空中から「ヒューヒュー」という喘息のような不気味な音が聞こえてきたら、あなたはどうしますか?
それは風の音でも、動物の鳴き声でもありません。
目には見えない太古の怪物が、すぐそばを飛んでいる音かもしれないんです。
6億年も前から地球に潜む、この透明な捕食者は、かつて地球全土を支配していた恐るべき存在でした。
この記事では、クトゥルフ神話でも特に不気味な存在「盲目のもの」について、その正体や特徴、恐ろしい伝承をわかりやすく解説します。
概要

盲目のもの(もうもくのもの)は、クトゥルフ神話に登場する太古の地球外生命体です。
英語では「Flying Polyp(フライング・ポリープ)」、つまり「空飛ぶポリープ」と呼ばれています。ポリープというのはイソギンチャクやサンゴのような生物のことで、触手を持った筒状の体を持つ生き物を指すんですね。
この生物の最大の特徴は、なんといっても体が透明で人間には見えないということ。さらに翼もないのに空中を自在に飛び回り、強力な風を操って獲物を襲う、まさに悪夢のような存在なんです。
H.P.ラヴクラフトの小説『時間からの影』で初めて登場し、地球の歴史における重要な役割を果たした種族として描かれています。
系譜
盲目のものは、人類が誕生するはるか昔、約6億年前に外宇宙から地球に飛来しました。
地球支配の歴史
盲目のものたちの歴史は、壮大で恐ろしいものです。
- 6億年前:外宇宙から飛来し、地球を含む太陽系の4つの惑星を支配
- 太古の時代:地球上に無窓の塔の都市を築き、繁栄
- 大いなる種族との戦争:精神体種族「イースの大いなる種族」と激しく対立
- 地底への追放:大いなる種族に敗北し、地下世界へ追いやられる
- 復讐と衰退:長い年月の後に地上へ復活し、大いなる種族の肉体(円錐体生物)を滅ぼす
興味深いのは、盲目のものが完全に独立した種族だということ。クトゥルフ神話の他の邪神や旧支配者とは関係なく、独自の文明を築いていたんです。
一部の設定では「ロイガーノス」という固有名も付けられており、風の邪神ロイガーに仕える眷属として扱われることもあります。
姿・見た目
盲目のものの姿は、地球上のどんな生物とも似ていない、本当に異質な存在なんです。
基本的な外見
- 半ポリープ状の体:イソギンチャクのような筒状の柔らかい体
- 巨大なサイズ:成人男性の3〜4倍の大きさ(約5〜8メートル)
- 不可視の肉体:特殊な物質でできているため、通常は完全に透明
- 触手:5本1組の触手の束が複数生えている
- 呼吸器官:体の端に点在する不特定呼吸管
なぜ見えないの?
盲目のものの体は、物質とは異なる不可視の素材でできています。
これは単純な透明化ではなく、光を完全に透過する特殊な性質を持っているんです。ただし、獲物を捕まえた直後だけは、消化器官に入った獲物の影響で、一瞬だけ丸まった内臓が見えることがあるそうです。
面白いことに、彼らは「盲目」と呼ばれていますが、実際にはあらゆる物質的障壁を通り抜ける特殊な知覚を持っています。つまり、壁の向こうも地面の下も「見える」んですね。
特徴

盲目のものには、地球の生物には見られない恐るべき能力がいくつもあります。
主要な能力
1. 風の操作
- 強力な風を自在に操り、それを使って飛行
- この風は武器としても使用され、獲物を吹き飛ばしたり圧殺したりする
- 操る風は「異様」で「歪んだ」気流と形容される
2. 不可視化
- 全身を完全に透明にできる
- 部分的な不可視化も可能(例:触手だけ見えなくする)
- ただし、飛行中は呼吸器から「ヒューヒュー」という音が聞こえる
3. 物理法則を超えた移動
- 翼なしで空中を自在に飛行
- 形而上浮袋により、非物理空間をかすかに浮いている
弱点
無敵に思える盲目のものにも、実は弱点があります。
- 電気エネルギー:ある種の電気エネルギーを受けると破壊される
- 呼吸音:姿は見えなくても、喘息のような呼吸音で位置がバレる
- 不特定呼吸管:戦闘時に開く呼吸管を狙えば撃退できる
精神構造の異質性
最も恐ろしいのは、彼らの精神構造が完全に異質だということ。
あの精神交換を得意とする「大いなる種族」でさえ、盲目のものとは精神交換ができなかったんです。これは彼らの思考や意識が、地球上のどんな生命体とも根本的に違うことを意味しています。
伝承
盲目のものにまつわる伝承は、主に「大いなる種族」との壮絶な戦いの記録として残されています。
大いなる種族との永遠の戦い
第一次戦争
太古の地球で、盲目のものは「半植物的な円錐体生物」を捕食して暮らしていました。ところが、精神体種族である「イースの大いなる種族」がこの円錐体生物の体を乗っ取ったことで、両者の戦争が始まったんです。
大いなる種族は高度な科学技術を持っていましたが、盲目のものの不可視能力と風の力に苦戦。それでも最終的には、電気兵器を使って盲目のものを地底へ追いやることに成功しました。
地底からの復讐
しかし物語はここで終わりません。
長い年月の後、盲目のものは地底から這い上がり、大いなる種族への復讐を果たします。円錐体生物の肉体をすべて滅ぼしたんです。ただし、大いなる種族の本体は精神体なので、別の生物の体に乗り移って逃げ延びました。
現代への脅威
恐ろしいことに、盲目のものは現代でも地底で生き続けているとされています。
- オーストラリアの大砂漠の地下には、彼らの巨大な都市が存在する
- 時折、地上に現れて人間を襲うことがある
- 未来においては、再び人類の前に大きな脅威として現れる
実際、クトゥルフ神話TRPGでは、現代を舞台にした冒険でも遭遇する可能性がある強敵として扱われています。
出典
盲目のものが登場する主な作品:
- H.P.ラヴクラフト:『時間からの影』(1936年)- 初出作品
- リン・カーター:『暗黒の知識のパピルス』
- フレッド・ペルトン:『サセックス稿本』(ロイガーノスの名前が登場)
- クトゥルフ神話TRPG:各種ルールブック、シナリオ
まとめ
盲目のものは、クトゥルフ神話でも特に不気味で恐ろしい存在です。
重要なポイント
- 6億年前に外宇宙から飛来した太古の種族
- 透明な体と風を操る能力を持つ
- イソギンチャクのような半ポリープ状の巨大生物
- 大いなる種族と永遠の戦いを繰り広げた
- 現代でも地底に潜み、人類への脅威となっている
- 精神構造が完全に異質で、理解不能な存在
もし夜中に、どこからともなく喘息のような呼吸音が聞こえてきたら…それは風の音ではなく、透明な捕食者があなたのすぐそばを飛んでいる音かもしれません。
人類には見えない、触れることもできない、しかし確実にそこに存在する恐怖。それが「盲目のもの」なのです。
 
  
  
  
   
               
               
               
               
              

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