【天狗の衣が妖怪に変化?】妖怪「欷立衣(えりたてごろも)」とは?その姿・特徴・伝承をやさしく解説!

お寺で見かける高僧の衣装に、襟が異様に突き出したものがあることに気づいたことはありますか?

実はその独特な衣が、妖怪になってしまったという不思議な話があるんです。

それが「欷立衣(えりたてごろも)」という妖怪。日本最強の天狗が着ていた衣に、神力が宿って妖怪化したとされる、ちょっと変わった存在なんですね。

この記事では、天狗の衣から生まれた不思議な妖怪「欷立衣」について、その姿や特徴、伝承を詳しくご紹介します。

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概要

欷立衣は、江戸時代の浮世絵師・鳥山石燕が描いた妖怪画集『画図百鬼徒然袋』に登場する妖怪です。

そもそも「欷立衣」というのは、高僧が着る特別な衣装のこと。後頭部が隠れるほど襟が大きく突き出している、とても独特な形をしているんですね。

この妖怪は、いわゆる付喪神(つくもがみ)の一種だと考えられています。付喪神というのは、長い年月を経た道具や衣服に霊力が宿って、妖怪になったものなんです。

姿・見た目

石燕の絵によると、欷立衣はこんな姿をしています。

欷立衣の外見的特徴

  • 襟の部分が顔に垂れ下がって、鼻や鳥のくちばしのようになっている
  • 柄香炉(えごうろ)という香炉を前に置いている
  • 数珠を持っている
  • 僧侶の姿をしている

つまり、僧侶が着る衣装そのものが生命を持ったような、なんとも不思議な姿なんですね。

特徴

欷立衣の最大の特徴は、その持ち主にあります。

この衣は、ただの僧侶の衣ではありません。鞍馬山の魔王・僧正坊という、日本最強クラスの大天狗が着ていた衣だというんです。

僧正坊の力

  • 日本一、二を競うほどの大天狗の総元締
  • 九州の英彦山、讃岐の白峯坊、信州の飯綱三郎など、全国の天狗を従える
  • 羽団扇(はうちわ)一つで、すべての天狗を思いのままに操る
  • かの有名な源義経(牛若丸)に剣術や軍学を教えた存在

そんな強大な力を持つ天狗が着ていた衣ですから、その襟だけでも神力が秘められていると考えられたんですね。

石燕自身も「これは鞍馬山の僧正坊の襟立衣なのではないかと夢に思った」と記しており、あくまで推測という形を取っていますが、その神秘性を強調しているんです。

伝承

鞍馬山の天狗伝説

欷立衣を語るうえで欠かせないのが、その持ち主とされる僧正坊鞍馬山の伝承なんです。

鞍馬山にある鞍馬寺の伝承によると、この山は日本で最も多くの天狗が集まる場所だとされています。

鞍馬山の天狗たち

  • 山中の至るところに天狗が宿っている
  • 木陰や草むら、木の葉の露にまで天狗がいる
  • 山全体が天狗の神力に満ちている

つまり、鞍馬山そのものが巨大な天狗の聖地なんですね。

僧正坊の影響力

石燕の記述には、僧正坊が支配する天狗たちの名前が列挙されています。

  • 彦山の僧喜坊(北九州・英彦山)
  • 飯綱の三郎(信州・飯綱山)
  • 富士太郎(富士山)
  • その他、木の葉天狗まで

これらすべての天狗が、僧正坊の羽団扇の風に従うとされているんです。そんな絶大な力を持つ天狗の衣ですから、衣自体に霊力が宿るのも不思議ではないかもしれません。

神力が宿る理由

欷立衣が妖怪化した理由は、次のように考えられています。

  1. 僧正坊という強大な天狗が長年着用していた
  2. 鞍馬山という天狗の聖地の神力が衣に染み込んだ
  3. 長い年月を経て、衣そのものに霊力が宿った
  4. やがて付喪神として独立した存在になった

このように、持ち主の力場所の霊力、そして時間の経過という三つの要素が重なって、ただの衣が妖怪になったと考えられているんですね。

牛若丸との関係

余談ですが、僧正坊は源義経(幼名・牛若丸)に剣術を教えた存在として、古くから語り継がれてきました。

平家に追われた牛若丸が鞍馬山で修行していた時、僧正坊が現れて軍学や剣術を指南したという伝説は、能や歌舞伎などでも題材となっています。

つまり欷立衣は、日本の歴史を変えた英雄・義経を育てた天狗の衣でもあるわけです。

まとめ

欷立衣は、天狗の神力が宿った衣の付喪神です。

重要なポイント

  • 鳥山石燕の『画図百鬼徒然袋』に描かれた妖怪
  • 高僧が着る独特な形の衣装が妖怪化したもの
  • 日本最強クラスの大天狗・僧正坊の衣とされる
  • 付喪神(道具や衣服の妖怪)の一種
  • 鞍馬山という天狗の聖地の神力が宿っている
  • 源義経を育てた伝説的な天狗の衣でもある

普段何気なく目にする僧侶の衣装も、長い年月と強大な力が加わると、こうして妖怪になってしまうんですね。もしお寺で襟の大きな衣を見かけたら、その裏にある不思議な伝説を思い出してみてください。

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