「うちの会社のシステム、古くて使いづらいんだよね…」
「新しい機能を追加したいのに、昔のシステムが足を引っ張ってる」
こんな悩みを抱えている企業は、実はとても多いんです。
この記事では、レガシーシステムとは何か、そしてなぜ企業にとって大きな問題になるのかを、IT初心者の方にも分かりやすく解説します。
専門用語はできるだけ避けて、実際の例を交えながら説明していきますね。
最後まで読めば、レガシーシステムの本質と、どう向き合うべきかが見えてくるはずです。
レガシーシステムとは?基本を理解しよう

レガシーシステムの定義
レガシーシステム(Legacy System)とは、長年使い続けてきた古い情報システムのことです。
「レガシー(Legacy)」は英語で「遺産」や「受け継がれたもの」という意味があります。
つまり、過去から引き継がれてきた、ちょっと古めかしいITシステムということですね。
どれくらい「古い」とレガシーシステムなの?
明確な基準はありませんが、一般的には以下のような特徴があります:
技術的な古さ
- 10年以上前の技術で作られている
- 現在ではほとんど使われていないプログラミング言語で開発されている
- 古いハードウェア(サーバーやコンピューター)上で動いている
サポート面での古さ
- メーカーのサポートが終了している
- 開発した会社がすでに存在しない
- システムを理解している技術者がいない
機能面での古さ
- 現在のビジネスニーズに合っていない
- スマートフォンに対応していない
- クラウドサービスと連携できない
具体例を挙げると、1990年代や2000年代初頭に導入された基幹システムなどがレガシーシステムの典型です。
なぜレガシーシステムが問題なのか?
「古くても動いているなら問題ないのでは?」と思うかもしれません。
でも実は、レガシーシステムには多くの深刻な問題が潜んでいます。
問題1:維持コストが高い
古いシステムを動かし続けるには、想像以上にお金がかかります。
具体的なコスト:
- 古いサーバーやハードウェアの維持費
- 専門知識を持つ技術者への高額な報酬
- システムが止まらないための24時間監視体制
- トラブル対応のための緊急出動費用
新しいシステムなら月10万円で済むところが、レガシーシステムでは月50万円かかる、なんてことも珍しくありません。
問題2:セキュリティリスクが高い
これは最も深刻な問題です。
古いシステムはセキュリティの脆弱性(ぜいじゃくせい)、つまりハッカーに狙われやすい弱点を抱えています。
なぜセキュリティが弱いのか:
- 最新のセキュリティ対策が適用できない
- メーカーがセキュリティパッチ(修正プログラム)を提供していない
- 暗号化技術が古く、簡単に破られてしまう
実際に、レガシーシステムの脆弱性を突かれて、顧客情報が流出した事例は数多くあります。
問題3:新しい技術と連携できない
現代のビジネスでは、様々なシステムを連携させることが当たり前になっています。
例えば:
- クラウドサービス(Google Workspace、Microsoft 365など)
- スマートフォンアプリ
- AI(人工知能)ツール
- オンライン決済システム
でもレガシーシステムは、こうした新しい技術と連携するのが非常に難しいんです。
結果として、業務効率が上がらず、競争力も失われていきます。
問題4:システムを理解している人がいない
これは「ブラックボックス化」と呼ばれる問題です。
よくあるケース:
- システムを作った技術者が退職してしまった
- 詳細な設計書が残っていない
- プログラムコードが複雑すぎて誰も理解できない
こうなると、ちょっとした修正をするだけでも大変な時間とコストがかかってしまいます。
問題5:ビジネスの変化に対応できない
市場環境や顧客ニーズは日々変化しています。
新しいサービスを始めたい、業務プロセスを改善したい、と思っても、レガシーシステムがボトルネック(障害)になってしまいます。
具体例:
- オンライン予約システムを追加したいのにできない
- 在庫管理をリアルタイムにしたいのに無理
- スマホ対応のアプリを作りたいけど連携できない
結果として、デジタルトランスフォーメーション(DX)の足かせになってしまうんですね。
日本企業が抱えるレガシーシステムの現状
「2025年の崖」問題
経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では、「2025年の崖」という警告が出されました。
これは何かというと:
「2025年までに既存のレガシーシステムを刷新できなければ、日本企業は年間最大12兆円の経済損失を被る可能性がある」
という予測です。
つまり、レガシーシステムの問題は、個々の企業だけでなく、日本経済全体の大きな課題になっているということなんです。
なぜ日本企業はレガシーシステムが多いのか?
実は日本企業には、レガシーシステムを抱えている会社が特に多いと言われています。
主な理由:
1. 高度経済成長期に大量のシステムを構築した
- 1980年代~2000年代に多くの企業がITシステムを導入
- 当時の技術で作られたシステムが今も使われている
2. カスタマイズが複雑すぎる
- 日本企業は自社の業務に合わせて細かくシステムをカスタマイズする傾向がある
- その結果、システムが複雑化して刷新が困難に
3. 「動いているものは触るな」という考え方
- トラブルを恐れて現状維持を選んでしまう
- 投資対効果が見えにくく、経営層の理解が得られにくい
レガシーシステムを刷新する方法
それでは、具体的にレガシーシステムをどう刷新すればいいのでしょうか?
主な方法を4つご紹介します。
方法1:リプレース(置き換え)
最も根本的な解決策です。
古いシステムを丸ごと新しいシステムに置き換えます。
メリット:
- 最新技術を活用できる
- セキュリティリスクが大幅に低減
- 長期的なコスト削減につながる
デメリット:
- 初期投資が大きい
- 移行期間中は業務に影響が出る可能性がある
- 失敗すると会社の存続に関わることも
向いているケース:
- システムが非常に古く、維持が限界に達している
- ビジネスモデルを大きく変えたい
- 十分な予算と時間が確保できる
方法2:モダナイゼーション(近代化)
既存システムの良い部分は残しつつ、古い部分だけを最新技術に更新する方法です。
具体的なアプローチ:
- ユーザーインターフェース(画面)だけを新しくする
- 古いプログラミング言語を新しい言語に書き換える
- クラウドサービスへ移行する(クラウドマイグレーション)
メリット:
- リプレースより低コスト
- 業務への影響を最小限に抑えられる
- 段階的に進められる
デメリット:
- 根本的な問題解決にならない場合がある
- 技術的な難易度が高い
- 結局は全面刷新が必要になることも
向いているケース:
- 予算が限られている
- 業務への影響を最小限にしたい
- システムの一部は今後も使い続けたい
方法3:ラッピング(包み込み)
レガシーシステムはそのまま残し、新しいシステムで「包み込む」方法です。
例えば、古いシステムの上に新しいWebアプリケーションを作り、ユーザーは新しい画面から操作できるようにします。
メリット:
- 最もリスクが低い
- 短期間で実現できる
- 古いシステムを動かし続けられる
デメリット:
- 根本的な解決にはならない
- システムが二重構造になり複雑化する
- 長期的なコスト削減効果は限定的
向いているケース:
- とにかく早く改善したい
- 古いシステムを止められない事情がある
- 暫定対応として一時的に使いたい
方法4:スクラッチ開発(ゼロから構築)
完全にゼロから新しいシステムを開発する方法です。
メリット:
- 自社のニーズに完璧に合わせられる
- 最新技術を自由に選択できる
- 将来の拡張性も考慮できる
デメリット:
- 開発期間が非常に長い(数年単位)
- コストが最も高額
- 開発失敗のリスクが高い
向いているケース:
- 既存のパッケージソフトでは要件を満たせない
- 独自のビジネスモデルを持っている
- 十分な開発体制と予算がある
レガシーシステムとの向き合い方
すぐに刷新できない場合は?
現実的には、すぐに全面刷新できない企業も多いでしょう。
そんな場合でも、できることはあります。
今すぐできる対策:
1. 現状を把握する
- どんなシステムがあるのか一覧を作る
- それぞれの年式や状態を調べる
- 技術的負債(将来の問題)を可視化する
2. リスク評価を行う
- セキュリティリスクを洗い出す
- 事業継続に影響する部分を特定する
- 優先順位を明確にする
3. 最低限の保守を継続する
- セキュリティパッチは必ず適用する
- バックアップ体制を万全にする
- 障害時の対応手順を整備する
4. 刷新計画を立てる
- 3年後、5年後のロードマップを作る
- 必要な予算を試算する
- 経営層への提案資料を準備する
新しいシステムも将来のレガシーになる
忘れてはいけないのが、今導入する新しいシステムも、いずれはレガシーになるという事実です。
レガシー化を防ぐために:
- 標準的な技術を採用する(特殊な技術は避ける)
- ドキュメント(設計書や手順書)をしっかり残す
- 定期的な見直しとアップデートを計画に組み込む
- クラウドサービスなど、常に最新が維持される仕組みを選ぶ
よくある質問と回答
Q. クラウド移行はレガシーシステム問題の解決になりますか?
部分的には有効ですが、万能薬ではありません。
クラウド移行のメリット:
- ハードウェアの維持コスト削減
- セキュリティアップデートが自動
- 拡張性が高い
ただし、古いシステムをそのままクラウドに移すだけでは、根本的な問題は解決しません。
業務プロセスの見直しとセットで取り組むことが重要です。
まとめ:レガシーシステムとの賢い付き合い方
レガシーシステムについて、基本から対処法まで解説してきました。
この記事のポイント:
✓ レガシーシステムとは、長年使い続けてきた古い情報システムのこと
✓ 維持コスト、セキュリティリスク、技術連携の困難さなど、多くの問題を抱えている
✓ 日本企業は特にレガシーシステムの問題が深刻(2025年の崖)
✓ 刷新方法には、リプレース、モダナイゼーション、ラッピングなどがある
✓ 成功のカギは、経営層のコミット、段階的なアプローチ、業務改革の同時実行
✓ すぐに刷新できなくても、現状把握とリスク管理は必ず行う
最も大切なこと:
レガシーシステムの問題を放置すると、企業の競争力低下だけでなく、最悪の場合は事業継続が困難になる可能性があります。
「まだ動いているから大丈夫」と油断せず、今から計画的に取り組むことが重要です。
次のステップ:
- 自社のシステムがレガシーかどうかチェックする
- 技術的負債の可視化を行う
- 刷新のロードマップを作成する
- 経営層へ問題提起と提案を行う
デジタル時代を生き抜くために、レガシーシステムと賢く向き合っていきましょう!

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