「VPS」と「VPN」、名前が似ているから同じようなものだと思っていませんか?
実は、この2つは全く異なるサービスなんです。片方はサーバーのレンタルサービス、もう片方はネットワークのセキュリティ技術。用途も目的も、まったく違います。
この記事では、VPSとVPNの違いを、初心者の方にも分かりやすく解説します。それぞれの特徴、使い道、選び方まで詳しくご紹介しますので、「どっちを使えばいいの?」という疑問もきっと解決しますよ!
VPSとVPNの基本的な違い

まず、それぞれが何なのかを簡単に整理しましょう。
一言で表すと
VPS(Virtual Private Server)
→ 仮想専用サーバーのレンタルサービス
VPN(Virtual Private Network)
→ 仮想プライベートネットワークでセキュアに通信する技術
最も重要な違い
| 項目 | VPS | VPN |
|---|---|---|
| 何をするもの? | サーバーを借りる | 通信を暗号化する |
| 目的 | Webサイト運営、アプリ開発など | プライバシー保護、安全な通信 |
| 提供されるもの | サーバー(コンピューター) | 暗号化された通信経路 |
| ユーザー | 主に開発者、企業 | 一般ユーザー、リモートワーカー |
| 料金目安 | 月額500円〜数万円 | 月額500円〜1,500円程度 |
簡単に言うと:
- VPS:自分専用のコンピューターを借りる
- VPN:インターネットの通信を守る
VPS(仮想専用サーバー)とは
VPSについて、詳しく見ていきましょう。
VPSの仕組み
VPSは、一台の物理的なサーバーを、複数の仮想サーバーに分割したものです。
イメージ:
大きなマンション(物理サーバー)を、複数の部屋(VPS)に分けて、それぞれ別の人に貸し出している状態。
特徴:
- 自分専用のスペースがある
- 他の利用者の影響を受けにくい
- 自由に設定やソフトウェアをインストールできる
- rootアクセス(管理者権限)がある
VPSで何ができるのか
1. Webサイト・ブログの運営
WordPressなどのサイトを自分でホスティングできます。
2. Webアプリケーションの開発・公開
自作のWebアプリを公開するサーバーとして使えます。
3. データベースサーバー
MySQLやPostgreSQLなどのデータベースを運用できます。
4. メールサーバー
独自ドメインのメールアドレスを作成・運用できます。
5. ゲームサーバー
MinecraftやARKなどのマルチプレイゲームサーバーを立てられます。
6. VPNサーバー(後述)
自分専用のVPNサーバーを構築することも可能です。
7. バックアップサーバー
大切なデータのバックアップ先として使えます。
8. 開発・テスト環境
本番環境に影響を与えずに、新しい技術を試せます。
VPSのメリット
専用リソース:
CPU、メモリ、ストレージが自分専用なので、安定した動作が期待できます。
自由度が高い:
OSやソフトウェアを自由にインストール・設定できます。
コストパフォーマンス:
専用サーバーより安く、共用サーバーより高性能です。
スケーラビリティ:
必要に応じてスペックをアップグレードできます。
VPSのデメリット
技術知識が必要:
サーバーの構築や管理には、Linuxやネットワークの知識が必要です。
自己管理が必要:
セキュリティ対策やアップデートは自分で行います。
初期設定が大変:
まっさらな状態から設定するため、初心者には難しいことも。
VPSの主要サービス
国内サービス:
- ConoHa VPS(GMOインターネット)
- さくらのVPS
- カゴヤ・ジャパン
- WebARENA(NTTPCコミュニケーションズ)
海外サービス:
- DigitalOcean
- Linode
- Vultr
- AWS Lightsail
料金目安:
月額500円〜数千円(スペックによる)
VPN(仮想プライベートネットワーク)とは
次に、VPNについて詳しく見ていきましょう。
VPNの仕組み
VPNは、インターネット上に仮想的な専用回線を作り、通信を暗号化する技術です。
イメージ:
公共の道路(インターネット)の中に、外から見えないトンネル(暗号化された通信経路)を作って、安全に移動する。
特徴:
- 通信内容が暗号化される
- IPアドレスが隠される
- 地域制限を回避できる
- 公共Wi-Fiでも安全に通信できる
VPNで何ができるのか
1. プライバシー保護
ISP(インターネットプロバイダ)や第三者から、通信内容を守れます。
2. 公共Wi-Fiでの安全な通信
カフェや空港のフリーWi-Fiでも、暗号化されるので安全です。
3. リモートワーク
会社のネットワークに安全に接続できます。
4. 地域制限の回避
海外から日本のサービスにアクセスしたり、逆に海外のサービスにアクセスしたりできます。
5. 検閲の回避
一部の国で制限されているサービスにアクセスできます(ただし、現地の法律に注意)。
6. IPアドレスの変更
自分の本当のIPアドレスを隠せます。
VPNのメリット
セキュリティ向上:
通信が暗号化されるため、盗聴や傍受から守られます。
匿名性:
自分のIPアドレスが隠され、追跡されにくくなります。
使いやすい:
アプリをインストールして、ボタンを押すだけで使えます。
複数デバイス対応:
PC、スマホ、タブレットなど、様々なデバイスで使えます。
VPNのデメリット
通信速度の低下:
暗号化処理と遠回りの経路により、速度が落ちることがあります。
すべてが匿名ではない:
ログインしたサービスには、あなただと分かります。
月額料金が必要:
信頼できるVPNサービスは、ほとんどが有料です。
一部のサービスでブロックされる:
Netflix など、VPN経由のアクセスを制限するサービスもあります。
VPNの主要サービス
商用VPNサービス:
- NordVPN
- ExpressVPN
- ProtonVPN
- MillenVPN(日本製)
- Surfshark
料金目安:
月額500円〜1,500円程度(長期契約で割安)
無料VPNの注意:
セキュリティやプライバシーに問題があることが多く、推奨されません。
VPSとVPNの詳細比較

より詳しく、両者の違いを見ていきましょう。
技術的な違い
VPS:
- 仮想化技術(KVM、OpenVZなど)を使用
- 物理サーバーのリソースを分割
- OSを自由にインストール
- ネットワーク設定も自由
VPN:
- トンネリングプロトコル(OpenVPN、WireGuardなど)を使用
- クライアント-サーバーモデル
- 既存のインターネット接続の上に構築
- ネットワーク経路を暗号化
管理の違い
VPS:
- サーバー全体を自分で管理
- OSのアップデート、セキュリティ対策が必要
- ソフトウェアのインストール・設定
- バックアップも自己責任
VPN:
- アプリをインストールするだけ
- 接続ボタンを押すだけで使える
- サーバー管理はVPN事業者が行う
- ユーザーは設定不要(基本的に)
コスト構造の違い
VPS:
- スペック(CPU、メモリ、ストレージ)で価格が変わる
- 転送量に制限があることも
- 初期費用がかかる場合がある
- スナップショット、バックアップは別料金のことも
VPN:
- 機能やサーバー数で価格が変わる
- 転送量は通常無制限
- 同時接続デバイス数で変わることも
- 長期契約で大幅割引があることが多い
セキュリティの違い
VPS:
- セキュリティ設定は自分で行う
- ファイアウォール、SSH設定など
- 脆弱性対応も自己責任
- 攻撃のターゲットになりやすい(公開サーバーの場合)
VPN:
- 通信の暗号化は自動
- サーバーのセキュリティはVPN事業者が管理
- ユーザーは意識せず安全に使える
- ただし、信頼できるサービスを選ぶことが重要
どちらを選ぶべきか?
目的に応じて、選ぶべきサービスが変わります。
VPSを選ぶべき人
こんな目的がある人:
- Webサイトを自分でホスティングしたい
- Webアプリを開発・公開したい
- ゲームサーバーを立てたい
- 自由にカスタマイズできるサーバーが欲しい
- プログラミングの学習をしたい
- 自分専用のVPNサーバーを構築したい
必要なスキル:
- Linuxの基本操作
- コマンドライン操作
- ネットワークの基礎知識
- セキュリティの基本
向いている人:
- 開発者、エンジニア
- ITに詳しい人
- 技術を学びたい人
- サーバー管理を楽しめる人
VPNを選ぶべき人
こんな目的がある人:
- プライバシーを守りたい
- 公共Wi-Fiを安全に使いたい
- リモートワークで会社に接続したい
- 海外から日本のサービスを使いたい
- IPアドレスを隠したい
- 検閲を回避したい
必要なスキル:
- ほぼ不要(アプリを使えればOK)
向いている人:
- 一般ユーザー
- プライバシーを重視する人
- 海外在住者、海外旅行者
- リモートワーカー
- セキュリティ初心者
判断フローチャート
サーバーを運用したい?
├─ YES → VPS
└─ NO → 次へ
プライバシー保護が目的?
├─ YES → VPN
└─ NO → 次へ
プログラミング・開発をしたい?
├─ YES → VPS
└─ NO → 次へ
公共Wi-Fiを安全に使いたい?
├─ YES → VPN
└─ NO → 次へ
どちらでもない → 具体的な目的を明確に
VPSでVPNサーバーを構築する(両方使う)
実は、VPSを使って自分専用のVPNサーバーを作ることもできます。
VPSでVPNサーバーを作るメリット
完全なプライバシー:
商用VPNサービスと違い、自分だけが管理するので、ログを取られる心配がありません。
カスタマイズ自由:
設定を自分好みに調整できます。
複数人で共有可能:
家族や友人と共有して使えます。
学習になる:
VPNの仕組みを深く理解できます。
VPSでVPNサーバーを作るデメリット
技術的に難しい:
OpenVPNやWireGuardの設定が必要です。
サーバー管理が必要:
セキュリティ対策やアップデートを自分で行います。
サーバー数が限られる:
商用VPNのように、世界中のサーバーを選べるわけではありません。
速度が保証されない:
VPSのスペックに依存します。
構築手順(概要)
- VPSを契約
- AlmaLinuxやUbuntuなどをインストール
- VPNソフトウェアをインストール
- OpenVPN、WireGuard、SoftEther VPNなど
- 証明書・鍵の生成
- クライアント認証用
- ファイアウォールの設定
- 必要なポートを開放
- クライアント設定ファイルの作成
- PC、スマホで使える設定ファイル
- 接続テスト
- 正しく動作するか確認
注意:
詳細な手順は長くなるため、別途チュートリアルを参照してください。
推奨VPSスペック(VPNサーバー用)
最小構成:
- CPU:1コア
- メモリ:1GB
- ストレージ:20GB
- 月額:500円〜1,000円程度
推奨構成(複数人・高速):
- CPU:2コア
- メモリ:2GB
- ストレージ:30GB
- 月額:1,000円〜2,000円程度
VPSとVPNの組み合わせ例
実務でよくある使い方を紹介します。
パターン1:VPS + 商用VPN
構成:
- VPS:Webサイト運営
- VPN:自宅からVPSに安全に接続
メリット:
- VPS管理作業を安全に行える
- 自宅のIPアドレスを隠せる
使用例:
個人ブログを運営している人が、VPNを使って安全にサーバー管理を行う。
パターン2:VPSでVPNサーバー構築
構成:
- VPS:VPNサーバーとして使用
- クライアント:PC、スマホから接続
メリット:
- 完全にプライバシーを管理できる
- 月額コストが一本化される
使用例:
海外在住者が、日本のVPSでVPNサーバーを立てて、日本のサービスにアクセス。
パターン3:企業のリモートアクセス
構成:
- VPS:社内システムのホスティング
- VPN:社員が自宅から安全に接続
メリット:
- 社外から社内システムに安全アクセス
- セキュリティを保ちながらリモートワーク
使用例:
中小企業が、VPSで業務システムを運用し、VPN経由で社員がアクセス。
よくある勘違い

混同しやすいポイントを整理します。
勘違い1:VPSを使えばVPNになる
間違い:
VPSを契約しただけでは、VPNにはなりません。
正しい理解:
VPSはサーバーで、VPNは通信技術。VPS上にVPNサーバーを構築することは可能ですが、別の作業が必要です。
勘違い2:VPNはサーバーのレンタル
間違い:
VPNサービスは、サーバーを貸してくれるわけではありません。
正しい理解:
VPNは、通信を暗号化して保護するサービス。サーバー操作はできません。
勘違い3:どちらも匿名化ツール
間違い:
どちらも完全な匿名化はできません。
正しい理解:
- VPS:契約時に身元確認があり、ログも残る
- VPN:通信は暗号化されるが、VPN事業者には見える可能性
勘違い4:無料で使える
間違い:
どちらも基本的には有料サービスです。
正しい理解:
- VPS:月額数百円〜
- VPN:信頼できるサービスは月額数百円〜(無料VPNはリスクあり)
よくある質問(FAQ)
Q1: VPSとVPN、どちらが安全ですか?
A: 用途が違うため、比較できません。VPSはサーバーの管理が自己責任なので、知識がないと危険です。VPNは通信を守るツールで、適切なサービスを選べば安全です。
Q2: VPSでVPNサーバーを作る方が安いですか?
A: 月額料金だけ見ると同程度ですが、VPSは管理の手間がかかります。また、商用VPNは世界中にサーバーがあるというメリットがあります。技術学習が目的なら、VPSでの構築も良いでしょう。
Q3: VPNを使うと完全に匿名になれますか?
A: いいえ。VPNは通信を暗号化しますが、ログインしたサービスには身元が分かります。また、VPN事業者自体がログを取っている可能性もあります。完全な匿名化には、Tor Browserなどの併用が必要です。
Q4: VPSの管理は難しいですか?
A: LinuxやコマンドラインLの知識がないと、かなり難しいです。ただし、学習しながら使えば、貴重なスキルが身につきます。初心者向けのマネージドVPSサービスもあります。
Q5: 無料VPNを使っても大丈夫ですか?
A: おすすめしません。無料VPNは、ユーザーデータを販売したり、広告を表示したりして収益を得ています。プライバシー保護が目的なら、信頼できる有料VPNを選びましょう。
Q6: VPSとクラウド(AWS、Azure)の違いは?
A: VPSはシンプルで固定料金、クラウドは柔軟だが従量課金で複雑です。小規模なら VPS、大規模ならクラウドが適しています。
まとめ:VPSとVPNは全く別物
VPSとVPNの違いをまとめます。
基本的な違い:
| 項目 | VPS | VPN |
|---|---|---|
| 正式名称 | Virtual Private Server | Virtual Private Network |
| 日本語 | 仮想専用サーバー | 仮想プライベートネットワーク |
| 種類 | サーバーレンタルサービス | 通信暗号化技術・サービス |
| 提供物 | サーバー(コンピューター) | 暗号化された通信経路 |
| 主な用途 | Webサイト運営、開発 | プライバシー保護、安全な通信 |
| 管理 | 自分で管理 | サービス事業者が管理 |
| 必要スキル | 高い(Linux、ネットワーク) | 低い(アプリ操作のみ) |
| 料金 | 月額500円〜数万円 | 月額500円〜1,500円 |
選び方の基準:
VPSを選ぶべき:
- サーバーを運用したい
- Webサイト・アプリを公開したい
- 開発・学習環境が欲しい
- 技術的な知識がある、または学びたい
VPNを選ぶべき:
- プライバシーを守りたい
- 安全に通信したい
- 技術的な知識は不要
- 手軽に使いたい
両方使う場合:
- VPS:サーバー運用
- VPN:そのサーバーへの安全なアクセス
- または、VPSでVPNサーバーを構築
重要なポイント:
- 名前は似ているが、用途が全く違う
- VPSは「何かを動かす場所」
- VPNは「安全に通信する方法」
- 目的を明確にして選ぶことが重要
- 必要に応じて、両方を組み合わせることも可能
VPSとVPNは、名前が似ているだけで、実際には全く異なるサービスです。あなたの目的に合った方を選んで、快適なインターネットライフを楽しんでくださいね!
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