家畜小屋から聞こえる悲鳴。朝になると、血を抜かれた動物の死体が転がっている——。
1990年代、中南米の人々を恐怖に陥れた吸血怪獣の正体とは、一体何だったのでしょうか?
突如として現れ、瞬く間に世界中で知られるようになった謎の生物。それが「チュパカブラ」です。
この記事では、吸血UMAとして恐れられたチュパカブラの姿、特徴、目撃情報、そして謎に包まれたその正体について詳しくご紹介します。
概要

チュパカブラは、1995年にプエルトリコで最初に目撃された吸血性の未確認動物(UMA)です。
スペイン語で「チュパ」は「吸う」、「カブラ」は「ヤギ」を意味し、合わせて「ヤギの血を吸う者」という意味になります。英語では直訳して「ゴートサッカー」とも呼ばれているんですね。
この名前は、プエルトリコのコメディアン・シルベリオ・ペレスが1995年に命名したとされています。
プエルトリコでの最初の目撃以降、メキシコ、チリ、アルゼンチン、ブラジルなどの中南米各地、さらにはアメリカ本土でも目撃例が報告されました。家畜だけでなく、人間が襲われたという報告もあり、現地では大きなニュースとして取り上げられたんです。
姿・見た目
チュパカブラの外見は、目撃時期によって大きく異なる特徴があります。
初期の目撃報告(1995年頃)
1995年のプエルトリコでの目撃では、爬虫類のような生物として描写されました。
初期のチュパカブラの特徴
- 身長:90cm〜1.5m程度
- 体色:灰色から深緑色の革のような皮膚
- 目:楕円形で真っ赤なアーモンド型の大きな目
- 背中:首から尾にかけてトゲのような突起が並ぶ
- 体型:小さなクマほどのずんぐりした体格
- 移動方法:二足歩行で、カンガルーのように跳ねる
興味深いことに、この描写は1995年に公開されたSFホラー映画『スピーシーズ 種の起源』に登場する宇宙人とよく似ているんです。実際、最初の目撃者マデリン・トレンティーノは、この映画を見た後に目撃報告をしていたことが判明しています。
後期の目撃報告(2000年以降)
2000年頃からは、描写が大きく変化しました。
後期のチュパカブラの特徴
- 姿:犬のような四足歩行の動物
- 体毛:ほとんど毛がなく、皮膚が露出
- 背骨:顕著な背骨の隆起
- 目:深くくぼんだ眼窩
- 牙と爪:鋭い牙とかぎ爪
この変化は、目撃地域がメキシコ北部やアメリカ南部に広がったことと関係しています。
特徴

チュパカブラの最大の特徴は、その吸血行動にあります。
攻撃方法
吸血の特徴
- 家畜(特にヤギ、ウシ、ヒツジ)を襲う
- 首や顎の周辺に直径6〜12mmの穴を2〜4箇所開ける
- 体内の血液を吸い尽くし、干からびた状態にする
- 30cmの長さのとがった舌で血を吸い上げるという説も
被害を受けた動物の死体は、血が完全に抜かれた状態で発見されることが多かったんです。ただし、専門家による剖検では、実際には血は吸われていなかったという報告もあります。
身体能力
チュパカブラには驚異的な運動能力があるとされました。
- ジャンプ力:2〜5メートルもの高さを跳躍
- 壁を越える:数メートルの壁も軽々と飛び越える
- 変色能力:カメレオンのように体の色を変えて隠れる(一部報告)
- 飛行能力:翼を持ち空を飛ぶという証言もある
目撃情報

最初の事件(1995年3月)
1995年3月、プエルトリコ中部の山岳地帯にあるオロコビスの町で、8頭のヤギが全身の血液を抜き取られて死んでいるのが発見されました。
死体には、鋭利な管を突き刺したような3つの穴が開いていたそうです。
カバナス村の目撃(1995年8月)
同年8月、プエルトリコ北東部のカバナス村で、ある女性が奇怪な生物に遭遇します。
これがチュパカブラの最初の目撃報告とされているんですね。その後、この村の周辺では血を抜かれたウシやヒツジが次々と発見されるようになり、被害はプエルトリコ全土に拡大していきました。
UFOとの関連
興味深いことに、チュパカブラが目撃される地域では、UFOの目撃例も多いという特徴がありました。
実際、カバナス村では1994年に近くの山でUFOが墜落したという事件があり、その翌日から正体不明の生物が目撃されるようになったという話もあります。UFOに吸い込まれるチュパカブラのような生物を見たという報告もあり、宇宙との関連を疑う人々もいたんです。
被害の拡大
チュパカブラの被害報告は、プエルトリコから始まり、次第に広がっていきました。
目撃地域
- プエルトリコ(発祥地)
- メキシコ
- チリ、アルゼンチン、ブラジルなどの南米各国
- アメリカ南部(テキサス州など)
- 一部報告では、ロシアやフィリピンでも
「チュパカブラによるものではないか」という推測を含めれば、被害件数は1000件を超えるという話もあります。ただし、正確な統計が取られているわけではないんですね。
正体説

チュパカブラの正体については、様々な説が提唱されています。
病気の動物説(最も有力)
現在、最も信頼されているのが「疥癬にかかったコヨーテ」説です。
この説の根拠
- 実際に捕獲・撮影されたチュパカブラの多くが病気のコヨーテだった
- 疥癬という皮膚病により毛が抜け落ち、奇怪な姿になる
- 病気で弱った動物は野生の獲物を捕まえられず、家畜を襲う傾向にある
- 目撃地域は狂犬病が流行した地域と一致する
ミシガン大学の生物学者バリー・オコナーは、アメリカでのチュパカブラ報告はすべて疥癬虫に感染したコヨーテだと結論づけています。疥癬症状により、毛が抜け、皮膚が厚くなり、悪臭を放つようになるため、まさにチュパカブラの描写と一致するんですね。
また、初期の「二足歩行する」という目撃例は、当時プエルトリコで実験動物として使われていたアカゲザルの見間違いという説もあります。
野犬説
プエルトリコ当局や農業畜産局の調査では、「野犬による襲撃」の可能性が高いと結論づけられました。
実際、プエルトリコの環境省と自然省の研究では、血は吸われておらず、マンドリルや野犬による通常の攻撃だったと指摘されています。
映画の影響説
調査ジャーナリストのベンジャミン・ラドフォードは、5年間の調査の末、興味深い結論に達しました。
最初の目撃者マデリン・トレンティーノの証言は、1995年の映画『スピーシーズ 種の起源』に登場する宇宙人「シル」の姿とほぼ一致していたんです。トレンティーノ自身も「チュパカブラはこの映画の生物に似ていた」と証言しており、映画を見た後に実際の目撃があったことが判明しています。
その他の説
科学的根拠は薄いものの、様々な説が提唱されました。
- 軍事実験説:遺伝子工学の秘密実験で生まれた生物兵器が逃げ出した
- 宇宙人関連説:エイリアンが連れてきた生物、または宇宙人そのもの
- カルト集団説:悪魔崇拝者による儀式的な家畜殺害
- 昆虫説:大量発生した蛆が血液を餌にして吸った
まとめ
チュパカブラは、1990年代に突如現れ世界を震撼させた吸血UMAです。
重要なポイント
- 1995年プエルトリコで最初に目撃された吸血性UMA
- スペイン語で「ヤギの血を吸う者」という意味
- 初期は爬虫類型、後期は犬型と描写が変化
- 家畜の首に穴を開けて血を吸うとされた
- 中南米を中心に1000件以上の被害報告
- 正体は疥癬にかかったコヨーテが最有力説
- 映画『スピーシーズ』の影響で目撃証言が広まった可能性
- UFO多発地帯での目撃が多い
科学的調査により、チュパカブラの正体は病気に苦しむ野生動物だった可能性が高いことが分かってきました。しかし、すべての目撃例が説明できるわけではなく、今なお謎に包まれた部分も残っています。
1990年代の集団パニック現象として、または現代の都市伝説として、チュパカブラは今も人々の想像力をかき立て続けているんですね。


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