成
- 新機能の開発やテスト
- 問題があれば即座に復元
- うまくいけば新しいスナップショットを作成
学習用途:
- 初期状態のスナップショットを作成
- 様々な設定やソフトを試す
- 失敗したら初期状態に戻す
- 何度でもやり直せる
クラウドストレージでの活用
重要ファイルのバージョン管理:
- Dropbox、OneDrive、Google Driveなどで自動バージョン管理を有効化
- 間違って上書きしても、過去のバージョンを復元できる
定期的な確認:
- 月に1回程度、過去バージョンを確認
- 不要な古いバージョンは削除して容量節約
スナップショットとバックアップの併用戦略
最も安全な方法は、両方を組み合わせることです。
3-2-1バックアップルール
データ保護の基本原則を紹介します:
3つのコピー:
- オリジナル
- ローカルバックアップ(外付けドライブ)
- オフサイトバックアップ(クラウドなど)
2種類のメディア:
- 内蔵SSD/HDD
- 外付けハードディスク
1つは遠隔地:
- クラウドストレージ
- 別の場所に保管した外付けドライブ
推奨される組み合わせ
日常的な保護:
- APFSローカルスナップショット(自動、1時間ごと)
- Time Machine(自動、1日1回)
週次バックアップ:
- 外付けドライブへの完全バックアップ
月次バックアップ:
- クラウドへの重要データバックアップ
この組み合わせで、短期的な失敗にも長期的な災害にも対応できます。
よくある質問
Q1:スナップショットは容量をどれくらい使う?
答え:
変更量によりますが、一般的な使い方では:
- Time Machineローカルスナップショット:数GB~20GB程度
- 仮想マシンスナップショット:変更したデータ量分(数百MB~数十GB)
Q2:スナップショットを手動で削除できる?
答え:
システムによって異なります。
Mac:
Time Machineのローカルスナップショットは、容量が不足すると自動削除されます。手動削除も可能ですが、通常は不要です。
仮想マシン:
自由に削除できます。不要になったスナップショットは削除しましょう。
Q3:スナップショットがあれば外部バックアップは不要?
答え:
いいえ、外部バックアップは必須です。
スナップショットは同じドライブ内に保存されるため、ドライブが故障したら失われます。重要なデータには、必ず別のストレージへのバックアップも作成してください。
Q4:古いスナップショットから復元できる?
答え:
はい、保存されている限り可能です。
ただし、古いスナップショットほど容量を使うため、一定期間を過ぎると自動削除されることがあります。
Q5:スナップショット機能を無効にできる?
答え:
システムによっては可能ですが、推奨しません。
Time Machineのローカルスナップショットは、Macの標準機能として有効にしておくべきです。容量管理は自動で行われます。
まとめ
スナップショットは、データを守るための強力な技術です。
重要なポイントをおさらいしましょう:
- スナップショットは特定時点の状態を素早く記録する技術
- バックアップと違い、同じストレージ内に変更点だけを保存
- MacのAPFS、Time Machine、仮想マシンなどで広く使われている
- 作成と復元が高速で、容量も節約できる
- ドライブ故障には対応できないので、外部バックアップも必須
- スナップショットとバックアップを併用することが最も安全
スナップショットは「最近の失敗をすぐに取り消す」、バックアップは「大きな災害から確実に守る」という役割分担です。
MacやWindowsを使っている方は、Time Machineや仮想マシンのスナップショット機能を活用してみてください。「間違えて削除してしまった」「設定を変えたら動かなくなった」という時に、きっと助けてくれますよ!

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