【人の生気を吸う闇の怪物】妖怪「大蜘蛛(おおぐも)」とは?その姿・特徴・伝承をやさしく解説!

神話・歴史・伝承

夜、布団に入ったとき、天井の隅に黒い影が動くのを見たことはありませんか?

もしかしたら、それは普通の蜘蛛ではないかもしれません。

日本には古くから、人間の生気を吸い取り、病気や死をもたらす恐ろしい妖怪「大蜘蛛」の伝説が語り継がれてきました。『狗張子』や『信濃奇勝録』などの古典文学に記録されたこの怪物は、普通の蜘蛛とは比べものにならないほど巨大で、不思議な力を持っているとされています。

この記事では、日本各地に伝わる妖怪「大蜘蛛」について、その恐ろしい姿や特徴、実際に記録された伝承を分かりやすくご紹介します。

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概要

大蜘蛛(おおぐも)は、日本の怪談や随筆、民俗資料に登場する巨大な蜘蛛の妖怪です。

室町時代から江戸時代にかけて編纂された『狗張子』『諸皐記』『耳嚢』『宿直草』といった古典文献に記述が残されています。

また、『土蜘蛛草子』や『平家物語』では「山蜘蛛」という別名でも知られているんですね。

姿・見た目

大蜘蛛の最大の特徴は、その驚くべき大きさなんです。

大蜘蛛のサイズ

  • 体長:約84cm(2尺8寸)という記録がある
  • 見た目:通常の蜘蛛の何十倍もの大きさ
  • 特徴:毛むくじゃらの手足を持つこともある

『狗張子』に記録された事例では、仏壇のそばで発見された大蜘蛛が約84センチもあったそうです。これは小型犬くらいの大きさで、想像するだけで恐ろしいですよね。

特徴

大蜘蛛には、普通の蜘蛛にはない不思議な能力があります。

大蜘蛛の恐ろしい能力

  • 変化の術:老婆など人間の姿に化けることができる
  • 生気を吸う:人間の精気(生命力)を吸い取って病気にさせる
  • 糸の通力:特別な力を持つ蜘蛛の糸で人を縛る
  • 不可視:病人にしか見えないことがある
  • 長寿:年を経て妖力を得た存在

特に恐ろしいのは、大蜘蛛に取り憑かれた人が原因不明の病気になってしまうことなんです。寛文時代の奇談集『曽呂利物語』には、大蜘蛛が60歳ほどの老婆に化けて人を襲ったという話も記録されています。

これらの能力は、歳を経た蜘蛛が怪しい力を持つようになるという俗信から生まれたと考えられているんですね。

伝承

大蜘蛛にまつわる伝承は日本各地に残されていますが、特に有名なのが以下の3つの物語です。

京都・大善院の大蜘蛛退治

『狗張子』に記録された、最も有名な大蜘蛛退治の物語です。

事件のあらすじ

京都の五条烏丸(ごじょうからすま)という場所に大善院という寺がありました。

ある夜、覚円(かくえん)という山伏がこの寺に泊まったときのことです。夜更けに突然、激しい音とともに天井から毛むくじゃらの手が伸びてきて、山伏の顔をなでようとしたんです。

驚いた覚円は素早く刀を抜き、その手を斬り落としました。翌朝、仏壇のそばを見てみると、そこには約84センチもある巨大な蜘蛛の死骸が転がっていたというんです。

この話から、大蜘蛛が寺院のような神聖な場所にも潜んでいることが分かりますね。

信濃国・飯山の母子を襲った大蜘蛛

天保時代の『信濃奇勝録』には、もっと詳しい大蜘蛛の恐怖が記録されています。

事件の経緯

信濃国(現在の長野県)下水内郡飯山に、母と息子の2人で暮らす貧しい農家がありました。

ある日、息子が病気になり、布団から起き上がれなくなってしまいます。そして息子は「蜘蛛が来る、蜘蛛が来る」と苦しみながら訴えるようになったんです。

母親は息子を苦しめる蜘蛛を殺そうとしましたが、その蜘蛛は病人にしか見えません。祈祷師に頼んでも全く効果がありませんでした。

しかし、息子を想う母の強い念の力のおかげか、次第に母親の目にも蜘蛛の姿が見えるようになってきたんです。

ある日、母親は寝床の下にいる大蜘蛛を見つけ、必死に押さえつけました。ところが、大蜘蛛の力は想像以上に強く、逆に母親が蜘蛛の糸に捕らえられて身動きが取れなくなってしまったんです。

母親の苦しむ声を聞いた近所の人々が駆けつけ、斧や鉈で蜘蛛の糸を断ち切り、大蜘蛛を切り刻んで退治しました。それは見たこともないほど巨大な蜘蛛だったそうです。

その後

大蜘蛛が退治されてから、息子の病気は快方に向かいました。しかし、長い間蜘蛛に血を吸われ続けていたため、体のあちこちの皮が剥げ、しばらくは杖なしでは歩けないほど衰弱していたといいます。

この話からは、大蜘蛛がいかに執拗に人間の生気を吸い続けるかが分かりますね。

老婆に化けた大蜘蛛

寛文時代の『曽呂利物語』には「足高蜘の変化の事」という題で、変身能力を持つ大蜘蛛の話が記録されています。

事件の概要

ある山野に住む男のもとに、夜になると60歳ほどの老婆が現れるようになりました。

その老婆は髪を振り乱し、恐ろしい形相で男に襲いかかってきたんです。男は刀で応戦し、老婆の足を斬り落とすことに成功しました。

すると老婆の正体は、人間に化けた大蜘蛛だったことが判明したというんです。

この伝承は、大蜘蛛が単に大きいだけでなく、人間を欺く知恵と変化の術を持っていることを示しています。

まとめ

大蜘蛛は、日本の妖怪の中でも特に恐ろしい、人間の生命を脅かす存在です。

重要なポイント

  • 室町時代から江戸時代の古典文献に記録された実在感のある妖怪
  • 体長約84cmという驚異的な大きさを持つ
  • 人間の生気を吸い取り、病気や死をもたらす恐ろしい能力
  • 老婆などに化ける変身能力を持つ
  • 病人にしか見えない不可視の力を持つことがある
  • 特別な通力を持つ蜘蛛の糸で人を縛る
  • 歳を経た蜘蛛が妖力を得るという俗信から生まれた

もし夜中に天井から何かが落ちてくる音がしたら、それは大蜘蛛かもしれません。古い日本家屋や寺院には、今でも伝説の大蜘蛛が潜んでいるかもしれませんね。

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