お寺で大きな仏像を見上げたとき、その穏やかな表情に心が落ち着いたことはありませんか?
その仏像、実は「如来」と呼ばれる、仏教で最も高い位にある仏さまかもしれません。
でも、仏像っていろいろな種類があって、どれが如来なのか分かりにくいですよね。
この記事では、仏教における最高位の存在「如来」について、その深い意味や特徴、代表的な如来の種類まで分かりやすくご紹介します。
概要

如来(にょらい)は、完全に悟りを開いた仏のことを指します。
サンスクリット語の「タターガタ(Tathāgata)」を漢訳した言葉で、「真理に到達した者」「真理から来た者」という意味があるんです。
仏教では、仏さまを大きく4つのランクに分けていて、その中で如来は最高位に位置しています。
仏教における4つのランク
- 如来:完全に悟りを開いた仏(最高位)
- 菩薩:まだ修行中、または人々を救うため現世に留まる仏
- 明王:煩悩を追い払い、教えに従わない者を導く仏
- 天部:仏と教えを守護する存在
つまり、如来は仏教の教えを完全に体得し、迷いから完全に解放された究極の存在なんですね。
如来の意味と由来
「如来」という言葉、実はとても深い意味を持っています。
語源の解釈
タターガタという原語は、2つの解釈があるんです。
- 「如去(にょこ)」:タター・ガタ(真理のとおりに去った者)
- 「如来(にょらい)」:タター・アーガタ(真理のとおりに来た者)
どちらの解釈でも、「理想的な真理に従って、そのとおりに行動できる人」という意味になります。
面白いのは、この言葉が仏教以前から使われていたということ。古代インドでは「生死の輪廻から解脱した理想の人物」を指す言葉だったんですね。
如来の別名「如来十号」
如来には10の尊称があり、これを「如来十号(にょらいじゅうごう)」と呼びます。
- 応供(おうぐ):尊敬を受けるに値する者
- 正遍知(しょうへんち):すべてを正しく知る者
- 明行足(みょうぎょうそく):智慧と行いが完全な者
- 善逝(ぜんぜい):迷いを断って世間を超えた者
- 世間解(せけんげ):世の中の道理を理解する者
- 無上士(むじょうし):この上なく尊い者
- 調御丈夫(じょうごじょうぶ):人々を導く指導者
- 天人師(てんにんし):天界と人間界の師
- 仏(ぶつ):悟りを開いた者
- 世尊(せそん):世の中で最も尊い者
これらの称号は、如来の素晴らしい能力や性格を表しているんです。
如来の身体的特徴「三十二相八十種好」

如来には、普通の人とは違う特別な身体的特徴があります。
三十二相(さんじゅうにそう)
如来の全身に備わる32の特徴のことで、代表的なものを紹介しますね。
主な身体的特徴
- 頂髻(ちょうけい):頭の上が髪を束ねたように盛り上がっている
- 白毫(びゃくごう):眉間に右巻きの白い毛がある
- 金色の体:全身が金色に輝いている
- 長い耳たぶ:耳が大きく、耳たぶが垂れ下がっている
- 手足の水かき:指の間に水かきがある
- 千輻輪相(せんぷくりんそう):足の裏に特別な模様がある
これらの特徴は「仏の瑞相(ずいそう)」と呼ばれ、如来が特別な存在であることを示すしるしなんです。
さらに詳しく説明したものを「八十種好(はちじゅうしゅこう)」といい、合計で112もの特徴があるとされています。
代表的な如来の種類
如来といっても、実はたくさんの種類があります。特に有名な如来を紹介しましょう。
釈迦如来(しゃかにょらい)
仏教の開祖であるお釈迦さまのことです。実在の人物が悟りを開いて如来になった、最も基本的な如来ですね。
阿弥陀如来(あみだにょらい)
西方の極楽浄土にいる如来で、「南無阿弥陀仏」と唱えることで知られています。死後の世界で人々を救ってくれる如来として、日本では特に信仰されています。
薬師如来(やくしにょらい)
東方の浄瑠璃世界にいる如来で、病気を治す仏さまとして親しまれています。左手に薬壺(やっこ)を持っているのが特徴です。
大日如来(だいにちにょらい)
密教で最高の仏とされ、宇宙の真理そのものを表します。他の如来とは違って、冠や装飾品を身に着けた豪華な姿をしているのが特徴なんです。
五智如来(ごちにょらい)
密教では、5つの智慧を表す5体の如来をセットで祀ることがあります。
- 大日如来(中央)
- 阿閦如来(東)
- 宝生如来(南)
- 阿弥陀如来(西)
- 不空成就如来(北)
如来と三尊像

如来は単独で祀られることもありますが、三尊像(さんぞんぞう)という形式もよく見られます。
三尊像の構成
中央に如来(中尊)が座り、左右に菩薩などの脇侍(わきじ、きょうじ)を従える形です。
代表的な三尊像
- 釈迦三尊:釈迦如来+文殊菩薩+普賢菩薩
- 阿弥陀三尊:阿弥陀如来+観音菩薩+勢至菩薩
- 薬師三尊:薬師如来+日光菩薩+月光菩薩
脇侍は中尊の如来を補佐し、その教えを広める役割を持っています。
如来の見分け方
お寺で仏像を見たとき、それが如来かどうか見分けるポイントがあります。
如来の特徴的な姿
- 質素な衣:一枚の布をまとっただけのシンプルな姿
- 螺髪(らほつ):頭がブツブツした髪型
- 装飾品なし:基本的に冠や装飾品を身に着けない(大日如来は例外)
- 穏やかな表情:慈悲深い優しい顔つき
菩薩は冠や装飾品を身に着けた華やかな姿、明王は怒った顔をしているので、比較的見分けやすいんです。
まとめ
如来は、仏教における最高位の存在で、完全な悟りの境地に達した仏さまです。
重要なポイント
- サンスクリット語「タターガタ」の漢訳で「真理に到達した者」の意味
- 仏教の4つのランクで最高位に位置する
- 三十二相八十種好という特別な身体的特徴を持つ
- 釈迦如来、阿弥陀如来、薬師如来、大日如来などの種類がある
- 質素な衣と穏やかな表情が特徴的
- 三尊像では中央に座り、菩薩を従える
お寺を訪れたときは、ぜひ如来像の特徴に注目してみてください。その穏やかな姿の中に、仏教の深い教えと慈悲の心が込められているんです。


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