死後42日目の裁判官「変成王」とは?六道の行き先を決める重要な審判

神話・歴史・伝承

死んだ後、私たちはどこへ行くのでしょうか?

仏教では、亡くなった人は十人の王様による裁判を受けると信じられています。その中でも、死後42日目に登場するのが「変成王(へんじょうおう)」という裁判官です。

実は変成王は、私たちがどんな世界に生まれ変わるかを細かく決める、とても重要な役割を持っているんです。

この記事では、十王の六番目の裁判官である変成王について、その特徴や役割、審判の内容などを詳しくご紹介します。

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概要

変成王(へんじょうおう)は、仏教の十王信仰において、死後42日目(六七日)の審判を担当する6番目の裁判官です。

十王というのは、亡くなった人が極楽浄土へ行けるか、地獄へ落ちるかを決める10人の裁判官のことなんですね。その中でも変成王は、すでに六道(天道・人道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道)に振り分けられた死者が、その中でもどんな場所に生まれ変わるかを細かく決める役割があります。

つまり、前の裁判官たちが「地獄行き」「天界行き」といった大まかな行き先を決めた後、変成王が「地獄の中でもどの地獄か」「天界の中でもどの天界か」という具体的な転生先を審理するんです。

変成王の特徴と性格

本地は弥勒菩薩

変成王の本地(ほんじ=本来の姿)は弥勒菩薩(みろくぼさつ)とされています。

弥勒菩薩は未来に現れる仏様で、慈悲深い存在として知られています。そのためか、変成王も十王の中では比較的寛容な裁判官として描かれることが多いんです。

従えている部下たち

変成王は、人間の善悪を見破る特別な能力を持つ三つ目の赤鬼と青鬼を従えています。

この鬼たちは、亡者が嘘をついたり、隠し事をしていないかを見破る役割があります。三つ目というのは、普通の人には見えない真実を見通す力の象徴なんですね。

亡者の意見を聞いてくれる

十王の中でも変成王は、亡者側の意見や願いを聞き入れてくれる寛容な性格だとされています。

他の裁判官が厳しく罪を追及するのに対し、変成王は亡者の事情を考慮してくれるので、この審判では少し希望が持てるかもしれません。

死後42日目の審判内容

六道の詳細な振り分け

変成王の審判では、すでに決まった六道の中で、さらに細かい転生先が決められます。

たとえば:

  • 地獄道に落ちた場合 → どの地獄(八大地獄のうちのどれか)に行くか
  • 人道に転生する場合 → どんな境遇の人間として生まれるか
  • 天道に昇る場合 → どの天界のどの位置に生まれるか

このように、同じ道でも良い場所と悪い場所があり、それを変成王が判定するんです。

閻魔王の判決を基に対処

変成王は、5番目の裁判官である閻魔王の判決を基準にして審理を行います。

閻魔王といえば地獄の王様として有名ですよね。その閻魔王が下した判決内容を詳しく検討し、亡者に最も適した転生先を決定します。もし亡者に少しでも善行があれば、その分を考慮して、少しでも良い場所への転生を勧めてくれることもあるそうです。

変成王の庁舎への道のり

鉄丸所という試練の場

変成王の庁舎にたどり着くまでには、鉄丸所(てつがんじょ)という恐ろしい河原を通らなければなりません。

ここでは常に大きな鉄の玉が転がっており、亡者はその鉄玉に追いかけられたり、ぶつかったりして大いに苦しめられるといいます。これも生前の罪に対する罰の一つなんですね。

三本の道の選択

変成王の庁舎には二本の木があり、その下に三本の道が延びています。

興味深いのは、亡者が自分でどの道を選ぶかによって、転生先が決まるという点です。つまり、最後は自分の選択で運命を決めることになるんです。これは「自業自得」という仏教の教えを表しているのかもしれません。

道教での変成王

中国の道教では、変成王は大海の底を司る存在とされています。

道教での変成王の特徴:

  • 大叫喚地獄(だいきょうかんじごく)を管理
  • 十六の小地獄を併設
  • より厳しい刑罰を執行する役割

仏教での比較的寛容な姿とは対照的に、道教では厳しい裁判官として描かれているんですね。

十王信仰における位置づけ

十王の順番と審判日

変成王は十王の中で6番目の裁判官です。

十王の審判スケジュール:

  1. 初七日(7日目):秦広王
  2. 二七日(14日目):初江王
  3. 三七日(21日目):宋帝王
  4. 四七日(28日目):五官王
  5. 五七日(35日目):閻魔王
  6. 六七日(42日目):変成王 ← ここ!
  7. 七七日(49日目):泰山王
  8. 百か日(100日目):平等王
  9. 一周忌:都市王
  10. 三回忌:五道転輪王

なぜ42日目が重要なのか

仏教では、死後49日までが特に重要とされていますが、その中でも42日目は最終的な行き先が細かく決まる大切な日です。

この時期に遺族が行う法要(六七日法要)は、亡者がより良い場所に転生できるよう願う重要な儀式となっています。現在でも、地域によってはこの法要を大切にしているところがあります。

変成王にまつわる信仰

生前の十王信仰

昔の人々は、生きているうちから十王を祀ることで、死後の裁判で罪を軽くしてもらえると信じていました。これを「預修(よしゅう)」と呼びます。

特に変成王は寛容な性格とされているため、生前から信仰していれば、審判の時に考慮してもらえると考えられていたんです。

現代における意味

現代では、変成王の存在は以下のような教訓として理解できます:

  • 生前の行いの大切さ:どんな小さな善行も悪行も、死後の行き先に影響する
  • 自己責任の教え:最後は自分の選択で道を決める
  • 希望の存在:厳しい裁判の中にも、寛容さや救いがある

まとめ

変成王は、死後42日目に亡者の具体的な転生先を決める重要な裁判官です。

重要なポイント:

  • 十王の6番目で、死後42日目(六七日)の審判を担当
  • 本地は弥勒菩薩で、比較的寛容な性格
  • 六道の中での詳細な転生先を決定する役割
  • 三つ目の赤鬼と青鬼を従えて、亡者の善悪を見破る
  • 亡者の意見や願いを聞き入れてくれる
  • 最後は亡者自身が三本の道から選んで運命を決める

変成王の存在は、たとえ地獄に落ちることが決まっていても、その中でもマシな場所への転生の可能性があることを示しています。これは仏教の慈悲の教えを表しているとも言えるでしょう。

生きているうちに善行を積み重ねることで、もし変成王の審判を受けることになっても、より良い転生先を選べるかもしれませんね。

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