地下の湖で、ぐちゃぐちゃと音を立てながら蠢く巨大な粘液の塊。
その体表では常に腫瘍が膨らんでは破裂し、有毒なガスを撒き散らしている。
これはクトゥルフ神話に登場する恐ろしい存在「ガダモン」の姿なんです。
宇宙からやってきた異星の生物が、科学技術によって生み出したこの奇怪な生命体は、夢と現実が交差する世界で静かに漂い続けています。
この記事では、旧支配者の一員とされる謎の粘液生物「ガダモン」について詳しくご紹介します。
概要

ガダモンは、クトゥルフ神話に登場する異形の神格です。
旧支配者(グレート・オールド・ワン) の一員とされ、別名を 「幼生のグレート・オールド・ワン」 とも呼ばれています。
旧支配者というのは、人類が誕生するはるか以前から存在する、強大で恐ろしい力を持つ神のような存在のことなんですね。
ガダモンの特徴は、その圧倒的な異質さにあります。通常の生命体とはまったく異なる構造を持ち、ドリームランド(夢の国)の地下にある不毛の湖 に棲んでいるとされています。
系譜
ガダモンの誕生には、宇宙の異星人が関わっているんです。
ミ=ゴによる創造
ガダモンは、ユゴス星 という遠い惑星から地球にやってきた菌類生物 「ミ=ゴ」 が、科学技術によって創り出した人工生命体です。
ミ=ゴは、甲殻類のような外見を持つ知的生命体で、高度な科学力を持っています。彼らは生命を創造する技術を持っており、その技術によって生み出されたのがガダモンなんですね。
旧支配者としての位置づけ
興味深いことに、人工的に創られた存在でありながら、ガダモンは 旧支配者の一員 として扱われています。
神話研究の二次資料である『マレウス・モンストロルム』や『エンサイクロペディア・クトゥルフ』では、明確にグレート・オールド・ワンのカテゴリに分類されているんです。
ただし「幼生の旧支配者」という異名が示すように、完全な旧支配者というよりは、まだ成長途中の存在なのかもしれません。
姿・見た目
ガダモンの外見は、一言で表すなら 「生きた悪夢」 です。
基本的な体の構造
ガダモンの身体的特徴
- 本体:巨大な青みがかった茶色の粘液質の塊
- 体表:常に腫瘍のような膨らみができている
- 擬足:ひものような触手を体から伸ばす
- 頭部:体内に歪んだ顔のような物体が浮遊している
本体は粘液のような物質でできており、固定された形を持っていません。まるで巨大なアメーバのような存在だと考えると分かりやすいでしょう。
恐ろしい体表の変化
ガダモンの最も印象的な特徴は、体表で起こる絶え間ない変化 です。
体の表面には腫瘍のような膨らみが次々と現れ、それらは徐々に大きくなっていきます。そして突然、その膨らみが破裂するんです。
破裂すると何が起こるかというと、中から 有毒なガス が放出されたり、臓器のようなおぞましいもの が流れ出てきたりします。時には顔らしき形が一瞬だけ体表に現れることもあるそうです。
体内に浮かぶ謎の頭部
さらに不気味なのが、ガダモンの体内に浮遊している 歪んだ頭のような物体 です。
この頭部がどんな役割を持っているのかは謎ですが、後述するように攻撃の際には重要な武器となります。
特徴
ガダモンには、他の旧支配者とは異なる独特の性質があります。
不器用な移動方法
ガダモンは 地上を移動するのが非常に苦手 なんです。
粘液質の体では普通に歩くことができないため、体から擬足(ぎそく)と呼ばれるひものような触手を伸ばし、それを近くの何かに巻きつけます。そして体を引っ張るようにして、ずるずると前進していくんですね。
この動きは、まるで尺取虫のようだと表現されることもあります。とても不気味な移動方法です。
基本的には無害
意外なことに、ガダモンは 攻撃されない限り自ら攻撃することはありません。
悠久の時間を夢見て過ごしてきたせいか、積極的に獲物を襲うような行動は取らないんです。他の凶暴な旧支配者と比べると、比較的無害な存在といえるでしょう。
静かな湖の中で、ただ漂い続けているだけの存在なのかもしれません。
攻撃された時の反撃
しかし、一度攻撃されると話は別です。容赦ない殺戮 が始まります。
ガダモンの攻撃方法
- 腫瘍だらけの胴体から擬足を伸ばす
- 相手にしっかりと擬足を付着させる
- 体内に浮遊している頭部へ相手を引き寄せる
- その頭部で相手を噛みつく
この頭部がどれほど恐ろしい力を持っているかは不明ですが、旧支配者の一員であることを考えると、ひと噛みで相手を破壊できる と想像されています。
謎の知性
ガダモンが知性を持っているかどうかは、はっきりしていません。
攻撃されたら反撃するという単純な反応を見せますが、それが本当の知性なのか、それとも単なる生物的な反射なのか。体内に浮かぶ頭部が思考を司っているのか、それとも体全体で何かを感じ取っているのか。
すべては謎に包まれています。
伝承

ガダモンについての伝承は、主にクトゥルフ神話体系の中で語られます。
ドリームランドの不毛な湖
ガダモンが棲んでいるのは、ドリームランド(夢の国)の地下世界にある不毛な湖 です。
ドリームランドというのは、クトゥルフ神話における特別な世界で、単なる夢の中の場所ではありません。現実世界と深く結びついた、実際に存在する異次元の領域なんですね。
この世界には 食屍鬼(グール) たちが目覚めの世界と行き来していることから、夢と現実が反映し合った空間だと考えられています。
なぜそこにいるのか
ガダモンがなぜドリームランドの地下湖にいるのか、その理由は まったく分かっていません。
- ミ=ゴが意図的にそこへ配置したのか?
- 自らの意思でその場所を選んだのか?
- 何か特別な目的があるのか?
すべてが謎のままです。
人間の意識との関係
興味深い解釈として、人間の意識がガダモンを生み出した という説もあります。
ドリームランドが夢と現実の境界にある世界だとすれば、人々の悪夢や恐怖が具現化した存在がガダモンなのかもしれません。
常に腫瘍が破裂し続ける異形の姿は、まさに人間の深層心理が作り出した恐怖の象徴とも考えられるんですね。
食屍鬼との関連
一部の資料では、ローレンス・J・コーンフォードの作品『霊廟の落とし子』において、ある食屍鬼の異名 としてガダモンの名が使われています。
これが同一の存在を指しているのか、それとも別の存在なのかは不明ですが、ガダモンという名前の多様な解釈を示す興味深い例です。
まとめ
ガダモンは、クトゥルフ神話における最も奇怪で謎に満ちた存在の一つです。
重要なポイント
- 異星の生物ミ=ゴが科学技術で創造した人工生命体
- 旧支配者の一員で「幼生のグレート・オールド・ワン」とも呼ばれる
- 巨大な粘液質の塊で、常に腫瘍が破裂し続ける異形の姿
- ドリームランド(夢の国)の地下にある不毛の湖に棲む
- 基本的には無害だが、攻撃されると容赦なく反撃する
- 擬足で相手を捕らえ、体内の頭部で噛みつく攻撃方法
- 知性の有無や存在理由など、多くが謎に包まれている
宇宙からの訪問者が創り出し、夢と現実の境界に存在するガダモン。その不気味な姿と謎めいた性質は、クトゥルフ神話ならではの恐怖と魅力を私たちに伝えてくれます。


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