カナダの美しい海岸線を旅していると、もしかしたら海面に浮かぶ奇妙な「こぶ」を目にすることがあるかもしれません。
地元の人々は、それを「キャディ」と呼んでいます。
馬のような頭を持ち、細長い体をくねらせて泳ぐこの謎の生物は、100年以上も前から北太平洋で目撃され続けているんです。
この記事では、カナダ沖に潜むとされる未確認生物「キャディ」について、その不思議な姿や数々の目撃談、研究者たちの見解まで詳しくご紹介します。
概要

キャディ(Caddy)は、カナダ南西部ブリティッシュ・コロンビア州のバンクーバー島沖で目撃される未確認生物です。
正式名称は「キャドボロサウルス(Cadborosaurus)」といい、バンクーバー島南端にあるキャドボロ湾にちなんで名付けられました。
最初の目撃報告は1905年に遡り、これまでに160件を超える目撃情報が寄せられています。
地元の漁師や一般市民だけでなく、軍人などの信頼性の高い証言者による報告も多く、カナダで最も有名なUMA(未確認生物)の一つとして知られているんですね。
興味深いことに、この生物については単なる都市伝説ではなく、大学教授や博物館の館長といった専門家が真剣に研究を続けています。
姿・見た目
キャディの外見は、まるで神話に登場する海の怪物のようなんです。
キャディの身体的特徴
- 頭部:馬、鹿、ラクダに似た形状
- 体:ヘビのように細長くしなやか
- 体長:成体で9~15メートル(幼生は約40センチ)
- 背中:こぶ状、またはコイル状の突起が並んでいる
- 尾:二股に分かれた形状
- ヒレ:前後に一対ずつ、計4つのヒレを持つ
- 色:オリーブ色の皮膚
目撃者の証言によると、その姿は古代ギリシャ神話に登場する「ヒッポカムポス」(馬と魚が合体した海の生物)にとてもよく似ているそうです。
特徴的なのは、泳ぐときに背中のこぶが波間に見え隠れすること。
この独特の動きが、遠くから見ると一匹の巨大な生物に見えるんですね。
面白いことに、1984年には体長60メートルという巨大なキャディの目撃報告もあります。ただし、これが本当に一匹の生物だったのか、それとも複数の生物が列をなして泳いでいたのかは分かっていません。
特徴
キャディには、他の海洋生物とは異なる独特の行動パターンがあります。
行動の特徴
驚異的な遊泳速度:推定時速40キロメートルという非常に速いスピードで泳ぎます。これは人間のオリンピック選手の約8倍の速さなんです。
臆病な性格:音や気配にとても敏感で、船や人間が近づくとすぐに逃げてしまいます。そのため、じっくり観察することが難しいんですね。
知能の高さ:捕獲されたときに「悲しげな目」をしていたという証言があります。乗組員たちは、その表情を見て逃がさずにはいられなかったとか。もしかしたら、表情で気持ちを表現できる高等生物なのかもしれません。
生息地
主な目撃地域はカナダのバンクーバー島沖ですが、特にキャドボロ湾での目撃例が多いことから「キャドボロサウルス」という名前がつきました。
他にも、サンフアン諸島、クイーン・シャーロット諸島、さらには南のカリフォルニア州サンフランシスコ湾でも目撃されています。
研究者たちによると、キャディの生息地は北太平洋全域に広がっている可能性があり、繁殖地はシーサーペント岬周辺だと考えられているそうです。
伝承

キャディには、数多くの興味深い目撃談や事件が残されています。
軍人夫婦の目撃談(1933年)
キャディを一躍有名にしたのは、1933年の出来事です。
陸軍少佐のラン・グレーとその妻がセーリングを楽しんでいたとき、海面に浮かぶこぶのような謎の物体を発見しました。
軍人という社会的に信用される立場の人物の証言だったため、この目撃談は地元で大きく報道され、大きな反響を呼んだんです。
クジラの胃から出てきた謎の死骸(1937年)
最も衝撃的な事件が1937年7月に起こりました。
クイーン・シャーロット諸島沖で捕獲されたクジラの解体作業中、その胃の中から消化されかかった謎の生物の死骸が発見されたんです。
死骸の特徴
- 犬のような頭部
- 哺乳類のような脊椎
- キャディの特徴と一致する体の構造
- 経験豊かな漁業関係者でも見たことがない姿
この貴重な死骸は、アメリカ・イリノイ州シカゴのフィールド博物館に送られることになりました。
しかし、運搬途中で行方不明になってしまったんです。
現在、この死骸の存在を証明するものは、たった1枚の写真だけ。この写真は、ブリティッシュ・コロンビア大学の海洋学者ポール・レブロンドが所有しており、キャディ研究の貴重な資料となっています。
幼生の捕獲報告(1968年)
1968年、パイレー湾付近で操業していた捕鯨船が、網にかかった体長約40センチの小さな怪物を捕まえました。
捕獲された生物の特徴:
- 背中に一対のヒレ
- 二股に分かれた尾
- キャディの幼生と思われる外見
驚くべきことに、この事件の後も、同じような特徴を持つ死骸がいくつか発見されています。
残念ながら、いずれの場合も専門家による詳しい調査が行われる前に廃棄されてしまい、科学的な証拠として残すことができませんでした。
先住民族の伝承
キャディのような生物は、ヨーロッパ人が到来する以前から、カナダの先住民族(ファーストネーションズ)の間で語り継がれていました。
各部族による呼び名:
- マンハウサット族:「ヒイトリーク(hiyitl’iik)」
- セシェルト族:「チェインコ(t’chain-ko)」
- コモックス族:「ヌムスリー・クワラ(numkse lee kwala)」
アラスカの先住民イヌイットは、キャディのような生物の絵をカヌーに描いて、その生物を遠ざけるお守りにしていたそうです。
伝承によると、キャディは水温が上がるとバンクーバーから北のアラスカ方面へ移動するといわれています。
起源

キャディの正体については、現在も研究者たちの間でさまざまな議論が続いています。
学術的研究
1992年12月、アメリカ動物学研究会で重要な論文が発表されました。
著者は以下の二人の専門家です。
- ポール・レブロンド博士:ブリティッシュ・コロンビア大学の海洋学者
- エド・バスフィールド博士:カナダ自然博物館の元館長で動物学者
彼らは100年以上にわたる目撃談を収集し、学術的な視点から分析しました。
論文での結論:
- キャディは「大海竜型の未確認生物」である
- 現在も北太平洋に生息している
- 繁殖地はシーサーペント岬周辺
興味深いことに、両博士は「キャディの正体が明らかになる日も遠くない」として、現在も研究を続けているんです。
正体についての諸説
一方で、キャディの正体について、既知の生物だとする説もあります。
主な正体候補
リュウグウノツカイ(巨大オアフィッシュ)説
体長17メートルにもなるこの深海魚は、銀色の細長い体をしており、ヘビのようにうねって泳ぎます。キャディの特徴とよく一致するんですね。
ゾウアザラシ説
1962年にバンクーバー島のユクルーレット近くで発見された「象のような頭を持つ死骸」は、後にゾウアザラシだと考えられました。
チョウザメ説
1937年のクジラの胃から出てきた死骸は、シロチョウザメだった可能性があるとする研究者もいます。尾の特徴や体の大きさ、生息地域が一致するためです。
ウバザメの死骸説
腐敗したウバザメの死骸は、首の長い謎の生物に見えることがあり、専門家でさえ見間違えることがあるそうです。
群れで泳ぐアシカ説
1943年、二人の警察官が「馬のような頭を持つ巨大な海のヘビ」を目撃しました。しかし双眼鏡で確認すると、それは6頭のアシカの群れだったんです。波間で上下する動きが、一匹の大きな生物に見えたわけですね。
名前の由来
「キャディ(Caddy)」という愛称は、ジャーナリストのアーチー・ウィルスが付けたものです。
正式名称「キャドボロサウルス(Cadborosaurus)」は、目撃の多いキャドボロ湾の名前と、ギリシャ語で「トカゲ」や「爬虫類」を意味する「サウルス(saurus)」を組み合わせて作られました。
まとめ
キャディは、100年以上にわたってカナダの海で目撃され続けている謎の生物です。
重要なポイント
- カナダのバンクーバー島沖で1905年から目撃されている未確認生物
- 馬のような頭と細長い体、背中のこぶが特徴的
- 体長9~15メートル、時速40キロで泳ぐ
- 160件以上の目撃報告があり、軍人など信頼性の高い証言者も多い
- 1937年にクジラの胃から謎の死骸が発見されたが行方不明に
- 専門家が「大海竜型の未確認生物」として真剣に研究を続けている
- カナダ先住民族の伝承にも類似の生物が登場する
- 正体は巨大なオアフィッシュやチョウザメとする説もある
科学者たちの研究は今も続いており、いつか真実が明らかになる日が来るかもしれません。
もしカナダの海岸を訪れる機会があったら、ぜひ海面に注目してみてください。
馬のような頭を持つ不思議な生物が、波間から顔を出すかもしれませんよ。

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