森の中で、ウサギのような生き物が羽を広げて飛び立つ姿を見たら、あなたはどう思うでしょうか?
「そんな生き物いるはずない!」って思いますよね。
でも、スウェーデンのスンツヴァルという町では、まさにそんな不思議な生き物が100年以上も愛され続けているんです。
この記事では、ウサギとライチョウが合体した謎の生物「スクヴェイダー」について、その奇妙な姿と興味深い誕生の物語をご紹介します。
スクヴェイダーってどんな生き物?

スクヴェイダー(skvader)は、スウェーデンで生まれた架空の生物です。
1918年に剥製師のルドルフ・グランバーグが制作した作品で、現在もスンツヴァルのノラ・ベルゲット博物館に展示されています。
この生き物、実はちょっとした冗談から生まれたんですね。学名まで付けられていて「Tetrao lepus pseudo-hybridus rarissimus」(超激レア擬似雑種)なんて呼ばれていますが、もちろん正式な学名じゃありません。
スンツヴァルの町では非公式ながらシンボル的な存在として親しまれていて、道路標識に「スクヴェイダー飛び出し注意!」なんてものまであるんです。
姿・見た目
スクヴェイダーの姿は、まさに「ありえない組み合わせ」の代表例なんです。
スクヴェイダーの身体構成
- 前半分:ノウサギ(ヨーロッパノウサギ)の頭と前脚
- 後半分:ヨーロッパオオライチョウ(メス)の背中、翼、尾羽
- 後脚:ウサギの強力な後ろ足
- 大きさ:50~80cmほど
つまり、前から見るとウサギなのに、後ろから見ると鳥という、なんとも不思議な姿をしているんですね。
博物館に展示されている剥製を見ると、本当に精巧に作られていて、まるで実在の生き物みたいに見えるそうです。ウサギの愛らしい顔と、鳥の美しい羽根のコントラストが絶妙なバランスで組み合わさっています。
特徴
スクヴェイダーには、ウサギと鳥の両方の特性があるとされています。
想像される能力
- 素早い跳躍:ウサギの強力な後ろ足で大きくジャンプ
- 滑空能力:鳥の翼で短い距離を飛べる(かも?)
- 森での生活:ウサギのように地上で、鳥のように樹上でも活動
名前の由来
「スクヴェイダー」という名前も興味深いんです。
- skvattra(スクヴァットラ):鳴く、さえずるという意味
- tjäder(シェーデル):ヨーロッパオオライチョウの名前
この2つの言葉を組み合わせて作られた造語なんですね。
現在のスウェーデンでは、「矛盾する要素の組み合わせ」や「よくない妥協案」という意味でも使われることがあります。例えば、全然合わないものを無理やりくっつけたような商品を「これはスクヴェイダーだね」なんて言ったりするそうです。
伝承と起源
スクヴェイダー誕生の物語は、とても人間味あふれる面白い話なんです。
ほら話から始まった伝説
時は20世紀初頭、スンツヴァルのレストランでの出来事です。
ホーカン・ダールマークという男性が、仲間たちと食事をしていました。話が盛り上がる中、彼はとんでもない自慢話を始めたんです。
「1874年、スンツヴァルの北で狩りをしていたら、ウサギみたいな鳥を仕留めたんだ!」
もちろん、みんな信じませんでした。でも、ダールマークは真剣な顔で話し続けるので、その場は大いに盛り上がったそうです。
冗談が現実に
面白いことに、この話には続きがあります。
1907年、ダールマークの誕生日に、家政婦が甥に頼んで描かせた「スクヴェイダーの絵」をプレゼントしたんです。これは彼のほら話をからかう意味もあったんでしょうね。
でも、ダールマークはこの絵を大切にして、1912年に亡くなる直前、地元の博物館に寄贈しました。
剥製の誕生
1916年、博物館の館長カール・エリック・ハンマーバーグは、展覧会で剥製師のルドルフ・グランバーグと出会います。
館長は例の絵と狩りの話について話し、「この生き物を再現できないか?」と頼んだんです。
そして1918年、グランバーグは見事にスクヴェイダーを完成させました。ノウサギとヨーロッパオオライチョウの剥製を巧みに組み合わせて、まるで本物のような作品を作り上げたんですね。
町のシンボルへ
完成したスクヴェイダーは、博物館の超人気展示品になりました。
1987年には、メーデルパッド地方の「県の動物」を決める投票で、多くの住民がスクヴェイダーに投票したほど。結局、妥協案として「ユキウサギ」(スクヴェイダーの前半分)が選ばれましたが、それだけ愛されているんですね。
世界の似た生き物
実は、スクヴェイダーのような「合成動物」は世界中にいるんです。
- ヴォルパーティンガー(ドイツ):ウサギに角と翼が生えた生き物
- ジャッカロープ(アメリカ):シカの角を持つウサギ
- ラッセルボック(ドイツ・チューリンゲンの森):角のあるウサギ
興味深いことに、古代ローマの博物学者プリニウスも「ウサギの頭を持つ鳥」について記述していて、アルプスに生息すると書いているんです。
まとめ
スクヴェイダーは、人間のユーモアと創造力が生み出した愛すべき架空の生き物です。
重要なポイント
- 1918年に制作された剥製がスンツヴァル博物館に展示
- ノウサギとライチョウを組み合わせた奇妙な姿
- ほら話から始まったユニークな誕生秘話
- スンツヴァルの非公式シンボルとして100年以上愛される
- 「矛盾する組み合わせ」を表す言葉としても使われる
- 世界中にある合成動物伝承の一つ
たった一つのほら話が、100年以上も愛される町のシンボルになるなんて、なんだか素敵な話ですよね。もしスウェーデンのスンツヴァルを訪れる機会があったら、ぜひ博物館でスクヴェイダーに会いに行ってみてください!

コメント