【千年越しの復讐を果たす水蜥蜴神】旧支配者「ボクルグ」とは?その姿・特徴・伝承をやさしく解説!

神話・歴史・伝承

夢の世界で、静かな湖の底から這い出してくる巨大な蜥蜴の姿を想像してみてください。

その生物は、怒りを千年も忘れず、都市をまるごと消し去るほどの力を持っているんです。

クトゥルフ神話に登場する「ボクルグ」は、そんな恐ろしくも神秘的な存在として知られています。

この記事では、水蜥蜴の姿をした旧支配者「ボクルグ」について、その姿や特徴、サルナスの都を滅ぼした伝説まで詳しくご紹介します。

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概要

ボクルグは、クトゥルフ神話に登場する旧支配者の一つです。

旧支配者というのは、人類が誕生するはるか昔から存在する、神に近い力を持った恐ろしい存在のことなんですね。

ボクルグは特に「水蜥蜴神」として知られ、ドリームランド(夢の世界)にあるムナール地域のサルナスの廃墟近くに棲んでいるとされています。

最大の特徴は、その執念深さです。一度怒らせると、その怒りは何世紀も続き、時には怒らせた人物の子孫にまで報復が及ぶという、恐ろしい性質を持っています。

H.P.ラヴクラフトの短編小説『サルナスの滅亡』で名前が登場し、後にブライアン・ラムレイによって詳細な設定が作られました。クトゥルフ神話の中でも、比較的詳しい過去が明かされている珍しい存在なんです。

系譜

ボクルグには、クトゥルフ神話の中で明確な上位存在がいます。

上位神:ムノムクア

ボクルグの上位神はムノムクアという、さらに巨大なトカゲのような姿をした神格です。

ムノムクアは「魂を喰らうもの」という異名を持ち、現在は旧神(善良な神々)によって月に封印されているとされています。かつて無名都市に住んでいた爬虫類種族は、このムノムクアの従者だったと言われているんですね。

クトゥルフ神話における位置づけ

興味深いことに、ボクルグはクトゥルフの雛形だったとも言われています。

というのも、『サルナスの滅亡』では「人外の知的生物と彼らが崇拝する異形の神」という関係性が描かれており、これは後の「クトゥルフと深きものども」の関係によく似ているんです。ラヴクラフトが夢を元に書いたとされるこの作品は、後の代表作品の原型となった重要な存在と言えるでしょう。

姿・見た目

ボクルグの姿は、巨大なイグアナを思わせる独特なものです。

ボクルグの外見的特徴

  • 体色:緑がかった青色
  • 体長:約3.5~3.6メートル
  • :金属のような質感で硬い
  • :淡黄色または黄緑色に光る
  • 背びれ:カミソリのように鋭く尖ったトゲ状の突起
  • 下顎:垂れた肉の代わりに触角や髭が生えている
  • :水かきがついている
  • :平べったい形状

全体的には水棲の爬虫類を思わせる姿ですが、金属のような鱗や背中の鋭いトゲなど、普通の生物にはない不気味な特徴を持っています。

その姿は、まるで水中と陸上の両方で生活できるように進化した怪物のようだと表現されることもあるんです。

特徴

ボクルグには、他の旧支配者にはない独特の性質があります。

性格:温厚だが執念深い

ボクルグは旧支配者の中では比較的温厚な性格とされています。

自分を崇拝する者たちを傷つけようとはせず、むしろ彼らを守る傾向があるんですね。イブのスーム=ハーや、後のイラーネクの人々が崇拝することで、穏やかさを保っていたとされています。

しかし、一度敵対されると話は別です。

恐るべき報復の性質

  • 怒りは何世紀も続く:一度怒らせると、その怒りは数百年から千年も消えない
  • 反応は非常にゆっくり:すぐには報復しないが、忘れることもない
  • 子孫にまで及ぶ復讐:反応が遅すぎるため、怒りの矛先が子孫に向くこともある
  • 徹底的な破壊:怒りが爆発すると、都市を跡形もなく消し去る

この「ゆっくりだが確実に訪れる報復」という特徴は、ボクルグを恐ろしい存在にしている最大の理由なんです。

ドリームランドに棲む珍しい旧支配者

ボクルグは、旧支配者の中では珍しくドリームランド(幻夢境)に顕現する存在です。

ドリームランドというのは、特別な能力を持つ人間が眠っている間に訪れることができる夢の世界のこと。現実世界とは異なる法則が働く、神秘的な領域なんですね。

ボクルグはこの夢の世界のムナール地域を支配し、そこで崇拝を受けているという、独特の立ち位置にいる神格なんです。

伝承

ボクルグにまつわる最も有名な伝承が、「サルナスの滅亡」です。

イブの生物スーム=ハー

人類が誕生する以前、ムナールの地にはイブという都市があり、そこにはスーム=ハーという人外の生物が住んでいました。

彼らは水蜥蜴の姿をしたボクルグを神として崇拝し、平和に暮らしていたんです。イブの神殿には、緑色の石で作られたボクルグの像が祀られていました。

サルナスの繁栄と冒涜

しかし、後からムナールにやってきた人間たちは、イブのスーム=ハーを醜悪な生物だと嫌悪しました。

人間たちはイブを襲撃してスーム=ハーを絶滅させ、その地にサルナスという都市を建設したんです。

サルナスの発展

  • 地下から宝石や貴金属を採掘して巨万の富を得た
  • 「人類の誇り」と讃えられるほどの大都市に成長
  • 毎年、スーム=ハーを滅ぼした記念の祭りを開催

人間たちは戦利品として、ボクルグの緑色の石像を持ち帰りました。しかし、この像はある日突然消えてしまったんです。

タラン=イシュの予言

ボクルグの像が消えた後、サルナスの大神官タラン=イシュが謎の怪死を遂げました。

彼は死の間際、こう予言したと言われています。

「千年後、サルナスは滅亡する」

最初、神官たちはこの予言を真剣に受け止めていました。でも時間が経つにつれ、記憶はあいまいになり、やがて忘れ去られてしまったんです。

サルナスの滅亡

そして千年の時が流れたある日、スーム=ハーを滅ぼした記念の祭りの夜のことでした。

突如として謎の災害がサルナスを襲い、都市は一夜にして完全に消滅してしまったんです。

その破壊は余りにも徹底的で、以下のようなものまで跡形もなく消えました。

徹底的な破壊の痕跡

  • すべての建築物
  • 住民の痕跡
  • 地下に眠っていた金鉱脈
  • あらゆる財宝

まるで最初から何もなかったかのように、サルナスは地上から姿を消したんです。これがボクルグの千年越しの報復だったとされています。

イラーネクでの崇拝

サルナス滅亡後、ムナールの別の都市イラーネクの人々は、ボクルグを恐れ敬うようになりました。

イラーネクの神殿では、緑色の石で作られたボクルグの像が崇拝の対象となり、人々は二度とボクルグの怒りを買わないよう、慎重に神を敬ったと言われています。

ボクルグの過去

クトゥルフ神話の神としては珍しく、ボクルグの過去が詳細に語られています。

伝承によると、幼少期のボクルグは人間と変わりない風貌をしており、生まれた直後は幻夢境ではなく人間の世界で生活していたそうなんです。

そして完全に覚醒した際に、故郷である幻夢境へと帰還し、あの巨大なイグアナのような姿になったとされています。

出典

ボクルグが登場する主な作品は以下の通りです。

原作

  • H.P.ラヴクラフト『サルナスの滅亡』(The Doom that Came to Sarnath)
    ボクルグという名前が初めて登場した作品。水蜥蜴神として名前が言及されています。

詳細化した作品

  • ブライアン・ラムレイ『大いなる帰還』
    ラヴクラフトが名前だけ仄めかした存在を、ラムレイが詳細な設定に膨らませた作品です。

その他の関連作品

  • ダニエル・ハームズ『エンサイクロペディア・クトゥルフ』
  • リン・カーター『第六の物語 ムノムクアー』
  • リン・カーター『深淵への降下』

ラヴクラフトの『未知なるカダスを夢に求めて』では、サルナスやムナールが幻夢境の地であると明確に設定されました。

まとめ

ボクルグは、千年越しの復讐を果たした執念深い水蜥蜴神です。

重要なポイント

  • クトゥルフ神話の旧支配者の一つで、水蜥蜴の姿をしている
  • 約3.5メートルの巨体で、金属のような鱗と鋭いトゲを持つ
  • 温厚だが一度怒ると何世紀も怒りが続く執念深い性格
  • ドリームランド(幻夢境)のムナール地域に棲息する珍しい旧支配者
  • イブのスーム=ハーを滅ぼしたサルナスの都市を、千年後に完全に破壊した
  • H.P.ラヴクラフトの『サルナスの滅亡』で初登場し、後にブライアン・ラムレイが詳細化
  • クトゥルフの雛形とも言われる重要な存在

ボクルグの物語は、「復讐は時を超えて必ず訪れる」という教訓を含んでいます。たとえ千年の時が流れても、神の怒りは決して消えないのかもしれませんね。

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