パソコンの電源ボタンを押すと、画面が点いてWindowsやmacOSが起動しますよね。でも、その裏側で一体何が起こっているのか気になりませんか?
実は、ハードディスクやSSDの「一番最初の場所」に、パソコンを起動するための重要な情報が書き込まれているんです。それが今回お話しするMBR(Master Boot Record)という仕組みになります。
この記事では、MBRの役割から構造、そして最近主流になっている新しい方式まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。古いパソコンを使っている人も、新しいパソコンを買おうとしている人も、ぜひ最後まで読んでみてください。
MBRって何?基本をサクッと理解しよう

MBR(Master Boot Record)は、日本語に訳すと「マスターブートレコード」。
簡単に言えば、ストレージ(ハードディスクやSSD)の先頭部分に書き込まれている、パソコンを起動するための設計図のようなものです。
パソコンの電源を入れると、まずBIOS(バイオス)というプログラムが動き出します。このBIOSが真っ先に確認するのが、ストレージの最初にあるMBRなんですね。
MBRには主に2つの重要な情報が含まれています。
1. ブートコード
パソコンをどうやって起動するかという「手順書」が書かれています。
2. パーティションテーブル
ストレージがどんな区画に分かれているか、という「地図」のような情報です。
MBRの役割:パソコン起動の「司令塔」
MBRがなければ、パソコンは起動できません。それくらい重要な役割を担っているんです。
起動プロセスの流れ
パソコンが起動する時、次のような流れで処理が進みます。
- 電源ON → BIOSが起動
- BIOSがMBRを読み込む → ストレージの先頭512バイトを確認
- ブートコードを実行 → OSを起動するプログラムが動く
- OSが起動 → WindowsやLinuxなどが立ち上がる
つまり、MBRは「OSを起動するための最初の一歩」を提供している存在なんですね。
パーティション管理の要
もう一つの重要な役割が、パーティション情報の管理です。
パーティションとは、1つのストレージを複数の領域に分割したもの。例えば、500GBのハードディスクを「Cドライブ300GB」と「Dドライブ200GB」に分けるイメージですね。
MBRのパーティションテーブルには、こんな情報が記録されています。
- 各パーティションの開始位置
- パーティションのサイズ
- どのパーティションから起動するか
- パーティションの種類(NTFSやFAT32など)
MBRの構造:わずか512バイトの中身
MBRのサイズは、たったの512バイトしかありません。現代のスマホの写真が1枚で数MB(メガバイト)あることを考えると、驚くほど小さいですよね。
この512バイトは、次のように使われています。
ブートコード領域(446バイト)
最初の446バイトには、OSを起動するためのプログラムコードが格納されています。この部分が実際に実行されて、OSの読み込みが始まるんです。
パーティションテーブル(64バイト)
次の64バイトには、パーティション情報が記録されます。1つのパーティション情報は16バイトなので、最大4つのパーティションを登録できる計算です。
各パーティション情報には以下が含まれます。
- 起動可能フラグ(このパーティションから起動するか)
- パーティションのタイプ
- 開始位置と終了位置
- サイズ情報
ブートシグネチャ(2バイト)
最後の2バイトは「0x55AA」という固定値が入っています。これは「このMBRは正しいですよ」という印のようなものですね。BIOSはこの値を確認して、正常なMBRかどうかを判断します。
MBRの制限:古い技術ゆえの限界
MBRは1983年に登場した技術です。当時は十分な性能でしたが、今の時代には合わない制限がいくつかあります。
2TBの壁
MBRの最大の制限が、2TBまでのディスクサイズしか認識できないという点です。
これは、パーティションの位置やサイズを表すのに32ビットの数値を使っているため。32ビットで表現できる最大値と、セクタサイズ512バイトを掛け合わせると、約2.2TBが限界になってしまうんです。
最近は4TBや8TBのハードディスクも珍しくありません。MBRでは、こうした大容量ストレージの全領域を使えないんですね。
プライマリパーティションは4つまで
MBRでは、最大4つのプライマリパーティションしか作成できません。
「もっと細かく分割したい」という場合は、1つを拡張パーティションにして、その中に論理パーティションを作る必要があります。ちょっと複雑で、分かりにくい構造になってしまうんです。
データ保護が弱い
MBRの情報は、ストレージの最初の1箇所にだけ保存されています。もしこの部分が壊れてしまったら、パソコンは起動できなくなるんです。
バックアップが取りにくい構造なので、トラブルに弱いという欠点があります。
GPTとの違い:新旧世代の比較

MBRの後継として登場したのが、GPT(GUID Partition Table)という新しい方式です。
GPTの主な特徴
GPTは、MBRの制限を解消するために開発されました。
対応ディスクサイズ
GPTは理論上、9.4ZB(ゼタバイト)という天文学的なサイズまで対応できます。実用上は無制限と言っていいでしょう。
パーティション数
Windowsでは最大128個、Linuxでは制限なしのパーティションを作成可能です。MBRの4個制限とは比べものになりません。
データ保護
GPTはパーティション情報をディスクの複数箇所に保存します。
1箇所が壊れても、別の場所から復旧できる仕組みなんです。
UEFIとの組み合わせ
GPTは、BIOS の後継であるUEFI(ユーファイ)というシステムと組み合わせて使われます。
最近のパソコンはほとんどがUEFI+GPTの組み合わせ。起動が速く、セキュリティも強化されているんです。
実際の例で比較
古いパソコン(2012年以前が多い)
- BIOS + MBR
- 2TBまでのストレージ
- 起動に時間がかかる
新しいパソコン(2013年以降が多い)
- UEFI + GPT
- 大容量ストレージに対応
- 高速起動
- セキュアブート機能
MBRが今でも使われている場面
「古い技術なら、もう使われていないのでは?」と思うかもしれません。でも、実はまだMBRが活躍している場面もあるんです。
古いパソコンやOSとの互換性
Windows XPやWindows 7の古いバージョンなど、UEFI非対応のOSを使う場合は、MBRが必要です。古いパソコンを動かし続けたい時には、MBRの知識が役立ちます。
小容量のストレージ
USBメモリや古い小型SSD(128GB以下など)では、わざわざGPTにする必要がないケースもあります。MBRで十分な場合も多いんですね。
デュアルブート環境
WindowsとLinuxを1台のパソコンで使い分ける「デュアルブート」の設定では、MBRの知識が必要になることがあります。特に古いLinuxディストリビューションを使う場合は重要です。
MBRのトラブルと対処法

MBRが壊れると、パソコンが起動しなくなります。そんな時の対処法を知っておきましょう。
よくあるエラーメッセージ
MBRに問題があると、こんなメッセージが表示されることがあります。
- “Operating System not found”(OSが見つかりません)
- “Missing operating system”(OSが欠落しています)
- “Invalid partition table”(無効なパーティションテーブル)
これらが表示されたら、MBRに問題がある可能性が高いです。
Windowsでの修復方法
Windowsの場合、インストールディスクやリカバリディスクから起動して、コマンドプロンプトで修復できます。
注意: 具体的な修復手順は、お使いのWindowsバージョンや状況によって異なります。大切なデータがある場合は、専門家に相談することをおすすめします。
まとめ:MBRは縁の下の力持ち
MBR(Master Boot Record)は、パソコンを起動するための重要な仕組みです。
この記事のポイント:
- MBRはストレージの先頭512バイトに記録される起動情報
- ブートコードとパーティションテーブルを含んでいる
- 2TBまでのディスク、4つまでのパーティションという制限がある
- 新しいGPT方式が主流になりつつあるが、古いシステムではまだ現役
- MBRが壊れるとパソコンが起動しなくなる
新しいパソコンを買う時は、UEFI+GPTに対応しているものを選ぶのがおすすめです。でも、古いパソコンを使い続ける場合や、トラブルシューティングをする時には、MBRの知識が役立ちます。
普段は意識することのない「縁の下の力持ち」的な存在ですが、パソコンの仕組みを理解する上で、知っておいて損はない知識ですよ。
 
  
  
  
   
               
               
               
               
              

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