ルーティングテーブルとは?ネットワークの「道案内」を完全解説

プログラミング・IT

「メールを送信したら、どうやって相手に届くの?」

「インターネット上のデータは、どうやって正しい場所に届くの?」

その答えが、ルーティングテーブルにあります。

ルーティングテーブルは、ネットワーク機器が持つ「道案内マップ」のようなもの。「このデータはどの道を通って送ればいいか」という情報が書かれた表です。

この記事では、ルーティングテーブルについて、初心者の方にも分かるように丁寧に解説します。

難しく感じるかもしれませんが、身近な例えを使いながら説明するので、きっと理解できますよ。


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  1. ルーティングテーブルとは?基本を理解しよう
    1. ルーティングとは
    2. ルーティングテーブルの定義
    3. どこにルーティングテーブルがある?
    4. ルーティングテーブルの役割
  2. ルーティングテーブルの構成要素
    1. 基本的な項目
    2. 1. 宛先ネットワーク(Destination)
    3. 2. サブネットマスク / プレフィックス長(Netmask / Prefix)
    4. 3. ゲートウェイ / ネクストホップ(Gateway / Next Hop)
    5. 4. インターフェース(Interface)
    6. 5. メトリック / コスト(Metric / Cost)
    7. 6. プロトコル / ソース(Protocol / Source)
  3. ルーティングテーブルの見方
    1. Windowsのルーティングテーブル
    2. Linuxのルーティングテーブル
    3. macOSのルーティングテーブル
  4. デフォルトゲートウェイとデフォルトルート
    1. デフォルトルートとは
    2. デフォルトゲートウェイとは
    3. デフォルトルートがないと?
  5. スタティックルーティングとダイナミックルーティング
    1. スタティックルーティング(静的ルーティング)
    2. ダイナミックルーティング(動的ルーティング)
    3. どちらを使うべき?
    4. ハイブリッド構成
  6. ルーティングテーブルの確認方法
    1. Windows
    2. Linux
    3. macOS
  7. ルーティングテーブルの設定・編集
    1. Windowsでの設定
    2. Linuxでの設定
    3. macOSでの設定
  8. ルーティングの優先順序
    1. 最長プレフィックスマッチ
    2. メトリックによる選択
    3. アドミニストレーティブディスタンス
  9. ルーティングのトラブルシューティング
    1. 症状1:インターネットに接続できない
    2. 症状2:特定のネットワークに到達できない
    3. 症状3:通信が遅い、不安定
    4. 症状4:一部のサービスだけ繋がらない
    5. デバッグのコツ
  10. 実践例:家庭のネットワーク
    1. 一般的な家庭のネットワーク構成
    2. 複数ネットワークの例
  11. よくある質問(Q&A)
    1. Q1:ルーティングテーブルは誰が作る?
    2. Q2:ルーティングテーブルを間違えたらどうなる?
    3. Q3:デフォルトゲートウェイは複数設定できる?
    4. Q4:ルーティングループとは?
    5. Q5:VPNを使うとルーティングテーブルはどうなる?
    6. Q6:IPv6のルーティングテーブルは別?
    7. Q7:スマホにもルーティングテーブルはある?
  12. まとめ:ルーティングテーブルはネットワークの地図

ルーティングテーブルとは?基本を理解しよう

まずは基本的な概念から見ていきましょう。

ルーティングとは

ルーティング(Routing)は、データを目的地まで届けるための「経路選択」のことです。

道路の例え

自宅から会社に行く場合を考えてみましょう。

  • 出発地:自宅
  • 目的地:会社
  • 経路の選択肢
  • 国道を使う
  • 高速道路を使う
  • 裏道を通る

どの道を選ぶかを決めるのが、「ルーティング」です。

ルーティングテーブルの定義

ルーティングテーブル(Routing Table)は、データをどの経路で送るかを記録した表です。

郵便局の仕分け表に例えると

宛先エリア     次の配送先
東京都        → 東京中央郵便局
大阪府        → 大阪中央郵便局
福岡県        → 福岡中央郵便局
その他        → 地域統括局

これと同じように、ルーティングテーブルには以下が記録されています:

宛先ネットワーク    次に送るルーター(ゲートウェイ)
192.168.1.0/24  → 192.168.0.1
10.0.0.0/8      → 192.168.0.2
0.0.0.0/0       → 192.168.0.254(デフォルト)

どこにルーティングテーブルがある?

ルーティングテーブルは、以下の機器に存在します:

ルーター

ネットワーク間でデータを転送する専用機器。最も重要なルーティングテーブルを持っています。

PC・スマートフォン

実は、あなたのPCやスマホにもルーティングテーブルがあります。

サーバー

Webサーバーやメールサーバーなど、すべてのネットワーク機器に存在します。

スイッチ(レイヤー3スイッチ)

高機能なスイッチは、ルーティング機能を持っています。

ルーティングテーブルの役割

役割1:経路の決定

データの宛先を見て、どのネットワークインターフェース(出口)から送り出すか決定します。

役割2:次のホップの指定

直接届けられない場合、次に経由すべきルーターを指定します。

役割3:トラフィックの最適化

複数の経路がある場合、最適な経路を選択します。

役割4:ネットワークの分離

異なるネットワーク間の通信を制御します。


ルーティングテーブルの構成要素

ルーティングテーブルには、いくつかの重要な項目があります。

基本的な項目

典型的なルーティングテーブルの例:

宛先ネットワーク    サブネットマスク    ゲートウェイ      インターフェース  メトリック
192.168.1.0        255.255.255.0      192.168.0.1       eth0            10
10.0.0.0           255.0.0.0          192.168.0.2       eth0            20
0.0.0.0            0.0.0.0            192.168.0.254     eth0            1

1. 宛先ネットワーク(Destination)

データを送りたい先のネットワークアドレスです。

  • 192.168.1.0:特定のネットワーク
  • 0.0.0.0:デフォルトルート(すべての宛先)

2. サブネットマスク / プレフィックス長(Netmask / Prefix)

宛先ネットワークの範囲を示します。

表記方法

  • サブネットマスク形式255.255.255.0
  • CIDR形式/24

  • 192.168.1.0/24:192.168.1.0〜192.168.1.255の範囲

3. ゲートウェイ / ネクストホップ(Gateway / Next Hop)

データを次に送る先のIPアドレスです。

種類

  • 特定のIPアドレス192.168.0.1(次のルーター)
  • 直接接続0.0.0.0または*(同じネットワーク内)
  • 自分自身:ローカルで処理

4. インターフェース(Interface)

どのネットワークカード(出口)から送り出すかを示します。

  • WindowsEthernetWi-Fi
  • Linuxeth0wlan0ens33
  • Macen0en1

5. メトリック / コスト(Metric / Cost)

その経路の「優先度」や「コスト」を示す数値です。

特徴

  • 数値が小さいほど優先される
  • 複数の経路がある場合、最小のメトリックを持つ経路が選ばれる
  • 手動設定または自動計算

宛先: 10.0.0.0/8
  経路A: ゲートウェイ 192.168.0.1, メトリック 10
  経路B: ゲートウェイ 192.168.0.2, メトリック 20
  → 経路A が選ばれる(メトリックが小さい)

6. プロトコル / ソース(Protocol / Source)

どのようにしてこの経路情報を得たかを示します。

種類

  • 直接接続(Connected / Direct):物理的に接続されているネットワーク
  • 静的(Static):管理者が手動で設定
  • 動的(Dynamic):ルーティングプロトコルが自動設定
  • RIP、OSPF、BGPなど

ルーティングテーブルの見方

実際のルーティングテーブルを読み解いてみましょう。

Windowsのルーティングテーブル

コマンドプロンプトで以下を実行:

route print

出力例

アクティブ ルート:
ネットワーク宛先    ネットマスク      ゲートウェイ       インターフェイス  メトリック
0.0.0.0            0.0.0.0           192.168.1.1        192.168.1.100    35
127.0.0.0          255.0.0.0         On-link            127.0.0.1        331
192.168.1.0        255.255.255.0     On-link            192.168.1.100    291
192.168.1.100      255.255.255.255   On-link            192.168.1.100    291
192.168.1.255      255.255.255.255   On-link            192.168.1.100    291
224.0.0.0          240.0.0.0         On-link            127.0.0.1        331
255.255.255.255    255.255.255.255   On-link            127.0.0.1        331

読み方

1行目

0.0.0.0  0.0.0.0  192.168.1.1  192.168.1.100  35
  • 宛先0.0.0.0/0(すべての宛先)
  • ゲートウェイ192.168.1.1(家庭用ルーター)
  • 意味:「どこにも該当しない宛先は、192.168.1.1に送る」

これがデフォルトゲートウェイです。

3行目

192.168.1.0  255.255.255.0  On-link  192.168.1.100  291
  • 宛先192.168.1.0/24(同じネットワーク)
  • ゲートウェイOn-link(直接接続)
  • 意味:「192.168.1.xへは、ルーターを経由せず直接送る」

Linuxのルーティングテーブル

routeコマンド(従来の方法)

route -n

出力例

Kernel IP routing table
Destination     Gateway         Genmask         Flags Metric Ref    Use Iface
0.0.0.0         192.168.1.1     0.0.0.0         UG    100    0        0 eth0
192.168.1.0     0.0.0.0         255.255.255.0   U     100    0        0 eth0

Flags(フラグ)の意味

  • U(Up):経路が有効
  • G(Gateway):ゲートウェイ経由
  • H(Host):特定のホスト向け
  • D(Dynamic):動的に追加された
  • M(Modified):リダイレクトで変更された

ipコマンド(推奨)

ip route show

出力例

default via 192.168.1.1 dev eth0 proto dhcp metric 100
192.168.1.0/24 dev eth0 proto kernel scope link src 192.168.1.100 metric 100

読み方

1行目

default via 192.168.1.1 dev eth0 proto dhcp metric 100
  • default:デフォルトルート(0.0.0.0/0)
  • via 192.168.1.1:ゲートウェイ
  • dev eth0:インターフェース
  • proto dhcp:DHCPで取得
  • metric 100:優先度

macOSのルーティングテーブル

netstat -rn

出力例

Routing tables

Internet:
Destination        Gateway            Flags        Netif Expire
default            192.168.1.1        UGSc          en0
127.0.0.1          127.0.0.1          UH            lo0
192.168.1.0/24     link#4             UCS           en0
192.168.1.100/32   link#4             UCS           en0

基本的な読み方は、LinuxやWindowsと同様です。


デフォルトゲートウェイとデフォルトルート

ルーティングテーブルで最も重要な概念です。

デフォルトルートとは

デフォルトルート(Default Route)は、「どの経路にも該当しない宛先」を処理する、最後の砦です。

表記

  • 0.0.0.0/0(すべてのIPアドレス)
  • default

例え

郵便の仕分けで「その他すべて」に該当する行き先。

東京都 → 東京局
大阪府 → 大阪局
その他 → 中央局(デフォルト)

デフォルトゲートウェイとは

デフォルトゲートウェイ(Default Gateway)は、デフォルトルートで指定されたゲートウェイのことです。

通常は、家庭用ルーターや会社のルーターのIPアドレスです。

家庭のネットワークの例

あなたのPC: 192.168.1.100
ルーター(デフォルトゲートウェイ): 192.168.1.1

インターネット上のWebサイト(例:142.250.207.46)にアクセスしたい場合:

  1. ルーティングテーブルを確認
  2. 142.250.207.46に該当する経路がない
  3. デフォルトルートに該当
  4. 192.168.1.1(ルーター)に送る
  5. ルーターがインターネットへ転送

デフォルトルートがないと?

デフォルトルートが設定されていないと、知らないネットワークへは一切通信できません。

症状

  • インターネットに接続できない
  • 他のネットワークに届かない
  • 「ネットワークに到達できません」エラー

スタティックルーティングとダイナミックルーティング

ルーティングテーブルを作成する方法は2つあります。

スタティックルーティング(静的ルーティング)

スタティックルーティングは、管理者が手動で経路を設定する方法です。

メリット

  • シンプル:設定が分かりやすい
  • 軽量:CPUやメモリをほとんど使わない
  • 予測可能:経路が固定されている
  • セキュア:不要な情報が流れない

デメリット

  • 手間がかかる:すべて手動設定
  • 柔軟性がない:障害時に自動で迂回できない
  • スケールしない:大規模ネットワークでは非現実的
  • 変更に弱い:ネットワーク構成変更のたびに全ルーターを再設定

適用例

  • 小規模ネットワーク
  • 拠点間接続(固定経路)
  • デフォルトルートの設定

ダイナミックルーティング(動的ルーティング)

ダイナミックルーティングは、ルーティングプロトコルを使って自動的に経路を学習・更新する方法です。

メリット

  • 自動化:手動設定不要
  • 柔軟性:障害時に自動で迂回
  • スケーラブル:大規模ネットワークに対応
  • 最適化:最適な経路を自動選択

デメリット

  • 複雑:設定と理解が難しい
  • リソース消費:CPUとメモリを使用
  • 帯域幅:ルーティング情報の交換にネットワーク帯域を使用
  • セキュリティ:不正な経路情報が混入するリスク

主要なルーティングプロトコル

RIP(Routing Information Protocol):

  • 最も古く、シンプル
  • 小規模ネットワーク向け
  • メトリックはホップ数(最大15ホップ)

OSPF(Open Shortest Path First):

  • 中〜大規模ネットワーク向け
  • 高速な収束
  • リンクステート型

BGP(Border Gateway Protocol):

  • インターネットの骨格で使用
  • AS(自律システム)間のルーティング
  • 非常に大規模

EIGRP(Enhanced Interior Gateway Routing Protocol):

  • Cisco独自(一部オープン化)
  • 高速で効率的
  • ハイブリッド型

どちらを使うべき?

スタティックルーティングが適している

  • 拠点が3〜5箇所以下
  • ネットワーク構成がシンプル
  • 変更が少ない
  • デフォルトルートのみ必要

ダイナミックルーティングが適している

  • 拠点が多数ある
  • ネットワーク構成が複雑
  • 冗長化が必要(障害時の自動切り替え)
  • ISP(インターネットプロバイダー)

ハイブリッド構成

実際には、両方を組み合わせることが多いです。

  • 主要な経路はダイナミックルーティング(OSPF)
  • エンドユーザーのPCはスタティック(デフォルトゲートウェイのみ)
  • インターネットへの出口はスタティック

ルーティングテーブルの確認方法

各OSでの確認方法を詳しく見ていきます。

Windows

GUIで確認

  1. コマンドプロンプトを開く
  2. route printを実行

PowerShellで確認

Get-NetRoute

より読みやすい形式:

Get-NetRoute | Format-Table -AutoSize

特定のインターフェースのみ:

Get-NetRoute -InterfaceAlias "Ethernet"

Linux

routeコマンド(従来)

# 基本表示
route -n

# 詳細表示
route -nee

-nオプションは、ホスト名を解決せず、IPアドレスのまま表示します(高速)。

ipコマンド(推奨)

# ルーティングテーブル表示
ip route show

# または短縮形
ip r

# 特定のインターフェースのみ
ip route show dev eth0

# 特定の宛先への経路を確認
ip route get 8.8.8.8

出力例の詳細解説

$ ip route get 8.8.8.8
8.8.8.8 via 192.168.1.1 dev eth0 src 192.168.1.100 uid 1000
    cache
  • via 192.168.1.1:ゲートウェイ経由
  • dev eth0:eth0インターフェースから送出
  • src 192.168.1.100:送信元IPアドレス

macOS

netstatコマンド

# 基本表示
netstat -rn

# IPv4のみ
netstat -rn -f inet

# IPv6のみ
netstat -rn -f inet6

routeコマンド

# ルーティングテーブル表示
route -n get default

特定の宛先への経路確認:

route -n get 8.8.8.8

ルーティングテーブルの設定・編集

経路を手動で追加・削除する方法です。

注意:管理者権限が必要です。

Windowsでの設定

一時的な追加(再起動で消える)

route add 10.0.0.0 mask 255.0.0.0 192.168.1.1

構文

route add [宛先ネットワーク] mask [サブネットマスク] [ゲートウェイ]

恒久的な追加(再起動後も残る)

route add 10.0.0.0 mask 255.0.0.0 192.168.1.1 -p

-pオプションで永続化されます。

経路の削除

route delete 10.0.0.0

メトリックの指定

route add 10.0.0.0 mask 255.0.0.0 192.168.1.1 metric 10

デフォルトゲートウェイの変更

route add 0.0.0.0 mask 0.0.0.0 192.168.1.254

Linuxでの設定

一時的な追加(再起動で消える)

ipコマンド(推奨)

# 経路の追加
sudo ip route add 10.0.0.0/8 via 192.168.1.1

# デフォルトルートの追加
sudo ip route add default via 192.168.1.1

# メトリック指定
sudo ip route add 10.0.0.0/8 via 192.168.1.1 metric 100

routeコマンド(従来)

sudo route add -net 10.0.0.0 netmask 255.0.0.0 gw 192.168.1.1

経路の削除

# ipコマンド
sudo ip route del 10.0.0.0/8

# routeコマンド
sudo route del -net 10.0.0.0 netmask 255.0.0.0

恒久的な設定

Ubuntu/Debian(Netplan使用)

/etc/netplan/01-netcfg.yamlを編集:

network:
  version: 2
  ethernets:
    eth0:
      addresses:
        - 192.168.1.100/24
      gateway4: 192.168.1.1
      routes:
        - to: 10.0.0.0/8
          via: 192.168.1.1
          metric: 100

設定を適用:

sudo netplan apply

CentOS/RHEL(従来のネットワークスクリプト)

/etc/sysconfig/network-scripts/route-eth0を作成:

10.0.0.0/8 via 192.168.1.1

macOSでの設定

一時的な追加

sudo route add 10.0.0.0/8 192.168.1.1

経路の削除

sudo route delete 10.0.0.0/8

恒久的な設定

macOSでは、ネットワーク設定画面から設定するのが一般的です。

または、起動スクリプトに追加:

/Library/LaunchDaemons/com.example.routing.plist


ルーティングの優先順序

複数の経路が該当する場合、どれが選ばれるのでしょうか?

最長プレフィックスマッチ

最長プレフィックスマッチ(Longest Prefix Match)という原則に従います。

「より具体的な(範囲が狭い)経路を優先する」ということ。

宛先:192.168.1.50

ルーティングテーブル:

A: 0.0.0.0/0           via 192.168.0.1  (すべて)
B: 192.168.0.0/16      via 192.168.0.2  (192.168.x.x)
C: 192.168.1.0/24      via 192.168.0.3  (192.168.1.x)
D: 192.168.1.50/32     via 192.168.0.4  (192.168.1.50のみ)

選択される経路

  1. Dが最も具体的(/32 = 1個のIP)→ 最優先
  2. なければC(/24 = 256個のIP)
  3. なければB(/16 = 65,536個のIP)
  4. なければA(/0 = すべて)→ デフォルトルート

メトリックによる選択

同じ宛先への経路が複数ある場合、メトリックが小さい方が優先されます。

10.0.0.0/8 via 192.168.1.1 metric 10
10.0.0.0/8 via 192.168.1.2 metric 20

メトリック10の経路が選ばれます。

アドミニストレーティブディスタンス

ルーティングプロトコルごとに「信頼度」があります。

Cisco ルーターの例

プロトコルAD値信頼度
直接接続0最高
スタティックルート1非常に高い
EIGRP90高い
OSPF110やや高い
RIP120低い

AD値が小さいほど信頼される経路です。


ルーティングのトラブルシューティング

ルーティングに問題がある場合の診断方法です。

症状1:インターネットに接続できない

確認手順

ステップ1:デフォルトゲートウェイの確認

# Windows
route print | findstr "0.0.0.0"

# Linux
ip route | grep default

# Mac
netstat -rn | grep default

デフォルトルートがない、または間違っている場合は修正します。

ステップ2:ゲートウェイへの到達性確認

ping 192.168.1.1  # ゲートウェイのIPアドレス

失敗する場合、ケーブル接続やネットワーク設定を確認。

ステップ3:DNSの確認

ping 8.8.8.8  # IPアドレスで直接
ping google.com  # ドメイン名で

IPアドレスは通るがドメイン名で失敗する場合、DNS設定の問題。

症状2:特定のネットワークに到達できない

tracerouteで経路追跡

Windows

tracert 10.0.0.1

Linux/Mac

traceroute 10.0.0.1

読み方

1  192.168.1.1      1ms
2  10.0.0.254       5ms
3  10.0.0.1         10ms

各行が経由したルーターを示します。途中で止まる場合、そこに問題があります。

症状3:通信が遅い、不安定

MTRで継続的な追跡

Linux/Mac

mtr 8.8.8.8

パケットロスやレイテンシ(遅延)を継続的に監視できます。

症状4:一部のサービスだけ繋がらない

ポート単位の確認

telnet example.com 80
nc -zv example.com 443

特定のポートが開いているか確認します。

ルーティングではなく、ファイアウォールの問題かもしれません。

デバッグのコツ

1. 近いところから確認

自分 → ゲートウェイ → インターネット

の順に確認していきます。

2. レイヤーごとに切り分け

  • レイヤー1(物理):ケーブルは接続されているか?
  • レイヤー2(データリンク):MACアドレスは正しいか?
  • レイヤー3(ネットワーク):IPアドレス、ルーティングは正しいか?
  • レイヤー4以上(トランスポート〜アプリケーション):ポート、プロトコルは正しいか?

3. ログを確認

# Linux
sudo tail -f /var/log/syslog
dmesg | grep -i network

# Windows
イベントビューアー → Windowsログ → システム

実践例:家庭のネットワーク

具体的な例で理解を深めましょう。

一般的な家庭のネットワーク構成

インターネット
     |
  [ルーター] 192.168.1.1
     |
  +-+-+-+-+
  |   |   |
 PC1 PC2 スマホ

PC1のルーティングテーブル

宛先              ゲートウェイ    インターフェース
0.0.0.0/0        192.168.1.1     Wi-Fi
192.168.1.0/24   直接接続        Wi-Fi

動作

  1. PC1がgoogle.com(142.250.207.46)にアクセスしたい
  2. ルーティングテーブルを確認
  3. 192.168.1.0/24には該当しない
  4. デフォルトルート(0.0.0.0/0)に該当
  5. ゲートウェイ192.168.1.1(ルーター)に送信
  6. ルーターがインターネットに転送

複数ネットワークの例

少し複雑な例:

インターネット
     |
  [ルーター1] 192.168.1.1
     |
  192.168.1.0/24
     |
  [ルーター2] 192.168.1.100 / 10.0.0.1
     |
  10.0.0.0/24
     |
   サーバー 10.0.0.10

PC(192.168.1.50)のルーティングテーブル

宛先            ゲートウェイ      インターフェース
0.0.0.0/0      192.168.1.1       eth0  (デフォルト)
10.0.0.0/24    192.168.1.100     eth0  (内部サーバー用)
192.168.1.0/24 直接接続          eth0

動作

  • 10.0.0.10へのアクセス → 192.168.1.100(ルーター2)経由
  • google.comへのアクセス → 192.168.1.1(ルーター1)経由
  • 192.168.1.xへのアクセス → 直接通信

よくある質問(Q&A)

ルーティングテーブルについて、よくある質問にお答えします。

Q1:ルーティングテーブルは誰が作る?

A:状況によります。

  • PC・スマホ:DHCP自動設定またはOS
  • 家庭用ルーター:初期設定+自動学習
  • 企業ルーター:管理者が手動設定またはルーティングプロトコル

Q2:ルーティングテーブルを間違えたらどうなる?

A:通信できなくなります。

最悪の場合、ネットワーク全体が使えなくなることも。

ただし、PCのルーティングテーブルなら、再起動すれば元に戻ることが多いです。

Q3:デフォルトゲートウェイは複数設定できる?

A:技術的には可能ですが、メトリックで優先順位が決まります。

通常は1つだけ設定し、冗長化が必要な場合はVRRPなどの専用プロトコルを使います。

Q4:ルーティングループとは?

A:データがぐるぐる回り続ける状態です。

ルーターA: 10.0.0.0/8 → ルーターBへ
ルーターB: 10.0.0.0/8 → ルーターAへ

パケットがAとBの間を永遠に行き来します。

対策:TTL(Time To Live)があるので、一定ホップ数で破棄されます。

Q5:VPNを使うとルーティングテーブルはどうなる?

A:VPN用の経路が追加されます。

10.0.0.0/8     via VPNゲートウェイ    tun0(VPNインターフェース)

VPN接続中は、特定の宛先がVPN経由になります。

Q6:IPv6のルーティングテーブルは別?

A:はい、IPv4とIPv6は別々のルーティングテーブルを持ちます。

# Linux
ip -6 route show

# Windows
route print -6

Q7:スマホにもルーティングテーブルはある?

A:はい、あります。

ただし、通常はOSが自動管理するため、ユーザーが見ることはほとんどありません。

Android(root権限)やiOS(ジェイルブレイク)なら確認できます。


まとめ:ルーティングテーブルはネットワークの地図

ルーティングテーブルについて、理解できましたか?

この記事の重要ポイント

  • ルーティングテーブルはデータの「道案内マップ」
  • 宛先、ゲートウェイ、インターフェース、メトリックが主要項目
  • デフォルトルートが「最後の砦」として重要
  • スタティックとダイナミックの2種類の設定方法
  • 最長プレフィックスマッチで経路を選択
  • Windows、Linux、Macでそれぞれ確認・設定方法が異なる
  • traceroute/tracertで経路を追跡できる
  • トラブル時は近いところから順に確認

ルーティングテーブルは、ネットワークの基礎中の基礎です。

最初は複雑に感じるかもしれませんが、一度理解すれば、ネットワークトラブルの解決が格段に楽になります。

この記事を参考に、自分のPCのルーティングテーブルを確認してみてください。

きっと、ネットワークへの理解が深まるはずですよ!

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