Rocky Linux vs AlmaLinux 徹底比較ガイド:どちらを選ぶべき?CentOS後継の決定版

Linux

長年、企業のサーバーで使われてきたCentOS。その突然のサポート終了発表で、多くのシステム管理者が困惑しました。

「これからどのLinuxを使えばいいんだろう?」

そんな声に応えるように登場したのが、Rocky LinuxAlmaLinuxという2つのLinuxディストリビューションです。どちらもCentOSの「精神的後継者」として開発され、企業のサーバー環境で安心して使える選択肢となっています。

でも、2つのディストリビューションは何が違うのでしょうか?どちらを選べばいいのでしょうか?

この記事では、Rocky LinuxとAlmaLinuxの違いを分かりやすく比較しながら、それぞれの特徴や選び方を解説していきます。


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  1. Rocky LinuxとAlmaLinuxって何?基本をおさらい
    1. Rocky Linux
    2. AlmaLinux
    3. 共通点:どちらもRHEL互換
  2. CentOSに何が起きたのか?誕生の背景
    1. CentOSの歴史
    2. 突然の方針転換(2020年12月)
    3. CentOS Streamとは?
    4. コミュニティの反応
  3. Rocky LinuxとAlmaLinuxの違い:主要な比較ポイント
    1. 開発体制と運営組織
    2. リリーススピード
    3. サポート期間
    4. パフォーマンス
    5. パッケージ管理
    6. セキュリティ
  4. コミュニティとエコシステム
    1. Rocky Linuxのコミュニティ
    2. AlmaLinuxのコミュニティ
    3. ドキュメントとサポート
  5. 互換性とソフトウェア対応
    1. RHEL互換性
    2. 主要ソフトウェアの対応
    3. クラウドプロバイダー対応
  6. どちらを選ぶべき?シチュエーション別ガイド
    1. Rocky Linuxを選ぶべき場合
    2. AlmaLinuxを選ぶべき場合
    3. 実際のところ
  7. CentOSからの移行方法
    1. 事前準備
    2. Rocky Linuxへの移行
    3. AlmaLinuxへの移行
    4. 移行後の確認
  8. 両ディストリビューションの最新動向
    1. Red Hatのソースコード公開制限
    2. Rocky LinuxとAlmaLinuxの対応
  9. 企業導入事例
    1. Rocky Linuxの導入例
    2. AlmaLinuxの導入例
  10. パフォーマンス比較:実測データ
    1. Webサーバー性能
    2. データベース性能
    3. コンテナ性能
    4. 結論
  11. 将来性と長期的な視点
    1. 持続可能性
    2. 開発の継続性
    3. エコシステムの成長
  12. よくある質問
    1. 途中で切り替えられる?
    2. 商用利用は本当に無料?
    3. セキュリティは大丈夫?
    4. CentOS Streamとの違いは?
  13. まとめ:あなたに合った選択を

Rocky LinuxとAlmaLinuxって何?基本をおさらい

まず、それぞれの基本的な特徴を確認しましょう。

Rocky Linux

Rocky Linuxは、CentOSの共同創設者であるGregory Kurtzer氏が立ち上げたプロジェクトです。

特徴:

  • CentOS創設者が開発
  • コミュニティ主導のプロジェクト
  • RHEL(Red Hat Enterprise Linux)との完全互換を目指す
  • 無料で商用利用可能

名前の由来:
CentOSの共同創設者Rocky McGaugh氏への敬意を込めて命名されました。

初版リリース:2021年6月

AlmaLinux

AlmaLinuxは、CloudLinuxという企業が中心となって開発しているディストリビューションです。

特徴:

  • CloudLinux社がスポンサー
  • 非営利のAlmaLinux OS Foundationが運営
  • RHEL互換を目指す
  • 無料で商用利用可能

名前の由来:
ラテン語で「魂」を意味する”Alma”から。Linuxコミュニティの魂を受け継ぐという意味が込められています。

初版リリース:2021年3月

共通点:どちらもRHEL互換

重要なポイントとして、Rocky LinuxもAlmaLinuxも、RHELとの完全互換を目指しているという点は同じです。

つまり、RHELで動くソフトウェアは、基本的にどちらでも動作します。パッケージの構成やファイルの配置も、RHELと同じように設計されているんです。


CentOSに何が起きたのか?誕生の背景

なぜRocky LinuxとAlmaLinuxが生まれたのか、その背景を知っておきましょう。

CentOSの歴史

CentOS(Community Enterprise Operating System)は、RHELのソースコードをベースに作られた無料のLinuxディストリビューションでした。

人気の理由:

  • RHELと互換性がある
  • 完全無料
  • 安定性が高い
  • 長期サポート

多くの企業や組織が、「RHELの品質を無料で使える」としてCentOSを採用していました。

突然の方針転換(2020年12月)

Red Hat社は、CentOSの方向性を大きく変更すると発表しました。

主な変更点:

  • CentOS 8のサポートを2029年から2021年末に短縮
  • CentOS 9以降は開発しない
  • 代わりにCentOS Streamに移行

CentOS Streamとは?

CentOS Streamは、RHELの「アップストリーム」(開発版)という位置づけです。

従来のCentOS:
RHEL → CentOS(RHELの後追い版)

新しいCentOS Stream:
Fedora → CentOS Stream → RHEL(RHELの開発版)

つまり、安定版ではなく、テスト版のような性質になってしまったんです。

コミュニティの反応

企業のサーバーでは、安定性が最重要。開発版のような位置づけのCentOS Streamは受け入れられませんでした。

「これまで通り、安定したRHEL互換の無料Linuxが必要だ!」

そんな声に応えて、Rocky LinuxとAlmaLinuxが立ち上がったのです。


Rocky LinuxとAlmaLinuxの違い:主要な比較ポイント

具体的な違いを見ていきましょう。

開発体制と運営組織

Rocky Linux

  • Rocky Enterprise Software Foundation(非営利団体)が運営
  • 完全にコミュニティ主導
  • スポンサー企業はあるが、特定企業に依存しない設計

AlmaLinux

  • AlmaLinux OS Foundation(非営利団体)が運営
  • CloudLinux社が主要スポンサー
  • ただし、2023年以降はコミュニティ主導の体制を強化

リリーススピード

AlmaLinux
RHELの新バージョンが出ると、比較的早くリリースされます。初期は特に迅速でした。

Rocky Linux
慎重にテストを重ねてからリリースする傾向があります。安定性を重視した姿勢ですね。

実際の差は数日から数週間程度で、実用上は大きな問題にはなりません。

サポート期間

どちらもRHELと同じサポート期間を提供しています。

  • メジャーバージョンごとに約10年間
  • セキュリティアップデートを提供
  • バグ修正を継続

例:Rocky Linux 9 / AlmaLinux 9は、2032年頃までサポート予定

パフォーマンス

ベンチマークテストでは、両者に有意な性能差はほとんどありません

どちらもRHELのソースコードをベースにしているため、パフォーマンス特性も似ているんです。実際の業務での体感差もほぼないと言えます。

パッケージ管理

どちらもDNF(Dandified YUM)というパッケージマネージャーを使用します。

利用可能なリポジトリ:

  • EPEL(Extra Packages for Enterprise Linux)
  • RPM Fusion
  • その他のサードパーティリポジトリ

基本的に同じパッケージが使えます。

セキュリティ

Rocky Linux

  • セキュリティアドバイザリを公開
  • 迅速なセキュリティパッチ提供
  • コミュニティによる監視

AlmaLinux

  • TuxCare(CloudLinux傘下)によるライブパッチサービス(有償)
  • セキュリティパッチの提供
  • 企業バックアップによる安定供給

どちらも高いセキュリティレベルを維持しています。


コミュニティとエコシステム

それぞれのコミュニティの特徴を見てみましょう。

Rocky Linuxのコミュニティ

特徴:

  • CentOSの「精神」を受け継ぐという強い想い
  • グラスルーツ(草の根)的なコミュニティ
  • 多様なスポンサー企業

スポンサー企業(一部):

  • AWS
  • Google Cloud
  • Microsoft Azure
  • その他多数

AlmaLinuxのコミュニティ

特徴:

  • CloudLinux社の実績と安定性
  • ビジネス寄りのサポート
  • 2023年以降、コミュニティガバナンスを強化

スポンサー企業(一部):

  • CloudLinux
  • cPanel
  • その他多数

ドキュメントとサポート

Rocky Linux

  • 公式ドキュメントが充実
  • フォーラムやチャットで活発な議論
  • 英語が中心だが、コミュニティによる各国語翻訳も進行中

AlmaLinux

  • 詳細な公式ドキュメント
  • CloudLinux社による商用サポートも選択可能(有償)
  • 日本語含む多言語対応

互換性とソフトウェア対応

実際の業務で重要な互換性について見ていきます。

RHEL互換性

どちらもRHEL 100%互換を目指していますが、実際には微妙な違いがあります。

Rocky Linux
バイナリ互換性(実行ファイルレベルでの互換性)を重視しています。

AlmaLinux
同様にバイナリ互換を目指していますが、2023年にRed Hatがソースコード公開を制限してから、「ABIレベルでの互換性」を重視する方針に変更しました。

実用上の違い:
一般的な用途では、どちらを使っても問題なく動作します。

主要ソフトウェアの対応

Webサーバー:

  • Apache
  • Nginx
  • いずれも問題なく動作

データベース:

  • MariaDB
  • PostgreSQL
  • MySQL
  • すべて対応

コンテナ:

  • Docker
  • Podman
  • Kubernetes
  • 完全対応

制御パネル:

  • cPanel
  • Plesk
  • どちらも公式対応

クラウドプロバイダー対応

Rocky Linux:

  • AWS
  • Google Cloud
  • Microsoft Azure
  • Oracle Cloud
  • Digital Ocean

AlmaLinux:

  • AWS
  • Google Cloud
  • Microsoft Azure
  • Oracle Cloud
  • Digital Ocean

主要なクラウドプロバイダーでは、どちらも公式イメージが提供されています。


どちらを選ぶべき?シチュエーション別ガイド

実際の選択基準を示します。

Rocky Linuxを選ぶべき場合

CentOSの精神的後継を重視
CentOS創設者が立ち上げたプロジェクトという点に価値を感じる場合。

完全なコミュニティ主導を望む
特定企業への依存を避けたい場合。多様なスポンサーによる運営が魅力です。

長期的な安定性重視
慎重にテストされたリリースを好む場合。

実績あるスポンサーのバックアップ
AWS、Google、Microsoftなどの大手がスポンサーについている安心感。

AlmaLinuxを選ぶべき場合

迅速なリリースを重視
新しいRHELバージョンへの対応が早い点を評価する場合。

企業サポートのオプション
CloudLinux社による有償サポートが選べる点が魅力。

cPanelユーザー
cPanel社が推奨ディストリビューションに指定しています。

ライブパッチサービス
再起動なしでカーネルパッチを適用できるサービス(有償)が利用できます。

実際のところ

正直なところ、どちらを選んでも大きな問題はありません

共通点が多い:

  • RHEL互換性
  • 無料で商用利用可能
  • 長期サポート
  • 同じソフトウェアが動く
  • 主要クラウドで利用可能

選択のポイント:

  • 組織の方針や好み
  • 既存の知見やノウハウ
  • 周囲のコミュニティ
  • サポート体制の必要性

CentOSからの移行方法

既存のCentOSサーバーを移行する手順を紹介します。

事前準備

必須作業:

  1. 完全なバックアップを取る
  2. 重要なデータを別の場所にコピー
  3. ダウンタイムを確保
  4. 移行手順を事前にテスト環境で試す

Rocky Linuxへの移行

migrate2rockyツールを使用:

# ツールをダウンロード
curl https://raw.githubusercontent.com/rocky-linux/rocky-tools/main/migrate2rocky/migrate2rocky.sh -o migrate2rocky.sh

# 実行権限を付与
chmod +x migrate2rocky.sh

# 移行を実行
sudo ./migrate2rocky.sh -r

所要時間:
サーバーの規模にもよりますが、30分〜2時間程度。

AlmaLinuxへの移行

almalinux-deployツールを使用:

# ツールをダウンロード
curl -O https://raw.githubusercontent.com/AlmaLinux/almalinux-deploy/master/almalinux-deploy.sh

# 実行権限を付与
chmod +x almalinux-deploy.sh

# 移行を実行
sudo ./almalinux-deploy.sh

移行後の確認

チェック項目:

  • OSバージョンの確認:cat /etc/os-release
  • カーネルバージョン:uname -r
  • インストール済みパッケージ:rpm -qa
  • サービスの起動状態:systemctl status
  • ネットワーク設定
  • アプリケーションの動作確認

両ディストリビューションの最新動向

2023年以降の重要な変化を押さえておきましょう。

Red Hatのソースコード公開制限

2023年6月、Red Hat社はRHELのソースコードへのアクセスを制限すると発表しました。

影響:

  • GitLabでの公開ソースが非公開に
  • 有償サブスクリプション契約者のみがソースにアクセス可能

Rocky LinuxとAlmaLinuxの対応

Rocky Linux

  • CentOS Streamのソースコードを活用
  • SRPMの再配布を継続
  • RHEL互換性の維持を表明

AlmaLinux

  • CentOS Streamとの連携を強化
  • ABI互換性を重視する方針に変更
  • 独自の改善も追加する方向性

実用上の影響:
一般ユーザーや企業利用では、ほとんど影響はありません。両者ともRHEL互換を維持しています。


企業導入事例

実際にどんな組織が使っているのでしょうか。

Rocky Linuxの導入例

NASA
一部のシステムでRocky Linuxを採用していると報告されています。

教育機関
多くの大学や研究機関がCentOSからRocky Linuxへ移行しています。

ホスティング事業者
複数のWebホスティング会社が標準環境として採用。

AlmaLinuxの導入例

cPanel利用企業
cPanel推奨のため、多くのホスティング会社が採用しています。

CloudLinux顧客
CloudLinux社の既存顧客が自然に採用するケースが多いです。

金融・医療系企業
有償サポートオプションがある点を評価して採用。


パフォーマンス比較:実測データ

独立したベンチマークテストの結果を見てみましょう。

Webサーバー性能

Apache + PHP
Rocky Linux、AlmaLinux、RHEL 9の3つでベンチマークを実施した結果、性能差は誤差範囲内(±2%以内)でした。

データベース性能

MariaDB / PostgreSQL
トランザクション処理速度やクエリ応答時間に、有意な差は見られませんでした。

コンテナ性能

Docker / Podman
コンテナの起動時間、実行性能ともに同等でした。

結論

実用上の性能差はほぼゼロと言えます。どちらを選んでも、パフォーマンスで困ることはないでしょう。


将来性と長期的な視点

これから5年、10年先を考えた時、どちらが安心でしょうか。

持続可能性

Rocky Linux

  • 多様なスポンサーによる分散投資モデル
  • コミュニティの熱意が高い
  • ただし、特定企業のバックアップがない分、リスクもある

AlmaLinux

  • CloudLinux社の安定した資金力
  • ビジネスモデルが明確
  • ただし、スポンサー企業への依存度がやや高い

開発の継続性

どちらも長期的なコミットメントを表明しています。

  • 10年以上のサポート継続を約束
  • RHELが続く限り、互換ディストリビューションとして存続
  • 活発なコミュニティ活動

エコシステムの成長

Rocky Linux
大手クラウド事業者のサポートにより、エコシステムが急速に成長しています。

AlmaLinux
ホスティング業界での採用が多く、実績が積み上がっています。


よくある質問

実際によく聞かれる疑問に答えます。

途中で切り替えられる?

はい、可能です。Rocky LinuxとAlmaLinuxは相互に移行できます。

ただし、本番環境での切り替えは慎重に行い、必ずバックアップを取ってから実施してください。

商用利用は本当に無料?

はい、完全無料です。ライセンス料は一切かかりません。

ただし、有償サポートを受けたい場合は、別途契約が必要です(AlmaLinuxの場合)。

セキュリティは大丈夫?

どちらも、RHELと同等のセキュリティアップデートを提供しています。

企業のサーバーでも安心して使える品質です。

CentOS Streamとの違いは?

Rocky LinuxとAlmaLinuxは「安定版」、CentOS Streamは「開発版」という位置づけです。

本番環境にはRocky LinuxかAlmaLinuxを選ぶべきでしょう。


まとめ:あなたに合った選択を

Rocky LinuxとAlmaLinuxは、どちらも優れたRHEL互換ディストリビューションです。

この記事のポイント:

  • どちらもCentOSの後継として誕生
  • RHEL互換で無料の企業向けLinux
  • Rocky LinuxはCentOS創設者が開発、完全コミュニティ主導
  • AlmaLinuxはCloudLinux社がスポンサー、企業サポートあり
  • 性能差はほぼなく、どちらも高品質
  • 主要クラウドとソフトウェアに対応
  • CentOSからの移行ツールが用意されている
  • 長期サポート(約10年)を提供
  • どちらを選んでも実用上の問題はない

選択の基準:

  • コミュニティ重視ならRocky Linux
  • 企業サポート重視ならAlmaLinux
  • でも、実際はどちらでもOK

最も重要なのは、「選んだら、それを使い続ける」ことです。頻繁な切り替えは避け、安定した運用を心がけましょう。

CentOSの終了は残念でしたが、コミュニティの情熱によって2つの素晴らしい選択肢が生まれました。どちらを選んでも、安心してLinuxサーバーを運用できますよ!

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