静かな夜の学生寮で、コチコチと時計の音が聞こえてきたら、あなたはどう感じますか?
それが誰もいないトイレから響いてきたとしたら…?
兵庫県の旧制高校で実際に語り継がれてきた「時計泥棒」は、ただの盗難事件から始まった話が、最後には背筋が凍るような怪談へと変わってしまった恐ろしい伝承なんです。
この記事では、学生寮を恐怖に陥れた怪談「時計泥棒」について、その不気味な事件の経緯と恐ろしい結末をご紹介します。
概要

時計泥棒(とけいどろぼう)は、兵庫県姫路市の旧制姫路高校にまつわる学校怪談です。
この話の舞台となったのは「白陵寮」という学生寮で、昭和初期頃に起きたとされる実話が元になっているとも言われています。
物語の特徴は、最初はただの窃盗事件だったものが、最後には超常現象へと変化していくところ。学生たちが授業で寮を空けている間に、なぜか時計ばかりを狙う泥棒が現れ、その泥棒を捕まえようとした結果、想像を絶する恐怖体験をすることになるんです。
伝承

事件の始まり
ある日、白陵寮で奇妙な盗難事件が発生しました。
学生たちが授業に出ている昼間、誰もいない寮に泥棒が侵入。でも不思議なことに、お金や貴重品には一切手をつけず、時計だけを盗んでいったんです。
しかも一度や二度ではなく、何度も同じような事件が起きました。寮生たちは「なんで時計ばかり狙うんだ?」と首をかしげながらも、自警団を結成して見回りを始めることにしたんですね。
恐怖の瞬間
そしてついに、泥棒が現れる日がやってきました。
自警団の学生たちが泥棒を発見し、追いかけると、泥棒は慌てて寮のトイレに逃げ込んだんです。
「もう逃げられないぞ!」
学生たちは戸をこじ開けて中を覗き込みました。すると、そこには…
想像を絶する光景
トイレの中で首を吊って死んでいる男の姿があったんです。
でも、それだけじゃありませんでした。死体から聞こえてくる音に、学生たちは凍りつきます。
コチ、コチ、コチ…
なんと、死体から無数の時計が時を刻む音が響いていたんです。
恐る恐る男の上着を脱がせてみると、そこには信じられない光景が。両腕には肩の付け根まで、びっしりと時計が巻き付いていたんです。まるで時計が皮膚と一体化したかのように、腕全体を覆い尽くしていました。
その後の怪異
この恐ろしい事件の後、白陵寮には新たな怪談が生まれました。
静まり返った深夜、そのトイレに入ると…
コチ、コチ、コチ…
どこからともなく時計の音が聞こえてくるようになったというんです。誰もいないはずなのに、あの時の泥棒の時計の音だけが、今も響き続けているそうです。
バリエーション
この話には、いくつかのバリエーションも存在します。
学校の怪談編集委員会の記録によると、兵庫県の山間部にある高校の野球部合宿所でも、似たような話が語られているそうです。細部は違えど、「時計ばかりを盗む泥棒」と「体に巻き付いた時計」という不気味な要素は共通しているんですね。
まとめ

時計泥棒は、日常的な盗難事件が超常現象へと変化する、典型的な学校怪談です。
重要なポイント
- 兵庫県姫路市の旧制高校「白陵寮」が舞台
- 時計だけを狙う不可解な泥棒
- トイレで首を吊った泥棒の体に巻き付いた無数の時計
- 死後も響き続ける時計の音
- 松谷みよ子の『現代民話考』にも収録された有名な怪談
この話が特に怖いのは、時計という身近なものが恐怖の象徴になっているところ。時を刻む音は普段なら安心感を与えるものなのに、この話では不気味な恐怖の音に変わってしまうんです。
もし夜中にトイレで時計の音が聞こえたら…それはもしかすると、今も時計泥棒の霊が彷徨っているのかもしれませんね。


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