「PostgreSQLを使い始めたけど、コマンドラインだけでは操作が難しい…」
「データベースの中身を、もっと分かりやすく見たい」
そんな時に役立つのが、pgAdmin(ピージーアドミン)です。
pgAdminは、PostgreSQLデータベースを管理するための、無料のグラフィカルツールです。複雑なSQLコマンドを覚えなくても、マウス操作でデータベースを管理できます。この記事では、pgAdminの基本から実際の使い方まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。
データベース管理を、もっと簡単にしましょう。
pgAdminとは何か

pgAdminは、PostgreSQLデータベースを管理するための、オープンソースのツールです。
PostgreSQLとは
まず、PostgreSQLについて簡単に説明しましょう。
PostgreSQL(ポストグレスキューエル)は、無料で使える高性能なデータベース管理システムです。企業のシステムから個人のプロジェクトまで、幅広く使われています。
データベースとは、大量のデータを整理して保存し、必要な時に素早く取り出せるようにする仕組みのことです。
pgAdminの役割
PostgreSQLは元々、コマンドライン(黒い画面に文字を打ち込む方式)で操作します。
しかし、これは初心者には難しく、間違えやすいです。そこで登場するのがpgAdminです。
pgAdminの特徴
- グラフィカルな操作画面
- マウスでクリックして操作できる
- データベースの中身を視覚的に確認できる
- SQLを書かなくても、多くの操作が可能
- 無料でオープンソース
pgAdminのバージョン
現在、主に使われているのはpgAdmin 4です。
以前はpgAdmin 3というバージョンもありましたが、現在は開発が終了しています。この記事では、最新のpgAdmin 4について説明します。
pgAdminの主な機能
pgAdminでできることを見ていきましょう。
データベース管理
データベースの作成・削除
新しいデータベースを作成したり、不要になったデータベースを削除したりできます。
データベースのバックアップ
データベース全体をファイルとして保存(バックアップ)できます。万が一の時に復元できるので、とても重要な機能です。
データベースの復元
バックアップから、データベースを元の状態に戻せます。
テーブル操作
テーブルとは
データベースの中で、実際にデータが保存される表のようなものです。Excelのシートをイメージすると分かりやすいでしょう。
テーブルの作成
新しいテーブルを、画面上の操作で作成できます。列(カラム)の名前やデータ型を指定します。
データの閲覧・編集
テーブルに保存されているデータを、表形式で見られます。Excelのように、直接編集することも可能です。
SQLクエリの実行
クエリツール
SQLと呼ばれるデータベース用の言語で、命令を実行できます。
複雑な検索や、大量のデータの変更など、画面操作だけでは難しいことができます。
クエリの保存
よく使うSQLクエリを保存しておいて、いつでも実行できます。
実行結果の確認
クエリを実行した結果が、見やすい表形式で表示されます。
ユーザー管理
ユーザーの作成
データベースにアクセスできるユーザーを作成します。
権限の設定
ユーザーごとに、「このテーブルは見られるけど、編集はできない」といった細かい権限を設定できます。
サーバーモニタリング
接続状況の確認
今、誰がデータベースに接続しているか確認できます。
パフォーマンスの監視
データベースがどのくらいのリソース(CPUやメモリ)を使っているか確認できます。
pgAdminのインストール方法

pgAdminをパソコンにインストールする手順を説明します。
対応OS
pgAdminは、主要なOSすべてに対応しています。
- Windows(7、10、11)
- macOS(10.12以降)
- Linux(各種ディストリビューション)
Windowsへのインストール
ステップ1:公式サイトにアクセス
ブラウザで「pgadmin.org」にアクセスします。必ず公式サイトからダウンロードしてください。
ステップ2:ダウンロードページへ
トップページから「Download」をクリックします。
ステップ3:Windows版を選択
「pgAdmin 4 (Windows)」を選択します。
ステップ4:インストーラーをダウンロード
最新版のインストーラー(.exeファイル)をダウンロードします。
ステップ5:インストーラーを実行
ダウンロードしたファイルをダブルクリックして、インストーラーを起動します。
ステップ6:セットアップウィザード
画面の指示に従って進めます。
- 使用許諾契約に同意
- インストール先を選択(通常はデフォルトのまま)
- インストールを実行
インストールには数分かかります。
ステップ7:完了
「Finish」をクリックして、インストール完了です。
macOSへのインストール
ステップ1:公式サイトからダウンロード
「pgAdmin 4 (macOS)」を選択して、.dmgファイルをダウンロードします。
ステップ2:dmgファイルを開く
ダウンロードしたファイルをダブルクリックします。
ステップ3:アプリケーションフォルダにコピー
表示されたウィンドウで、pgAdmin 4のアイコンをアプリケーションフォルダにドラッグします。
ステップ4:セキュリティ設定
初回起動時に、セキュリティ警告が表示されることがあります。
「システム環境設定」→「セキュリティとプライバシー」で「開く」を許可します。
Linuxへのインストール
Linuxの場合、ディストリビューションごとにインストール方法が異なります。
Ubuntuの場合
# リポジトリを追加
curl https://www.pgadmin.org/static/packages_pgadmin_org.pub | sudo apt-key add
sudo sh -c 'echo "deb https://ftp.postgresql.org/pub/pgadmin/pgadmin4/apt/$(lsb_release -cs) pgadmin4 main" > /etc/apt/sources.list.d/pgadmin4.list'
# インストール
sudo apt update
sudo apt install pgadmin4
詳細は、公式サイトのLinux用インストールガイドを参照してください。
初期設定と起動
インストールが完了したら、初期設定を行います。

ステップ1:pgAdmin 4を起動
スタートメニュー(Windows)またはアプリケーションフォルダ(Mac)から、pgAdmin 4を起動します。
ステップ2:ブラウザが開く
pgAdmin 4は、ブラウザ上で動作します。自動的にデフォルトのブラウザが開き、pgAdminの画面が表示されます。
ステップ3:マスターパスワードの設定
初回起動時に、マスターパスワードの設定を求められます。
このパスワードは、pgAdmin自体にアクセスするためのものです。忘れないように、安全な場所にメモしておきましょう。
言語設定
pgAdminは多言語に対応しています。
日本語に変更する方法
- 画面上部の「File」→「Preferences」をクリック
- 左側のメニューから「Miscellaneous」→「User language」を選択
- ドロップダウンメニューから「日本語」を選択
- 「Save」をクリック
- pgAdminを再起動
これで、メニューなどが日本語表示になります。
データベースへの接続
pgAdminからPostgreSQLデータベースに接続する方法を説明します。
サーバーの追加
ステップ1:サーバーグループを確認
左側のツリービューに「Servers」という項目があります。
ステップ2:新しいサーバーを追加
- 「Servers」を右クリック
- 「Register」→「Server…」を選択
ステップ3:一般タブで名前を設定
「General」タブで、サーバーに分かりやすい名前を付けます。
例:「ローカルDB」「開発サーバー」など
ステップ4:接続タブで詳細を入力
「Connection」タブに切り替えて、以下の情報を入力します。
- Host name/address:サーバーのアドレス(ローカルなら「localhost」)
- Port:ポート番号(デフォルトは5432)
- Maintenance database:接続先データベース(通常は「postgres」)
- Username:ユーザー名
- Password:パスワード
- Save password?:パスワードを保存する場合はチェック
ステップ5:保存
「Save」をクリックすると、サーバーに接続されます。
接続の確認
接続に成功すると、ツリービューにサーバー名が表示され、その下にデータベース一覧が展開されます。
基本的な使い方
pgAdminの基本操作を説明します。
データベースの作成
ステップ1:サーバーを展開
左側のツリービューで、接続したサーバー名を展開します。
ステップ2:Databasesを右クリック
「Databases」を右クリックして、「Create」→「Database…」を選択します。
ステップ3:データベース名を入力
「General」タブの「Database」欄に、新しいデータベースの名前を入力します。
ステップ4:保存
「Save」をクリックすると、データベースが作成されます。
テーブルの作成
ステップ1:スキーマを展開
作成したデータベースを展開し、「Schemas」→「public」→「Tables」と進みます。
ステップ2:新しいテーブルを作成
「Tables」を右クリックして、「Create」→「Table…」を選択します。
ステップ3:テーブル名を入力
「General」タブで、テーブル名を入力します。
ステップ4:列(カラム)を追加
「Columns」タブに切り替えて、「+」ボタンをクリックします。
- Name:列の名前
- Data type:データ型(integer、text、dateなど)
- Not NULL?:必須項目にする場合はチェック
ステップ5:保存
必要な列をすべて追加したら、「Save」をクリックします。
データの表示と編集
ステップ1:テーブルを開く
編集したいテーブルを右クリックして、「View/Edit Data」→「All Rows」を選択します。
ステップ2:データの確認
テーブルのデータが、表形式で表示されます。
ステップ3:データの編集
セルをダブルクリックすると、編集できます。Excelのような感覚で操作できます。
ステップ4:変更を保存
編集後、上部の「Save Data Changes」ボタン(フロッピーディスクのアイコン)をクリックして保存します。
SQLクエリの実行
ステップ1:クエリツールを開く
データベースを選択した状態で、上部メニューの「Tools」→「Query Tool」をクリックします。
ステップ2:SQLを入力
エディタ部分に、SQLクエリを入力します。
例:
SELECT * FROM users WHERE age > 20;
ステップ3:実行
上部の「実行」ボタン(▶アイコン)をクリックするか、F5キーを押します。
ステップ4:結果の確認
下部のパネルに、実行結果が表示されます。
便利な機能
pgAdminには、知っておくと便利な機能がたくさんあります。
バックアップの作成
手順
- バックアップしたいデータベースを右クリック
- 「Backup…」を選択
- ファイル名と保存場所を指定
- フォーマットを選択(通常は「Custom」)
- 「Backup」をクリック
データベースの復元
手順
- 復元先のデータベースを右クリック
- 「Restore…」を選択
- バックアップファイルを指定
- 「Restore」をクリック
テーブル構造の確認
ER図の表示
- データベースを右クリック
- 「ERD For Database」を選択
- テーブル間の関係が図で表示される
SQLクエリの履歴
クエリツールには、過去に実行したSQLの履歴が残ります。
「History」タブで、以前のクエリを確認・再実行できます。
エクスポート機能
クエリの実行結果を、CSVやExcel形式でエクスポートできます。
実行結果の上部にある「Download as CSV」や「Download as Excel」ボタンを使います。
よくあるトラブルと解決方法

pgAdminを使っていて困った時の対処法を紹介します。
接続できない
症状
「Could not connect to server」というエラーが表示される。
原因と解決方法
PostgreSQLが起動していない
- Windowsの場合:「サービス」アプリでPostgreSQLサービスが実行中か確認
- Mac/Linuxの場合:ターミナルでPostgreSQLの状態を確認
接続情報が間違っている
- ホスト名、ポート番号、ユーザー名、パスワードを再確認
- localhostで接続できない場合は、127.0.0.1を試す
ファイアウォールがブロックしている
- ファイアウォール設定で、PostgreSQLのポート(デフォルト5432)を許可
パスワードエラー
症状
「password authentication failed」と表示される。
解決方法
- PostgreSQLのユーザーパスワードを確認
- 必要に応じて、psqlコマンドでパスワードをリセット
- pgAdminの接続設定で、正しいパスワードを入力し直す
日本語が文字化けする
症状
日本語のデータが「???」や意味不明な文字で表示される。
原因と解決方法
データベースの文字コード設定が UTF-8 になっていない可能性があります。
新しいデータベースを作成する時、「Encoding」を「UTF8」に設定しましょう。
動作が重い
症状
pgAdminの動作が遅く、フリーズすることがある。
解決方法
- 大量のデータを表示している場合は、LIMIT句で表示件数を制限
- 不要な接続を閉じる
- pgAdminを再起動する
- パソコンのメモリが不足していないか確認
他のツールとの比較
PostgreSQL管理ツールは、pgAdmin以外にもあります。
DBeaver
特徴
- 複数のデータベース(PostgreSQL、MySQL、SQLiteなど)に対応
- 無料版と有料版がある
- ER図作成が得意
pgAdminとの違い
- DBeaver:汎用的で多機能
- pgAdmin:PostgreSQL専用で最適化されている
DataGrip
特徴
- JetBrains社の有料ツール(年間約1万円)
- 非常に高機能で使いやすい
- プロの開発者に人気
pgAdminとの違い
- DataGrip:有料だが高機能
- pgAdmin:無料でオープンソース
Adminer
特徴
- 1つのPHPファイルで動作する軽量ツール
- ウェブブラウザからアクセス
- 非常にシンプル
pgAdminとの違い
- Adminer:シンプルで軽量
- pgAdmin:機能が充実している
どれを選ぶべき?
pgAdminがおすすめな人
- PostgreSQLのみを使う
- 無料のツールを探している
- 高機能な管理ツールが欲しい
他のツールを検討すべき人
- 複数のデータベースシステムを使う(MySQL、SQLiteなど)
- 有料でも最高の使いやすさを求める
- 非常にシンプルなツールで十分
セキュリティの注意点
pgAdminを使う際、セキュリティに気をつけるべき点があります。
マスターパスワードの管理
pgAdminのマスターパスワードは、厳重に管理しましょう。
- 推測されにくいパスワードを使う
- 定期的に変更する
- 他のサービスと同じパスワードを使わない
データベース接続情報の保護
接続情報(ホスト、ユーザー名、パスワード)は、機密情報です。
- パスワードを保存する機能は、信頼できるパソコンでのみ使う
- 共用パソコンでは、毎回パスワードを入力する
リモート接続の注意
インターネット経由でデータベースに接続する場合は、特に注意が必要です。
- SSL接続を使用する
- VPNを経由する
- 信頼できないネットワークでは接続しない
まとめ:pgAdminでデータベース管理を効率化
pgAdminは、PostgreSQLを使いやすくする強力なツールです。
この記事のポイント
- pgAdminはPostgreSQLの無料管理ツール
- グラフィカルな操作で、初心者でも使いやすい
- データベース作成、テーブル操作、SQLクエリ実行が可能
- Windows、Mac、Linuxに対応
- バックアップ・復元機能が充実
- 接続情報の正確な設定が重要
- セキュリティに注意して使用する
コマンドラインでのデータベース操作は、慣れるまで大変です。pgAdminを使えば、視覚的に分かりやすく、マウス操作だけで多くのことができます。
PostgreSQLを使ったシステム開発や、データ分析の勉強をしている方は、ぜひpgAdminを活用してみてください。データベース管理が、ずっと楽になるはずです。


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