冷たい霧が立ち込め、その中から不気味なうめき声が聞こえてきたら、あなたはどうしますか?
クトゥルフ神話の世界には、「暗きハン」と呼ばれる謎多き予言の神が存在しています。
霧とともに現れ、未来を告げるこの神は、古代の蛇人間たちから崇拝されていたとされる、恐るべき存在なんです。
この記事では、謎に包まれた予言の神「ハン」について詳しくご紹介します。
概要

ハンは、クトゥルフ神話に登場する予言を司る神です。
『妖蛆の秘密(De Vermiis Mysteriis)』という魔術書に「暗きハン(dark Han)」として記されている旧支配者の一柱なんですね。
その正体は多くの謎に包まれていますが、一つだけ確かなことがあります。それは、旧支配者が復活するとき、ハンは「凍てつくレン」(レン高原)からやって来るということです。
吠える霧のような恐怖そのものとして描写され、予言と悪夢を人々にもたらす存在として畏れられてきました。
系譜
ハンは、蛇の神イグ(Yig)と深い関係があるとされています。
イグとの関係
イグとハンは、しばしば一緒に語られる神性です。
古代の蛇人間たちは、イグとハンの両神を崇拝していたと伝えられています。ハンはイグのもとで、遺跡内部を守るために巨大な無限迷宮を警備しているという説もあるんです。
他にも、バイアティス(Byatis)という神とも関連があるとされていますが、詳しいことは分かっていません。
蛇人間との繋がり
蛇人間がイグとハンを崇拝していたということは、もしかしたら蛇人間の高度な技術や超幾何学的技術は、ハンから授けられたものかもしれません。
しかし現在、蛇人間はドリームランド(夢の国)にしか生息しておらず、種として退化してしまいました。そのため、ハンのことを覚えている個体は少ないといわれているんです。
姿・見た目
ハンの姿は、濃い霧に包まれているため、はっきりとは確認できません。
外見的特徴
文献によると、ハンの姿はこのように描写されています。
ハンの身体的特徴
- 身長:約3メートル
- 姿:外套を被った姿
- 顔:骸骨のような顔つき
- 口:不浄の炎が燃えている
- 実体:霧が濃いため影のようにしか見えない
興味深いのは、ハンが移動する際の様子です。外套はぼろぼろとはがれ落ち、それがコウモリの姿に変化して夜空に舞い上がるといわれているんですね。
霧の正体
ハンの到来とともに、冷たく感じる霧がゆっくりと濃くなっていきます。
視界が2~3メートルまで狭まると、その霧の中からうめき声が聞こえ始めるそうです。この霧の中心にハンがいると考えられています。
特徴

ハンには、予言の神ならではの特別な力があります。
予言の力
ハンは「予言の神」として知られていますが、その予言は必ずしも良いものとは限りません。
崇拝者には恩恵として未来を占う力を与えるといわれていますが、未来を見ることが幸せをもたらすとは限らないのです。
無限迷宮の守護者
ハンは巨大な無限迷宮を警備しているという伝承があります。
迷宮での役割
- イグのもとで遺跡内部を守護する
- 侵入者を霧で包み込む
- 予言と悪夢で恐怖を与える
恐怖の本質
ハンの存在そのものが「吠える霧のような恐怖」だとされています。
物理的な攻撃ではなく、精神的な恐怖を与える存在なんですね。霧の中で迷い、うめき声を聞き、不気味な影を目撃する…そうした体験自体が、ハンの力の現れなのかもしれません。
伝承
ハンにまつわる伝承は断片的ですが、いくつか興味深い話が残されています。
蛇人間の崇拝
古代の蛇人間たちは、イグとハンを神として崇めていました。
崇拝の痕跡
- クンヤン(地底世界)に教団があった可能性
- ドリームランドにも信仰の痕跡がある
- 超幾何学的な儀式を行っていた
しかし、時代が下るにつれて蛇人間の文明は衰退し、ハンへの信仰も失われていったようです。
危険な呪文
ロバート・ブロックの『星から訪れたもの』には、『妖蛆の秘密』から引用されたラテン語の呪文が登場します。
この呪文をうかつにも口にしてしまった夢想家は、瞬く間にこの世のものではない恐怖に魂を包まれたという恐ろしい話が残されているんです。
この呪文で何が召喚されたのか定かではありませんが、ハンかイグに連なる神格だったのではないかと考えられています。いずれにせよ、悲しい結末を迎えることは確実だったようです。
古代中国説
ハンは遥か大昔の中原(中国)で崇拝されていたという説もあります。
名前の響きが東洋的であることから、この説が生まれたのかもしれません。ただし、これについても確証は何もなく、あくまで噂の域を出ていません。
レン高原の幽閉
現在、ハンは「凍てつくレン」(レン高原)に幽閉されているとされています。
しかし、旧支配者が復活するとき、ハンはそこから現れると予言されているんです。その日が来たとき、世界にはどんな変化が訪れるのでしょうか…。
出典
ハンについての情報は、以下の文献に基づいています。
主な出典
- 『妖蛆の秘密/De Vermiis Mysteriis』 – ハンについて「暗きハン」として記述
- 『星から訪れたもの/The Haunter from the Stars』(ロバート・ブロック著) – ハンに関する呪文の言及
- 『暗黒神話伝』第1章 – 蛇人間との関係や特徴の解説
これらの文献では、ハンの詳細については多くが謎のまま残されており、断片的な情報しか得られません。
まとめ
ハンは、霧とともに現れる謎多き予言の神です。
重要なポイント
- 『妖蛆の秘密』に登場する「暗きハン」と呼ばれる旧支配者
- イグとともに語られ、蛇人間から崇拝されていた
- 約3メートルの外套を被った骸骨のような姿
- 霧とうめき声で恐怖を与える存在
- 予言の力を持ち、崇拝者に未来を占う力を授ける
- レン高原に幽閉されているが、旧支配者復活時に現れる
- 正体の多くが謎に包まれた神秘的な存在
クトゥルフ神話の中でも特に情報が少ないハンですが、だからこそ想像力をかき立てられる存在といえるでしょう。もしかしたら、濃い霧の日には、どこかでハンが予言を告げているのかもしれませんね。


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