「このCPUは6コア12スレッドです」
「コアが多い方が速いの?それともスレッド?」
CPUのスペックを見ると、必ず出てくる「コア数」と「スレッド数」という言葉。
でもこの2つ、何が違うのか分かりにくいですよね。
この記事では、CPUのコア数とスレッド数の違い、そしてあなたに必要なコア数はいくつなのかを、初心者の方にも分かりやすく解説します。
難しい技術用語は最小限にして、身近な例えを使って説明していきますね。
CPUの性能を正しく理解する鍵となる知識なので、ぜひ最後までお読みください!
CPUコアとは?基本を理解しよう

CPUコアの定義
CPUコア(Core)とは、実際に計算処理を行う物理的な演算装置のことです。
CPUの中には、この「コア」が1つ以上入っています。
シングルコア:
- コアが1つだけ
- 昔のCPUはこれが主流
- 1つの処理しか同時にできない
マルチコア:
- コアが複数ある
- 現代のCPUはほぼ全てこれ
- 複数の処理を同時に実行できる
レストランの厨房で例えると
分かりやすく例えてみましょう。
レストランの厨房:
- CPUコア = 料理人(シェフ)
- 処理(タスク) = 料理の注文
シングルコア(1人の料理人):
- 1つずつ順番に料理を作る
- パスタを作り終わってから、次のピザを作る
- 注文が多いと待ち時間が長い
マルチコア(複数の料理人):
- 複数の料理を同時に作れる
- Aさんがパスタ、Bさんがピザを同時に調理
- 待ち時間が短くなる
つまり、コア数 = 同時に働ける人数なんですね。
物理コアと論理コア
ここで重要な概念が出てきます。
物理コア(Physical Core):
- 実際にCPUチップ内に存在するコア
- 本物の演算装置
- 4コアCPUなら、物理的に4つのコアがある
論理コア(Logical Core):
- OSから見えるコアの数
- 後で説明する「ハイパースレッディング」で増える
- 4コアCPUでも、8論理コアとして認識されることがある
スレッドとは?コアとの違い
スレッドの定義
スレッド(Thread)とは、プログラムの実行単位のことです。
ちょっと難しいので、もっと簡単に言うと:
スレッド = CPUコアが同時に処理できる仕事の数
1つのコアが、1つまたは2つのスレッドを処理できます。
料理人の「手」で例えると
先ほどの料理人の例を続けましょう。
スレッド = 料理人の手
通常の料理人(1コア1スレッド):
- 両手を使って1つの料理に集中
- パスタを茹でている間は、他のことはしない
- 効率:普通
器用な料理人(1コア2スレッド):
- パスタを茹でている間に、別の料理の下ごしらえをする
- 待ち時間を有効活用
- 効率:良い
つまり、スレッド数が多い = 同時進行できる仕事が増えるということです。
なぜコア数とスレッド数が違うの?
ここが最も混乱しやすいポイントです。
答え:1つのコアが2つのスレッドを処理できる技術があるから
この技術の名前は:
- Intel:ハイパースレッディング(Hyper-Threading、HT)
- AMD:同時マルチスレッディング(Simultaneous Multi-Threading、SMT)
仕組みは基本的に同じです。
ハイパースレッディング(SMT)の仕組み
ハイパースレッディングとは
ハイパースレッディングとは、1つの物理コアを、2つの論理コアとして動かす技術です。
通常のCPU:
1物理コア = 1論理コア = 1スレッド処理
ハイパースレッディング対応CPU:
1物理コア = 2論理コア = 2スレッド処理
なぜ2倍の処理ができるの?
「1つのコアが2つの仕事を同時にできるなんて、そんなうまい話があるの?」
と思いますよね。実は、完全に2倍にはなりません。
仕組み:
CPUは実際に計算している時間より、待っている時間の方が長いんです。
待ち時間が発生する理由:
- メモリからデータが届くのを待つ
- 前の計算結果を待つ
- 分岐予測が外れて待つ
ハイパースレッディングの工夫:
- スレッドAが待ち時間に入る
- その間にスレッドBの処理をする
- スレッドBが待ち時間に入る
- その間にスレッドAの続きを処理する
待ち時間を有効活用することで、実質的に1.3~1.5倍程度の性能向上が得られます。
2倍にならない理由
共有するリソース:
- 演算器(ALU、FPUなど)は1つ
- キャッシュメモリも共有
- 完全に独立した2つのコアではない
例えるなら:
- 2人の料理人が1つのコンロを共有している状態
- 同時に炒め物は1つしかできない
- でも、片方が煮込んでいる間に、もう片方が切る作業をする
- 完全に2倍の速度にはならないが、1.5倍くらいにはなる
スペック表の見方
例1:Intel Core i5-13600K
14コア20スレッド
内訳:
- Pコア(高性能):6コア12スレッド(HT対応)
- Eコア(高効率):8コア8スレッド(HT非対応)
例2:AMD Ryzen 7 7700X
8コア16スレッド
- 8物理コア
- SMTで2倍の論理コア
例3:Apple M3
8コア8スレッド
- 4高性能コア + 4高効率コア
- ハイパースレッディング非対応
コア数とスレッド数の表記パターン
実際の製品で、よくある表記パターンを見てみましょう。
パターン1:コア数 = スレッド数
例:4コア4スレッド
意味:
- 4つの物理コア
- ハイパースレッディング非対応
- 同時に4つのスレッドを処理
該当CPU:
- 古いCore i3シリーズ
- 一部のRyzen 3
- AppleのMシリーズ
パターン2:コア数 × 2 = スレッド数
例:6コア12スレッド
意味:
- 6つの物理コア
- ハイパースレッディング対応
- 同時に12スレッドを処理(効率的に)
該当CPU:
- Core i5、i7の多くのモデル
- Ryzen 5、Ryzen 7の多く
パターン3:混在型(Intelの最新世代)
例:14コア20スレッド
意味:
- Pコア(Performance):6コア12スレッド
- Eコア(Efficient):8コア8スレッド
- 合計:14コア20スレッド
該当CPU:
- Intel第12世代以降(Alder Lake、Raptor Lake)
- Core i5、i7、i9の一部
パターン4:大量コア(サーバー/ワークステーション)
例:64コア128スレッド
意味:
- 64の物理コア
- SMT対応で128スレッド
- 超並列処理が可能
該当CPU:
- AMD Ryzen Threadripper
- EPYC(サーバー用)
実際の性能への影響

コア数とスレッド数は、実際の使用感にどう影響するのでしょうか?
シングルスレッド性能
1つのコアの処理能力です。
重要な場面:
- ゲーム(特に物理演算)
- 古いソフトウェア
- 単純な計算タスク
例:
- 8コア8スレッドのApple M3
- 4コア8スレッドのCore i3
- シングルスレッド性能が高ければ、M3の方が速い場面も
マルチスレッド性能
複数のコアを使った処理能力です。
重要な場面:
- 動画エンコード
- 3Dレンダリング
- 写真の一括編集
- プログラムのコンパイル
例:
- 16コア32スレッドのRyzen 9
- 8コア16スレッドのCore i7
- コア数が多いRyzen 9の方が圧倒的に速い
ハイパースレッディングの効果
用途によって効果が変わります。
効果が大きい場面(30~50%向上):
- 動画編集
- 3Dレンダリング
- データベース処理
- 仮想マシンの実行
効果が小さい場面(5~15%向上):
- ゲーム
- ブラウジング
- 文書作成
逆効果の場合(-5~0%):
- 超高速なメモリアクセスが必要な処理
- キャッシュを大量に使う科学計算
タスクマネージャーで確認
Windows:
- Ctrl + Shift + Esc でタスクマネージャー起動
- 「パフォーマンス」タブ → CPU
- 「論理プロセッサ」の数がスレッド数
- グラフの個別表示で各コアの使用率が見える
例:
- 8コア16スレッドのCPU
- 16個のグラフが表示される
用途別:必要なコア数とスレッド数
では、あなたにはどれくらいのコア数が必要なのでしょうか?
軽い作業(ブラウジング、文書作成)
推奨:2~4コア
理由:
- 軽い作業はシングルスレッドが主体
- コア数より、クロック周波数が重要
- 2コア4スレッドでも十分快適
おすすめCPU:
- Intel Core i3
- AMD Ryzen 3
- Apple M1(8コア)
一般的な使用(軽いゲーム、写真編集)
推奨:4~6コア
理由:
- マルチタスクにも対応
- 軽めのクリエイティブ作業もOK
- コスパが良い
おすすめCPU:
- Intel Core i5(6コア12スレッド)
- AMD Ryzen 5(6コア12スレッド)
ゲーミング(最新ゲームを快適に)
推奨:6~8コア
理由:
- 最新ゲームは6コア以上を推奨
- バックグラウンドタスクも考慮
- シングルスレッド性能も重要
おすすめCPU:
- Intel Core i5、i7(6~8Pコア)
- AMD Ryzen 5、Ryzen 7(6~8コア)
クリエイティブ作業(動画編集、3D制作)
推奨:8~16コア
理由:
- レンダリングはコア数が多いほど速い
- 動画エンコードは完全並列処理
- マルチスレッド性能が直結
おすすめCPU:
- Intel Core i7、i9(8~24コア)
- AMD Ryzen 7、Ryzen 9(8~16コア)
プロフェッショナル(大規模レンダリング、開発)
推奨:16コア以上
理由:
- 時間 = お金
- コア数が多ければ作業時間が大幅短縮
- 仮想マシンやコンテナも快適
おすすめCPU:
- Intel Core i9(24コア32スレッド)
- AMD Ryzen 9(16コア32スレッド)
- Threadripper(64コア128スレッド)
サーバー・データセンター
推奨:32~128コア
理由:
- 大量の同時接続を処理
- 仮想化環境の運用
- コア数 = 収益性
おすすめCPU:
- AMD EPYC(最大96コア192スレッド)
- Intel Xeon(最大60コア120スレッド)
実際のCPU製品比較
具体的な製品で比較してみましょう。
エントリーレベル
Intel Core i3-13100:
- 4コア8スレッド
- ベースクロック:3.4GHz
- 用途:日常作業、軽いゲーム
- 価格帯:1.5万円前後
AMD Ryzen 3 4100:
- 4コア8スレッド
- ベースクロック:3.8GHz
- 用途:日常作業、軽作業
- 価格帯:1万円前後
ミドルレンジ(人気ゾーン)
Intel Core i5-13600K:
- 14コア20スレッド(6P + 8E)
- ベースクロック:3.5GHz
- 用途:ゲーミング、マルチタスク
- 価格帯:4~5万円
AMD Ryzen 5 7600X:
- 6コア12スレッド
- ベースクロック:4.7GHz
- 用途:ゲーミング、軽いクリエイティブ
- 価格帯:3~4万円
ハイエンド
Intel Core i9-13900K:
- 24コア32スレッド(8P + 16E)
- ベースクロック:3.0GHz
- 用途:ハイエンドゲーミング、プロ作業
- 価格帯:7~9万円
AMD Ryzen 9 7950X:
- 16コア32スレッド
- ベースクロック:4.5GHz
- 用途:クリエイティブ、開発、ゲーミング
- 価格帯:7~9万円
ノートPC用
Intel Core i7-13700H:
- 14コア20スレッド
- ベースクロック:2.4GHz
- 用途:モバイルワークステーション
AMD Ryzen 7 7840HS:
- 8コア16スレッド
- ベースクロック:3.8GHz
- 用途:高性能ノートPC
コア数が多ければ多いほど良い?
「じゃあ、コア数は多ければ多いほど良いの?」
実は、そうとも限りません。
コア数が多すぎると起きる問題
問題1:コストが高い
- 16コアのCPUは8コアの2倍の価格
- でも性能は2倍にならない
- コスパが悪化
問題2:消費電力と発熱
- コアが多いと消費電力も増える
- 冷却が大変
- 電気代も上がる
問題3:使いこなせない
- 普段使いでは2~4コアしか使わない
- 宝の持ち腐れ
- オーバースペック
問題4:シングルスレッド性能が犠牲に
- コアが多いと、1コアあたりのクロック周波数が下がることも
- ゲームでは逆効果の可能性
最適なコア数を選ぶポイント
1. 用途を明確にする
- 何に使うのか
- どんなソフトを動かすのか
2. 予算を決める
- 無理して高性能CPUを買う必要はない
- ミドルレンジで十分な場合が多い
3. 将来性を考える
- 3~5年後も使えるか
- ソフトウェアの進化も予測
4. 他のパーツとのバランス
- GPUは?メモリは?
- CPUだけ高性能でも意味がない
スマートフォンとPCの違い
スマホのCPUも「8コア」と書かれていますが、PCとは少し違います。
big.LITTLE / ハイブリッドアーキテクチャ
スマホのCPU構成:
高性能コア:4コア(高速だが電力大)
高効率コア:4コア(低速だが省電力)
合計:8コア
使い分け:
- 軽い作業:高効率コアだけ使う(省電力)
- 重い作業:高性能コアも動員(高速)
- バッテリー寿命と性能のバランス
IntelのPコアとEコア
Intel第12世代以降も似た構成:
Pコア(Performance):高性能、HT対応
Eコア(Efficient):高効率、HT非対応
Core i9-13900K の例:
- Pコア:8コア16スレッド
- Eコア:16コア16スレッド
- 合計:24コア32スレッド
なぜこういう設計に?
理由:
- 消費電力の削減
- 発熱の抑制
- 全てのコアを高性能にすると電力・発熱が問題に
- 用途に応じた最適配分
よくある質問と回答
Q. 4コア8スレッドと8コア8スレッド、どちらが速い?
基本的には8コア8スレッドの方が速いです。
理由:
- 物理コアが多い方が基本性能は高い
- ハイパースレッディングは1.3~1.5倍の性能向上
- 4コア × 1.5倍 = 6コア相当 < 8コア
ただし:
- クロック周波数も重要
- アーキテクチャ(世代)の違いも影響
- 用途によって逆転することもある
Q. ゲームにはコア数とスレッド数、どちらが重要?
シングルスレッド性能が最も重要です。
理由:
- 多くのゲームは4~6コアまでしか使わない
- 1コアの速度が速い方が有利
- 16コアあっても使いきれない
ただし:
- 最新ゲームは8コアを推奨することも
- バックグラウンドタスク(配信など)を考慮すると6~8コアが理想
Q. ハイパースレッディングはオフにした方が速い?
通常はオンのままで問題ありません。
オフにした方が良い場合:
- 超高速なメモリアクセスが必要な特殊な計算
- キャッシュの取り合いが問題になる科学計算
- 一部の競技用ゲーム設定(非常にレア)
99%の用途ではオンが有利です。
Q. スレッド数が多いと電気代は高くなる?
直接的な関係はありません。
消費電力に影響する要素:
- 実際の負荷(使用率)
- クロック周波数
- 電圧
- アーキテクチャの効率
実際:
- アイドル時は低消費電力
- 高負荷時は消費電力が増える
- スレッド数よりも、実際の使い方が重要
Q. ノートPCの8コアとデスクトップの8コア、性能は同じ?
全く違います。
ノートPC用:
- ベースクロックが低い(1.8~2.5GHz)
- TDPが低い(15~45W)
- 発熱対策のため性能を抑えている
デスクトップ用:
- ベースクロックが高い(3.0~4.5GHz)
- TDPが高い(65~125W)
- 冷却能力があるため全力で動ける
実際の性能差:
デスクトップの方が1.5~2倍速いことも珍しくない。
Q. コア数は後から増やせますか?
いいえ、増やせません。
理由:
- コア数はCPUに物理的に組み込まれている
- 変更するにはCPU自体を交換するしかない
選び方のコツ:
- 最初から余裕を持ったコア数を選ぶ
- ただし、過剰スペックは避ける
- 3~5年後の用途も考える
Q. 仮想コアって何ですか?
論理コアの別名です。
同じ意味の用語:
- 論理コア(Logical Core)
- 仮想コア(Virtual Core)
- 論理プロセッサ(Logical Processor)
すべて同じものを指しています。
まとめ:コア数とスレッド数の正しい理解
CPUのコア数とスレッド数について、基本から実用まで解説してきました。
この記事のポイント:
✓ コア数 = 物理的な演算装置の数(料理人の数)
✓ スレッド数 = 同時に処理できる仕事の数(料理人の手の数)
✓ ハイパースレッディング/SMTで1コアが2スレッド処理できる
✓ 性能は約1.3~1.5倍になる(完全に2倍ではない)
✓ 用途によって必要なコア数は異なる
✓ コア数が多ければ良いわけではない(コスパと消費電力)
✓ シングルスレッド性能も重要(特にゲーム)
✓ 物理コアの数が多い方が基本的に有利
最も大切なこと:
CPUを選ぶ時、コア数だけでなく、クロック周波数、世代(アーキテクチャ)、用途のバランスを考えることが重要です。
数字だけに惑わされず、総合的に判断しましょう。
今日から実践すること:
- 自分のCPUのコア数とスレッド数を確認する(タスクマネージャーで)
- よく使うソフトが何コア使っているか観察する
- 次にPCを買う時、用途に合ったコア数を選ぶ
- 「○○コア○○スレッド」の表記を正しく理解する
コア数とスレッド数の違いを理解すれば、CPUのスペック表が読めるようになりますよ!

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