iPhoneの写真を保存したり、Macでファイルを作成したりするとき、裏側では「APFS」という技術が働いています。普段は意識することのない仕組みですが、実はこれがないとAppleデバイスは正常に動作しません。
この記事では、APFSの基礎知識から実用的なメリットまで、分かりやすく解説していきますね。Macのストレージをフォーマットするときや、外付けSSDを使うときにも役立つ知識です。
APFSとは何か?基本を押さえよう

ファイルシステムの役割
まず「ファイルシステム」とは、コンピュータがデータを保存・管理するための仕組みのことです。本棚に本を整理する方法に例えると分かりやすいでしょう。どこに何を置くか、どうやって探すかというルールがないと、大量のデータを扱えません。
APFSの正式名称と誕生
APFSは「Apple File System(アップル・ファイル・システム)」の略称です。Apple社が開発した新しいファイルシステムで、2017年に登場しました。
それまでAppleデバイスでは「HFS+(Mac OS拡張)」というファイルシステムが使われていましたが、約30年前の設計だったため、現代のSSDやフラッシュストレージには最適とは言えなくなっていました。
APFSが導入されたのはいつ?
APFSの導入は段階的に行われました:
2017年3月
iOS 10.3のアップデートで、すべてのiPhoneとiPadがAPFSに自動変換されました。ユーザーが何もしなくても、アップデート中に切り替わったのです。
2017年9月
macOS High Sierraから、Macの起動ドライブにAPFSが標準採用されました。SSDを搭載したMacは自動的にAPFSでフォーマットされるようになります。
現在では、iPhone、iPad、Mac、Apple Watch、Apple TVなど、ほぼすべてのAppleデバイスでAPFSが使われています。
APFSの主な特徴とメリット
1. SSD向けに最適化されている
APFSは、SSD(ソリッドステートドライブ)やフラッシュメモリでの動作を前提に設計されました。従来のハードディスク(HDD)とは異なる特性を持つSSDで、最高のパフォーマンスを発揮します。
具体的なメリット:
- ファイルのコピーや削除が高速化
- ストレージの寿命が延びる
- バッテリー消費が抑えられる
2. 強力な暗号化機能
APFSには、最初から暗号化機能が組み込まれています。これにより、デバイスを紛失しても、データを守ることができるのです。
iPhoneで設定するパスコードは、この暗号化と連動しています。正しいパスコードなしでは、たとえストレージを取り出しても、データを読み取ることはできません。
3. スナップショット機能
スナップショットとは、ある時点のストレージの状態を記録しておく機能です。写真を撮るように、その瞬間の状態を保存できます。
macOSのバックアップ機能「Time Machine」は、このスナップショット機能を活用しています。大量のデータをコピーしなくても、変更された部分だけを効率的に記録できるのです。
4. スペース共有
APFSでは、一つの物理的なストレージ上に複数のボリューム(パーティション)を作成できます。そして、それらのボリュームが空き容量を共有できるのが特徴です。
従来の方法:
500GBのSSDを250GBずつ2つに分割すると、片方が満杯でももう片方の空き容量は使えませんでした。
APFSの方法:
500GBを共有し、必要に応じて各ボリュームが自由に使えます。無駄がありません。
5. ファイルのクローン作成
APFSでは、ファイルをコピーしても、実際には同じデータを二重に保存しません。変更があった部分だけを新しく記録する「クローン」という仕組みを使います。
これにより、大きなファイルをコピーしても、ストレージの消費量は最小限で済むのです。
6. クラッシュプロテクション
停電や突然のシャットダウンが起きても、データが壊れにくい設計になっています。書き込み処理を「すべて完了」か「まったく行わない」のどちらかにすることで、中途半端な状態を避けられます。
HFS+との違いを比較
多くの人が気になるのが、前世代の「HFS+」との違いでしょう。
処理速度
APFSは、ファイルやフォルダの操作が大幅に高速化されています。特に以下の操作で違いを実感できます:
- ファイルのコピー
- ディレクトリのサイズ計算
- ファイル名の変更
対応ストレージ
HFS+:
ハードディスク(HDD)での使用を想定した設計でした。
APFS:
SSDとフラッシュストレージに最適化されています。ただし、HDDでも使用可能です。
タイムスタンプの精度
HFS+は1秒単位でしたが、APFSはナノ秒単位でファイルの作成・変更時刻を記録します。これにより、非常に短い時間内の操作も正確に管理できます。
最大ファイルサイズ
APFSでは、理論上8エクサバイト(約800万テラバイト)までのファイルを扱えます。実用上は制限がないと言えるでしょう。
APFSが使われているデバイス
現在、以下のAppleデバイスでAPFSが標準採用されています:
iPhone・iPad
iOS 10.3以降のすべてのデバイス
Mac
macOS High Sierra(10.13)以降でSSDを使用している場合
Apple Watch
watchOS 4以降
Apple TV
tvOS 11以降
つまり、比較的新しいAppleデバイスであれば、ほぼ間違いなくAPFSが使われていると考えて良いでしょう。
APFSを使う上での注意点

古いOSとの互換性
APFSでフォーマットされたストレージは、古いバージョンのmacOS(High Sierra以前)では認識できません。
外付けドライブを古いMacでも使いたい場合は、HFS+やexFATでフォーマットする必要があります。
Fusion Driveの扱い
Fusion Drive(SSDとHDDを組み合わせたApple独自のストレージ)でも、macOS Mojave以降ではAPFSが使用可能です。ただし、パフォーマンスは純粋なSSDには及びません。
Time Machineバックアップ
macOS Big Sur以降では、Time MachineのバックアップディスクもAPFSでフォーマットできるようになりました。以前はHFS+が推奨されていましたが、現在はAPFSの方が効率的です。
Windows PCとの共有
WindowsはAPFSを標準サポートしていません。WindowsとMacでファイルを共有する外付けドライブには、exFATやFAT32を使用するのが一般的です。
APFSのフォーマット方法
Macで外付けドライブをAPFSでフォーマットする手順を簡単に説明します。
- 「ディスクユーティリティ」を起動
- フォーマットしたいドライブを選択
- 「消去」ボタンをクリック
- フォーマット欄で「APFS」を選択
- 名前を入力して「消去」を実行
重要:フォーマットするとすべてのデータが削除されます。必ず事前にバックアップを取ってください。
まとめ:APFSはAppleの未来を支える基盤技術
APFSは、現代のストレージ技術に合わせて設計された、先進的なファイルシステムです。暗号化、スナップショット、効率的なスペース管理など、多くの優れた機能を持っています。
普段は意識することのない技術ですが、あなたがiPhoneで写真を撮ったり、Macで書類を保存したりするたびに、APFSが裏側で働いているのです。
APFSのポイントまとめ:
- SSDやフラッシュストレージに最適化された新しいファイルシステム
- 2017年からiPhone、iPad、Macで標準採用
- 暗号化、スナップショット、クローン機能などの先進機能を搭載
- HFS+と比べて高速で効率的
- ほとんどのAppleユーザーがすでに使っている
Macのストレージをカスタマイズしたり、外付けSSDを購入したりする際には、APFSの知識が役立つでしょう。この記事が、あなたのAppleデバイスをより深く理解する助けになれば幸いです。

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