【川底から伸びる不気味な腕…】妖怪「猿猴(えんこう)」とは?その姿・特徴・伝承をやさしく解説!

神話・歴史・伝承

川で泳いでいると、突然水の中から何かが足を引っ張る…そんな恐ろしい経験をしたという話を聞いたことはありませんか?

中国・四国地方では古くから、川や池に棲む不思議な生き物の存在が語り継がれてきました。

それが「猿猴(えんこう)」です。河童の仲間でありながら、猿のような毛むくじゃらの姿をした、地域独特の水の妖怪なんです。

この記事では、中国・四国地方に伝わる水の妖怪「猿猴」について、その不気味な姿や特徴、地域に残る興味深い伝承を詳しくご紹介します。

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概要

猿猴(えんこう)は、広島県や中国・四国地方に古くから伝わる河童の一種です。

エンコ、エコウ、猿猴坊などとも呼ばれ、主に河川や池、時には海にも棲むとされています。

一般的な河童との大きな違いは、毛むくじゃらで猿に似た姿をしている点なんです。

地域に根ざした水の妖怪として、今でも高知県南国市では「猿猴祭り」が毎年6月初めに行われており、川のそばに簡素な祭壇を作って胡瓜を供え、一年の水難除けを祈願しています。

広島市南区を流れる猿猴川の名前も、この妖怪の伝承に由来しているんですね。

姿・見た目

猿猴の姿は、文献や目撃証言によって少しずつ異なりますが、共通する特徴があります。

基本的な外見

文久3年(1863年)に土佐(現・高知県)の漁師たちが生け捕ったとされる猿猴の記録によると、次のような姿だったそうです。

猿猴の外見的特徴

  • 大きさ:1歳から3歳くらいの子供ほど
  • :鰻のようにぬるぬるしている(鱗のような飴色がかった肌という記述も)
  • :真っ赤で猿に似ている
  • 手足:手足は長く爪があり、指には長い毛が生えている
  • :人間の足に似ている
  • :角が4つあるという記録もある

民俗学者・桂井和雄の著書『土佐の山村の妖物と怪異』によれば、土佐の猿猴は市松人形に化けて夜の漁の場に現れることもあったそうです。

特徴

猿猴には、河童と似た性質がありながら、独特の能力や習性も持っています。

主な能力と性質

猿猤の特徴

  • 金属を嫌う:金物に対して強い嫌悪感を示す
  • 手が伸縮自在:ある男が猿猴の腕を捻り上げようとしたが、捻っても捻ってもきりがなく、一晩中捻り続ける羽目になったという
  • 相撲が好き:人間と相撲を取りたがる性質がある
  • 人に憑く:人間に取り憑くことがある
  • 変身能力:女性や人形に化けることができる

危険な行動

猿猴は時として人間に危害を加えることもあります。

泳いでいる人間を襲い、肛門から手を入れて生き胆を抜き取るという恐ろしい伝承があるんです。

また、女性を好んで浚うともいわれており、猿猴が人間の女性に産ませた子供は、頭に皿があり、産まれながらにして歯が1枚生えているといい、そうした子供は焼き殺されたという悲しい言い伝えも残っています。

伝承

シバテンとの関係

土佐では、猿猴の他にシバテン(芝天狗)という河童に類する妖怪が知られています。

このシバテンが旧暦6月7日(または6月6日)の祇園の日になると川に入って猿猴になるといわれているんです。

この日には、猿猴の好物である胡瓜を川に流す習慣がありました。

山の妖怪が川に入ると水の妖怪になるという性質は、特に西日本でよくいわれることで、シバテンと猿猴の関係もそれと同じものだと考えられています。

土佐での目撃談

高知県長岡郡本山村では、川の底に鱗のある猿猴が棲んでおり、突きで突くとにっこり笑ったという不気味な話が伝わっています。

文久3年(1863年)に実際に生け捕りにされたとされる猿猴についても、漁師たちによって詳細な記録が残されているんです。

山口県の伝承

山口県萩市大島や阿武郡では、河童に類するタキワロという妖怪がおり、これが山に3年、川に3年住んで猿猴になるという独特の変化過程が語られています。

広島の猿猴川

広島市南区を流れる猿猴川は、まさにこの妖怪の伝承が名前の由来となっている川です。

現在でも付近では伝承にちなんで「猿猴川河童まつり」が開催されており、地域の文化として大切に守られているんですね。

猿猴祭り

高知県南国市あたりでは、今でも猿猴のお祭りが行われています。

猿猴祭りの内容

  • 毎年6月初めごろに開催される
  • 川のそばに「猿猴棚」という簡素な祭壇を作る
  • 猿猴の好物である胡瓜を供える
  • 一年の水難除けを祈願する

地域の小さな祭りですが、古くからの伝承を今に伝える貴重な行事なんです。

まとめ

猿猴は、中国・四国地方に深く根ざした、河童の仲間でありながら独特の特徴を持つ水の妖怪です。

重要なポイント

  • 広島県や中国・四国地方に伝わる河童の一種
  • 毛むくじゃらで猿に似た姿が特徴的
  • 手が伸縮自在で、金属を嫌う性質がある
  • 女性や人形に化けることができる
  • シバテンという妖怪が祇園の日に川に入って猿猴になる
  • 高知県では今でも猿猴祭りが行われている
  • 広島市南区の猿猴川の名前の由来となっている

猿猴の伝承は、地域の人々にとって単なる怖い話ではなく、川や水に対する畏敬の念を表すものでもありました。

現代でも祭りや地名として残っているのは、先人たちが水の危険性を後世に伝えようとした証なのかもしれませんね。

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